日本放送協会 理事会議事録  (平成23年 5月31日開催分)
平成23年 6月17日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成23年 5月31日(火) 午前9時00分〜9時40分

<出   席   者>
 松本会長、小野副会長、永井技師長、金田専務理事、大西理事、
 今井理事、塚田理事、吉国理事、冷水理事、新山理事、石田理事、
  木田理事

 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 松本会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)資金運用方針について
(2)就業規則等の一部改正について
(3)職務権限事項の改正について

2 報告事項
(1)技研公開2011 実施結果について
(2)平成23年度非常災害対策等業務実施方針
(3)放送番組審議会議事録(資料)

    

議事経過

1 審議事項
(1)資金運用方針について
(経理局)
 「資金運用方針」については、これまでは経理局長の権限事項でしたが、今回から理事会の審議・決定を得たいと考えますので、審議をお願いします。
 今回審議に付す資金運用方針は、これまで実施してきた方針と基本的に変更はありません。
 基本的な考え方は、運用資金の源泉が視聴者の負担する受信料であることから、安全性の確保を最優先にします。資金運用の対象商品は、長期運用(1年超)は債券とし、短期運用(1年以内)は大口定期預金、譲渡性預金とします。
 長期運用については、債券の格付けは「AA格以上」を基本とし、原則として「満期保有」とします。特定の銘柄への集中や償還までの残存年数の偏りが生じないよう配慮します。定期的に保有銘柄ごとの格付けのチェックを行うとともに、監査法人による会計監査も受けることとします。
 短期運用については、短期預金格付けが高く協会と取引実績がある金融機関を対象に、原則として引き合い(利率の競争)を行い、運用する金融機関と利率を決定し約定します。定期的に運用対象金融機関の格付けのチェックを行うとともに、監査法人による会計監査も受けることとします。

(吉国理事)  平成22年度の運用収入は、どの程度ありましたか。
(経理局)  短期運用で約3億円、長期運用で約34億円、合計約37億円でした。
(冷水理事)  これまでに債券を満期保有せずに売却したケースはあったのですか。
(経理局)  ありません。
(会 長)  原案どおり決定します。

(2)就業規則等の一部改正について
(総務局)
 就業規則等の一部改正について、審議をお願いします。おもな改正点は2点あります。
 1点目は、スタッフ就業規則の服務規定を見直します。NHKが直接雇用契約を結ぶスタッフについても、職員と同様に、NHKの信用を失墜させる行為の禁止を明確に規定するとともに、スタッフの服務心得を職員就業規則に準じて整理し、外部イベントへの出演等には上司の許可を必要とすることなどの規定を追加します。
 2点目は、業務用車両の使用について、車両使用・管理規程を見直します。取材用車両については、これまで適用を除外する規定がありましたが、これらの適用除外事項は基本的に廃し、他の車両の使用と同一の扱いとします。ただし、取材職場の特殊性を考慮して、使用前の上司の許可が不要なことなど一部の適用除外は継続します。また、運転者名簿は、各放送局の企画総務において年度に1回以上更新し、更新するごとに運転免許証や自動車検査証等の写しを添付することとします。さらに、運転者に対し、その上司が運転免許証等の現物提示を命じることができるように規定します。
 このほか、若干の字句修正を行います。これは、規定の内容を変更するものではありません。
 改正の施行日は、平成23年8月1日ほかとします。
 本件が決定されれば、就業規則については、労働基準監督署に届け出ます。

(大西理事)  車両使用・管理規程の見直しについて、取材用車両を含めて、各放送局の企画総務が一元的に運転者名簿の管理を行うようにするわけですね。先般、取材用車両の運転に関するコンプライアンス事案がありましたが、今回の措置は、再発防止に向けた改善となるものですか。
(総務局)  運転者名簿は、運転免許証や自動車検査証等の写しを添付して定期的に更新するようにし、その管理を各放送局の企画総務が一元的に行うことにより、再発を防止するものです。
(会 長)  この措置により、業務量はかなり増えるのですか。
(総務局)  企画総務の業務量は若干増えると思いますが、それ程大きな負担をかけるものではないと考えています。
(会 長)  ただ制度を作ればよいということではなくて、それをきちんと運用することで、二度と同様の事案を起こさないようにしなければなりません。
 原案どおり決定します。

