日本放送協会 理事会議事録  (平成23年 3月 1日開催分)
平成23年 3月25日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成23年 3月 1日(火) 午前9時00分〜10時05分

<出   席   者>
 松本会長、小野副会長、永井技師長、金田専務理事、日向専務理事、
 溝口理事、八幡理事、大西理事、今井理事、黒木理事、塚田理事、
 吉国理事

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 松本会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)第1139回経営委員会付議事項について
(2)就業規則の一部改正について

2 報告事項
(1)考査報告
(2)2010年国民生活時間調査の結果について
(3)平成23年度各地方向け地域放送番組編集計画および編成計画に
   ついて
(4)放送番組審議会議事録(資料)


議事経過

1 審議事項
(1)第1139回経営委員会付議事項について
(経営企画局)
 3月8日に開催される第1139回経営委員会に付議する事項について、審議をお願いします。
 付議事項は、報告事項として「平成23年度各地方向け地域放送番組編集計画および編成計画について」です。また、その他の事項として「平成23年春季交渉について」です。

(会 長)  原案どおり決定します。

(2)就業規則の一部改正について
(総務局)
 税制改正に伴い、給与の支給等における扶養家族の取り扱いを見直すため、就業規則を一部改正したいので、審議をお願いします。
 職員就業規則では、給与の支給等における扶養家族の定義を、「所得税法上職員の扶養控除対象者である者」としてきました。しかし、税制改正により、今年1月1日から16歳未満の扶養親族に対する扶養控除が廃止されましたので、扶養家族の定義を見直し、「所得税法上職員の扶養控除対象者である者および所得税法上職員の扶養親族である16歳未満の者のうち健康保険法上職員の被扶養者である者」と改正します。
 この改正は、平成23年1月1日から適用することとします。
 以上について決定されれば、労働基準監督署に届け出ます。

