◆近赤外線対応の超高感度ハイビジョンカメラを開発
〜 暗闇の中のハイビジョン撮影がより鮮明に 〜
(平成17年2月9日)
○ NHKは池上通信機(株)と共同で、可視光に近い波長を持つが人間の目には見えない近赤外線を撮影できる超高感度カメラを、ハイビジョンでは世界で初めて開発しました。
○ 近赤外線を照射することで、動物に気が付かれることなく暗闇の中での生態を撮影することができるほか、植生分布の観察にも適しており、科学番組や自然番組の制作など広い範囲での利用が期待できます。
○ 開発したカメラは、超高感度のハイビジョン・イメージ・インテンシファイア(アイアイ:I.I.)カメラ
*1
の赤・緑・青の撮像用素子のうち、赤チャンネルに近赤外線に対する感度が高い材料であるガリウムヒ素(GaAs)を用いることで、波長900ナノメートル
*2
までの撮影を可能としました。
○ 近赤外線の透過率を高めるため、カメラに入る光を赤・緑・青の3色に分ける分光プリズムや撮影用レンズに特殊なコーティングを施しています。
○ フィルターディスク
*3
の選択により、近赤外線のみのモノクローム撮影のほか、通常の可視光カラー撮影も可能です。可視光と近赤外線を混合した撮影も可能となっており、自然の色合いとはやや異なりますが、超高感度のハイビジョンI.I.カメラの通常の撮影に比べて、より感度の高いカラー撮影が可能となりました。
○ 今回開発したカメラは、BBCと共同で制作を進めている2006年放送予定の大型企画番組「プラネットアース・地球賛歌」に使用して、これまでのハイビジョン高感度カメラでは捉えられなかった動物の夜間の生態など自然の姿を鮮明に撮影していきます。NHKは、今後も視聴者・国民の皆さまに質の高い番組をお届けするために、ハイビジョンカメラをはじめとした、さまざまな放送機器の研究・開発を進めていきます。
※1
I.I.カメラ:光を電子化し、これを倍増する画像増強管を撮像部に組み込んだカメラで、通常のCCDカメラの400倍の高い感度を実現している。平成16年5月25日報道発表。
※2
ナノメートル:100万分の1ミリメートル。
※3
フィルターディスク:1軸回転式の円盤に複数の光学フィルターを組み込んだもの。
[写 真]
開発した近赤外線対応超高感度ハイビジョンアイアイカメラによる撮影例
近赤外照明を使用し近赤外撮影モードで撮影(ボツワナにて)
[ 図 ] 光の波長成分
[諸 元]
型名
HDL-V90M・IR
記録方式
DVCPRO-HD
映像出力
HD-SDI信号、1080/59.94i
イメージ
・インテンシファイア
撮像素子
GBチャンネル:1インチガリウムヒ素リン(GaAsP)
Rチャンネル:1インチガリウムヒ素(GaAs)
CCD
2/3インチ220万画素FIT型
レンズ
特殊ワイドバンドコーティング22倍ズームレンズ
一般レンズも近赤外線の透過率は下がるが使用可能。
SN比
57dB
高速
ゲートシャッター
1/60〜1/1000000 秒
撮影モード
可視光のみ、可視光〜近赤外、近赤外のみ
感度(可視光)
0.28ルクスF2(電気ゲインアップ0dB)
最低被写体照度
0.009ルクスF2(電気ゲインアップ+30dB)
感度
(近赤外線使用)
0ルクス(電気ゲイン-3dB)モノクローム
寸法
148mm×267mm×406mm
重量
6.3kg(レンズ、ビューファー除く)
消費電力
約48W(記録時)