日本放送協会 理事会議事録  (平成23年 2月 1日開催分)
平成23年 2月18日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成23年 2月 1日(火) 午前9時00分〜10時15分

<出   席   者>
 松本会長、永井技師長、金田専務理事、日向専務理事、溝口理事、
 八幡理事、大西理事、今井理事、黒木理事、塚田理事、吉国理事

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 松本会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)第1136回経営委員会付議事項について
(2)V−Lowマルチメディア放送の制度枠組みについての意見募集およ
   び参入希望調査への対応について (3)平成23年度インターネットサービス基本計画について 2 報告事項 (1)考査報告 (2)平成23年度「地域実施全国放送公開番組」の実施について (3)第86回放送記念日記念行事の実施について (4)「第62回日本放送協会放送文化賞」の贈呈 (5)放送番組審議会議事録(資料)

議事経過

1 審議事項
(1)第1136回経営委員会付議事項について
(経営企画局)
 2月8日に開催される第1136回経営委員会に付議する事項について、審議をお願いします。
 付議事項は、報告事項として「『平成23年度収支予算、事業計画及び資金計画に付する総務大臣意見』及び『平成21年度業務報告書に付する総務大臣意見』について」、「平成23年度インターネットサービス基本計画について」、および「アナログ放送の終了に伴う受信契約の手続き等に関する意見募集の実施について」です。

(会 長)  原案どおり決定します。

(2)V−Lowマルチメディア放送の制度枠組みについての意見募集およ
   び参入希望調査への対応について
(経営企画局)
 総務省は、地上テレビジョン放送の完全デジタル化に伴い利用可能となる周波数を用いて実現を図る携帯端末向けマルチメディア放送のうち、90MHz以上108MHz以下(いわゆるV−Low)の周波数を使用するものについて、その制度枠組みについての意見募集と、放送事業への参入希望調査を、1月7日から2月1日まで実施しています。これに対して、NHKとしての意見および参入希望を提出することとしたいので、審議をお願いします。
 はじめに、「V−Lowマルチメディア放送の制度枠組み」についての意見募集に対する意見です。
 総務省から意見を求められている項目のうち、「放送対象地域を原則として県域(三大広域圏のみブロック)とすること」については、地域メディアとしての音声放送サービスの現状を踏まえたものとして適当と考えますが、関東・中京・近畿の三大広域圏においても県域向けサービスが可能となるよう、配慮が必要と考えます。「放送対象地域内において(複数でなく)一の事業者に免許を付与すること」については、事業の効率性を考慮し、放送対象地域内において、受託放送事業者は1者とすることが適当と考えます。「ハード整備主体としての受託放送事業者を全国1者とすべきか、ブロック/県域ごとに1者の参入を募り全国的には複数の受託放送事業者が併存することがあり得るようにすべきか」については、受託放送事業者は全国1者とするのが適当であり、当該受託放送事業者は、委託放送事業者の多くが出資するコストセンター的な性格を持つとともに、V−Lowマルチメディア放送が担うことが期待されている公共的役割を踏まえ、オールジャパン的性格を持ち十分な責任体制を有する事業者とすることが望ましいと考えます。また、「必要な災害情報が多数の国民に届くための方策とそれを実現する事業展開の計画、安心安全な社会システムの一部となり得る端末の開発普及の可能性」については、移動時を含め「安心安全な社会システムの一部となり得る端末」となるためにはその端末が平時に利用されていることが重要であり、放送、通信を問わず多機能端末が今後いっそう普及していくことが予想される中で、災害時の情報もそうした多機能端末で入手できることが、「必要な災害情報が多数の国民に届くための方策」としても、「安心安全な社会システムの一部となり得る端末」としても、重要であると考えます。
 続いて、参入希望調査に対する回答についてです。調査は、受託国内放送への参入と、委託放送業務への参入それぞれについて、希望等が問われています。
 受託国内放送への参入については、NHKが放送事業者として参入することは考えていないことを表明します。なお、併せて、「普及見通しが不透明な状況を踏まえ、サービスを提供する委託放送事業者が必要以上の費用負担を負うことのないよう、受託放送事業者は、委託放送事業者の多くが出資するコストセンター的な性格を持つ事業者とすること、また、V−Lowマルチメディア放送が担う公共的役割を踏まえ、オールジャパン的な性格を持ち十分な責任体制を有する事業者とすることが望ましい」とする意見を提出するとともに、そのような受託放送事業者で、三大広域圏を放送対象地域に含む受託放送事業者に対しては、その事業者が運用する総帯域幅のうちNHKが使用する帯域幅の割合に応じて出資する用意があることを表明します。
 委託放送事業者への参入については、NHKは参入を希望します。その際、当面は、三大広域圏での放送を希望し、受信機の普及状況、サービスの需要動向等に応じて、放送対象地域拡大の是非を判断したいと考えます。周波数については、関東・中京・近畿のそれぞれの広域圏で、3セグメントを希望します。事業概要については、現在のラジオ第1、ラジオ第2、FM放送と同時同内容の放送、および地上・衛星テレビジョンのデータ放送と同内容を基本とする放送とし、将来的にはデジタルの特性を生かしたその他のサービスにも対応したいと考えています。受信設備は、携帯電話、車載情報端末を含む多機能端末への搭載は必須と考え、その他、タブレット端末、据え置き型端末、携帯型端末等、受信機メーカーの創意工夫による多種多様な端末を想定しています。
 以上の内容が決定されれば、本日、総務省に意見および参入希望を提出します。

