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第55回 2007年6月19日放送

熟成の向こうに、極上がある ソムリエ・佐藤陽一


ソムリエ=森林ガイド

「ソムリエ」とは、ワインの知識に精通し、客がワインを選ぶ手助けをするエキスパートのこと。ただワインを飲むだけでなく、そこにソムリエの存在が必要なのは、なぜか・・・?佐藤は、ソムリエという仕事を、「森林ガイド」に例える。森を歩く時、一人でただ歩いているだけでは、豊かな自然をすべて味わい尽くすのは難しい。しかし、ガイドと一緒に森を歩いたらどうだろうか?こずえの陰で鳴く鳥のさえずりや季節の草花の移り変わり、珍しい動物や昆虫など・・・ガイドの案内によって、一人で歩いている時には気付かないような、自然の奥深さを満喫できる。ソムリエも、ワインという奥深い世界を案内するガイドだと、佐藤は言う。客にワインを出す時、佐藤は、産地に出向いて聞いた、作り手の話やその土地の特徴などを言い添え、客を楽しませる。佐藤は言う。「ソムリエの仕事は、ワインを語ることではない。ワインで人を幸せにすることだ」

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客を感じる

佐藤が接客で最も大切にしていることは、客を観察し、客がどのような状態であるか把握すること。ワインを選ぶ時、ワインのことをどんなに知っていても、客のことを知らなければ、客の喜ぶワインは出せないと考えるからだ。佐藤は、接客の間、店内を歩き回り、客を観察し続ける。客の表情、顔色、服装、グラスの持ち方、そして客と交わす会話・・・全てがワイン選びのヒントになるのだ。ささやかな観察を積み重ねて初めて、客の笑顔に出会えるのだ。

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熟成

一流と呼ばれるソムリエは、有名ホテルや高級レストランを活躍の場とすることが多い。しかし、佐藤は、自らが経営する客席22席のワインレストランで、毎晩ひとりで接客に立つ。日本チャンピォンという称号を得ながらも、毎日掃除やグラスふきまでひとりでこなす。そこには、ソムリエとしての目指す生き方がある。それを、佐藤は、ワインになぞらえて「熟成」と表現する。熟成とは、ワインがたるやタンク、瓶の中で、香りや味を深めていくこと。しかし、時がたてば必ず熟成するとは限らない。細菌が混入し「酸敗」と呼ばれる、酸味が強い状態になるワインもあるのだ。佐藤は、人の人生もワインと同じだと考える。日々、努力を続けていれば、いつか「熟成」になるかもしれない・・・その想いが、佐藤を支えている。

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さらなる、熟成へ

佐藤が、ソムリエとしてのさらなる熟成を目指して挑んだのが、今年5月、ギリシャで開かれた世界最優秀ソムリエコンクール。佐藤は、一昨年行われた日本大会で優勝、日本代表として、世界に挑んだ。佐藤はこの大会を、毎日店に立ち続けた経験が、どこまで世界に通用するか、試す場だと考えていた。本場ヨーロッパの強豪たちに、言葉も文化も違う日本人が挑む・・・その重圧の中で、佐藤は、20年間積み重ねた経験のすべてをぶつけた。大会の結果は、惜しくも決勝進出を逃したが、佐藤の顔に後悔はなかった。「何かが足りないから最後の4人に残れなかった。それは何かと考える方が、僕は性に合っているのかもしれない」・・・佐藤の熟成を目指す旅は終わらない。

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プロフェッショナルとは…

プロなんだという自覚をしっかり持った上で、だから苦労とか努力とかは当たり前だと思って、自分の限界を試すというか、ここでいいや、と思わないことがプロフェッショナルなんじゃないかなと思います。

佐藤陽一

The Professional’s Tools

佐藤は、どんな風に客に合ったワインを選ぶのか?お店にあるワインを、30種類ほどスタジオに持ち込んでもらい、住吉アナウンサーと茂木さんに合うワインを選んでもらった。

住吉アナウンサーに選んだワイン

選んだのは、フランス・ブルゴーニュの赤ワイン。果実の甘いニュアンスと、スミレの清涼感のあるワイン。ワインを選ぶときに見るのは、話し方や動きなどの「スピード感」だと佐藤は言う。住吉アナウンサーの場合は、全体から醸し出される若々しい雰囲気に合わせて、このワインを選んだ。

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茂木さんに選んだワイン

南アフリカの白ワインをチョイス。忙しい茂木さんに合わせて、重い・たる・甘いワインは避けて選んだ。このワインは、飲んだ時、「この味は何だったか?」と、飲む人を思わず立ち止まらせる力があると言う。

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