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スペシャル  2009年10月20日放送

プロに学べ!脳活用法スペシャル 脳の老化をふっ飛ばせ


脳の老化とは

脳の中には、およそ1千億個の神経細胞があり、それらがつながってネットワークを作っている。このネットワークを通じて、神経細胞から神経細胞へ信号が伝わるのが、脳の活動だ。年齢を重ねると、神経細胞の死滅や使われなくなったネットワークが縮小・消滅して、脳は少しずつ萎縮(いしゅく)していくと考えられる。
だが、神経細胞同士のネットワークは、一旦働きが弱まっても、使うことによって脳が活性化し、再び強化される可能性がある。また、脳の使い方次第で、老化そのものを遅らせることも可能だと考えられている。

83歳の今も毎日付け場に立つ世界最高峰の鮨(すし)職人・小野二郎。このスーパープロフェッショナルの日常を分析した茂木が、脳のアンチエイジングにつながる極意を見出した。

写真神経細胞のネットワーク


適度に、体を動かす

小野は、毎日40分歩いて仕事場へ向かう。休日には2時間かけて銀座の店まで歩く。体と脳は密接な関係がある。例えば“歩く”という運動では、足からさまざまな感覚情報が脳に送られ、さらに、適切な動きをするよう脳から筋肉などへ指令が出される。体を動かすことによって、脳にさまざまな刺激が与えられ、脳を活性化させると考えられる。

写真すし職人・小野二郎(83歳)


指先を使う

小野の極上の鮨(すし)は、微妙な力加減と繊細な指使いによって生まれる。手の指は、「脳の出先機関」と呼ばれる。触覚のセンサーが密集していて、多くの感覚情報が脳に送られる。手の指からの情報を受け取るエリアは、足の裏からの情報を受け取るエリアよりも広い。指は、体の部分としては小さくても、脳を幅広く刺激するウルトラツールなのだ。


細々(こまごま)としたことを、人任せにしない

身の回りには、実にさまざまな“細々(こまごま)としたこと”があふれている。正直、面倒くさいが、それを自分でやることで、脳を活性化させることにつながる可能性がある。脳は、体や指先を動かすと同時に、記憶を引き出したり、思考の回路を働かせたりしているのだ。

写真


家事

適度に体を動かし、指先も動かし、細々としたことを自ら行う・・・このすべてを網 羅した、誰もができる身近な方法が、「家事」だ。特に料理には、「食材を切る」「調理する」「盛り付ける」など、手順を考え、計画的に進めようと脳がフル稼働する。

写真


“脳の司令塔”と呼ばれる、脳の前の部分、額に近い「前頭前野」を鍛えることが、脳の老化を防ぐことにつながると考えられる。茂木が分析したところ、プロフェッショナルたちには共通点があった。


新しいことに挑戦する

茂木は言う。「“新しいこと”は、脳の大好物なんです。新しいことに出会うと、脳はそれを理解しようとしたりして、前頭前野が活性化します」
中でも茂木が注目したのは、世界的建築家・伊東豊雄だ。
68歳の今も、常に新しいことに挑戦し続ける伊東に、茂木は、若々しい脳を保つ秘けつを見出した。

写真


よくおしゃべりをする

伊東はよく、若いスタッフたちと、屈託のないおしゃべりをする。一般的に、脳は会話をすると、前頭前野が活性化すると考えられている。特に会話がはずんでいるときは、前頭前野を中心に、様々なネットワークが活発に働いている。このとき、目と目を合わせて会話をすることが、より活性化させるポイントだ。

写真建築家・伊東豊雄(68歳)


さらに、多くのプロフェッショナルたちに共通した、前頭前野を活性化させる方法がある。


好きなことを、とことん楽しむ

好きなことに取り組んで、「楽しい」「気持ちいい」と思っているときは、脳の奥深くにある、感情を処理する領域が活動している。この領域の活動が、前頭前野に反映され、活性化させるのだと考えられている。
茂木は言う。「自分が好きなことをやっていると、前頭前野が本気モードになって、脳全体が力を発揮しようとするんですね」

写真


「脳のアンチエイジング」に関する質問コーナー

人の名前が覚えられない(50代男性)
画像は頭に残るのに人の名前が出てこない。脳の中では何が起こっているのか?
思い出すということは、その情報が前頭葉にいくということ。名前を記憶しているところから前頭葉への回路が弱っていると考えられる。脳の回路は筋肉と同じで、使えば使うほど鍛えられる。だから、自分が覚えている名前を思い出して前頭葉に持ってくるというトレーニングを積むこと。例えば知人の名前をどんどん思い出してみるなどして、この回路を太くすることを勧める。
実年齢よりも、若々しく見えるには(40代女性)
年齢とともに、見た目が老けてきた。若々しく生きたいが、何か秘策は?
若々しい表情をしている人は、“忘れること”がうまい人です。自分が今まで経験した悲しいことや苦しいことを早く忘れて、まるできのう生まれたような顔をしていられる人は、若々しく見える。例えば子どもは、朝起きると、新しい一日に出会っていろいろなことを学ぶため、基本的に頭の中は白紙になっている。白紙の状態になること、それが若々しいことだから、“忘れる”ということを、うまく実践してみることを勧める。