日本放送協会 理事会議事録  (平成23年 9月20日開催分)
平成23年10月 7日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成23年 9月20日(火) 午前9時00分〜10時00分

<出   席   者>
 松本会長、小野副会長、永井技師長、金田専務理事、大西理事、
 今井理事、塚田理事、吉国理事、冷水理事、新山理事、石田理事、
 木田理事
 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 松本会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)第1151回経営委員会付議事項について
(2)財団法人放送番組センターへの出捐について
(3)中央放送番組審議会委員の委嘱について
(4)協会国際衛星放送の拡充計画について
(5)視聴者対応報告(平成23年7・8月)について

2 報告事項
(1)「放送局のちから」活動報告(平成23年7・8月)
(2)NHK文化祭2011について
(3)地方放送番組審議会委員の委嘱について

議事経過

1 審議事項
(1)第1151回経営委員会付議事項について
(経営企画局)
 9月27日に開催される第1151回経営委員会に付議する事項について、審議をお願いします。
 付議事項は、議決事項として「協会国際衛星放送の拡充計画について」、「財団法人放送番組センターへの出捐について」、および「中央放送番組審議会委員の委嘱について」、審議事項として「次期経営計画について」です。また、報告事項として「視聴者対応報告(平成23年7・8月)について」、「契約・収納活動の状況(平成23年8月末)」、「予算の執行状況(平成23年8月末)」、および「地方放送番組審議会委員の委嘱について」です。

(会 長)  原案どおり決定します。

(2)財団法人放送番組センターへの出捐について
(関連事業局)
 財団法人放送番組センターへの出捐(しゅつえん)について、審議をお願いします。 
 放送番組センターは、昭和43年に設立されて以来、NHKと民放の出捐によって、地方民放局等に良質な番組ソフトを調達・供給する「番組調達供給事業」を行うとともに、平成3年度以降は、放送番組を収集・保管して来館者等に視聴してもらう「放送番組ライブラリー事業」を実施してきました。このうち番組調達供給事業については、番組利用が減少傾向にあったことから、平成20年度末に廃止となりましたが、放送番組ライブラリー事業は、放送番組を文化資産として保存し一般公開することに重要な意義があり、事業を継続しています。
 しかし、近年の低金利により財団の基金運用益だけでは事業運営がきわめて困難になっていることから、NHKは民放とともに放送番組センターの要請に応じて、平成17年度から放送番組ライブラリー事業に対し出捐してきました。放送番組センターでは、放送番組ライブラリー事業の事業規模の上限を3億6,500万円とし、NHKと民放を合わせた出捐額の上限を2億3,100万円としています。
 以上の経緯を踏まえて、平成23年度は、NHKから8,085万円を出捐したいと思います。出捐の時期は11月を予定しています。
 出捐にあたっては、放送法第20条第10項の規定に基づき総務大臣の認可が必要ですので、本議案が了承されれば、9月27日開催の第1151回経営委員会に議決事項として提出し、経営委員会の議決を得たうえで、総務大臣に認可を申請します。

(会 長)  議案では、これまでどおり出捐したいということですが、民放からの出捐総額は前年度より減っているようです。これはどういう理由ですか。
(関連事業局)  東日本大震災により被災した岩手県、宮城県、福島県の民放各社に対して、今年度は、出捐を要請しないことになったものです。NHKへの要請は、これまでどおりの金額です。
(会 長)  原案どおり了承し、次回の経営委員会に諮ります。

(3)中央放送番組審議会委員の委嘱について
(木田理事)
 中央放送番組審議会委員の委嘱について、審議をお願いします。
 細谷亮太氏(聖路加国際病院副院長、小児総合医療センター長)に、平成23年10月1日付で再委嘱したいと思います。
 本件が了承されれば、9月27日開催の第1151回経営委員会に諮ります。

