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これまでの放送

第29回 2006年10月19日放送

さらけ出して 熱く語れ 経営者・新浪剛史


考えるのは、社員

 5年前から、大手コンビニエンスチェーンで16万人を率いる経営者・新浪剛史が、一番の課題と考えているのが、社員の意識改革。「1兆4千億の企業を成長させるには、一人じゃどうにもならない。そのためには一人一人に考えてもらうこと」
しかし、長らくトップダウンでやってきた社員の意識を変えるのは、容易ではない。この日も新浪は自社開発商品の試食会の場で、商品をなぜ売り出すのか、深く考えたのかと激しい口調で社員に迫った。しかし、商品化を止めろとは言わない。社員が自ら考えた新商品、売り出すかどうかも社員に考えさせる。一人一人が考えて納得した上で行動するプロセスが、大切だと新浪は考える。

写真新商品を前に社員に迫る新浪


批判なくして、前進なし

 毎年、売り上げを伸ばし、好調と言われるコンビニエンスチェーンだが、実は構造的な問題を抱えている。本部は、新規店舗を増やすことで売り上げを伸ばし続けてきたが、各社の出店競争が激化するなか、各加盟店の売り上げは、7年連続で落ち込んでいる。
事態を深刻に受け止めた新浪は、加盟店のオーナーを集めて直接、現場の本音を聞き出すという新たな試みを始めた。
批判の中にこそ、改革のヒントがあるという信念からだ。

写真加盟店のオーナーたちの厳しい意見に耳を傾ける新浪


懐に飛び込まなければ人は動かない

 コンビニエンスチェーンの社長になって3か月、新浪は、トップダウンで指示を出し、すべてを独断で決めていた。しかし、ある日、信頼していた役員に言われた言葉にぼう然となる。「何を考えているのか全く分からない。もっと相手の立場に立って考えて欲しい」
その時、少年時代、格好悪いと反発していた父の姿がよみがえった。港で荷揚げをする会社を営み、毎晩のように作業員たちと酒を飲んでいた父。その姿が「相手の懐に飛び込まなければ人は動かない」と教えてくれた。
以来、現場に飛び出した新浪。考えるのは社員の仕事、社員を鼓舞するのが自分の仕事というのが信念となった。

写真新浪はとにかく現場に出る。反発していた父の姿が教えてくれた


自分をさらけ出す

 7月、新浪は一つの大胆な提案を打ち出した。店の中身に加え、青の看板の色を変える。31年間、使われてきたこのコンビニの象徴である看板を変えることは過去のやり方と決別することを意味した。
しかし、加盟店のオーナーたちは、猛烈に反対。
その時、新浪は、自らの思いを伝えるために、不安な気持ちを赤裸々に話し始めた。

写真自分をさらけ出し加盟店のオーナーたちに訴える新浪


プロフェッショナルとは…

ぶれなく信じて率先するという人だと思います。信じたことを常にぶれずに率先する。常に率先してやる人。それがプロフェッショナルだと思います。

新浪剛史

The Professional’s Tools

かばん

新浪のかばんの中身はとてもシンプル。かばんも軽くて持ち運びが便利な布のトートバッグ。中身は、本や雑誌、書類や筆ペンなど。パソコンなど、デジタル系なものは一切ない。ネットでの情報分析などは、それが得意な社員たちに任せ、新浪は感覚的なところや感性を大切にしているという。

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筆ペン

そんな新浪の仕事に欠かせないのが、朱色の筆ペン。書類などの指示は全て、手書きでする。組織が大きいと、社員との意思の疎通は容易ではない。字体には、常に自分の感情が表れる。少しでも自分の気持ちを伝えようと、始めた方法だ。

写真