(会 長)  原案どおり決定します。

2 報告事項
(1)考査報告
(考査室)
 平成23年1月27日から2月22日までの期間に、ニュースと番組について考査した内容を報告します。
 期間中に、ニュースは23項目、番組は事前考査として51本、放送考査として24本の合計75本を考査しました。この期間の大きな項目として、霧島連山・新燃岳の噴火や、大相撲の八百長問題、エジプト政変関連のニュース・番組などがありました。考査の結果、これらの一連のニュースや番組は、放送法や国内番組基準等に照らし、「妥当」であったと判断します。
 まず、ニュースの考査結果について報告します。
 最初に、新燃岳の噴火に関するニュースについてです。1月26日に新燃岳の爆発的な噴火が起こってから、噴火活動はすでに1か月を超えています。ニュースでは、噴石や火口内の溶岩、火砕流などの噴火活動について、今後の見通しも含めて継続的に伝えています。また、降り積もる火山灰や、“空振”現象により窓ガラスが割れる被害が出ていることなど、地元住民の生活への影響についても、詳しく伝えていました。雨による土石流の発生も懸念されるようになり、宮崎県都城市では、独自の基準による避難準備情報を4日間で2回出して、早めの避難準備を呼びかけましたが、一方でこれによってお年寄りを中心に避難疲れが見られることなど、避難情報の出し方をめぐってはたいへん難しい問題があることも指摘していました。この噴火の関連では、ニュースのほかに、クローズアップ現代「新燃岳噴火 どうなる“火山列島”」(2月16日放送)や、解説番組の「時論公論」(2月9日放送)でも伝えていました。また、最初の爆発的噴火の2日後から、新燃岳のライブカメラの映像を、NHKホームページの気象・災害情報サイトや、宮崎放送局、鹿児島放送局のホームページで公開しています。噴火活動は当分続くと予想されており、今後も防災の観点を最優先にして、きめ細かな情報を伝えてほしいと思います。
 大相撲の八百長問題について、野球賭博関連の捜査で警視庁が力士などから押収した携帯電話に、八百長をうかがわせる内容のメールが残っていたことが発覚したのは、2月2日でした。当日の「NHKニュース7」では、メールの内容と取組の録画映像とを照らし合わせて、八百長が疑われる相撲の実際を、極めて明確な形で伝えていました。この問題により、2月6日に春場所の中止が決定しましたが、当日は、午前11時55分に、中止が正式に決定したことを速報スーパーで伝え、その後の特設ニュースで、日本相撲協会の放駒理事長の記者会見を中継していました。さらにその後も、関連の動きをニュースで逐次伝えるとともに、2月9日放送のNHKスペシャル「八百長はなぜ起きたのか〜揺れる“国技”大相撲〜」でも、八百長の背景や過去の疑惑の経緯などについて紹介していました。しかし、モニターの声の中には、「若干掘り下げ方が足りないのではないか」という意見もありました。問題の解明が進んだ段階で、相撲協会の調査のあり方や、今後の改革案等についても、より具体的な検証を期待したいと思います。
 エジプトの政変と他国への波及に関するニュースについてです。エジプトを30年近く統治してきたムバラク大統領は、2週間余りに及ぶ市民の反政府デモによって日本時間の2月12日に辞任に追い込まれました。これに関するニュースでは、反政府運動の動向や背景、新政権移行に向けた軍や野党勢力の動き、他の中東諸国への影響などについて多角的に伝えていました。2月20日放送のNHKスペシャル「ネットが革命を起こした〜アラブ・若者たちの攻防〜」では、反政府運動の中心に最先端のインターネットを駆使する若者たちがいたことにスポットを当て、彼らと政府側とのインターネットをめぐる攻防を描いていました。中東諸国の反政府運動は、その後、独裁体制が強固と見られていたリビアにも拡大しています。リビア情勢についても、現地の記者の報告やインターネットに投稿された動画などにより、詳しく伝えています。
 名古屋市長選挙、愛知県知事選挙、名古屋市議会の解散の是非を問う住民投票の投開票が、2月6日日曜日に行われました。この件の報道では、当選確実等の速報スーパーに加え、名古屋市長選について、前市長の河村たかし氏が圧勝した要因や、4月に行われる統一地方選挙への影響について、記者解説などを交えて伝えていました。この関連で1つ指摘があります。選挙の翌朝の「NHKニュース おはよう日本」に河村氏が生放送で出演しインタビューに答えていた中で、3月に行われることになった名古屋市議会議員選挙について、自らの地域政党への投票を呼びかけるような発言をしたことが、公平という観点から気になりました。統一地方選挙を控え、あらためて検証してほしいと思います。
 続いて、番組の考査について報告します。
 2月11日放送のNHKスペシャル「無縁社会 新たな“つながり”を求めて」では、昨年1月31日にNHKスペシャル「無縁社会〜“無縁死”3万2千人の衝撃〜」を放送して以降、視聴者から寄せられた約1万4,000件の声を基に取材を重ね、若い世代や働き盛りの世代にも家族や社会からの孤立感が広がっている現実を描いていました。今回は、実態のリポートだけでなく、支援団体の活動を紹介するなど、解決への道筋を示していました。ただ、インターネット中継を通じて見知らぬ人との会話を楽しむ若者を“無縁”と扱うような構成に、視聴者から疑問の声が寄せられました。モニターの声の中にも、「何をもって“無縁”というのか、社会の問題として救うべきことなのか、それとも個人の生き方なのかはっきりしない部分がある」という指摘がありました。しかし、全体的には好評意見が多く、「考えさせられた。今後も“無縁社会”について報道し続けてほしい」などの声が寄せられました。
 総合テレビで2月5日に放送した「69億人の検索ランキング」は、将来の定時番組化を目指した開発番組でした。世界各国のインターネット検索キーワードの人気ランキングから、お国柄やトレンドを読み解く番組で、今回は、インド、モンゴル、イタリアの人気サイトを紹介していました。モニターの声では、「着想がユニークでおもしろい。次回に期待したい」という好評意見もありましたが、全体としては番組に注文をつける意見が多く寄せられました。具体的には、「紹介された情報の内容がやや浅かった」、「2月の放送で、昨年10月から11月の情報を紹介していたが、インターネットの情報としては少し古いのではないか」などというものです。また、モンゴルのサイトで、モンゴル相撲の八百長を題材としたコントを紹介していましたが、放送日は大相撲の八百長問題のさなかで、春場所の中止決定が予想された日の前日だったことを考えると、若干疑問を感じました。紹介するのであれば、スタジオ部分で何らかの適切なフォローが必要だったのではないかと考えます。
 最後に、「ニュース 深読み」について、2月19日に放送した「“主婦の年金”救済ってアリですか?」を考査しました。番組では、サラリーマンの夫の退職時に国民年金に切り替えなかったため年金を受給できない専業主婦の問題について取り上げ、厚生労働省が今年1月から始めた救済措置について解説するとともに、この措置がやむをえないものなのか、それとも不公平なものなのかについて、ゲストが議論していました。税金や年金などの問題を含め、暮らしと経済に関わる事柄をわかりやすく説明することは、NHKが長年得意としてきた分野のひとつですが、そのノウハウが生かされた番組だったと思います。モニターの声でも全体的に好評でした。専門家の意見の対立軸も明快で、ゲスト出演者の役割分担も的確になされており、1月に放送を開始した時点で課題と思われた点が改善されている印象を持ちました。今後は問題をどう“深読み”するのか、特にホットなニュースについての興味深い“深読み”を期待したいと思います。

