第46回 4月 6日放送 : 中学教師・鹿嶋真弓 / 2007年5月10日公開 
子供たちは、確かに輝いていました

<取材を受けて感じたこと>
6週間という長い期間、学校にカメラが入るという経験は初めてでした。
取材を受けるにあたり、生徒たちに「カメラがあろうとなかろうと、私は私。ほめるときはほめるし、注意するときは注意します。急に優しくなるということもありません。いつもと変わりません。だから、みんなも極力普段通りの生活をしましょうね。(彼らが興奮したり、緊張しすぎることはないだろうと思っていても、やはり心配でした)それでも、カメラが回っていて、辛くなるようなことがあったら遠慮なく言ってね。」と話しました。

受験期を迎え、ただでさえ多感な時期でしたが、ディレクターの赤上さんをはじめ、カメラマンの地主さん、音声の庄司さん、島さんとの語らい(取材期間中、生徒の班の中に入り一緒に給食を食べてくれました)は、彼らにとって貴重な体験だったに違いありません。というのも、私自身、インタビューを受けるたび、教育分析を受けているように感じたからです。自分ではあたりまえの行動について「今、~しましたよねぇ。あれはどうしてですか?」「~について、どうお考えですか?」等々、鋭い質問が次から次へと飛んできました。質問の一つひとつが、今まで考えてもみなかったことばかり。おかげで、自分の言動の根拠となる、私の中の根っこの部分とじっくりと向き合うことができました。彼らもまた、インタビューを受けながら、自分の考えや感情を言葉にすることで、今まで気づかなかった『自分』と向き合えたことでしょう。


<番組を見ての感想>
3月20日、満開の桜に見送られながら、彼らは本校を巣立ちました。あれからまだ2週間しか経っていないのに、番組を見てとても懐かしく感じました。映し出された映像の行間も、瞬時に甦ってきました。名前までは紹介されなかった生徒一人ひとりにもまた、日々成長していく過程の中で、たくさんの感動があったからです。そして何よりも、一人ひとりがキラキラと輝いていたことを改めて感じました。

人の発達の中で、青年前期の貴重な3年間を生徒と過ごしながら、人として共に成長できる『教師』という職業を選んで本当に良かったと改めて思いました。長い教員生活、うまくいくことばかりではありません。今、番組を見て苦しい時期もあったけれど、あの時やめずにいて本当に良かったと思いました。もしも、やめていたらこの子たちには出会えなかったのですから。
そして、今後さらなる危機が私を襲おうと、今回の濃密にまとめられた45分のDVDを見れば『あの時の彼らとあの時の私』が、きっと勇気を与えてくれることでしょう。


<放送後の反響>
先日、日本語教師としてイギリスに旅立つ同僚の壮行会を行いました。会場に向かう電車の中で、すてきなご夫婦から声をかけられました。「先生ですよね?見ましたよ!頑張っていらっしゃるのね。うちの主人も教師をしていたの。『僕も似たようなことをやったなぁ~』といいながら、二人で見たのよ。」と。恥ずかしかったけれど、嬉しかったです。
また、多くの方から激励のお手紙やメールをいただきありがとうございました。(実は、海外からもメールをいただきました。NHKって海外でも見ることができるのでした!)
誰もが自分の中に自分だけの『中学校』のイメージがあります。年齢、立場、国内外を問わず、多くの方々にいろいろな角度から番組を見ていただけたようでとても嬉しいです。また、「録画して何度も繰り返し見ています。」という方もいらっしゃいました。(私もすでに3回見ました。あの時、もっとこうすれば良かったとか、私を支えてくれた職場の仲間が映っている場面を見たくて…)
中学生からは「私のクラスもあのようなクラスになれるように頑張ります」とか、教職を目指している学生さんからは「教育実習後、自分は教師に向いていないのであきらめようと思ったけれど、番組を見て、経験豊かな先生でも、あんなに苦労することもあるんだと知りました。もう一度、頑張ってみようと思います。」という、こちらがエールを送りたくなるようなメッセージをいただきました。退職された方からは「私もあんな時代がありました。胸が熱くなり泣きながら見ました。」等々。
さらに、教育現場では「学級経営」や「生徒対応」、「構成的グループ・エンカウンター」「Q-U」等をテーマに教職員研修会や校内研修会の企画が進められているようです。皆様から、良い刺激をたくさんいただきました。本当にありがとうございました。