(3)職務権限事項の改正について
(総務局)
 職務権限事項の改正について、審議をお願いします。
 今回は、組織改正に関する項目に加え、放送法改正に対応する項目などの改正です。
 第1に、組織改正に関する項目です。報道局「スポーツセンター」の設置に伴い、それに関連する職務権限事項を規定します。また、臨時職制として「新放送センター建設検討事務局」を設置することに伴い、同事務局における本部各部局共通管理事項を経営企画局が担当することとともに、同事務局の職務権限事項を規定します。併せて、「新放送センター建設検討事務局に関する臨時職制」規程を制定します。
 第2に、放送法改正に関する項目です。放送法改正による条文番号や用語の変更に伴い、対応する箇所の修正を行います。また、「放送番組の種別」等の放送番組審議会への報告、公表が義務づけられたことに伴い、それに関連する権限事項を規定します。
 第3に、安全保障貿易管理に関する項目です。4月に安全保障貿易管理規程を制定したことに伴い、適切な管理体制の整備のため、関連する権限事項を規定します。
 このほか、各部局の既存業務に合わせた記載項目の追加や整理、字句修正などを行います。
 本件が決定されれば、組織改正に関する項目については、その発令にあわせて、6月24日付で施行します。それ以外の項目については、それぞれ必要な時期に施行します。

(会 長)  原案どおり決定します。

2 報告事項
(1)技研公開2011 実施結果について
(永井技師長)
 平成23(2011)年度の放送技術研究所(技研)公開の実施結果について、報告します。
 今年の技研公開は、「あなたに伝えたい、デジタル放送の未来」をテーマに、5月24日から29日までの6日間、そのうち一般公開は26日から29日までの4日間、開催しました。今年は節電のため開催時間を例年より2時間短縮し午後4時までとしましたが、期間中の来場者数は例年並みの1万8,873人で、技研80周年の記念公開だった前年度(2万2,087人)には及ばなかったものの、会場はにぎわいました。
 展示では、スーパーハイビジョン液晶ディスプレイ、眼鏡がいらないインテグラル立体テレビ、放送通信連携システムのハイブリッドキャストなどが人気を集めました。26日には、アメリカの公共放送局WGBHのメディアアクセス部門長ラリー・ゴールドバーグ氏と技研の研究主幹による「人にやさしい放送技術」に関する講演を実施し、満席となる延べ397人が聴講しました。また、27日には、技研研究者によるハイブリッドキャスト等についての研究発表を7件実施し、延べ1,326人が聴講しました。これらの模様は、P2P技術を活用して、インターネットを通じたライブ配信を行いました。
 また、28日には、小中学生を対象に最新の放送技術を解説する「なっとくテレビ塾」(64組164人参加)、29日には、世田谷区の中学生で結成されたドリームジャズバンドのOBなどによる「世田谷らいぶステージ」(延べ322人参加)を開催したほか、技研職員がお客様を案内しながら展示している技術を解説するガイドツアーに併せて、ツアー参加者とのふれあいミーティングを開催(355人参加)するなど、技研公開の場を通じて視聴者とのふれあい活動を展開しました。
 来場者へのアンケート結果では、8割を超える方から「内容がわかりやすかった」、7割を超える方から「NHKに対する理解が深まった」という高い評価が得られました。