(会 長)  NHKスペシャル「無縁社会」については、たしかに、どこまでの範囲を“無縁”と呼ぶべきなのか、定義が難しい面がありますね。この“無縁社会”という言葉は以前からあったものですか。
(今井理事)  昨年1月末に放送した「NHKスペシャル」では、孤独死を迎えた老人や身元が不明なまま亡くなって無縁仏にされた人が全国的に急増しているという事実から取材を始め、そこから浮かび上がってきた、社会や家族のつながりが次々と失われている状況について報告しました。その際に、実態を伝える言葉として、NHKが造語したようなものです。放送後に広く定着して、国会でも取り上げられたり、昨年の「流行語大賞」の候補にも選ばれたりしました。
(会 長)  そういう意味では、非常に注目を集めているテーマだけに、内容をしっかりと制作することが求められると思います。
(今井理事)  モニターからの指摘にもありましたが、インターネットで見知らぬ人とやり取りすることは、新たな“つながり”の形であるという意見もあります。“無縁”という言葉でまとめることが適切であったかどうか、あらためて制作現場でも議論しているところです。
(金田専務理事)  今回は、あまりにも多くの題材を取り上げ過ぎて、整理しきれなかったという感じを持っています。“無縁社会”という言葉は社会に大きな影響を与えましたが、ことほど左様に、日本は言葉が社会を動かすほどの力を持つ“言霊(ことだま)の国”です。今後は、番組での言葉の使い方に気を配る必要があると思います。
(今井理事)  昨年の「NHKスペシャル」がたいへん話題になり、放送後には、インターネットでも“無縁社会”に関する書き込みや意見のやり取りが多く見られました。今回は、そうした書き込みを行っていた人々を逆に取材したのですが、そこから非常にさまざまな題材が集まったことで、一方では十分に整理できなかった部分が残ってしまったかもしれません。
(副会長)  「69億人の検索ランキング」で、取り上げた情報が昨年秋のものだったことについては、制作担当者から何か説明がありましたか。
(考査室)  この番組は、もともと過去半年間の各国の情報の中から興味深い題材を取り上げる内容だということです。これに対しては、インターネットの情報を扱う番組で、過去半年間を対象にするということ自体が疑問だという意見もあると思います。また、開発番組であるため、早めに試写や宣伝を行う必要があり、番組の完成が放送日よりもかなり早かったという事情もあったようです。

