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第112回 2009年3月10日放送

絆(きずな)が、人を生かすから ホームレス支援・奥田知志


ホームレス=絆(きずな)を失った人々

社会復帰への意欲があっても、自力ではい上がるのが極めて困難な状況にある、ホームレスの人々。
奥田は、そんな“どん底”にあるホームレスの人々を、単に衣食住を失っただけではなく、家族などの人間関係、「絆(きずな)」をも失った人々だととらえる。
奥田は、そんなふたつの困窮を抱えるホームレスの人々と、まず出会うことから支援を始める。

写真炊き出しはホームレスの人々との「出会い」の場


ホームレスの「ホーム」になる

自立に向けて手厚い支援を行なう奥田たち。その根幹には、絆(きずな)を失った人々の「ホーム」になるという揺るぎない覚悟がある。
奥田は「無理するな、楽するな」を信条に、相手をときに温かく包み込み、ときに厳しくしかる。そして、自立した後も関わり続ける。
長い路上生活で心に傷をおっている人も少なくないが、家族のような関わりの中で、次第に前向きな気持ちを取り戻していくことができると、奥田は考える。

写真心の傷と向き合う


人は、いつか変わる

多くのホームレスの人々と接し、自立へと導く奥田。しかし中には、一筋縄ではいかない人もいる。
1月下旬、奥田はひとりの元ホームレスの男性を自宅へ迎え入れた。男性は去年いったんは自立をめざしたが、酒に酔ってたびたび問題を起こすなど、支援を裏切り続けてきたという。
奥田は、そんな男性にひとつの提案をもちかける。まとまった金を渡し、ひとりで外出してもらうこと。じつは去年、男性はまとまった金を手に姿を消し、3日後に無一文で泥酔して発見されたことがあった。
今回、無事に帰ってくることができれば、自立への大きな一歩となる。
ひたすら待ち続ける奥田の胸の内には、どんな相手にでも関わり続けることで、いつか何かが変わるという、ひとつの希望がある。

写真一緒に暮らしながら「その時」を待つ


プロフェッショナルとは…

使命という風が吹いたときに、それに身をゆだねることができる人だと思います。そして、そのときに、自分の思いとか考えとか、都合とか好き嫌いというものをやっぱり一部断念することができる人。それがプロだというふうに考えています。

奥田知志

The Professional’s Tools

「見えないホームレス」への手紙 

路上で寝泊まりはしていないが、ネットカフェや24時間営業の飲食店などで夜を明かす人々を、奥田は「見えないホームレス」ととらえる。急増していると見られる彼らに向けて、連絡先などを記し「あなたはひとりではない」というメッセージを込めた手紙を作っている。この手紙をテレホンカードとともに手渡し、今後の支援へとつなげる。

写真びっしりと言葉がつづられた手紙


聞き取りのノート

夜、街の中を回っているときに、ホームレスの人々から聞いたことを記録するノート。生年月日から本籍地、今に至るいきさつなど、聞いたことをすべて書きとめる。ホームレスの人々は路上で亡くなると、記録がなく生きているあかしも無くなってしまうと奥田は言う。このノートが、今後の支援の参考になると同時に、彼らが「生きたあかし」になる。

写真相手の言葉を細かく記録する


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