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これまでの放送

第111回 2009年2月24日放送

人間、死ぬまで勉強 料理人・西健一郎


手間をかける

40年にわたり、その奥深い味で、あまたの食通をうならせてきた西。その秘密は、徹底的に「手間をかける」ことだ。例えば、だしと食材を合わせる前に、西は食材への下ごしらえを入念に行い、だしを受け入れる体勢を整える。そしてだしと合わせる際にも、じゃこを加えるなど、より風味を増すための「もう一手間」を加える。その「手間をかける」姿勢は、料理作りだけには終わらない。前日来た客が何を食べたのかをつぶさに記録し、次回来店した際のもてなしに役立たせる。そうした毎日の手間を惜しまない姿勢が、西を名料理人たらしめている。

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名料理人・父音松との日々

西は、17歳で料理の道に入った。20代で頭角を現し、30才で独立。程なくして食通が集う店になる。しかしその栄光の陰で西は、「本当に客に記憶に残る『奥のある味』が出せていないのではないか」と悩む。そのとき西が教えを請うたのが、西の父・音松。父は、戦前西園寺公望のお抱え料理人を務めたという伝説の料理人。30才半ばより西は、2度目の料理修業を始める。口数少なく、厳しい父。その横でじっと作業を見つめる日々。少しづつ西は、父の卓越した料理哲学を学んでいく。親子の厳しくも温かい修業の日々は、父が86才でなくなるまでおよそ10年にわたった。

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おせち作り・71才の挑戦

毎年、西は年末に店を閉じ、一週間をかけておせち作りに専念する。お重200セット、1000人前以上のおせち料理を作ることは、71才の西にとって体力・気力の限界との挑戦だ。西は、伝統的なおせちの食材を主に使いながら、前年よりも良いものにしたいと、新たな調理法を考える。40品以上に上る料理の指示を出しながら、今年特に着目したゆり根とチシャトウの調理法を試行錯誤する。最終日は徹夜となる大仕事。71歳の西は持てる力のすべてを注ぐ。

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プロフェッショナルとは…

お客様のその日の気持ちというのがわかることだと思います。そのことをきちっと把握して、料理ができることじゃないでしょうか。

西 健一郎

The Professional’s Tools

父  音松の本

西は料理を考える時、西の父・音松氏の料理を紹介したこの本を開くことが多い。伝説の料理人と言われる父が残した、唯一の料理本だ。

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本は、音松氏が作った四季折々の料理の写真と、音松氏が料理について語った内容が、語り口調そのままに紹介されている。この本を通じて、西は、亡き父と対話を続けている。

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