(会 長)  原案どおり了承し、次回の経営委員会に諮ります。

(4)協会国際衛星放送の拡充計画について
(国際放送局)
 英語による情報の海外向け発信を強化し、外国人視聴者の日本に対する理解を一層促進するため、放送法第20条第1項第5号に基づき、平成23年度中にインドネシア区域、フィリピン区域、北欧・バルト3国区域、中国区域、南アフリカ区域およびアメリカ区域の6区域において、新たに地域衛星を借り上げ、外国人向けのテレビ国際放送「NHKワールドTV」の受信環境を整備したいと思います。
 これまでの手続きでは、テレビ国際放送の受信環境整備のために衛星を追加する場合、各年度の「国際放送(テレビジョン・ラジオ)の放送番組編集の基本計画」で説明し、その議決をもって実施してきましたが、平成23年6月30日の改正放送法の施行に伴い、説明責任の強化や計画的な業務執行の推進を図る観点から、手続きを見直すこととしました。具体的には、年度当初の計画の場合、「国際放送(テレビジョン・ラジオ)の放送番組編集の基本計画」に別途項目を設け、その中に放送区域、使用衛星数、放送開始予定など、受信整備計画に関する具体的な方針を明示し、理事会の決定および経営委員会の議決を経ることとしたいと思います。また、年度途中に衛星の借り上げなどを行う場合は、個別事案として、そのつど、理事会の決定および経営委員会の議決を経ることとしたいと思います。今回は、平成23年度途中の受信整備の拡充について提出するものです。
 今回整備を図る各区域の現況について説明します。6区域のうち、インドネシア区域とフィリピン区域については、両国の放送事業者からNHKワールドTVを放送したいとの要請があり、衛星中継器を無償で提供してもらうことが前提になっています。北欧・バルト3国区域については、これから契約額の交渉を行う予定です。中国区域と南アフリカ区域およびアメリカ区域については、今のところ放送開始の時期が未定ですが、区域によっては、状況により臨機応変に対応する必要があることから、今回の理事会の審議に諮ることとしました。また、アメリカ区域については、契約額を低く抑えることができる「公益チャンネル枠」への申請を行っています。
 本件が了承されれば、9月27日開催の第1151回経営委員会に議決事項として提出し、経営委員会の議決を経たうえで、衛星の借り上げなどに向けた具体的な交渉に入りたいと思います。交渉結果の詳細については、交渉が不成立となった場合も含め、あらためて理事会および経営委員会に報告します。なお、交渉が成立した場合は、放送法25条に基づき、遅滞なく総務大臣に届け出を行います。

(会 長)  アメリカにおいて、NHKワールドTVが「公益チャンネル枠」に入るためには、どのような条件が必要ですか。
(国際放送局)  アメリカの衛星放送事業者は、提供するチャンネル枠の少なくとも4%を公益性の高いチャンネルに割り当てるよう義務付けられています。毎年1回、各放送事業者の独自の判断で決められますが、すでに既存の放送で、その枠は埋まっている状態です。空きができれば参入しようとしていますが、限られた枠に申し込む放送局が多いため、「公益チャンネル枠」への参入は、かなり厳しい状況と言えます。
(石田理事)  「公益チャンネル」として認められる場合と、そうでない場合とでは、どのくらい経費に差があるのですか。
(国際放送局)  「公益チャンネル」として認められれば、10万ドル程度の経費で済みますが、一般的なチャンネルでは、少なくとも数百万ドルになる見込みです。
(大西理事)  中国との交渉はどのような状況ですか。
(国際放送局)  中国区域では、既に、邦人向けテレビ国際放送の「NHKワールドプレミアム」を放送していますので、これに加えて、NHKワールドTVの放送許可を受けるには、かなり粘り強い交渉が必要になると思います。
(吉国理事)  衛星の借り上げなどの交渉結果が出る前に、理事会の決定および経営委員会の議決を経ることについては、手続きとして問題ないのですか。
(国際放送局)  手続きの法的適合性について局内外の関係者と協議した結果、交渉を行うためには、先に理事会の決定および経営委員会の議決を経る必要があるということになりました。
(今井理事)  これまでは、各年度の「国際放送(テレビジョン・ラジオ)の放送番組編集の基本計画」の中で説明し、議決を経て実施してきましたが、改正放送法の施行に伴い、手続きを見直すことになります。個別の案件についても、そのつど、交渉前に理事会・経営委員会に諮ることになります。
(石田理事)  交渉結果については、別途、報告があるということですね。
(国際放送局)  交渉結果については、不成立となった場合も含め、別途、理事会および経営委員会に報告することにしています。
(会 長)  衛星の借り上げなどの交渉を行うためには、まず、理事会の決定および経営委員会の議決を経る必要があり、交渉の結果、放送を開始する際には改めて議決の必要はなく、報告するのみということですね。その手続きで問題ないのであれば、経営委員会にもきちんと説明したほうがよいと思います。
(国際放送局)  その手続きで問題ありません。まずは交渉を行うために経営委員会の議決を経る必要があり、経営委員会には、交渉結果が確定すれば遅滞なく報告するということを、説明したいと思います。
(大西理事)  平成24年度以降の計画はどうなっていますか。
(国際放送局)  次の3か年経営計画も踏まえ、計画を立てていきたいと思います。しかし、衛星による受信環境の確保は、交渉する相手方の事情もあり、難しい交渉となりますので、そのような個別の状況についても明確にしていきたいと思います。
(会 長)  今後、国際放送を拡充していくためには、さまざまな相手と交渉していかなければなりませんが、交渉する相手方の事情もありますので、私たちが努力していても、結果に結びつかないケースもあると思います。そういう状況についても、しっかりと説明責任を果たしていってほしいと思います。
 原案どおり了承し、次回の経営委員会に諮ります。

