日本放送協会 理事会議事録  (平成23年10月 4日開催分)
平成23年10月28日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成23年10月 4日(火) 午前9時00分〜9時25分

<出   席   者>
 松本会長、小野副会長、永井技師長、金田専務理事、大西理事、
 今井理事、塚田理事、吉国理事、冷水理事、新山理事、石田理事、
 木田理事
 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 松本会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)第1152回経営委員会付議事項について

2 報告事項
(1)考査報告
(2)放送番組審議会議事録(資料)

議事経過

1 審議事項
(1)第1152回経営委員会付議事項について
(経営企画局)
 10月11日に開催される第1152回経営委員会に付議する事項について、審議をお願いします。
 付議事項は、審議事項として「次期経営計画について」です。

(会 長)  原案どおり決定します。

2 報告事項
(1)考査報告
(考査室)
 9月1日から9月28日までの間に、ニュースと番組について考査した内容を報告します。
 この期間、東日本大震災から半年、台風12号・15号関連などのニュースや、東日本大震災関連の番組などを中心に、ニュース18項目、番組85本の考査を実施しました。
 考査の結果、一連のニュース・番組は、放送法、国内番組基準に照らし、「妥当」であったと判断します。
 まず、ニュースの考査結果について報告します。
 9月11日、東日本大震災から半年がたち、各地で多くの人たちが犠牲者を追悼しました。同日、「NHKニュース おはよう日本」では、震災発生以来5回にわたり被災地を取材してきたキャスターが、「復興計画がはっきり示されない中、多くの住民がふるさとを離れざるをえない姿も見てきた」と述べていました。
 同日の午前と午後には、総合テレビで「明日へ〜震災から半年〜」の第1部から第3部を放送し、宮城県石巻市をキーステーションに、被災地や各地の避難所を中継で結んで、遅れている復興の現状や人々の思いを伝えていました。被災者の中から自ら再建に向けた動きを始める人々が現れていることは伝えていましたが、国や自治体の復興対策がどこまで進んでいるのか、節目を機に紹介してほしかったと思います。また、東京電力福島第一原発については、核燃料の冷却作業に伴う汚染水の課題について報じていましたが、1号機から4号機の現在の状態や、メルトダウンした核燃料が今どうなっているのかについて、説明が欲しかったと思います。
 「ニュースウオッチ9」では、9月5日から9日まで、被災地の医師不足や人口流出など、震災から半年たって生じた新たな課題や、津波の浸水地域で家を再建しようとする人たちの動きなどを、中継や記者リポートを交えて伝えていました。また、この週は「NHKニュース おはよう日本」や「NHKニュース7」でも、被災地からのリポートを放送していました。
 次に、「台風12号」と「台風15号」に関するニュースです。
 台風12号は、9月3日午前10時過ぎに高知県に上陸し、四国・中国地方をゆっくりと縦断しました。紀伊半島を中心に記録的豪雨となり、ニュースでは長時間にわたって、台風の動きや雨の状況、被害の発生などを刻々と伝えていました。4日の「NHKニュース おはよう日本」では、5人が行方不明となった和歌山県田辺市の土砂崩れ現場の映像を紹介しながら、自治体からの避難指示や勧告は出ていなかったことを伝えていました。その後、5日の「NHKニュース7」でも、犠牲者が出た和歌山県や奈良県の多くの地区で避難指示や勧告が出ていなかったと指摘していましたが、なぜ避難指示や勧告が出なかったのか、その背景についてももっと早く伝えてほしかったと思います。なお、4日の「NHKニュース おはよう日本」で紹介した、田辺市の土砂崩れ現場の映像は、寸断された橋をう回しながら現場に入り撮影したもので、他社に先駆けた映像でした。しかし、紀伊半島各地で記録的な豪雨が続いている中、3日深夜から4日の午前1時台まで、台風関連のニュースを伝えながら、それ以外の時間はエンターテインメント系の番組を放送したことについては、紀伊半島での雨や現地の状況、地形に応じた防災上の注意点など、きめ細かな情報を届けるという観点からすると、こうした放送内容が適切だったか、検証してほしいと思います。報道局では、その後、避難指示を伝える表現やスーパー表示のしかたについて、視聴者に適切な危機感を持って受け止めてもらえるよう、新しい取り組みを始めています。
 台風15号に関しては、台風が近づく前から約1週間にわたって、列島各地の雨の降り方や、防災や避難のための注意事項について、詳しく伝えていました。9月20日午後4時の「ニュース」は、午後4時49分まで拡大し、名古屋市などで約55万4,000世帯、128万人余りに避難指示や勧告が出たと伝え、「避難指示地区はすぐ避難を」と呼びかけるスーパーを画面左上に表示していました。また、台風の接近に伴う避難指示や被害の発生などを刻々と伝えるとともに、記者による解説やコメントなどで、街が水に浸かった際や夜間に避難する際の注意などを繰り返し呼びかけていました。さらに、20日・21日と「ニュース」を特設し、終夜にわたり、台風の情報や各地の避難・被害の状況を詳しく伝えていました。
 続いて、番組の考査結果です。
 9月10日放送のNHKスペシャル 東日本大震災「追い詰められる被災者」についてです。東日本大震災から半年がたったものの、復興の進まない被災地の現状を、住宅・まちづくり計画・除染の3点に絞り込んでリポートし、震災地の課題を浮き彫りにしていました。3つの課題について、被災地の仙台放送局の報道デスクが、平野達男復興担当大臣に直接問うた姿勢は、被災者に寄り添いながら国の対応に迫るもので、説得力がありました。復興計画について、国や自治体の対応がどこまで進んでいるのか、基本的な情報があればさらに分かりやすくなったのではないかと思います。
 9月18日放送のETV特集 シリーズ原発事故への道程(前編)「置き去りにされた慎重論」についてです。東京電力福島第一原発の事故により、日本の原子力発電は岐路に立っています。番組は、原子力政策や事業に携わった人々が参加した勉強会での録音テープや関係者の証言から、日本の原発を歴史的な視点で検証するものでした。日本の原子力政策の歴史を物語る貴重な録音テープを発掘し、テープに残された会議の発言を軸に、関係者の証言を丹念に集め、経済優先で安全が置き去りにされた経緯を克明に描き出していました。コスト削減のために結んだメーカー任せの契約が、今回の事故の遠因となったことを浮き彫りにしました。原発事故の背景や、今後の原子力政策を考えるうえで、視聴者が知りたかったことに応えた番組でした。9月25日に放送された後編も含め、原発の歴史を検証し事故の背景に迫る、好企画のシリーズでした。
 「宣伝」という観点から、気になった番組が2つありました。
 1つは、9月13日に放送した、ひるブラ「オトナ女子もご満悦!癒やしのまち由布院〜大分県由布市」です。 緑鮮やかな大分県の由布院温泉を訪ね、温泉や特産品、料理を楽しみながら由布院の魅力を中継で伝えていました。緑の自然を守りながら街づくりを進めた、由布院温泉の風情あるたたずまいを味わうことができましたが、番組の半ばから、老舗の旅館を取り上げ、館内の温泉や料理について時間をかけて紹介していて、宣伝色が気になりました。
 もう1つは、Eテレで9月3日に放送した、「デザイン あ」の第9回です。身の回りにあるモノをデザインの視点から見つめ直し、実写、アニメ、CGなどの映像を駆使し、子どもたちにデザインのおもしろさを知ってもらおうという番組です。日常生活で使う身の回りのモノを徹底的に分解する「解散」と名付けられたコーナーで、「七味とうがらし」と「お茶漬けのり」が登場しましたが、画面から商品名や会社名のロゴを容易に読み取ることができました。商品名や会社名のロゴをアップで見せる必然性はなく、商品宣伝と誤解されかねません。撮影のしかたなどを、工夫してほしいと思います。