(2)2010年国民生活時間調査の結果について
(放送文化研究所)
 5年に1度実施している「国民生活時間調査」の結果について報告します。この調査は、日本人の1日の生活を調べてその実態に沿った放送を行うために実施しているもので、1960(昭和35)年から5年ごとに調査しており、今回で11回目、ちょうど50年になります。調査結果は、毎年度の放送番組編成計画の策定に活用するとともに、日本人の生活実態の基本データとして、マスコミをはじめ広く社会で利用されています。なお、国においても1976(昭和51)年から5年に1度、同様の「社会生活基本調査」を実施していますが、人々のメディアの利用状況については国民生活時間調査のほうがより詳しいという特徴があります。
 今回の調査は、2010(平成22)年10月14日から10月24日までの期間に、2日ずつ4回に分けて実施しました。全国の10歳以上の国民7,200人(1,800人×4回)を対象に、連続2日間の生活行動を15分単位で日記式調査票に記入してもらう方法で行い、有効回答者数は4,905人で、有効率は68.1%でした。前回の有効率は61.3%でしたので、今回はかなり向上しています。
 今回の調査結果からは、大きく5つのポイントが挙げられます。1.「減少する睡眠時間〜進む“早起き”と“夜更かし”」、2.「仕事は夜から朝へのシフト傾向」、3.「男20・30代と男70歳以上で増えた家事」、4.「広がるビデオやインターネットの利用」、5.「長期的に増加する自由行動」、以上の5点について説明します。
 最初に、「減少する睡眠時間」についての説明です。
 国民全体の睡眠時間の長期推移を見ると、一貫して減少傾向にあり、前回、2005(平成17)年の調査では、いったん減少が止まった傾向が見られたのですが、今回はまた減少して、これまでで最も短い睡眠時間となりました。男女年層別で見たときに最も睡眠時間が短いのは、40代女性で、平日の睡眠時間が6時間28分でした。
 睡眠時間が短くなる要素としては、早起きと夜更かしがありますが、平日朝の時間帯で、睡眠している人の割合を前回と比較すると、6時台で前回より若干減っています。調査対象者の属性で見たとき前回より早起きになっているのは、職業に就いている人(有職者)や学生、70歳以上の女性など幅広い層に広がっています。一方、夜間については、23時台に睡眠している人の割合が減っています。前回と比較して23時台に起きている人が特に増えたのは、30〜50代と70歳以上の女性です。これらの人々の23時台の行動としては、テレビやインターネットなどが少しずつ増えており、その結果、就寝時間がしだいに遅くなっていると見られます。
 第2に、「仕事は夜から朝へのシフト傾向」という点です。
 まず、有職者について平均の仕事時間を見ると、平日は7時間24分で、これまでと大きな変化はありません。一方、土曜日は4時間17分で、週休2日制の定着もあり、1970(昭和45)年以降の長期推移で見ると、大きく減少してきています。特に仕事時間が長い層は、30・40代の男性有職者、職業別では経営者・管理職で、いずれも平日の仕事時間が1日9時間を超えています。
 平日において、30分ごとの時間帯別に有職者が仕事をしている割合を見ると、前回に比べ朝7時30分〜8時に仕事をしている人の割合が増えています。逆に、夜8時30分以降に仕事をしている人の割合は減っています。平日の仕事の時間量は変わっていませんが、それを行う時間帯が、夜から朝にやや移っていると言えます。なお、20・30代男性の夜に仕事をしている割合が、特に減っています。若い年代層のライフスタイルが変わってきているのかもしれません。
 第3に、「男20・30代と男70歳以上で増えた家事」についてです。
 成人の男女別に1日の家事時間の長期推移を見ると、女性は今回4時間25分となり、1970年以降、総じて減少傾向にあります。一方、男性は今回50分で、時間量は女性に遠く及ばないものの、緩やかに増えてきています。
 平日に家事をしている人の割合を男女年層別に見ると、20・30代と70歳以上の男性で前回より増えており、70歳以上の男性では、59%とほぼ6割に達しています。さらに、70歳以上の男性について詳しく見ると、家事の中でも基幹的なものである炊事、洗濯、掃除をしている人の割合が増えており、前回の23%から今回は31%になっています。また、介護については「家庭雑事」という区分に入れていますが、前回の26%から今回は37%まで増えています。
 第4に、「広がるビデオやインターネットの利用」です。
 テレビやラジオ、新聞、インターネットなどの各メディアについて、平日に国民全体の中で見聞きした人の割合(行為者率)を見ると、テレビは今回もほぼ9割(89%)を維持して他のメディアよりも圧倒的に高く、中心的なメディアであると言えます。視聴時間も3時間28分と、前回(3時間27分)と変わらず、長時間視聴されています。テレビに続いて行為者率が高いのは新聞で、41%となっていますが、前回(44%)よりやや減っています。ラジオ(13%)も同様に、前回(15%)よりやや減っています。一方、行為者率が増えたのは、ビデオ(HDD・DVDを含む)とインターネットで、ビデオは前回の8%から今回は11%になり、インターネットは前回の13%から今回は20%に達しています。なお、ここでいうインターネットは、趣味や娯楽としての利用に限っており、仕事や勉強での使用は含んでいません。また、メールのやり取りは、「会話・交際」という区分に入れています。
 平日における1日の各メディアの行為者率を男女年層別に見ると、テレビは男女の各年代で高い割合を占めていますが、男女とも20代では8割を切っています。つまり、20代では、平日に全くテレビを見ない人々が2割いるということです。利用者の高齢化がさらに著しいのは、新聞です。男女とも、年代が低くなるほど行為者率が下がっており、50代以下では50%を切っています。新聞について、男女年層別に行為者率の変化を見てみると、70歳以上の男性と60代・70歳以上の女性を除く男女の各年代で、1995(平成7)年以降大幅に低下しており、中でも30・40代男女の低下が目立っています。また、10年前の調査での40代男女の行為者率と、同じ人々が属している今回の50代男女の行為者率を比べても、低下しています。
 ビデオとインターネットについて、それぞれ男女年層別に1日の行為者率を前回と比較すると、ビデオでは、男女とも60代以下の各年代で前回より増えており、特に20・30代男性で目立って増えています。また、インターネットも、60代以下の男女各年代で行為者率が増えており、20・30代男性や20代女性では3割を超えています。20代男性では1日の利用時間も長く、全く利用しない人も含めた平均の利用時間が、平日で1時間08分、日曜日では1時間30分近くに達しています。
 この調査では、各メディアの視聴時間のうち、「ながら」視聴の時間や、「自宅外」での視聴時間を出すことができます。今回の調査では、平日1日平均のテレビの視聴時間は3時間28分でしたが、そのうち「ながら」視聴は1時間20分、「自宅外」での視聴は13分でした。一方、ラジオは、平日1日平均の聴取時間20分のうち、「ながら」聴取が14分、「自宅外」での聴取が8分と、「ながら」および「自宅外」の割合が高いことが特徴です。
 最後に、「長期的に増加する自由行動」です。
 1日の時間配分について、睡眠や食事など人間が生きていくうえで欠かせない「必需行動」、仕事や家事などの「拘束行動」、レジャーやメディア視聴などの「自由行動」の3つに大別して、平日・土曜・日曜ごとにそれぞれの変化を見てみると、1995年以降、各曜日ともに拘束行動は減少傾向で、その分自由行動が増えています。特に土曜日は、拘束行動の減少が目立っています。また、平日と日曜日は、睡眠をはじめとする必需傾向がゆるやかに減少しており、自由行動がいっそう増えているという傾向が見られます。

