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これまでの放送

第99回 2008年10月7日放送

すべて、動物から教わった 動物園飼育員・細田孝久


とことん、見る

飼育員・細田の真骨頂は、動物たちのわずかな異変を察知する確かな目だ。本来、野生で生きる動物の多くのは、ケガや体調の悪さなどの“弱み”を決して見せない。そのため細田は、もの言わぬ動物たちが発する、かすかな異常のシグナルを見つけるために、同じ動物には同じ時刻に、接するというこだわりぶりだ。

写真四六時中、園内を回っては動物の様子を見る細田。


「念のために」を、惜しまない

いつもの朝の見回りの時、細田の目が一匹のサルにくぎづけになった。絶滅の恐れがある希少種・ハイイロジェントルキツネザル、その乳首が腫れ上がっていた。妊娠を疑ったが、問題のサルはオス。ところが細田は、「もし自分の勘違いでメスだったらいけない」と出産の準備に取りかかった。“ムダ”かもしれないが、あらゆる可能性を考えて行動する。それが細田の流儀だ。

写真乳首の腫れが見つかったハイイロジェントルキツネザル。細田の発見によって、後日腫瘍(しゅよう)の摘出手術が行われた。


無力だからこそ、あきらめない

どんなに手を尽くしても救えない命がある。細田は言う。「動物は、やっぱり死ぬんですよね。すごい、すごく死にます。死んだ時に、あそこでああやらなかったから死んだとか、これをやっちゃったから死んだのかもしれない。すごい自己嫌悪に陥るんです。全然、だめだなあって」。
飼育員になって24年の細田。たえず自問自答を繰り返しながら、厳しい現実と向き合い続ける。

写真生まれたばかりのアルマジロの赤ちゃん。立派に成長するまで、細田はそばで見守り続ける。


プロフェッショナルとは…

とことんなんでも自分が納得できるまでやるということじゃないかなと。できればそれを淡々とね、もうなんかさらりと、別に騒ぎもせず普通にやっちゃうということかなと思いますけど。

細田孝久

The Professional’s Tools

デジタルカメラ

野生動物の中には、その生態が解明されていないものが少なくない。飼育の現場は、新発見の連続でもある。細田はデジタルカメラを手放さず、日々貴重なデータを収集している。

写真ハイイロジェントルキツネザルの後ろ足。霊長目の証である“平爪(ひらづめ)”がある。


せん定バサミ

動物のエサは栄養のバランスを考え、動物ごとにメニューを変えている。動物によっては、エサそのものを園内で調達する。新鮮な笹(ささ)や柳の枝を切るために、せん定バサミが使われる。

写真掃除中にアイアイに奪われたせん定バサミ。アイアイの鋭い歯で柄の部分がかじられた。


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