ご法度番組?
2006年4月19日 カメラマン:ももざき

4月20日放送のキリンビバレッジ佐藤章さんの回を取材したカメラマンの百崎と申します。

実は、ここまで到達するまでが本当に長かった、というのが正直な気持ちです。なにしろ、初めて佐藤さんにお会いしてから放送日まで約半年近くたっています。通常の倍、と思っていただいてかまわないと思います。

今回の番組は、局内的にもかなり踏み込んだ挑戦的な作りになっています。通常、企業モノといえば、プロジェクトXのような過去の商品やエピソードを取り上げることが多く、現在進行形の(しかも、新商品)開発プロジェクトとなれば、ほぼ「ご法度」といえます。もちろん企業側も開発中の機密情報がたくさんある現場にカメラが入ることに、慎重である場合がほとんどです。

カメラマンである私自身、今回のような取材は過去に経験もなく、取材当初は不安が募るばかりでした。いかに商品そのものに触れずに番組主題を明確にできるのか。企業宣伝にならずに、人間佐藤章にどれだけ迫れるのか。考えれば考えるほど、針の穴を通すほど難しい課題だと思われたからです。

しかし、その不安は、佐藤さんとお会いし、程なく全くの杞憂(きゆう)だと気づかされました。本物に出会ったという感動がありました。何度か訪れた危機的状況にも、自信を持って「この人なら絶対大丈夫」とプロデューサーに(根拠もなく)言えました。それはカメラマン独特の習性かもしれませんが、理由なく撮影していて「心地よい」と感じるときがあります。取材対象と妙に気が合う、タイミングが合う、こちらの動きを察知しているかと勘ぐってしまうほど、絶妙な間でしぐさや表情が撮れていく。不思議な感覚があったからです。

そこには、佐藤さんの恐ろしいほどの自信(本当は非常に繊細で不安だらけなのかもしれませんが)があるからなのだと思います。本音で生きる、丸裸で勝負する。そんな哲学が彼を支えているようでした。企業戦士と揶揄(やゆ)されがちなサラリーマンでありながら、人間佐藤章であろうとする姿勢からは、企業と個人とを分け隔てて考える事の無意味さを教えられた気がします。「企業内の人間を取り上げることが宣伝」であるかないか、そんなことは本気で社会に立ち向かっている人の前では、些末(さまつ)な問いかもしれません。

さまざまな壁を乗り越え、放送に至るまでに多くの時間を要しましたが、プロデューサーはじめスタッフ全員、放送できるという揺るぎない確信がありました。それはきっと佐藤さんの自信が伝染したものなのかもしれません。こちらは根拠のない自信ですが・・・。掟(おきて)破りのプロフェッショナルチームならではの番組になったと思っております。企業内でくすぶっている30代40代のサラリーマン(私もそうですが)には絶対おすすめの内容です。一番大切なことは「○○」を持つこと語る佐藤さん。本当に多くのことを学ぶ事のできた取材でした。○○はぜひ番組で!