(5)視聴者対応報告(平成23年7・8月)について
(視聴者事業局)
 放送法第27条に定める視聴者対応の状況について、平成23年7・8月分を以下のとおり取りまとめました。ついては、放送法第39条第3項の規定に基づき、9月27日開催の第1151回経営委員会に報告したいと思います。
 はじめに、東日本大震災に関連する番組の反響について、9月の対応分を含めて報告します。
 震災発生から半年になる9月10日夜から11日にかけて、宮城県石巻市をキーステーションに各県の被災地を結ぶなどして、震災関連番組を集中的に放送しました。これらの番組には、合わせて846件の反響が寄せられました。特に反響の多かった番組は、9月11日放送の、日曜討論「東日本大震災から半年 どうする復興 与野党に問う」(反響157件)、9月10日放送の、NHKスペシャル 東日本大震災「追い詰められる被災者」(141件)、総合テレビで9月10日に放送の、マイケル・サンデル 究極の選択「震災復興 誰が金を払うのか」(130件)などです。視聴者から寄せられた主な意見として、「被災者の今の気持ちや、応援する国民がここにいるということがよくわかり、“連帯”を感じることができた」、「NHKは放送を通じて“息の長い支援”を続けてほしい」、「これからも風化させることなく、ひたむきにがんばっている人たちを取り上げてほしい」といった、継続的な取り組みを求める声が寄せられました。
 東京電力福島第一原発の事故の影響により電力不足が懸念された7・8月には、エネルギー問題や、節電と私たちの暮らしの在り方について考える大型討論番組などを放送しました。総合テレビで7月23日放送の、双方向解説 そこが知りたい!「どうする原発、エネルギー政策」には280件、8月27日放送の、NHKスペシャル シリーズ日本新生「市民討論 どう選ぶ?わたしたちのエネルギー」には478件の反響がありました。
 震災に対する地域放送局の取り組みとして、新潟放送局の例を紹介します。新潟県には、福島県などから1万人を超える人々が避難しました。新潟放送局では、避難者の要望を受けて、「新潟ニュース610」に「福島震災ニュース」の枠を設け、南相馬市など福島県内の情報をほぼ毎日放送しています。さらに、大学の研究者などと協力して、避難者120人余りに対して訪問や電話で調査を行い、今テレビ・ラジオに求める情報は何かなどを調べました。「テレビやラジオでどんな情報を放送して欲しいですか?」という質問に対しては、「福島原発の状況」という回答が最も多く57%、次いで「自宅の放射線量」が41%、そして「ふるさとの情報」が28%となっています。「南相馬市の放射線の量や町の様子を知りたいので番組をよく見ている」という声も寄せられました。新潟放送局では、引き続き、要望に応えて福島のニュースや話題を放送していくことにしています。
 次に、総合テレビでおととしから毎年夏にシリーズで放送している「ファミリーヒストリー」についての反響を報告します。今年放送した3本は、家族の歴史と戦争との関わりをテーマにしたもので、合わせて362件の反響が寄せられました。特に、8月3日放送の「浅野忠信〜祖父はなぜアメリカに帰ったのか。初めて知る真実〜」に、40〜60代を中心に多くの再放送の希望が寄せられました。これに応えて8月28日放送の「とっておきサンデー」の「あなたのアンコール」のコーナーで、この回を再放送しました。また、この回についてのインターネット上での反響を調べたところ、1,667件のツイートがあり、約半数にあたる820件は、「泣けた」、「感動した」、「良い話だった」という、好評意見でした。ツイッターなどインターネット上で話題になった番組はNHKオンデマンドでもよく視聴される傾向がありますが、この回も、8月のパソコン等を通じた視聴数がドラマを除けば6位と、多く視聴されました。
 続いて、8月29日に行われた民主党代表選挙への反響について報告します。選挙の模様は、総合テレビとラジオ第1で生中継し、597件の反響が寄せられました。選挙関連の放送により連続テレビ小説「おひさま」の再放送が休止になったことから、放送日時の問い合わせが多く寄せられたほか、馬淵澄夫候補の陣営の対応について誤った情報を伝えたことに対し、厳しい意見が寄せられました。
