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これまでの放送

第161回 2011年4月4日放送

列車は、走るビックリ箱 デザイナー・水戸岡鋭治



「あったらいいな」を形にする

大胆なアイデアで、常識破りの列車を生み出してきた水戸岡。その発想の原点は、実は「あったらいいな」を形にするという、シンプルな考えに基づく。子どもが大好きなおもちゃがずらりと並ぶおもちゃ屋さんのような列車。お年寄りから幼い子どもまで楽しめる、懐かしさあふれるSL。さらには、本革のシートと大きな窓を実現した通勤列車。水戸岡は、既成概念にとらわれず、自由な発想で「あったらいいな」のアイデアを膨らませ、形にする。

写真自由な発想で、「あったらいいな」を考えていく


手間を惜しまない、愚直な心

水戸岡が思い描くデザインを、実際に形にするのは容易なことではない。公共交通機関である列車には、安全性、予算、日程など、さまざまな制約が課せられているからだ。その制約を乗り越えるために必要なのは、センスでも才能でもなく、手間を惜しまない愚直な心だ。水戸岡は、困難な制約にぶつかっても、何度も何度もデザインを練り直し、試作をつくり、またデザインの修正を行っていく。膨大な作業を地道に積み重ねることで、新しいデザインは生まれるのだ。

写真手間を惜しまず、ひたすら考える


いつかは、きっと いいものを

水戸岡は、どんな仕事も完成ギリギリまであきらめずにデザインの修正を重ねていく。その先には、必ず理想のデザインがあり、そしてさらにその先には、人生の理想にも近づくことが出来ると信じているからだ。「僕なんか優秀じゃないから、行ったり来たりしながら、何度も何度も検討しながら、それでも、『いつかはちゃんと』って、『いつかはきちっと』って、『いつかはすごいものを』っていうので生きてきてるわけだから。もしかしたら、人生そのものだって、『いつかは、きっと』ってことでやってきてるわけだから。そう簡単に諦めるわけにはいかない」。

写真決してあきらめず、理想を追求し続ける


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

「常にフェアプレーをおこなう人」って感じですかね、僕は。好みをではなくて、自分の好みを超えて、正しく美しく楽しいことを作れる人。

デザイナー 水戸岡鋭治


The Professional's Tools(プロフェッショナルの道具)

水戸岡は、列車の中を散策したくなるような“気づき”を散りばめている。ふと、気づけば、車両ごとにシート柄が異なる木製の座席。床や壁には、小さなツバメの絵。洗面所には、いぐさの縄のれん。さらには、金ぱくの妻壁に、山桜のブラインド。散策しながら丁寧に見ていくと、次々と面白い発見ができる仕掛けが組み込まれている。

写真
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写真車内には、多くの“気づき”が隠されている


放送されなかった流儀

人を豊かにするデザイン

新しいデザインを考えることは、「思い出を探すこと」だと水戸岡はいう。新たな発想は、ひらめきではなく、その人がこれまでに体験した「楽しかった思い出」から生まれると考えているのだ。だからこそ、水戸岡は公共空間を豊かにすることで、多くの人に「楽しい思い出」を提供することを目指す。そうすることで、また新たなデザインの公共空間が生まれ、人が豊かになっていくと信じているからだ。

写真デザインで、笑顔を生み出す