(会 長)  当面は、関東・中京・近畿の三大広域圏での放送を希望するわけですが、その後の展開も含めて、どの程度の規模で放送することになると考えていますか。
(経営企画局)  三大広域圏の放送では、例えば関東では東京スカイツリーといった既存の施設を使用することで、エリア全体に向けて放送できます。その後の展開については、このメディアがどのような形で成長していくかを見極めて判断したいと思っています。
(会 長)  受託放送事業に関して、インフラストラクチャーの整備経費、その後の事業運営や設備維持経費はどのようになるのですか。
(経営企画局)  こういった送信インフラストラクチャーを作るとすると三大広域圏で50億円程度かかると見込まれています。NHKが出資する場合には、そのうち3分の1程度を負担することになると考えています。というのは、これまで地上デジタルテレビジョンの中継放送局を民放と共同で建設する場合などでも、それぞれが使用する放送波の帯域比に応じて費用を負担してきましたので、それと同様に出資比率を考えると、NHKが求める3セグメントの周波数が認められた場合には、総帯域の3分の1程度を使用することになるからです。また、その後の受託放送事業者の事業運営や設備維持経費については、NHKなど委託放送事業者が支払う設備使用料で賄っていくことになります。
(会 長)  原案どおり決定します。

(3)平成23年度インターネットサービス基本計画について
(編成局)
 平成23年度のNHKの「インターネットサービス基本計画」を取りまとめましたので、審議をお願いします。
 この基本計画は、受信料を財源とする無料のインターネットサービスを対象としており、有料の「NHKオンデマンド」のサービスは対象外です。受信料を財源とするインターネットサービスには、「既放送番組等を電気通信回線を通じて一般の利用に供すること」をNHKの業務範囲に定めた、放送法第9条第2項第2号に基づいて行うサービスと、同法第9条第1項等に基づく、番組の周知・広報など放送事業者としての本来業務を遂行するために行うサービスがあります。前者については、平成20年11月に策定した「放送法第9条第2項第2号の業務の基準」に基づき実施しています。
 平成23年度は、“NHK on 3−Screens”の考え方を打ち出した「平成21〜23年度 NHK経営計画」の最終年度にあたります。現在のNHKオンラインのページビューは、3年前に比べて1.7倍に増えたほか、接触者率を示す放送外リーチも17.0%から21.2%に伸びており一定の成果を上げていますが、23年度も3−Screens展開のさらなる推進とともに、接触者率のいっそうの向上を目指していきます。
 メディアの世界では新しいサービスやデバイスの出現によって、人々が社会と触れ合う形、人々がメディアと触れ合う形にかつてない変化の波が起きています。一方で人々の結びつきは希薄化し、支え合いや出会いを失った孤立化と分断がじわじわと進行しています。こうした社会の急激な変貌に対して、公共放送NHKならではのサービスが求められていると感じます。
 23年度のインターネットサービス基本計画では、人々が知識を得る楽しさや学ぶ喜びを分かち合い、あるいは語り合い、支え合い、共感できる“公共的な情報空間”の創造に取り組みます。スマートフォンやタブレット型情報端末、ネットテレビなど、新しいデバイスに向けたサービスの開発を積極的かつ効率的に進めるとともに、いつでも、どこでも、どんな端末でも、視聴者が確かで信頼できる情報を取り出せるインターネットサービスを目指します。また、外部のさまざまなサービスやビジネスの動向もにらみつつ、視聴者のみなさんが信頼できる“公共サービス”の充実に向けて、いっそうの努力を続けます。
 以上の基本方針に沿って、6項目のサービスの重点事項を定めました。「1.テレビ4波・ラジオ3波の多彩なコンテンツを、視聴者層のニーズに合わせてインターネットで提供する取り組みを強化します。」、「2.人々のつながりを促進するソーシャルメディアを積極的に活用し、視聴者が参加できる番組の強化を図ります。」、「3.地域放送局が発信する地域情報のインターネットサービスを充実します。特に人口の集中する首都圏でのサービスを強化します。」、「4.公共放送のインターネットサービスにふさわしい正確な情報発信と信頼できるサービスを確保し、使いやすく役に立つコンテンツの提供に努めます。」、「5.限られた予算や経営資源を有効に使うため、選択と集中をいっそう推進します。」、「6.スマートフォン、タブレット型情報端末、ネットテレビ等、さまざまなデバイスや新しい端末に対応した先進的なコンテンツの開発を進めると同時に、ビジネスの動向も踏まえたサービスの設計に取り組みます。」の各項目です。
