ウイスキーは、大麦などの穀物に水を加えて発酵させ、蒸留させることで生まれる。できたてのウイスキーは、実は無色透明な液体だ。その原酒を長いものでは30年以上、木の樽(たる)で寝かせると、琥珀(こはく)色のウイスキー原酒に変化する。長い年月の間に、樽材や気温などの違いによって、ウイスキーは味や香りを変えるのだが、このままではクセが強すぎるため、ほとんどはそのままでは飲めるモノではない。そのウイスキー原酒を、時には40種類近く組み合わせ、味わい深い極上の逸品に仕上げるのがウイスキーブレンダーだ。
輿水は、そんなウイスキーブレンダーの仕事を「味と香りの指揮者のようなもの」と表現する。そんな輿水が発する、原酒を表する不思議な表現。「かつお節」「しめった倉庫」「おせんべい」などなど。それはすべて、普通の形容詞では表しきれない香味を、何とか周りに伝えようとする輿水独自の言葉なのだ。