ある力強い一歩
2007年3月9日 ディレクター:イシダ

「壁」という言葉があります。
 まだまだ若輩者のひよっこディレクターの自分としては、毎日がそんな壁の連続。
「壁は乗り越えることで成長する」とは分かっているんですが、そうは言ってもつらい。そんな時、南場さんに勇気づけられた明確な言葉がありました。

今年初め、南場さんの会社に撮影に入った直後、全社をあげて提案を募集する新規事業制度が始まりました。本来は役員たちが企画書だけで審査するところを、 南場さんは事前にひとりひとりから直接話を聞きたいと、忙しい時間を縫っては次々と社員の方にお話を聞いていきます。30分から1時間以上、17の提案ほ ぼすべてにそれぐらいの時間をかけるわけです。しかも、内容も技術的なものから専門的なサービスまで多岐にわたるうえ、それぞれが実に難解。横で聞いてい るだけで、軽く気が遠くなりました。
  その中で、南場さんが特に強い反応をみせたのが、VTRで取り上げた坂東さんでした。確かに分かりやすく、どんな質問がきてもすぐに答えを準備していると いう周到さです。ただ、南場さんがどことなくうれしそうにしていることに、何か理由があるような気がしました。聞くと、「これはリベンジなんです。坂ちゃ んは2年前に事業を失敗しちゃって、それを取り返そうとしてるんですよ」とのこと。
なるほど。でも、それにしても、坂東さんをとても信頼してるように見えるのはどうして?
「その時の失敗が、できることをすべてやりつくした失敗だから」。

南場さんはこう続けます。
「仕事は、自分ができることをすべてやりきり、それが成功して正しかったと証明された時、初めて自信となって返ってくる。その次の一歩は、たとえ小さなものでも、力強い確かな一歩になるんです。坂ちゃんには、あと成功が必要なだけ」。
苦労(壁)だけではダメ、失敗だけではダメ、成功だけではダメ、その全部がそろった時に初めて、成長できる。必ず成功しなくてはいけないというのが、いかにも経営者らしい。深いです。

非常にアクティブで元気な南場さん、その裏にはとても冷静に状況を判断・分析する経営者としての顔がありました。でもやっぱり、南場さんの軸となるのは、社員のことを思う、温かい気持ちだと思うのです。南場さんが前のめりなのは、地にしっかり足がついているからだと。
結果がすべてではないと言いますが、仕事に対して、とてもすがすがしい気持ちで頑張りたいと思うことができた、一言でした。