 各サービスの編集方針については、第1部と第2部に分けて記述しています。
 第1部は、「放送法第9条第2項第2号の業務の基準」に基づく、各メディア向けサービスの編集方針を掲げています。
 まず、パーソナルコンピューター等に向けては、新チャンネルの魅力と多彩なコンテンツを見つけやすい形で提供します。今年の4月から新たに「BS1」、「BSプレミアム」として生まれ変わる衛星放送の情報を、視聴者の番組に対する期待感や満足感を反映させたサイトで提供します。教育テレビやラジオのポータルサイトは、参加感を高めて番組をより身近に感じられるよう充実させます。また、視聴者と番組を、視聴者と視聴者をつなぐサービスの強化に努めます。視聴者からサイトに寄せられる作品や意見を通して、共通の興味を持つ投稿者と視聴者をつなぐなど若い世代へのアプローチを強めます。さらに、新しい学びも支えます。教育テレビやBSプレミアムの番組と連動し、動画やゲームで英語を楽しく学ぶコンテンツ「プレキソ英語」や、宇宙に関連する番組の情報や映像資産を活用し、宇宙に関するさまざまな知識を学べる「NHK宇宙サイト」を提供するなど、“知りたい”、“学びたい”という視聴者の意欲・ニーズに応えます。また、地域の情報の全国発信についても強化します。沖縄本土復帰40周年に向けて、地元の伝統音楽をはじめとした“沖縄音楽のアーカイブ”となる「沖縄音楽大全」や、大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」の情報を中心に、地域放送局が連携して各地の歴史や文化、名所、ロケ地情報などを提供する「大河ドラマ地域放送局サイト」を立ち上げます。
 携帯電話をはじめとするモバイル端末等に向けては、「いつでも、どこでも」知りたい情報を、正確にいち早く届けるサービスをさらに向上させます。特に、気軽に生放送の双方向番組に参加できる取り組みとして、「Shibuya Deep A」、「着信御礼!ケータイ大喜利」などの番組では、スマートフォンからも投稿できるようシステムを改修し、視聴者とともに作る番組を目指します。主婦層を中心としたユーザーに向けては、毎日の暮らしで役に立つコンパクトで実用的な情報をわかりやすく提供します。番組で取り上げるテーマについて投稿を受け付け、寄せられた意見や考え方を掲示板に掲載して、多様な意見を共有する「掲示板」の機能も強化します。また、移動時間や昼休みなどの“すき間時間”に気楽に楽しめる読み物やパズルなどの“ちょっとためになる”コンテンツの提供も試みます。
 デジタル放送連携サービスでは、デジタルテレビやワンセグ端末のインターネット接続機能を活用して、さらに便利で豊かな情報を伝えます。双方向機能を使ってつながるテレビの楽しさを体感できるコンテンツをはじめ、安心・安全情報、番組の満足度を高めるコンテンツなどを積極的に提供します。「気象情報」では、予報範囲を5キロメートル四方にし、居住地域周辺の予報をより詳しく伝えるなど、生活に役立つ情報を正確かつ迅速に提供します。また、「夏の高校野球」では、地方大会のすべての試合の経過・結果を速報するなど、スポーツ中継の最新情報や詳細な競技データを伝え、新たな楽しみの提供についても強化します。
 第2部は、緊急情報や外国人向け情報など、「放送法第9条第2項第2号の業務の基準」に基づくもの以外のサービスの編集方針について述べています。
 NHKが番組制作、番組の周知・宣伝、経営広報、営業活動、職員採用等の業務に関連してインターネットサービスを行う場合は、それぞれの業務を効果的に実施するなどの目的に合致したコンテンツを制作・提供します。また、災害・危機管理情報その他の緊急情報など、国民の生命、財産に関わる情報や、選挙の情報を積極的に伝えるほか、国際放送の強化に伴い、外国語による外国人向け情報のインターネット提供も拡充します。そのほか、近年ラジオの受信環境が急激に変化し聴取しにくくなっていることを踏まえ、新しい試みとしてラジオ放送と同時のインターネットでの提供に取り組むなど、より多くのルートを通じてNHKの放送に接していただけるように努めます。
 以上の内容が決定されれば、2月8日開催の第1136回経営委員会に報告します。

