国産ロケットH2A、半導体の製造装置、大型旅客機など、最先端の技術を支える金属部品。へら絞り職人松井三都男は、40年間その製造に関わり続けてきた。
松井が専門とする「へら絞り」は、へらと呼ばれる棒一本で金属板を型に沿わせて成形する技術。扱う金属の種類は20種類を越える。伸び方や硬さは金属の種類によって違うだけではなく、そのメーカーによっても異なるため、金属の性質を見抜く力が要求される。
工場に持ち込まれる仕事を、松井は五感を総動員して乗り越えていく。目で金属の表面に出来た波紋を読み、耳でへらとの摩擦音を聞く。そしてへらから伝わる振動で、金属がどれだけ型に密着したかを計算する。
松井の技術は業界でも指折り。わずか100分の3ミリの誤差という機械では困難な精度を実現する。