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第59回 2007年7月24日放送

失敗の数だけ、人生は楽しい 農家・古野隆雄


なるに、まかせる

農家は豊かな作物を作るために土地を肥沃(ひよく)にするが、そうすれば雑草も次々と生えてくる。それゆえ農業では、雑草防除が難しい。農薬を使わない古野の土地には、当然雑草が大量に繁殖する。しかし60種類以上の作物を作る古野は、忙しい時には雑草を放っておく。無理はしない、できる範囲のことだけをして、作物は育つ分だけ取れればいい。そう古野は考える。「人間が全てをコントロールしたり、そういった話じゃないんです。命の連鎖の中に人間が入れてもらっている。人間が作っているんじゃなくてね。」
その哲学は、アイガモ農法の根幹をなす。水田に放ったアイガモが、雑草をほぼ食べつくす。アイガモのふんは肥料となり、稲の養分となる。

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柳のごとく、しなやかに

農業は、天候などの自然条件に常に左右される。予測不可能の事態は、日常茶飯事だ。自然の厳しさに直面し、作物が危機に瀕(ひん)することもしばしばだ。そんな時、古野は常にしなやかな思考を心に浮かべる。「いいことがあると何かが悪いというんじゃなくて、悪くてもいいというふうに、考える。」
古野は常に動じることなく、淡々と人間のできることだけを続け、自然と向き合う。

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あえて、失敗に飛び込む

古野は今年、アイガモ農法を進化させた、新たな米作りに挑んだ。農薬を使わない「乾田直まき(かんでんじかまき)」。稲の苗を水田に植えるのではなく、乾いた土地に直接稲の種をまく。稲が大きくなったところで水を入れ、アイガモを放つのだ。この農法が確立すれば、苗作り、代(しろ)かき、田植えなどの重労働がなくなり、担い手不足、高齢化が進む農業の福音となると古野は考えた。
しかし、大きな壁があった。雑草として生える「ヒエ」。稲の養分を奪う強い草であり、さらにアイガモは食べない。古野はヒエを生やさないよう手を尽くすが、直まきに挑戦した田のひとつで、無情にもヒエが大発生した。
失敗しても、失敗しても、古野は新たな試みに挑みつづける。
「チャンスなんですよ。ヒエが生えるということは。自分の認識の世界にないところを体験することで、超えることができる」

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プロフェッショナルとは…

まあ敢えて言えば、自分自身の仕事を限りなく面白くするために楽しく試行錯誤をし続ける者でしょうかね。

古野隆雄

The Professional’s Tools

アイガモの雛

古野の米作りのパートナー、アイガモ。雑食性で、雑草やその種、虫などを食べる。
自宅で毎年1000羽ものアイガモを育て、田に放っている古野は、アイガモに常に話しかける。「自然とそうなってしまうんです」と古野は言う。

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