(会 長)  平成23年度の基本計画として、22年度や21年度の計画と違っている点はどこですか。
(編成局)  インターネットサービスは、放送番組と連動する形で実施していますので、番組の編成や内容が、21、22年度から変わったのに応じて、この基本計画の内容も変えています。特に、23年度の大きなポイントとして、衛星放送が現行の3波からハイビジョン2波になりますので、新しいBS1、BSプレミアムの情報や魅力を伝えるコンテンツを、どのように提供していくかということがあります。それ以外の個別番組では、例えば、教育テレビの若者向け番組「スクールLive Show」や、同じく語学番組の「プレキソ英語」といった新番組とうまく連動したコンテンツやサービスの設計、提供があります。また、スマートフォン等の普及拡大に対応したサービスも新しい点です。
(会 長)  そうすると、番組の改定や情報環境の変化に応じて、基本計画の内容を変更するけれども、その基本的な考え方はずっと変わっていないということですか。
(編成局)  基本的には放送法第9条第2項第2号の規定に基づき業務を実施していますので、その範囲内ということでは変わりがありません。ただ、23年度の基本方針の中に、新たに盛り込んだ点が2つあります。1つは、外部のさまざまなサービスやビジネスの動向を踏まえながら、公共放送が行うサービスのあり方を考えていくということ、もう1つは、スマートフォン等の普及数が昨年、一昨年とは比べものにならないほど急速に伸びていますので、そうした新しいデバイスに向けたサービスに積極的に対応していくということです。
(会 長)  1点目の、外部のさまざまなサービスやビジネスの動向を踏まえてというのは、どのような意味合いですか。
(編成局)  2つの意味があります。1つは、NHKの子会社の中にも有料のインターネットサービスを展開しているところがあります。それは、原価をかけてコンテンツを提供し、その対価として料金をいただくという形で、ビジネスとして行っているものです。一方、NHK本体では、皆さまから広くいただいた受信料を財源として、無料でサービスを行っています。NHKグループの中で、受信料による無料サービスと子会社の有料サービスの、それぞれの役割をきちんと整理し、グループ全体のサービスが最適・最大なものとなるよう考えていくということです。それからもう1つは、受信料を財源とするNHKのサービスが、外部の、ビジネスとしてインターネットサービスを展開している企業や団体に対して、その活動を圧迫するようなことがないよう、十分配慮しながら実施していくということです。
(大西理事)  2点、質問します。1点は、基本計画の第2部でラジオ番組のライブストリーミング(放送と同時のインターネット配信)について触れていますが、すべての番組についてライブストリーミングを実施することを想定しているのですか。もう1点は、NHKネットクラブの会員数がもうすぐ100万人に達しますが、これについては、受信料をお支払いいただいている会員に受益感のあるサービスを提供するため、23年度はどういう点を強化しようとしているのでしょうか。
(編成局)