 NHKに寄せられた視聴者の声(意見・要望、問い合わせ)の総数は、7月は39万4,159件、8月は37万7,678件でした。分野別で見ると、技術・受信相談の件数が、6月に比べて7月は約3,000件、8月は約1万6,000件減少しています。
 個別の放送番組への反響については、7月27日放送のためしてガッテン「暑さも光熱費も激減!時短ミラクル料理革命」が7・8月を通して最も数が多く、2,707件でした。このうち半数を超える1,600件余りは、番組で紹介した料理のレシピを取り出すためのFAXサービスの番号の問い合わせや、FAX回線が混み合っていてつながらないとの声でした。
 視聴者からの指摘や意見・要望への対応について報告します。
 まず、7月20日に総合テレビで放送したヒューマンドキュメンタリー「あなたが心の道しるべ」についてです。番組の中で、悪性リンパ腫を取り上げ、大半の患者の生存期間について具体的な年数をコメントしたところ、同じ病気だという視聴者から「治ると思って頑張っているのに大変ショックを受けた。年数の根拠を教えてほしい」という声が寄せられたほか、身内に同じ病気の患者がいるという視聴者からも「そんな断定的な発言を聞いたら、ショックを受け、落ち込んでしまうと思う。番組の趣旨は立派だが、NHKとして、病気の人の希望を打ち砕くような放送をしてよいのか」という指摘がありました。これに対して、「悪性リンパ腫という病気にはさまざまなタイプがあり、病気が発見されたときの進行の度合いによっても、生存率に大きな差があります」と説明したうえで、再放送やオンデマンドに備えて、コメントのうち具体的な年数の部分を削除するなどの対応を取りました。また、指摘をいただいた方に個別にお手紙を差し上げるなどの対応も取りました。
 次に、7月24日放送の首都圏の朝のニュースで、「幕末を描いた絵画の特別展」を紹介したところ、視聴者から「ニュースを見て会場に行ったが、紹介された生麦事件の水彩画が展示されていなかった」との指摘がありました。確認したところ、取材したあと展示物の入れ替えがあり、放送した際にはすでに展示されていませんでした。7月29日の首都圏のニュースで、同展について再度放送し、展示物についてお断りをしました。
 誤記・誤読や、事実関係の誤りに対する指摘について、7月は50件、8月は55件の事例がありました。指摘については、番組担当者に連絡し、放送の中で訂正するように努めるとともに、再発防止に向けて放送関係の各部局で構成する放送倫理連絡会で周知し、現場に注意を喚起しました。
 受信料関係の意見・要望への対応についてです。アナログ放送終了に伴う受信料関係の問い合わせや届け出に迅速かつ的確に対応するために、7月1日から専用の受付席を200席設けるなど、受付体制を強化しました。7月24日以降、一時的に問い合わせや届け出が集中しましたが、全体としては大きな混乱もなく対応することができました。今後も引き続き、丁寧な対応に努めます。また、技術・受信相談への対応については、7月に寄せられた意見や問い合わせは3万6,409件でしたが、アナログ放送終了後の8月は2万3,395件と、1万3,000件あまり減少しています。
 9月1日からサービスを始めたNHKネットラジオ「らじる★らじる」への反響について紹介します。「らじる★らじる」は、山間部など電波が届きづらい地形、夜間の外国電波混信、マンションなど鉄筋コンクリート住宅の全国的普及等の理由でラジオ放送が聴取しにくい状況の改善を目的に、インターネットでラジオ番組を放送と同時に提供するサービスです。聴取者からは、インターネットで番組を聞く方法の問い合わせが多くあったほか、優れた音質の放送が聞けるようになったことへの感謝の声が寄せられました。
 アナログ放送終了への対応については、「アナログ終了お問い合わせセンター」を設置し、終了日の7月24日の前後は、24時間体制で視聴者からの問い合わせに対応しました。寄せられた電話は、7月が約7万9,000件、8月は約2万6,000件でした。
 最後に、8月に発生した職員の不祥事について、190件余りの苦情や問い合わせがありました。