(会 長)  この調査の結果は、国の社会生活基本調査の結果と比較して、同じような傾向になっているのですか。
(放送文化研究所)  社会生活基本調査も、インターネットの利用等について調査しており、基本的には、同じような傾向の結果が出ています。
(会 長)  新聞についても厳しい状況があるようですが、テレビと新聞の違いはどういう点にありますか。
(放送文化研究所)  メディアの特性として、テレビは映像による情報ですので、インターネットの動画サイトでの番組視聴など、そこから若い人々が接触してくるツールがさまざまあります。一方、新聞は、電子新聞もあるとはいえ、紙に印刷された活字を読むという点が、若い人たちには、身近に感じられない理由のひとつになっているのではないでしょうか。若い人たちが月間にメディアに使うコストは限られていますので、優先順位を考えて、まず新聞からやめる傾向があり、その代わりにインターネットのニュースサイトから情報を得る習慣がついていると考えられます。
(金田専務理事)  20代では、平日にテレビを全く見ない人が2割いるという説明でしたが、そうした特徴的な傾向について、もう少し詳しく説明をお願いします。
(放送文化研究所)  やはり、20代の中に全くテレビを見ない層が生まれているということが、最も特徴的です。これは、毎年2回実施している全国個人視聴率調査などでも同様の結果が出ています。実は、20代男性のテレビの行為者率は、前回、5年前の調査時点ですでに8割をきっていました。今回、20代女性の行為者率が前回より下がって、男性に並んでしまったということです。
(会 長)  若い人々が離れているという点で新聞が先行しているようですが、テレビについても、現在あまり見ていない若い人々の年齢が高くなり、さらに若い層では、ますます見ない人が増えるという厳しい状況に向かうと考えられるのでしょうか。
(放送文化研究所)  そのとおりです。テレビも決して安泰とは言えず、このままでは厳しいことになると考えられます。ですから、現在テレビを全く見ない層をはじめ、若い人々にどのようにアプローチして、テレビへの接触を増やしてもらうかが、これからの非常に重要なポイントになると思います。
(副会長)  「ながら」視聴については、どういうことをしながら視聴しているのかわかりますか。
(放送文化研究所)  最も多いのは「食事をしながら」で、常識的な結果とも言えます。その他、女性では「家事をしながら」あるいは「身の回りの用事をしながら」の視聴が非常に多いという結果になっています。また、時間帯で言うと、やはり食事時、夜であれば7・8時台で「ながら」視聴の割合が高く、逆に夜10時台では専念視聴が大半を占めています。
(大西理事)  ビデオやインターネットの行為者率について、男性では、40代と60代に比べて50代が低くなっています。50代が低いのは仕事などが理由となっているのでしょうか。
(放送文化研究所)  この調査だけでは、残念ながらその理由までは分析できません。