 ラジオ番組のライブストリーミングについては、例えば、日本海側の地域では電波の事情によりラジオが聞こえづらいことがあるのですが、そうした障害を解消し、日本全国どこでもラジオ番組を非常にクリアに聴いていただくためにも実施したいと考えています。実施するためには総務大臣の認可を得なければなりませんので、それを申請する際には、あらためて理事会・経営委員会に諮ります。しかし、仮に認可が得られて実施できるようになっても、一気にすべての番組で実施するということにはならないと思われます。どれだけの範囲で実施できるかについての一番の課題は、番組をインターネットで同時に提供することへの、権利者の許諾の問題です。比較的実施しやすいと考えられるのは、語学番組や高校講座などの学習コンテンツです。これらは今でも、ライブではありませんが、ストリーミングを行っています。現在、できるだけ多くの番組でライブストリーミングを実施することを目指して、調整や交渉に努めているところです。
 NHKネットクラブについては、特に若い世代の方々に、積極的に会員登録していただけるようなサービスの展開を考えた場合、若い世代では、スマートフォンを持っている方が圧倒的に多いので、そういう若い世代に浸透している新しいツールにきちんと対応したサービスが必要となると思います。また、この1〜2か月でNHKネットクラブの会員が大幅に増えた要因として、「ためしてガッテン」と連動した“測るだけダイエット”というサービスが人気を集めたことがあります。基本計画の中でインターネットでのサービスの強化を図る番組に「ためしてガッテン」を挙げているのは、そうしたNHKネットクラブとの連携も考えてのことです。さらに、新しい衛星放送の魅力をアピールして、衛星契約の増加に資するようなコンテンツの強化にも、力を入れて取り組みたいと思います。

(日向専務理事)  NHKネットクラブは、「放送法第9条第2項第2号の業務の基準」に基づくサービスではなく、基本計画の第2部で規定する、NHKの本来業務である営業活動等に関連して実施しているサービスです。そういう意味で、基本計画の第1部に述べているような番組連動のコンテンツやサービスとは違った視点で、受信料支払率の向上に資するようなサービス展開のあり方を考えたほうがよいと思います。
(金田専務理事)  基本計画の内容を越えた議論になりますが、コンテンツの提供のしかたとして、無料で誰でもアクセスできるサービス、受信料をお支払いいただいている方に限定したサービス、子会社の有料サービスなど、さまざまな出口がある中で、NHKグループ全体でどのように戦略的に展開していくかを判断、管理する組織の設置を検討すべきだと考えます。
(永井技師長)  23年度のサービスの重点事項で、6番目に、スマートフォンなどの新しい端末に対応した先進的なコンテンツの開発について述べています。最新の情報端末のユーザーは、サービスの機能やコンテンツの品質にこだわる方が多いということもあり、また、こうした新しいツールへの将来的な展開のあり方は、NHK全体で考えていく必要がありますので、開発にあたっては放送技術研究所などとも密接に連携して、NHK全体あるいは放送全体でどう展開していくかを考えながら取り組んでください。
(編成局)  新しい情報端末は、かなり多種多様な種類が登場していますので、それに向けては、NHK全体での議論を整理しながら、次のステップに向かうサービスの開発に取り組んでいきたいと思います。
(日向専務理事)  この基本計画は、平成20年に策定した、「放送法第9条第2項第2号の業務の基準」に基づいており、その範囲内において、従来と大きなサービスの変更がない中で実施するものです。この「業務の基準」は、平成21年度から3か年のインターネット業務について規定するものですが、放送法の規定にのっとり、利用できるコンテンツは既に放送したもののみで、放送前のコンテンツ提供はできないことや、経費の上限を40億円とすることなど、さまざまな制限を自らに課しています。しかし、23年度中に新しい基準を策定することにしていますので、その際は、放送と通信が融合する時代にNHKの新しいサービスをどういう形で展開していくかについて、次の3か年に向けて考えなければなりません。
(編成局)  補足すると、「業務の基準」では、第4項で「本基準は、本業務の実施状況、社会経済情勢の変化等を勘案して、その施行日から3年後を目途に必要な見直しを行うこととする」と規定しています。ここでいう施行日は、平成20年11月20日でしたので、NHKオンデマンドサービスも含めて、今年の秋に、NHKの次期経営計画を踏まえた見直しが行われるものと考えています。
(会 長)

 受信料を財源としていることを踏まえて、さまざまなところに配慮しながらサービスを実施しているということがわかりました。NHKが新しい時代の流れに取り残されるわけにはいきませんから、関係するさまざまな条件の整合性を取りながら運営していくのは、かなり難しいことですが、それをこれから皆で考えていかなければならないと思います。
 議案については、原案どおり決定します。


