花火は上空で開いてから燃え尽きるまで、わずか5秒。野村はその一瞬の美しさに、極限までこだわる。美しい形、鮮やかな色彩、そして消え際の潔さ。野村はそのために1年間、ひたすら地道な作業を繰り返す。その最たる例が、花火の色を出す「星」と呼ばれる火薬作りだ。一日0.5ミリずつていねいに火薬を塗りつけ、3か月かけて直径2センチほどに育てる。その間、野村は毎日欠かさず星の成長過程を入念にチェックし、大きさに不ぞろいがあれば、あっさりと捨てる。星の大きさが完璧にそろっていないと、花火の動きにばらつきが生じる。野村はそのことを、決して許さない。