農家は豊かな作物を作るために土地を肥沃(ひよく)にするが、そうすれば雑草も次々と生えてくる。それゆえ農業では、雑草防除が難しい。農薬を使わない古野の土地には、当然雑草が大量に繁殖する。しかし60種類以上の作物を作る古野は、忙しい時には雑草を放っておく。無理はしない、できる範囲のことだけをして、作物は育つ分だけ取れればいい。そう古野は考える。「人間が全てをコントロールしたり、そういった話じゃないんです。命の連鎖の中に人間が入れてもらっている。人間が作っているんじゃなくてね。」
その哲学は、アイガモ農法の根幹をなす。水田に放ったアイガモが、雑草をほぼ食べつくす。アイガモのふんは肥料となり、稲の養分となる。