2 報告事項
(1)考査報告
(考査室)
 平成22年12月15日から23年1月26日までの期間に、ニュースと番組について考査した内容を報告します。
 期間中に、ニュースは30項目、番組は事前考査として48本、放送考査として31本の合計79本を考査しました。この期間の大きな項目として、山陰地方の豪雪関連ニュースや、「第61回NHK紅白歌合戦」、大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」などがありました。考査の結果、これらの一連のニュースや番組は、放送法や国内番組基準等に照らし、「妥当」であったと判断します。
 まず、ニュースの考査結果について報告します。
 最初に、山陰地方に大みそかから年明けにかけて降った記録的な大雪に関連するニュースについてです。この大雪で鳥取県内の国道9号線で約1,000台の車が立ち往生し、陸上自衛隊に災害派遣が要請される事態となりました。このニュースについては、元日の午前2時41分に速報スーパーで第一報を伝え、続いて午前4時台に「ニュース」を特設、その後、昼にかけて刻々と状況を伝えていました。このうち朝5時の「ニュース」では、車が数珠つなぎになっている国道の様子を、視聴者が撮影した映像を入手して伝えるとともに、国道沿いのコンビニエンスストアの経営者に電話取材して、車に乗った人々が買い求めたことで温かい食べ物が売り切れ状態になっていることを紹介していました。一方、鉄道では、JR山陰本線の宍道駅(松江市)と鳥取駅の間で、大みそかの夕方から特急や普通列車16本が雪のため動けなくなり、駅や線路上に停車したままになりました。このニュースは、元日朝7時の「ニュース」で第一報を伝え、その後、翌日2日の朝7時の「ニュース」で、列車が午前2時前に34時間ぶりに運転を再開したことを伝えていました。その中で、駅に到着した乗客が「まさか列車の中で年を越すとは思わなかった」とインタビューに答えている様子を紹介していました。この大雪による人的被害はそれほど大きくありませんでしたが、多くの人が車や列車の中での年越しを余儀なくされることになりました。このことに関連して1点指摘します。今回は、多くの人が広域移動する年末年始の時期に大雪の予報が出ていましたので、雪に対する交通面の備えが必要なことを、防災情報として事前にきめ細かく伝えてほしかったと思います。特に車の立ち往生に関しては、12月25日に福島県の国道で大雪のため350台が立ち往生するという事態が発生したばかりでした。これを受けて、全国に注意を呼びかける報道があってもよかったのではないかと思います。なお、1月11日の「NHKニュース おはよう日本」で、福島県と鳥取県の国道で相次いだ雪による車の立ち往生の共通点を検証し、いずれもチェーンを付けていない大型トラックのスリップが発端になったこと、国道事務所の通行止めの判断が遅れたことが共通していると伝えていました。そのうえで、チェーンの取り付けの徹底など雪への備えを万全にするよう呼びかけていました。大雪のシーズンはこれからまだ続くだけに、たいへん適切な防災情報になっていたと思います。
 次に、東京消防庁の119番通報が、システムの不具合により東京都内のほとんどの地域で4時間半にわたってつながりにくい状態が続いたことに関するニュースについてです。これについては、1月5日の午後1時54分に、地域向けの速報スーパーで第一報を伝えていました。トラブルは午後3時過ぎに復旧し、「NHKニュース7」では、復旧までの間、消防署員が高層ビルから火災の監視・警戒にあたったことなどを伝えていました。東京消防庁は、「多少の遅れが出た可能性はあるものの大きな影響はなかった」と発表しましたが、「ニュースウオッチ9」では、影響の具体例を取材し、八王子市で起きた住宅火災では、「119番通報したけれどもつながらなかった」という近所の女性の証言を伝え、また、品川区で起こった交通事故では、「消防が到着したのは通報から30分後だった。その間、けが人はそのままになっていた」という現場に居合わせた人のインタビューを紹介していました。この件について、あえて1点指摘します。この119番通報システムの不具合が発生しつながりにくくなったのは、午前10時30分ごろだったのですが、東京消防庁がそれを発表したのは午後1時過ぎで、つながりにくい状況になってから2時間半がたっていました。119番の緊急性から考えて明らかに遅い発表で、なぜ東京消防庁のトラブル発生の発表が遅くなったのかについても、伝えてほしかったと思います。
