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これまでの放送

第96回北京五輪スペシャル 2008年9月2日放送

攻めの泳ぎが、世界を制した 競泳コーチ・平井伯昌


ワンポイントで伝える

平井は練習中、決して選手達から目を離さず、その日の泳ぎをチェックしている。
自分が今、どういうフォームで泳いでいるかなど、当然選手には分からない。平井の目だけが頼りなのだ。脳裏には、それぞれの選手のベストなフォームが焼き付いている。そして、その理想のフォームに比べ、どこがどう崩れているかを瞬時にはじき出すことが出来る目を平井は持っているのだ。
そして、それを修正するときも、平井は最短距離を走る。心がけるのは、「ワンポイントで伝える」こと。選手は一度に、多くのことを気にかけて泳ぐことなど出来ない。指示を出しすぎると、余計泳ぎが崩れてしまう。その選手の性格も考え、最適な一言を選んで、指示を送る。

写真練習中は、選手の泳ぎから目を離さない


選手の一歩前を、歩く

技術面でも、精神面でも選手をリードし、引っ張り続けるのがコーチの仕事。そのために、常に先回りして課題を研究し、決して迷いや動揺を見せないよう、必死で自分を抑える。練習がうまくいくときだけではない。結果が出ないとき、故障したとき、ライバルが予想以上にタイムを出したとき、平井は、常に自らを抑え、選手を冷静にさせてきた。選手とともに、コーチ平井も常に、自分自身と闘っている。12年前、当時中学生だった北島康介の目つきの良さに惚れ、オリンピック選手に育てようと決意した平井。しかし、選手の一歩前を歩くことは、容易ではなかった。2000年、北島と挑んだ初めてのオリンピック。想像も出来ない重圧、独特な会場の空気にのまれ、平井は我を見失ってしまう。その結果、アドバイスを誤り、北島は200m平泳ぎで予選落ちしてしまう。選手の一歩前を歩くことの難しさを、何度も感じながら、平井はコーチとして成長してきたのだ。

写真北島と一緒に、平井もコーチとして成長してきた


勇気を持って、ゆっくり行け

オリンピック前、平井と北島が最も力を入れたのが、100mの泳ぎの改良だった。平井が打ち出した方針は、「200mの泳ぎに100mの泳ぎを近づける」こと。「100と200は別物」という、自分自身の常識を覆す思い切った改良だった。大きく、ゆっくりと泳ぐ方が、北島の特長を最大限に生かせる。しかし、気持ちがあせるとピッチを上げたくなってしまう。ピッチを上げて激しく泳いだ方が、どうしても速く泳げる気になるからだ。北京五輪本番、理想の泳ぎをみにつけたはずの北島の泳ぎが、準決勝で乱れる。思わぬ強敵の出現に力み、ストローク数の多い、忙しい泳ぎをしてしまう。そして、決勝、平井はレースに向かう北島に、最後の一言をかける。

写真五輪期間中 厳しい表情の平井


プロフェッショナルとは…

オリンピックを通じて、本当に思ったのはですね、最終的には自分自身に打ち勝った人間が、メダルをとれたり、金メダルをとったと思いますので、忍耐力と克己心を強く持った人だと思います。

平井伯昌

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中村礼子選手が、短水路世界記録を出したときに、その報奨金でプレゼントしてくれた。
過去10年以上にのぼる選手達のタイムなど、指導方針や作戦を立てる上で必要不可欠な情報が、すべてつまっている。

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ストップウオッチ

両手に持ち、一度に3人もの選手のタイム、ストロークなどをはかる。

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