(会 長)  誤記・誤読については増加傾向にあるのですか。
(視聴者事業局)  件数に変化はなく、毎月50件ほどの誤りが判明しています。放送現場には、繰り返し注意を促していきたいと思います。
(会 長)  NHKの放送は正しいという視聴者の信頼を肝に銘じて、正確な放送を出すよう努力を続けてください。
 原案どおり決定し、次回の経営委員会に報告します。

2 報告事項
(1)「放送局のちから」活動報告(平成23年7・8月)
(視聴者事業局)
 受信料支払率向上と接触者率向上の経営2目標の達成に向けた「放送局のちから」活動について、平成23年7・8月分を報告します。2か月合計で345件の取り組みの報告が、全国の放送局から寄せられました。
 7・8月は、東日本大震災の余震が続く中、全国各地で大型台風の上陸や記録的豪雨による大きな災害が発生しました。各地の放送局では、地元の視聴者へ“安心・安全”を届けようと、防災・減災に向けたさまざまな取り組みを行いました。その中からいくつか紹介します。
 宮崎県では、今年1月の霧島連山新燃岳の噴火に続き、6月には活発な梅雨前線の影響で土石流災害の発生が危惧される状況になるなど、自然災害が相次ぎました。宮崎放送局では、防災の観点からデータ放送の充実を図り、県内各地で防災・減災をテーマとしたふれあいミーティングを開催しました。そのうち、被災地復興を担当する自治体職員とデータ放送の活用について意見交換をした際に、「データ放送は、放送と異なりいつでも詳細な情報を入手できるため、災害時に役に立つ」と評価いただいた一方で、「自治体で活用されているのに比べ、市民の認知度はまだ低いのではないか」との指摘を受けました。市民とのふれあいミーティングの場を活用してデータ放送の利用状況についてヒアリング調査をしたところ、認知度は約3割と低いことが判明しました。データ放送を多くの方に知って活用してもらうために、利用手順をわかりやすく紹介した広報誌を作成することにしました。県のタクシー協会と連携して、県内に1万8千部を配布し、PRに努めています。今後も、ふれあいミーティングなどを通じて、視聴者の声に積極的に向き合うことで、地域の人々との交流を一層深めていくことにしています。
 大阪・神戸・奈良の各放送局では、地域に密着した防災情報を強化していくために、各府県と連動して、災害危険度の高い河川の水位と雨量情報のデータ放送での発信を始めました。7月に接近した台風6号に対応するため、当初の予定を早めて開始したもので、今後さらに、避難場所の情報を追加できるよう検討を行っています。
 岐阜放送局では、県域ニュースの枠だけでなく放送外の手段でも積極的に情報を伝えようと、データ放送の充実を図ってきました。台風6号が接近した際には、さらに利用を促すために、全国放送のニュースの画面に、縦型のロールスーパーで「岐阜県内の河川水位や台風に関する情報はデータ放送でご覧になれます」という案内を表示し、地域情報の幅広い提供に努めています。
 松山放送局では、仙台放送局が作成した「東北ラジオ・FMマップ」をモデルに、「四国防災ラジオマップ」を作成しました。ラジオ第1とFM放送の周波数をひと目でわかるようにしたほか、松山放送局独自の「わが家の防災メモ」も掲載、また、ホームページからもダウンロードできるようにしました。配布にあたっては、四国の各放送局と連携して、高速道路のサービスエリアや道の駅に設置したほか、レンタカー会社など多くの企業へ協力を働きかけ、2か月で3万部以上を配布しました。利用者からは「大変便利だ」と好評を得ており、災害時に生命・財産を守る情報源としてラジオを見直してもらう機会になりました。
 和歌山放送局では、南海・東南海沖地震の発生が危惧されていることを受けて、県や大学と連携して、小中学生向けの「防災」を学ぶミニ番組を制作し、“いざという時のための心構え”を伝えています。ドラマ仕立ての5分間のラジオ番組を16本制作し、7月から県域向けの放送を始めました。また、9月からは、県教育委員会と連動し、NHKの番組を教育現場で活用してもらう取り組み“ティーチャーズサポート”の一環として防災教育に役立ててもらおうと、県内407校のすべての小・中学校にDVDの貸し出しを始めることにしており、地域に根ざした防災教育の取り組みを進めています。
 防災関連以外の取り組みを紹介します。
 佐賀放送局では、開局70周年事業として、小学校3・4年生向けの社会科の動画教材「めざせ!佐賀博士」を制作しています。郷土の地理や社会のしくみを楽しく学んでもらう内容で、地域放送局ならではの社会貢献活動として展開しています。昨年11月に県内の教育関係者と制作委員会を発足し、共同作業で地域のニーズに合わせた教材作りを始めました。4月からは、5分間のミニ番組として放送を開始し、6・7月には県内5つの小学校で教材を活用した授業を行い、児童から「映像があって大変わかりやすい」との声があがりました。さらに、解説書を付けたうえでホームページでの公開も始めました。8月に行われた県の「メディア教育夏季研修」では、参加した200人の先生に紹介し、「ぜひ授業で使いたい」、「DVDを貸してほしい」などの好評を受け、授業で活用してもらえるよう県内すべての小学校(184校)に配付しました。 来年度は5・6年生を対象にした「郷土の歴史」編の制作を検討しています。
 広島放送局では、被爆者の高齢化に伴い被爆体験の風化が問題となるなか、4年前から「ヒバクシャからの手紙」として被爆体験を募集し、テレビ、ラジオ、ホームページなどで紹介してきました。23年度は、10代の子どもに直接語りかける平和授業として、「ヒバクシャからの手紙」の朗読会を広島市内の2つの中学校で行い、300人の生徒と先生が参加しました。この模様については番組化し、8月には広島放送局で上映会も行いました。今後も核・平和に向き合い、高齢化が進む被爆者の声を、未来を生きる子どもたちをはじめ、あらゆる世代に届けていきます。
 ふれあいミーティングについては、7・8月に全国で179回開催し、4,431人の方が参加しました。また、視聴者からの意見や要望などに基づく業務の改善は、7・8月に全国から128件の報告が寄せられました。NHKネットクラブの会員数は、8月末現在で144万人を超えています。

