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これまでの放送

第51回 2007年5月15日放送

未来を見すえる者が勝つ 競馬調教師・藤澤和雄


勝利に近道はない

藤澤の調教は馬に無理をさせない「馬なり調教」が中心だ。競走馬は速く走らせれば、心肺機能や筋力がより高まる。しかし、強く走らせるとケガの可能性が高まると、藤澤は考える。藤澤がその代わりとして行うのが、調教の前後に行う「歩き運動」だ。毎日合計2時間、早足で歩かせる。手間暇がかかる作業だが、丈夫で強い馬を作るには時間はかかるものだというのが、藤澤の信念だ。
「馬の調教は貯金に似てる。たくさんある時にごそっと入れてもダメだ」(藤澤)

写真毎日2時間の歩き運動は藤澤厩舎(きゅうしゃ)の名物だ


一勝より 一生

藤澤は目先の「一勝」にこだわらず、馬の「一生」を考えて馬を育てる。そこには、かつて味わった苦い経験がある。
若かりしころ、まだ有力馬がほとんどいない藤澤のもとに、「ヤマトダマシイ」という良血の有力馬がやってきた。デビュー戦は圧勝。スポーツ紙にも異例のダービー候補と記事が出るほど注目を集めていた。藤澤もダービーで行けるとスケジュールを組んだ。しかし、次のレース中にヤマトダマシイは骨折。手術をしても助かる見込みがないと安楽死処分となってしまう。
 藤澤はそれ以来、無理な調教は決して行わず、大レースであっても万全でなければ出走させないという決意で、競馬に向き合ってきた。その結果、G1合計21勝。現役最多の勝利数を上げる名調教師と称されるようになった。

写真期待の若馬を藤澤は大切に育てる


ただ勝つことに未来はない

藤澤のもとに、実力を発揮できない馬がいた。5歳の牡馬・タイキスピリッツ。スタートの失敗や途中で走る気を無くすなど、臆病(おくびょう)なために本来の実力を発揮できないレースが続き、6連敗中だった。
臆病なタイキスピリッツの勝ちパターンは、砂がぶつからない先行逃げ切り策。しかし、藤澤はあえて後方から追い抜く指示を、騎手に出した。逃げ切り策で一度は勝てても、今後も同じ作戦でしか戦えず、成績にムラがでる。どんなレースになっても、きちんと戦う馬に育てるために、あえて難しい要求を突きつけた。
藤澤は語る。「欲張りだから勝ちたいのは世界一勝ちたい。しかし、その場しのぎばかりでは、永遠に変わらない。」

写真タイキスピリッツ(オレンジの帽子)は果敢に馬込みに突っ込んできた


プロフェッショナルとは…

僕にとってのプロフェッショナル・・・。頼まれた仕事をきちっとすること、できる人。それをできる人になりたいんだけれども。はい。

藤澤和雄

The Professional’s Tools

番組表(レース一覧票)とマグネット

常に持ち歩く道具はない、という藤澤。唯一使うのが、番組表(レース一覧票)と馬の名前が書かれたマグネットだ。レース一覧の上にマグネットを貼り、どの馬をどのレースに出すかを考えるために使う。
1日1つの競馬場で行われるのは12レース。藤澤が厩舎(きゅうしゃ)で管理する24頭をどのレースに出すか、選択肢は無限にある。かつては手書きで書いていたが、日々変わる馬の体調に対応して何度もレースを変更するため、跡が付かないマグネットを用いるようになったという。

写真


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