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第54回 2007年6月12日放送

棟梁(とうりょう)の器は、人生の深さ 宮大工・菊池恭二


木の心を読み、技で組み上げる

宮大工の大切な仕事に木の選定がある。木には、それぞれ「木癖(きぐせ)」と呼ばれる特徴がある。その癖を見極め、建物のどの部分に使うか決めていく。
なぜなら、木は“暴れる”からだ。温度や湿度の変化によって、木は曲がったり割れたりする。木癖を読み切り、適材適所に木をあてがうことで何百年もの風雪に耐える建物を組み上げる。それが宮大工の技だ。

写真宮大工の仕事は木との対話から始まる


棟梁(とうりょう)の器は、人生の深さ

3月下旬、菊池の腕を見込んで、緊急の応援要請が入った。現場は、大分の文化財。室町時代の仏殿、その屋根の修復が立ち行かなくなっていた。現場に着くなり、菊池は地元の職人たちに次々に指示を飛ばし、作業を進めていく。その判断に一点の迷いもない。菊池は棟梁の決断についてこう語る。
「人生そのもの、職業そのものが(仕事の)“読み”につながっていく。その読みで決断する。読みができなければ、棟梁は務まらない」

写真木のゆがみ、経年変化を“読み”、決断する


重圧と向きあえ

菊池の人材育成法は、徹底してプレッシャーと向きあわせることにある。若手であっても責任の重い仕事を次々に任せる。
「プレッシャーを乗り越えてこそ自分のものになるからさ。俺なんかプレッシャー楽しんでよ」と笑い飛ばす菊池。
弟子の失敗は、師匠である菊池がすべてを負う。しかし師匠に失敗を背負う覚悟がなければ、弟子を育てることはできないと菊池は言い切る。

写真若き宮大工に伝えるのは、心と技


プロフェッショナルとは…

いつも前向きに物事を考える新人だと思います。それはいつもなんか新しい考えを追い求めている、私は新人だよという意味がそれがプロかなと思いますね。

菊池恭二

The Professional’s Tools

現寸

現寸とは、設計士が書いた平面図から1つ1つの部材を実物大でベニヤ板に書いたもの。
洋服の型紙と同じ要領で、これを元に部材が切り出される。
ただし、ただ平面図を拡大するわけではない。屋根の反りなど曲線部分は、棟梁の裁量で決められる。日本建築の命とも言われる美しい屋根の曲線は、ここから生み出される。

写真屋根部分の現寸を書くだけで、なんと1週間かかる


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