(冷水理事)  台風報道については、先日、報道局と考査室が参加した会議で、活発に議論しました。報道局では、東日本大震災以降、災害報道に一層力を入れ、一歩踏み込んだ対応を行うべく取り組んでいるところです。今回の考査で、台風12号について、9月3日深夜の台風関連ニュースとエンターテインメント系の番組の編成が適切であったかどうか検証を求める指摘がありましたが、台風は、影響を受ける場所が刻々と変わるため、地域によって必要な情報が大きく異なります。そのため台風報道においては、全てのニュースを全国放送で流し続けることが必ずしも適切な報道であるとは捉えていません。全国放送番組のうち、どの程度の内容・時間を台風情報とするかは難しいところですが、例えば今回は、多くの方から関心を持たれている、女子サッカー「なでしこジャパン」のオリンピック予選があったため、その模様を、台風の状況をにらみつつも、全国に向けて放送しました。その後、紀伊半島の被害の情報が入ってきたため、4日の午前2時からは、毎正時のニュースに加えて、特設ニュースでも台風情報を放送し続けました。12号は、15号と比べても進路やスピードなどが大きく異なるなど、報道内容や放送時間については一概に比べられるものではありませんが、3日間という長期にわたり日本列島に大きな影響を与えたため、延べ24時間に上る報道を行いました。今後の台風報道にあたっては、今回のように長時間滞在し各地に被害を与える台風にも対応できるよう、全国放送と、より詳しく情報を伝える地域放送との組み合わせを、さらに検討していきたいと思っています。
(吉国理事)  今回、地域放送ではどのような対応をしたのですか。
(冷水理事)  近畿地方では、全国放送のニュースに加えて地域放送でも台風関連のニュースを放送しましたが、全国放送の番組を地域向けニュースに差し替えての報道は行っていません。今回は、近畿地方の中でも中心部などではそれほどの影響がなく、一番雨に強いと言われていた紀伊半島の南部で大きな被害が出るとはなかなか予測できない面があったかと思います。
(石田理事)   過去の災害報道に関する経験から言っても、全国放送と地域放送、またブロック放送をうまく使いわけることで、視聴者の要望に応えていくということが必要だと思います。
(考査室)  考査室としては、災害報道に携わる報道現場が長時間にわたる厳しいものであることを十分踏まえたうえで、今後さらに、災害報道をよくするための検討材料としてもらいたいということで、今回の報告を提出しています。
(冷水理事)  これまでも、沖縄などでは、台風の進度が遅く長時間の影響を受けることがありましたが、今回のように日本各地で長時間被害に遭うといったケースは、今まで経験がないものです。台風などの災害報道にあたって、全国放送と地域放送をうまく組み合わせて、最も適切な形で情報を伝えるためにはどうすればよいか、今後に向けて検討をしていきたいと思います。
(会  長)   考査のシステムは、ニュースや番組を放送現場とは違った立場から見て検証していくためにありますので、活発に意見交換を行って良い放送を目指してください。
 災害報道にあたって、公共放送の一番大事な使命は、視聴者に正確な情報を伝達することです。それがNHKへの信頼にも結びついていますので、互いに努力を重ねて高めていってください。

(2)放送番組審議会議事録(資料)
 編成局および国際放送局から、中央放送番組審議会、国際放送番組審議会、全国の地方放送番組審議会(関東甲信越、近畿、中部、中国、九州、東北、北海道、四国)の平成23年7月開催分の議事録についての報告(注)。

注: 放送番組審議会の内容は、NHKホームページの「NHK経営情報」のなかに掲載しています。


以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成23年10月24日
                     会 長  松 本 正 之

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