 阪神・淡路大震災から1月17日で16年がたちました。当日は、地震発生の午前5時46分の黙とうに始まり、犠牲者を追悼する神戸市や淡路市などの各地の催しを、各時間帯のニュースで伝えていました。震災を経験していない人が神戸市でも人口の3分の1を超え、被災の体験や教訓をどのように語り継ぐのかが課題になっていることを報告していましたが、そのリポートが、どの時間帯のニュースでもほぼ同じ内容で、ややあっさりしているという印象を受けました。なお、震災に関しては、全国のニュースに加え、近畿ブロック向けのニュースでも詳しく伝えたほか、「NHKスペシャル」、「あさイチ」や、教育テレビの「福祉ネットワーク」などでも、それぞれ防災や被災者のケアの面での課題について取り上げていました。
 続いて、番組の考査について報告します。
 はじめに、大みそかの「第61回NHK紅白歌合戦」についてです。今年は、「歌でつなごう」がテーマでした。出場歌手は、昨年より6組少ない44組でしたが、NHKホールのステージに加えて、大河ドラマ「龍馬伝」で主役を務めた福山雅治さん、病気のため活動を休んでいた桑田佳祐さんが中継で参加して話題を集めました。また、今回初めての試みとして、副音声チャンネルで舞台裏の情報や制作の裏話などを伝える「紅白・ウラ・トークチャンネル」を放送していました。全国の番組モニターからの感想や意見を総合すると、今回の紅白歌合戦は、歌番組としての基本形に戻ったオーソドックスな構成・演出が好評を得ています。モニターの評価を細かく見ると、従来から紅白歌合戦に対して高い評価をしている40代から60代の視聴者層に加え、10代・20代の視聴者の満足度が若干上がっている点が特徴的でした。モニターからは、「命や絆の尊さをテーマにした歌が多く、1年の締めくくりにふさわしい温かさが伝わった」、「シンプルなセットをさまざまな表情に変える工夫に感心した」などの声が届いています。桑田佳祐さんの出演に関しては、「元気な姿が見られてよかった」という感想が多く寄せられた中で、「少しふざけすぎだった」という意見も複数ありました。
 次に、新しいシリーズの放送が始まった大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」についてです。昭和38年の「花の生涯」から数えて50作目の大河ドラマとなります。戦国時代を初めて武将の姫の視点から描いた作品で、3年前の「篤姫」の脚本を担当した田渕久美子さんの原作・脚本によるものです。昨年の「龍馬伝」とは対照的に、明るく華やかな画面展開でスタートしました。第1回の放送の後、モニターから届いた評価を集計し、「篤姫」と「龍馬伝」の初回放送の評価と比較したところ、「江」の初回評価は、「龍馬伝」には及ばないものの、「篤姫」と同じような傾向が見られ、高い満足度を示しています。この1年間、感性豊かなドラマに期待したいと思います。なお、モニターから、「登場人物の史実の年齢より、演じている俳優の実年齢が総じて高いのが気になった」という指摘がいくつかありました。
 衛星放送の番組について1件報告します。今年4月に、衛星放送が現在の3波からハイビジョン2波に再編されるのに伴い、多くの新番組がスタートします。1月から2月にかけて、それらの新番組の試作番組をいくつか放送していました。そのうちの1つ、1月10日に衛星第1で放送した「SPORTS DominGO!」は、4月以降に新「BS1」で毎週日曜夜に放送する番組です。今回の試作版については、総合テレビや民放各局に人気のスポーツ番組がある中で、「BS1」で新しい視聴者を獲得するためには、今後全体的にかなりの工夫が必要なのではないかという印象を持ちました。モニターからも同様の厳しい意見が届いています。
 最後に、番組ホームページについてのモニターからの報告です。
 今回は、「トップランナー」、「あしたをつかめ!平成若者仕事図鑑」、「めざせ!会社の星」、「すイエんサー」、「着信御礼!ケータイ大喜利」など、若者向け番組のホームページについてモニタリングを依頼しました。全体としては、「若者に役立つ情報を掲載し、人権やプライバシーにも配慮している」という感想が寄せられました。しかし、一部に若者を意識するあまり、やや乱暴な言葉遣いで投稿を呼びかけていたことや、アナウンサーの自宅の散らかった部屋の写真を掲載していたことが気になりました。これらの指摘した点は、既に改善されています。