(会 長)  視聴者の声をさまざまな形で反映していくことは、地域に密着したNHKとして重要な役割だと思います。今後もしっかりと継続していってください。

(2)NHK文化祭2011について
(編成局)
 10月15日から11月6日まで開催する「NHK文化祭2011」について報告します。
 昨年、それまでの「NHK教育フェア」を、若者をはじめ幅広い層を対象とした教育文化的・国際的テーマの祭典として「NHK文化祭」にリニューアルしました。2年目となる今年は、NHKの多様な教育文化的サービスを体験できるようにするとともに、制作者にとっては、国内外の最先端に立つ同業者と切磋琢磨(せっさたくま)し、3−Screensの 新規開発に資する複合イベントを目指します。また、ABUなどとも連携し、世界の放送の発展に貢献する、「未来に向けた開発」につなげるものとします。
 「NHK文化祭2011」を構成する主なイベントとしては、「NHK文化祭たいけん広場2011」、「第38回『日本賞』教育コンテンツ国際コンクール」、「アジア教育プロデューサー会議」、「第12回NHKアジア・フィルム・フェスティバル」のほか、関連番組編成があります。それぞれについて説明します。
 最初に、「NHK文化祭たいけん広場2011」です。コンテンツの制作現場にじかに触れて幅広い視聴者層に楽しんでいただくもので、今回は、「あつまれ!みんなの元気」をキーワードに、子どもから大人まで、みんなに元気になってもらえるイベントを目指します。3Dコンテンツなど新しい時代に向けたデジタルコンテンツをはじめ、子ども向け、若者向け、アニメ、国際放送、語学・趣味実用など、あらゆる世代に向けた多様な教育文化的サービスを実感していただきます。屋外ステージでは、番組のキャラクターショーやミニコンサートを実施するほか、NHKふれあいホールやNHKスタジオパークを中心に、テレビ・ラジオの放送・公開収録を行います。
 今年のイベントのポイントは、“触って”“作って”“話して”、「体感」できるイベントです。「プチプチアニメ」コーナーでは、Eテレで人気の「ニャッキ!」などの作家がキャラクターの造形を行うワークショップを開催します。また、「にほんごであそぼ」コーナーでは、出演の子どもたちと一緒に踊ったり、「じゅげむ」に挑戦したりと、会場中で、からだ丸ごとで楽しんで元気になれる企画を展開します。また、東日本大震災プロジェクトと連携した取り組みとして、会場中で「元気を伝えたい」人へのメッセージを募集し、メッセージボードを手にした写真をイベントのホームページに掲載するなど、みんなの元気を広く発信します。
 リニューアルオープンするスタジオパークでは、最新の3Dスタジオの設備を駆使して、3Dの恐竜と会話をしながらクイズに参加してもらう「地球クイズ」を開催します。「プレキソ英語」ブースでは、期間限定で自分にあわせてスキットを学習できるホームページを公開し、次世代の学習コンテンツの “アンテナショップ”として展開します。
 NHKふれあいホール、NHKスタジオパーク、屋外ステージでは、「ざわざわ森のがんこちゃん」や「すイエんサー(マリー&ガリー)」などの家族で楽しめる番組や、「エレうた!」など若者に人気の番組を、スペシャルショーとして実施し、公開収録を行います。制作者にとっては、新たな角度での演出を試みることで、接触者層をさらに広げたいと思います。
 「たいけん広場」の開催期間は、11月3日から6日までです。昨年は台風の影響で人出が少なかったものの、例年は約8〜9万人の来場があります。安全管理をしっかり行い、多くの来場者にお楽しみいただきたいと思います。
 なお、この期間は、NHKスタジオパークを無料で公開します。また、11月5日と6日の土日に、「たいけん広場」の会場周辺で行われる「“ふるさとの食・にっぽんの食”東京フェスティバル」では、「東北の食」に関するイベントを実施します。「J−MERO」のステージでは、東日本大震災のため地元で開催できなかった太鼓フェスティバルに替わるものとして、「陸前高田の和太鼓」を披露し、東北の心を伝えます。11月3日から6日には、有料のチャリティーイベント「おかあさんといっしょファミリーコンサート」を開催します。