(3) 平成23年度各地方向け地域放送番組編集計画および編成計画について

(編成局)
 「平成23年度各地方向け地域放送番組編集計画」および「平成23年度各地方向け地域放送番組編成計画」について報告します。
 「平成23年度各地方向け地域放送番組編集計画」(以下、「編集計画」)は、今年1月11日の第1133回経営委員会で議決を得た「平成23年度国内放送番組編集の基本計画」を基に、地域放送番組編集にあたっての基本となる考えや方針を拠点局ごとにまとめたものです。それぞれ2月の各地方放送番組審議会に諮問し、可とする旨の答申を受けています。
 また、「平成23年度各地方向け地域放送番組編成計画」(以下、「編成計画」)は、その基本方針に基づいた各地域放送の具体的な編成や個別の番組名、放送時間のほか、インターネットやデータ放送の新規サービスの概要についてまとめたものです。2月25日の放送総局編集会議での審議を経て決定しました。
 まず、編集計画については、「平成21〜23年度 NHK経営計画」に掲げた「地域を元気にするための拠点となります」という経営方針に基づき、各放送局が地域の課題に向き合い、地域の活性化につながる放送にいっそう力を入れるということを基本理念としています。23年度の特徴的な項目としては、4年に1度の統一地方選挙の年にあたり、有権者の判断のよりどころとなる正確かつ迅速な選挙報道により公共放送の使命を果たすということと、テレビ放送の完全デジタル化への円滑な移行に向けて、それぞれの地域や受信者ごとの受信環境に応じたきめ細かな情報提供に努めるということがあります。その他、各地域に共通する項目として、“地域情報の積極的な全国発信”、“地域ならではの課題に向き合う報道や番組の充実”、“地域に根差したスポーツや文化の発展への貢献”、“放送・インターネット・携帯端末のいわゆる3−Screens展開の拡充”などが挙げられます。各放送局では、これらを重点事項に掲げて、地域の活性化に寄与していくこととしています。
 続いて、編成計画については、各地域とも、総合テレビ平日午後6時台のニュース・情報番組や金曜日午後7・8時台の地域放送時間帯を中心に、各地の実情やニーズに合わせて番組の刷新を行うこととしていますが、編成の大枠は変えていません。なお、平日午後5時台は、全国を結んで各地の情報を伝える「ゆうどきネットワーク」を東京から放送していますが、23年度も22年度と同様、大阪放送局が月曜日から金曜日まで近畿ブロック向けに、宮崎放送局と徳島局が毎週金曜日にそれぞれの県域向けに、独自編成を行います。音声放送では、FM放送の平日午後6時台を地域放送番組の編成枠に指定していますが、東京と水戸を除く関東地方の各放送局、および中部、近畿、九州地方の各放送局が地域独自の番組を編成し、それ以外の放送局では、平日午前0時に新設した全国放送番組「とことん○○」を再放送します。23年度の地域放送時間の計画値は、全局平均で1日あたり、総合テレビが3時間08分(前年度比4分減)、ラジオ第1が2時間51分(前年度比5分減)、FM放送が2時間04分(前年度比1分減)で、ほぼ前年度並みとなっています。
 地域ごとの編成計画のポイントについて説明します。
 北海道地方は、金曜日午後7・8時台の地域放送時間帯に加え、同午後10時台に若い視聴者を意識した北海道向け番組を編成します。具体的には、ツイッターでの投稿を基に知られざる地元の魅力を発見する「ほっかいどう穴場ハンター」や、若い女性を対象にして週末に楽しめるアウトドア情報を紹介する「ネイチャリング北海道」などを新設します。また、帯広放送局では、同局の放送開始75周年関連番組として、ラジオ第1で木曜日午後2時台に、十勝地方向けに地元の話題を伝える「つながるラジオ!とかち」を新設します。
 東北地方は、金曜午後8時台の東北ブロック向け番組を「東北Z」としてリニューアルし、旅人が地域の人々とふれあいながら各地を訪ねる新しいシリーズなどを放送するほか、地域の経済・産業など東北地方の将来像を考える企画も随時編成します。また、青森放送局では、開局70周年にあたり、地元を題材にした県域向けアーカイブス番組「NHKが伝えた青森」を新設します。同様に開局80周年を迎える秋田放送局、70周年を迎える福島放送局でも、年間を通じて随時、地域向けの記念番組やイベントを展開することにしています。
