飯塚の会社の壁には、大きな掛け軸が掲げられている。その文字は「朝令暮改」。半導体業界の厳しい競争を勝ち抜くために、飯塚が掲げている社訓だ。
飯塚は、一度下した命令を、ちょくちょく変える。棚上げしていた案件を突然やると言い出したり、突然提携を決めたりすることは、日常茶飯事だ。「あんまり命令を変えると、社長の尊厳に関わるのでは?」という心配を、飯塚は一笑に付す。「ビジネスの世界は変化が非常に激しいのです。どことどこが提携したか、そんな情報一つで、業界の勢力地図が大きく変わる。戦略観も日々変わって当然。」
ヒット商品を出した好業績の会社が、わずか数か月で倒産に追い込まれるという、厳しい競争の世界で、飯塚は何より「身軽さ」を重視する。