 次に、「第38回『日本賞』教育コンテンツ国際コンクール」について説明します。
 「日本賞」は、世界の教育番組の向上を図るとともに国際的な理解と協力の促進に役立つことを目的として、1965(昭和40)年にNHKが創設したもので、デジタル放送やインターネットが教育現場に急速に普及している世界の現状を踏まえ、2008年に対象を“教育番組”から“音と映像を用いた教育コンテンツ”に広げました。また、今年は対象年齢やテーマなど従来のカテゴリーの枠にはまらず、最も革新的なメディア活用に挑んでいるコンテンツに授賞する「イノベイティブ・メディア カテゴリー最優秀賞(経済産業大臣賞)」を新設しました。
 今年は世界61の国と地域の200機関から、合計313本の応募がありました。傾向としては、災害や福祉、芸術をテーマにした作品の増加が見られました。また、新設のイノベイティブ・メディアカテゴリーには、自然や文化資源のデジタル・アーカイブや双方向性に工夫のある作品が目立ちました。
 コンクールの透明性を高めるため、2008年から審査基準をホームページで公開するようにしています。今年は、審査委員として14か国(カナダ、アメリカ、コロンビア、イギリス、オランダ、スウェーデン、ノルウェー、フランス、南アフリカ、マレーシア、モンゴル、中国、韓国、日本)から16人の番組制作、教育学、コンテンツ制作の専門家を迎え、厳正な審査を行います。
 日程は、10月20日に開会式、20日から26日の期間に、上映会、プレゼンテーションと審査などを行い、27日に授賞式を開催します。
 また、「日本賞」関連特別番組として、10月30日午後4時から「第38回『日本賞』授賞式〜輝け!教育コンテンツ世界一〜」を、さらに、12月には、今年の受賞作品を一挙に紹介する「第38回『日本賞』受賞作品」を、それぞれEテレで放送予定です。
 第3に、「アジア教育プロデューサー会議」は、10月22日から27
日の期間に開催します。11月20日収録予定の国際共同制作番組「第1回『ABUデジスタ・ティーンズ』」に参加を予定しているアジアの各放送局のプロデューサーが集まり、NHKと結ぶ中継スタジオ担当のトルコ、タイを中心に、カタール、イラン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、韓国でのワークショップの報告を基に、収録番組の総合演出や、今後の方向、若い世代のメディア教育の在り方などを議論します。あわせて、同時期に開催されている「日本賞」クロスメディア・フォーラムなどのさまざまなイベントに参加して、教育番組制作スキルの向上と制作者同士のネットワーク強化を図ります。
 第4に、アジアの映像文化の振興に寄与することを目的として、アジア各国で活躍する気鋭の映画監督の新作から優れた作品を精選して紹介する「第12回NHKアジア・フィルム・フェスティバル」は、10月15日から19日まで、NHKふれあいホールで開催し、4作品を上映します。15日と16日には、映画の背景にある文化や歴史への理解を深める一助として、各国の事情に詳しい識者の解説も予定しています。また、18日には、イラン映画の巨匠であるアッバス・キアロスタミ監督が日本と海外の学生と開いたワークショップの中から生まれた学生たちの短編を、監督の講演を交えて上演します。
 最後に、「NHK文化祭」の開催期間を中心とした関連番組編成として、10月24日から11月6日の期間に、「たいけん広場」の会場で来場者と一緒に作る公開番組や、「日本賞」関連番組、教育・文化番組などを、総合テレビ、Eテレ、BS1、FM放送で集中的に編成します。公開番組の一部は、収録・編集の日程の都合により、10月15日から11月6日の期間以降に編成するものもあります。

