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◆消費電力1/3・寿命7倍の有機ELデバイスを開発
〜フレキシブルディスプレイの実現に向けて〜
(平成24年9月4日)


□ NHKは、いつでもどこでも放送サービスをお楽しみいただくために、有機EL*1)デバイスを用いた超薄型で曲げられるフレキシブルディスプレイの研究開発を進めています。今回、新たな材料を組み合わせることにより、省電力と実用的な寿命を兼ね備える赤色発光有機ELデバイスの開発に成功しました。

□ 有機ELデバイスの中で光を発する発光層は、発光材料と、それを分散させて電気エネルギーを発光材料に受け渡すためのホスト材料で構成されます。従来、発光材料にはイリジウム錯体*2)が一般的に用いられていましたが、抜本的な性能改善に向けては、イリジウム錯体以外の発光材料を用いたデバイスの開発が大きな課題でした。

□ 今回、発光材料として白金錯体を用い、ホスト材料として新たにベンゾキノリン誘導体*3)を用いた材料を組み合わせることによって、従来のイリジウム錯体を用いたデバイスに比べて、1/3の省電力化と7倍の長寿命を実現しました。

□ 今後は、赤色発光有機ELの省電力・長寿命特性をさらに向上させるとともに、緑色・青色発光の有機ELデバイスも試作する予定です。これらの各色有機ELデバイスの開発により、フレキシブルディスプレイの早期実現を目指します。

□ 今回の研究成果は、第73回応用物理学会学術講演会(9月11−14日)で報告する予定です。また、9月25日に発行されるAdvanced Materials誌に掲載予定です。

 *1) 有機エレクトロルミネッセンスの略。ある種の有機化合物を用いた層状の構造体に電流を流すと発光する現象。デバイス内に注入された正孔と電子が 発光層のホスト材料中で再結合し、発光材料がその電気エネルギーを受け取り発光する。
 *2) イオンを中心とし、その周囲に他の分子が規則正しく配置された化学物質。白金イオンを中心とする場合は白金錯体、イリジウムイオンを中心とする場合はイリジウム錯体という。
 *3) ベンゾキノリンを分子骨格に含む化学物質。

※ 本研究の一部は、総務省の委託研究「究極の省電力ディスプレイ実現に向けた高効率・長寿命有機ELデバイスの研究開発」として実施したものです。

 
 
 
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