「トゲ」とは、普通とは違うぞ、という「違和感」。人間は知らず知らずのうちに、あたりまえのものは見過ごしてしまう。「トゲ」があるからこそ、人の目を引くことができるのだ。無数のモノがあふれる現代では、「トゲ」こそ商品の生命線だと、横井は考えている。
10年前、世界中で4000万個を売り、社会現象を巻き起こした「たまご型ゲーム」にも強烈なトゲがあった。「楽しみ」を提供する玩具に、あえて餌を与えたり、ふんの始末をする面倒くささを盛り込んだのだ。このトゲが、買う人の心に引っかかった。
企画にトゲをつくるにはどうすればいいのか・・・横井にはいくつかの方法がある。その一つが、「皆が良いというものは、疑ってかかる」こと。例えば、商品のデザインを決めるとき、横井は皆がもろ手をあげて賛成するものは選ばない。どうしても「無難さ」がつきまとうからだ。横井は意識的に、少数でも熱烈な支持者がいるものを選ぶ。それが「違和感」をつくりだし、人を驚かせる。