特殊救難隊が出動するのは、一般の海上保安官では対応できない特殊な海難現場。そのため寺門たちは、いかなる現場でも最大限の能力が発揮できるように、日々過酷な訓練を繰り返している。
この日は、江ノ島沖での深深度訓練。水深35メートル地点で、ロープさばきなどの細かな作業に挑んだ。通常、水深30メートルを超えると、ボンベ内の窒素成分が体内に溶け出し、正常な意識を保てなくなる。いわゆる「窒素酔い」だ。そんな中、寺門たちはマスクを外し、あえて危険な状況に自らを追い込む。寺門は言う。
「自分の能力の限界が不明確だとそれを飛び越したり、あるいはできるのにあきらめたりというところがある。限界点は明確なほうがいい。そのため際どいところまで自分たちを追い込む必要はあると思います」。