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第124回 2009年7月7日放送

魂をゆさぶる顔は、こうして作る 特殊メイクアップアーティスト・江川悦子


俳優の“内面”を作る

本場ハリウッドの技術であらゆる顔を作り出す、特殊メイクの第一人者の一人、江川悦子。俳優を“役の顔”に変える特殊メイクの仕事の真髄を、江川はこう語る。「外見を作ることだけではなく、内面というものも考えて、中と外が一体化して初めて成立するメイクです」。メイクによって自分の顔が変化する様子を見た俳優が、自然に役柄に入っていけるようにすることが江川が目指す特殊メイクだ。「その顔で心から演じていただいてこそ、作った意味があると思うんですよね」

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つねに、ハードルを上げ続ける

一つ一つの仕事に真摯(しんし)に向き合い、完璧を目指す江川だが、仕事に満足することはない。「やっぱりより良いものを作りたいと思ったら、ハードルは自然に上げるしかないなって。終わりがないんですね、もっといいものが出来るとか、もっと違うものができるとか、どんどん広がっていくので」。特殊メイクの道を歩み始めて28年。気がつけば最前線を走っていた江川。どんなに難しい仕事でも「もっともっと」とハードルを上げ、最善を尽くして取り組むのが江川の流儀だ。

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“俳優を、全力で支える

撮影現場で俳優に特殊メイクをほどこすとき、江川はできる限り時間をかけないように心がける。通常およそ2時間かかるところを、1時間30分以内で終わらせようと務める。そしてメイクが終わっても、常に俳優から目を離さず、演技に集中できているか、ひたすら考え、寄り添う。特殊メイクは、マスクなどの“異物”を顔にはるため、俳優にとっては重い負担。接着剤の違和感や顔を覆われる暑さなど、自分の肌で演技をするときとは、感覚がまったく異なる。そうした負担を少しでも軽減させようと、江川は俳優を全力で支える。

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プロフェッショナルとは…

相手の要求に的確にすばやく応えられる人が、私プロだと思います。ただちょっとプラスアルファ必要かなと思うので、自分もそれを今探しているって感じです

江川悦子

The Professional’s Tools

特殊メイクで、茂木健一郎がアインシュタイン博士に“変身”

スタジオでは、茂木健一郎を“別人”に変えるべく、特殊メイクの実演が行われた。
変身するのは、本人のたっての希望で、アルバート・アインシュタイン博士。茂木が科学者を志すきっかけとなった憧れの人だ。

1.顔の型をとる

アインシュタインに“変身”するため、顔のマスクを作る。その作業の第一歩が、顔の型どりだ。歯科で歯の型をとる時によく使われる材料で、顔全体を覆う。呼吸をするための鼻の穴をわずかに残し、頭から首までスッポリと…

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2.マスク

江川が1か月かけて作った、人工皮膚製のアインシュタインのフルフェイスマスク。茂木の顔型を土台に、アインシュタイン博士の肉付きやシワなど精緻な造形を施し、毛穴までリアルに作られている。触った感じも、本物の皮膚そっくりに柔らかい。

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3.テープで、目の開き具合を調整

スタジオでまず江川が始めたのは、茂木のまゆ毛を上げ、テープで止めること。目を開けたときの開き具合を調整するのだという。クリッとしたアインシュタインの目の状態を、下地として作る。

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4.接着剤で、マスクをはる

医療用の接着剤を使って、マスクを顔にはる。まず顔の中心の鼻から、徐々に周囲に広げてはっていく。この時、皮膚とマスクがわずかでもずれてしまうと、ゆがんで見えたりシワがよったりするため、正確に慎重にはる必要がある。

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5.接着剤などで、肌とマスクの境目を見えにくくする

マスクの“ふち”と地肌には、わずかだが段差がある。接着剤などを使ってその段差を埋め、マスクと地肌がスムーズな“つながり”に見えるようにしていく。“マスク”だったものが、徐々に“肌”としてなじみ、まるでマジックのようだ。

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6.顔料などで色をつけ、肌のむらを作る

肌色の顔料などを使って色を塗っていく。一つの肌色では、顔が白っぽく見えてしまうので、江川は違う肌色を散らしていくことで、肌のむらを作っていく。色がついているのかわからないぐらいの薄い色を少しずつ塗り重ねるという、細かい地道な作業だ。

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7.カツラ、まゆ毛、ヒゲをつける

カツラだけで制作期間は2週間。人毛を1本1本編んだ手作りのカツラ。そして、“つけまゆ毛”と“つけヒゲ”を接着剤でつけて完成。開始から1時間17分。茂木健一郎の顔が、見事にアインシュタインの顔に“変身”した。

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