(2)平成23年度非常災害対策等業務実施方針
(冷水理事)
 平成23年度の非常災害対策等業務実施方針について報告します。本来は、新年度の始まりに合わせて策定するものですが、今年度については、東日本大震災への対応を優先させたことと、その対応の中で浮かび上がってきた課題を盛り込むために、この時期の策定・報告となりました。内容の詳細は、報道局災害・気象センターから説明します。
(報道局)
 平成23年度の非常災害対策等業務実施方針は、以下のとおりです。
 平成23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震は、世界的にも最大級規模の地震で、大津波を引き起こし、東北地方の太平洋側を中心に広域で甚大な被害をもたらしました。NHKでは、国民の生命・財産を守るという使命を果たすため、発生直後からすべての放送波を使って災害報道を続け、ロボットカメラやヘリコプターで大津波の状況をリアルタイムに伝えながら、繰り返し避難を呼びかけました。その後も大規模な被害の状況や行方不明者の捜索、被災者の生活再建、街の復興に向けた報道などに組織をあげて取り組んでいます。また、東京電力福島第一原子力発電所の事故については、事故対応の情報だけでなく、放射性物質の外部への影響や住民の避難など、さまざまな情報を迅速・正確に、そしてわかりやすく伝えています。
 NHKの震災報道は、国内外から一定の評価を得ていると分析していますが、今回の災害報道について検証を重ねるとともに、平成23年度は、次の6項目に重点をおいて視聴者の期待に応えていきます。 
 第1点は、「東日本大震災の災害報道」です。東日本大震災の被災地では、行方不明者の捜索が続けられ、大津波によって家を流された多くの人が避難生活を余儀なくされています。仮設住宅の建設も始まったばかりで、農業、漁業、企業活動もできず、新たな街づくりに向けた動きもこれからです。また、福島県では、東京電力福島第一原子力発電所の事故の対応が長期化の様相を呈しており、避難を強いられた多くの人たちの生活も今後の見通しがたたないままとなっています。NHKでは、住民にとって必要な情報は何かを常に考え、ニュース・番組で迅速・正確に、わかりやすく伝えるとともに、今回の災害を検証しながら、教訓をこれからの復興にどう生かしていくのかについて、提言していきます。
 第2点は、「災害報道を継続するための放送機能の強化」です。今回発生した巨大地震は、これまで研究者も想定していない大災害でした。今後も広い範囲を震源にM7〜8クラスの余震が起きることが懸念されるほか、周辺の各地で大きな地震が起きるおそれがあるとされています。西日本の広い範囲で起きることが想定されている東海地震、東南海・南海地震や、首都直下地震についても、今回の巨大地震を教訓に、被害想定や対策が大きく見直されることは必至です。NHKの災害報道が、視聴者にとってたいへん重要な情報であることは、今回の震災で明らかになりました。NHKとしては、今回の被災地にある設備や機器等の復旧整備とともに、何が起きても災害報道が継続できるよう、各地の放送会館、設備、機器の点検・見直しやバックアップ体制の見直しを進め、次期の経営計画に放送機能強化に向けた具体的な取り組みを盛り込むことを目指します。
 第3点は、「完全デジタル化への対応と緊急系システムの改善」です。23年7月の完全デジタル化を踏まえ、デジタル時代にふさわしいシステムや画面のあり方を検討して整備を進め、視聴者により的確に伝えられる災害報道を実現します。東北地方の被災地で延長されるアナログ放送についても、情報が迅速・正確に伝わるように対応します。また、災害緊急報道に対する視聴者の声を真摯に受け止め、課題や問題点を検証しながら運用やシステムの改善に取り組み、よりわかりやすい報道を目指します。
 第4点は、「多メディアでの防災情報提供の充実」です。インターネットやデータ放送、携帯端末、ワンセグなど多メディアへの展開を積極的に進めます。インターネットの「気象・災害情報」のページをさらに充実させ、災害時にその時々の状況に応じたコンテンツを掲載します。また、自治体やライフライン、交通機関などさまざまな機関から防災情報を集約して配信する「公共情報コモンズ」が23年度に本サービスを開始することを受けて、参加する自治体の地元の放送局がデータ放送を速報できるよう、環境を整備します。さらに、情報を一括処理し、データ放送だけでなく、インターネットや放送で使える画面を作成して各放送局に配信するシステムの構築を進め、迅速で正確な防災情報の伝達に資するようにします。
 第5点は「災害報道を通した国際貢献の充実」です。今回の巨大地震では、外国人向けテレビ国際放送のNHKワールドTVが、発生直後からほぼすべての時間にわたって地震関連のニュースや番組を放送し、海外にも広く伝えられ、情報量や冷静な報道が高い評価を得ました。NHKとしては、今後も積極的に世界に向けて情報を発信していきます。また、NHKを訪れる海外の政府・マスコミ関係者、研究者等にNHKの災害報道について研修・説明を積極的に行ったり、災害防止啓発のための番組を提供したりするなど、NHKがこれまで培ってきた災害報道のノウハウを伝え、災害による犠牲者を少しでも減らせるよう、国際貢献に努めます。
 第6点は、「実践的な総合訓練と職員研修の充実」です。NHKの災害報道に対する視聴者の期待に応えるためには、放送局の総合力や職員個人の対応力を高める必要があります。23年度も、各地で被害が発生するおそれがある地震・津波や水害、原発事故など、さまざまな災害を想定して実践的な総合訓練を各地域で行い、応援を含めた具体的対策の検討や設備の充実を図ります。さらに、NHK放送研修センターなどとも連携して、職員研修の充実・強化を進めます。
 東日本大震災を受けて、国や気象庁などでも、これまでの防災、災害対策のあり方を見直す動きが出ています。災害対策の大きな転換期を迎えたと言えます。NHKとしても、関連する計画や要領等で見直すべき点は見直しながら、いかなる災害にも常に的確に対応していきます。

(新山理事)  地震の発生直後に、被災により地震計の情報やロボットカメラの映像がニュースセンターに入ってこない状況も考えられます。その場合、現地の状況を伝える情報がないという事実を視聴者にどう伝えるかという点も、考慮しておかなければならないと思います。
(冷水理事)  今回の震災では、地震の発生直後は被災地のロボットカメラが機能しており、それによって津波の最初の映像を捉えることができましたが、その後2〜4時間程度たってから、停電とバッテリー切れのため使えなくなりました。指摘されたような状況で、現地のロボットカメラが機能していないという事実を、1つの情報として視聴者に伝えることも、今後必要だろうと思います。
(会 長)  最初に、例年よりも策定の時期が繰り下がったという説明がありましたが、それによって今回の震災対応に関する内容が盛り込まれ、今の状況にかなった的確な方針になったと思います。

(3)放送番組審議会議事録(資料)
 編成局および国際放送局から、中央放送番組審議会、国際放送番組審議会、全国の地方放送番組審議会(関東甲信越、近畿、中部、中国、九州、東北、北海道、四国)の平成23年4月開催分の議事録についての報告(注)。

 注: 放送番組審議会の内容は、NHKホームページの「NHK経営情報」のなかに掲載しています。

以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成23年 6月14日
                     会 長  松 本 正 之

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