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第77回 2008年2月5日放送

若き求道者、未到の地へ フレンチシェフ・岸田周三


ここが、最前線

フランスの伝統あるレストランガイドで日本人としてフレンチの世界で初めて三つ星を獲得したシェフ・岸田周三、33才。現役、最年少の三つ星だ。
岸田の料理は、フランス料理の命と言われる濃厚なソースに頼らない。選び抜いた食材と卓越した火加減の技術で勝負する。
岸田は、一つの気概を持って仕事に向き合う。「ここが、最前線」。その岸田の真骨頂が現れるのが、火入れの技術だ。
岸田は、肉に一度に火を入れない。オーブンで1分間焼いてはすぐに取り出し、レンジの上の温かい場所で5分間休ませる。オーブンの火力で焼くのではなく、余熱で肉に火を入れる。1分焼いて、5分休ませることを繰り返して2時間半。仕上がった肉は、芯(しん)まで火が通っているが、生焼けとみまがうほどみずみずしい。
これこそ岸田が考える最前線の料理だ。

写真肉をさばく岸田


昨日より今日、今日よりも明日

1日16時間、厨房(ちゅうぼう)に立ち、ひたすら料理と向き合う岸田は、仕込みの合間、常に新作料理のことを考えている。旬の食材を使ってどんな料理を生み出せるか。
日々、新たな料理を生み出すことは容易なことではない。失敗することもしばしばある。
しかし岸田は、一つの言葉を胸に刻む。「昨日より今日、今日よりも明日」。例えわずかでも進化する自分でありたい。
この言葉は、パリでの修業先の師との出会いのなかで培われた。いま、日々の仕事のなかで、岸田の支えとなっている。

写真厨房(ちゅうぼう)でいつも新作料理を考える岸田


料理人は、ロボットではない

幼いころから料理好きの母を手伝って、食事を作るのが何よりの楽しみだった岸田は、高校を卒業すると迷わず、料理人の道に進む。夢は本場、パリで修業すること。岸田は、26歳の時、あてのないまま身一つでパリに飛んだ。
修業を積むなかで、岸田の人生を変えたのが師パスカル・バルボとの出会いだ。
岸田は、自信を持って作った魚料理をバルボに、客には出せないと捨てられる。そのなかで、言われた一言が、「料理人は、ロボットではない」。
食材は、その日、その日で状態が違う。そのつど、食材を丹念に調べ、「対話」して、料理すべきだという教えだった。
この日から岸田の料理への向き合い方が180度変わった。

写真人生を変えた師との出会い


プロフェッショナルとは…

高いモチベーションを持つことと、それを維持することですね。プロフェッショナルとは、持続する情熱です

岸田周三

The Professional’s Tools

骨付き肉を切るのこぎり

岸田は、厨房で使う包丁やはさみ、手袋などの道具にひときわこだわりを持つ。
肉を骨付きの塊のまま必ず焼く岸田に欠かせないのが、のこぎり。
骨が付いたまま肉を焼くことで、焼き縮みせず、肉汁を中にとどめておけるという。

写真


せん定バサミ

岸田は、料理用バサミを使わずに生け花や植木に使う、せん定バサミを使う。
料理用バサミよりはるかに鋭くて力が入りやすく、ちょっとした細かい骨などがうまく切れるという。道具は、自分で見つけてはいろいろ試し、使い勝手がいいものを使い続ける。

写真


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