 関東甲信越地方は、金曜日午後7・8時台に75分間の「首都圏スペシャル」を新設し、格差問題や雇用、教育、地域経済、“無縁社会”など、暮らしに直結するテーマについて掘り下げて伝えるとともに、各地のお国自慢、味自慢、心温まる感動秘話など、暮らしを豊かにする情報を届けます。また、千葉放送局では、FM放送で土曜日午後に、同局の放送会館から県域向けに公開生放送を行う「チバ☆スタ」を新設します。
 中部地方は、名古屋放送局が制作する全国放送番組として放送開始から50年を迎える「中学生日記」について、ティーンズの視聴者層の目線をこれまで以上に大事にした演出・内容に刷新するなど、若年層の視聴拡大へ向けた取り組みを強化します。また、静岡放送局では、金曜日午後8時台に、静岡の“いま”、“旬”をキーワードに地域のトピックや動きを掘り下げて伝える「静岡流」を新設します。福井放送局では、平日正午前の地域情報番組を「ほやほや気分」として刷新し、放送時間も5分拡大します。
 近畿地方は、日曜日午前7・8時台に放送している関西広域圏を代表する経済情報番組「ビジネス新伝説 ルソンの壺」の放送エリアを拡大し、近畿ブロックと鳥取県、香川県、徳島県に加え、23年度から三重県でも放送します。また、NHK大阪ホールで収録するBSプレミアムの新設エンターテインメント番組「西方笑土」を、近畿ブロック向けに総合テレビで月曜日午前0時台(日曜日深夜)に放送するほか、同じ枠で、上方落語をたっぷりと紹介する「上方落語の会」も編成します。
 中国地方は、金曜日午後7・8時台のブロック放送番組を刷新します。午後7時台に、中国地方の課題や話題をタイムリーに伝える「フェイス」を新設するとともに、午後8時台には「金曜スペシャル」を新設し、平成24年の大河ドラマ「平清盛」の放送に先駆け、その舞台裏やゆかりの土地など紹介するシリーズや、視聴者や有識者とともに地域の課題や将来像について考える地域応援型シリーズ「熱討ちゅうごく」などを放送します。
 四国地方は、金曜日夜間の地域放送番組「しこく8」の枠内で、四国4県の代表がそれぞれのふるさと自慢を持ち寄り、楽しく競いながら地域の魅力を再発見するシリーズ「四県対抗!ふるさと自慢」を、午後7時台から8時台にかけての75分番組として新設します。また、同じ時間帯に、四国に関わる課題や話題、ブームなど、硬軟とりまぜたテーマについて、インターネットや携帯端末等を活用して視聴者の意見を集めながら議論する報道トークバラエティー番組「四国のいいぶん」を新設します。
 九州地方は、金曜日午後7・8時台のブロック放送番組を刷新します。午後7時台は、ふるさとの課題に向き合い検証や提言を行うスタジオ報道番組「特報フロンティア」を新設し、視聴者にとって身近で重要なテーマを掘り下げてわかりやすく、タイムリーに伝えます。また、午後8時台は、九州沖縄の“ほっ”とする物語や役立つ情報などを、福岡放送局のスタジオから生放送で伝える「きん☆すた」を新設し、幅広い年代に楽しんでいただくことで地域を元気にすることを目指します。
 最後に、各地域で実施する、インターネットや地域向けデータ放送など、放送を基軸とした多様なメディアによる新規サービスについて紹介します。インターネットでは、大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」に関連する大津放送局、福井放送局、津放送局が連携して、江にまつわる各地の歴史・文化や、名所・ロケ地の情報などを提供する「大河ドラマ地域放送局サイト」、霧島連山・新燃岳の大規模な噴火が続き火山活動の長期化が懸念される中、鹿児島放送局と宮崎放送局が両県に設置したカメラの映像を生で配信する「新燃岳噴火情報」(データ放送サービスも実施)、沖縄復帰40周年に向けて地元の伝統音楽などのアーカイブを制作し音声や映像で紹介する、沖縄放送局の「沖縄音楽大全」などがあります。地域データ放送では、冬の北海道の峠の気象状況や交通規制情報をリアルタイムに提供し交通安全に役立てる、札幌放送局の「雪道NAVI」などがあります。
 以上の各地方向け編集計画および編成計画は、3月8日開催の第1139回経営委員会に、報告事項として提出します。