(会 長)  毎年このイベントを楽しみにしている方も多いのですか。
(編成局)  2000(平成12)年から続いている「教育フェア」の時代から、楽しみにしている方も多く、また、「NHK文化祭たいけん広場」は、小さな子どもから親の世代、祖父母の世代と、幅広い世代の方にお楽しみいただいています。晴れた休日には、約3万人の来場があります。去年は初日に台風の直撃にあいましたが、それでも2千8百人の方に来ていただきました。
(会 長)  今年の内容は期待できるものですか。
(編成局)  子ども向けの企画だけではなく、「趣味の園芸 やさいの時間」など大人の方向けのものも展開するなど、幅広い層に楽しんでいただける内容にしたいと思っています。また、今年のポイントとして、触れたり、体を動かしたり、参加したりという、体験型の企画を多く開催しますので、参加感も大きく、十分楽しんでもらえる内容になると思います。
(大西理事)  10月10日にはNHKスタジオパークがリニューアルオープンしますので、連携して多くの方に来ていただけるものにしていってください。
(副会長)  「日本賞」は、「コ・フェスタ2011」(JAPAN国際コンテンツフェスティバル)のオフィシャルイベントの1つになっていますので、それとの連携も含めて、戦略的な展開を検討してください。
(編成局)  情報交換だけでなく、ホームページなどを通じたプロモーション連携を含めて、戦略的に展開していきたいと思います。

(3)

地方放送番組審議会委員の委嘱について

(木田理事)
 地方放送番組審議会委員の委嘱について、報告します。
 東北地方で浦沢みよこ氏(株式会社インターサポート代表取締役)に、北海道地方で柴田悟氏(月形町農業協同組合代表理事組合長)と、向真理子氏(株式会社米夢館代表取締役)に、いずれも平成23年10月1日付で新規委嘱します。また、九州地方で古野隆雄氏(農家)に、同日付で再委嘱します。
 なお、東北地方の橘眞紀子委員(秋保温泉岩沼屋専務取締役)、北海道地方の内田和幸委員(ながぬま農業協同組合代表理事組合長)と、田澤由利委員(株式会社ワイズスタッフ代表取締役)は、いずれも任期満了により9月30日付で退任されます。
 本件は、9月27日開催の第1151回経営委員会にも報告します。



以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成23年10月 4日
                     会 長  松 本 正 之

戻る

Copyright NHK (Japan Broadcasting Corporation) All rights reserved. 許可なく転載を禁じます。