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◆時間の長さを変えずに、ゆっくり聞こえる「話速変換装置」
全国発明表彰“朝日新聞発明賞”と“発明実施功績賞”を受賞
(平成20年5月2日)

○ NHKが発明・開発した「話速(わそく)変換装置」が、平成20年度全国発明表彰朝日新聞発明賞を受賞することになりました。同時に、NHK会長の福地茂雄が、日本の科学技術の向上に貢献した企業の代表者に贈られる発明実施功績賞を受賞します。

○ 現在、日本は5人に1人が65歳以上という高齢化社会を迎えています。NHKは急速に進む高齢化社会を見すえ、昭和63年から高齢者の聴覚特性の研究を始めました。年齢を重ねることによる「耳の聞こえ」の低下を補うには、単に音量を大きくするだけではなく、“ゆっくり”話すことが重要であることを突き止め、「話速変換装置」を開発しました。「話速変換装置」とは、発せられた音声を瞬時に分析・加工し、高齢者に聞き取りやすい、所望のゆっくりしたスピード(話速)に変換できる技術です。

○ 通常、“ゆっくり”にすると時間(尺)が伸びてしまいますが、「時間の長さを変えずに、ゆっくり聞こえる」という、一見、なぜそんなことが可能かと思われる手法を発明しました。本発明により、各々の番組の時間が決まっているテレビやラジオなどの放送にも利用することが可能になりました。

○ 高齢化は国際的にも大きな課題です。「話速変換装置」は、外国語についても同様に高品質なゆっくりした音声に変換できます。その他、語学学習や翻訳ツールとしての活用など、幅広い応用も容易に実現できます。グローバル化時代のキーテクノロジーとしても期待される技術です。

○ NHKは、今後も放送技術の研究・開発を推進するとともに、研究成果の社会還元にも積極的に取り組んでいきます。なお、授賞式は発明協会総裁の常陸宮同妃両殿下の台臨を仰ぎ、6月17日(火)に行われます。

受賞者  
○ 発明実施功績賞 福地茂雄 (NHK会長)
○ 朝日新聞発明賞 中村 章 (元 NHK放送技術研究所、現 広報局(広報部))
  池沢 龍 (元 NHK放送技術研究所、現 総合企画室〔経営計画〕)
  宮坂栄一 (元 NHK放送技術研究所、現 武蔵工業大学)

(原理) 「時間の長さは変えずに、ゆっくり聞こえる」話速変換技術
 一律に話速をゆっくりにするのではなく、話の“ま”をみながら、話し始めで話速をゆっくりにし、徐々にもとの話速にもどすという処理を適応的に制御することで、発話時間を原音声の発話時間に保ったまま、全体としてゆっくりとした、聞きやすい音声に変換することを可能としました。


参考) 全国発明表彰について
 全国発明表彰は皇室より毎年御下賜金を拝受し、社団法人発明協会が主催し、我が国における発明、考案または意匠の創作者並びに発明の実施および奨励に関し、功績のあった方々を顕彰することにより、科学技術の向上及び産業の発展に寄与することを目的として行なっているものです。
 なお、全国発明表彰の詳細は社団法人発明協会のホームページ http://www.jiii.or.jp/(NHKサイトを離れます) にて公開されています。

 
 

 
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