(会 長)  これは、各地域放送局がそれぞれ“こういう地域放送を実施します”という計画を集めたものですね。全国の放送局をまとめると相当な分量がありますが、各放送局がこれらの計画を実施する際には、本部がフォローするのですか。
(編成局)  基本的に地域放送番組は、地域放送局がそれぞれの地域事情に応じて策定した方針に基づき、自らの判断で編集します。地域での番組視聴状況の検証等で本部からアドバイスすることなどはあります。
(会 長)  それぞれの地域の計画について、よく考えて練られているかどうか、あるいは、実施状況がうまくいっているかどうかを評価する場合、どういう点が基準となりますか。
(編成局)  全国放送番組でも地域放送番組でも、どれだけ視聴者層を拡大できるか、そのための取り組みにトライしているかという点が、評価する際の第一の基準になると思います。若年層の都会への集中もあって、地域放送の視聴者は、高い年齢層に偏る傾向があります。その偏りをできるだけなくして、より幅広い年齢層に見てもらうことが重要なポイントです。
(日向専務理事)  ただ、地域それぞれにその土地の事情がありますので、全国を同じ指標で一律に評価することは、なかなか難しいものがあります。地域放送局がPDCAサイクルを回そうとするときに、その取り組みを評価する指標をどのように作ればよいのか、いま研究しているところです。
(金田専務理事)  北海道では、全道向けのブロック放送を基本として、地域放送の予算や番組制作機能を、拠点局である札幌放送局に集中しています。こうした体制を進めてきたことで、前年度と比較して何か特徴的な効果や影響が出ていますか。また、同様に近畿地方も大阪放送局からのブロック放送を基本としていますが、北海道との違いなどはありますか。
(編成局)  北海道も近畿地方も、以前からブロック放送を地域放送の基本としていますが、この数年で状況が大きく変わってきたということはありません。

(4)放送番組審議会議事録(資料)
 編成局および国際放送局から、中央放送番組審議会、国際放送番組審議会、全国の地方放送番組審議会(関東甲信越、近畿、中部、中国、九州、東北、北海道、四国)の平成23年1月開催分の議事録についての報告(注)。

 注: 放送番組審議会の内容は、NHKホームページの「NHK経営情報」のなかに掲載しています。

以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成23年 3月23日
                     会 長  松 本 正 之

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