アメリカ・ニューヨークの大学病院に勤める加藤のもとには、世界各地から重篤(じゅうとく)な患者がやってくる。臓器が機能しなくなり、根本的な治療は不可能と告げられた人々に加藤が施すのが移植手術だ。機能しなくなった臓器を切除し、脳死した人や親族などから提供された健康な臓器と入れ替える。しかし、移植手術にはリスクがつきものだ。患者は拒絶反応を抑えるため、免疫抑制剤を飲み続けなければならず、命にかかわる合併症の危険も低くない。決して簡単ではない移植手術だからこそ、加藤が大切にしているのが、医師と患者が共に病気と闘う姿勢だ。診察では、患者からの質問が出つくすまで切り上げることはしない。手術の内容やリスクについてとことん話し合い、お互いが納得して初めてスタートラインに立てるのだと加藤は考えている。