(会 長)  大雪での車の装備については、まずはドライバーが自分で判断して備えるべきこととは思いますが、ニュースの中でチェーンの装備などを呼びかけることは、実際、たいへん役に立ちます。ちょっとした情報ですが、放送する意義のあることだと思います。
(考査室)  昨夜の「ニュースウオッチ9」と、けさの「NHKニュース おはよう日本」で、雪の除去作業にあたる建設作業員が足りないことも、交通渋滞の原因のひとつになっているというニュースを伝えていたことを、付け加えておきます。
(会 長)  紅白歌合戦については、私が子どもだった頃から、“全国民の年納め”というイメージを持っていました。ある種の日本の風習のように、今後もずっと引き継がれるといいと思います。

(2)平成23年度「地域実施全国放送公開番組」の実施について
(視聴者事業局)
 「地域実施全国放送公開番組」は、「NHKのど自慢」に代表されるように、演出上、視聴者の皆さまに参加や観覧をしていただき、公開で収録・放送を行う番組です。そこに住む人々や暮らし、街の息吹など地域の情報を全国に伝え、地域の人々に楽しんでもらう催しとして実施しています。これらの公開番組は、主に地方自治体等との共催により全国各地で実施しており、公共放送ならではの地域における事業活動として重要な役割を担っています。
 平成23年度「地域実施全国放送公開番組」については、「平成21〜23年度 経営計画」に掲げた「放送局のちから」を各放送局が発揮し、地域の活性化や文化振興に寄与するとともに、視聴者とのふれあいの場を全国に創出し、NHKへの理解促進を図ることを目的として実施します。どの地域でどの番組の公開を実施するかについては、“若い世代向けの公開番組の拡充”と、“地域での視聴者ニーズの高い公開番組の継続”、の2点をポイントとして、編成、制作、営業、地域放送局など関係部局と綿密な協議を重ね、計画を策定しました。
 23年度の実施本数は805本で、昨年度と比較すると23本減少していますが、視聴者のニーズに十分に応えられる充実した内容となったと思います。特に、今回は若者向けの番組を増やしました。
 新設番組や移設番組を中心に具体的な内容について説明します。
 全国の市民会館など各地域自治体施設で実施する公開番組については、総合テレビ89本、教育テレビ51本、衛星放送41本、ラジオ第1およびFM放送468本の計649本実施します。総合テレビでは、「ごきげん歌謡笑劇団」を衛星放送から移設するとともに、地域からの要望が多い「NHK歌謡コンサート」や「NHKのど自慢」、若者向けの「オンバト+」について、昨年度と同程度の実施を継続します。教育テレビでは、小学生や中高生が参加する「スクールLive Show」を36本新設し、若年層との接触の拡大を図ります。衛星放送では、4月からハイビジョン2波となるため実施本数は減りますが、豪華なステージショーが人気の「BS日本のうた」や、乳幼児対象の「みんなDEどーもくん!」の実施などは継続します。ラジオ第1およびFM放送では、ラジオの機動力を生かし、歌謡から演芸、クラッシックなど多彩な公開番組を地域に数多く派遣します。また、首都圏の大学キャンパスで寄席を行う「キャンパス寄席」を新設し、大学生との接触の拡大も目指します。
 そのほか、NHK大阪ホールや地域放送局のスタジオなどでも121本の公開番組を実施します。さらに、「歌謡チャリティーコンサート」、「おかあさんといっしょファミリーコンサート」、「いないいないばあっ!あつまれ!ワンワンわんだーらんど」などの有料のコンサート等も全国の各地域に派遣し、地域サービスに努めます。
 実施にあたっては、放送部門、営業部門など関係部局と連携を密にしながら、こうした公開番組が経営目標や経営課題に資するよういっそう効果的に展開していきます。
 なお、この内容は2月3日の会長記者会見で発表する予定です。

(会 長)  「放送局のちから」という言葉は、とてもよいですね。最初に説明を受けたときはイメージがあいまいでしたが、今では各放送局の活動意欲が伝わってくるように感じます。
(大西理事)  現在の経営計画を策定したときに、“地域の情報を発信する拠点”、“地域を元気にするための拠点”という意味で掲げました。
(会 長)  報告では、23年度の実施計画について“視聴者のニーズに十分応えうる充実した内容”と評価していましたが、今回に限らず業務の報告の際には、そうした評価や課題の説明をお願いします。

(3)第86回放送記念日記念行事の実施について
(総務局)
 第86回放送記念日記念行事を3月22日に実施します。
 記念式典には、例年と同様に、総務大臣、関係国会議員、総務省関係者、日本民間放送連盟の代表、関係機関・団体・企業の代表、放送文化賞受賞者、関係審議会委員、番組出演者等の方々、関係記者会会員ほかの皆さまをお招きする予定にしています。式典では、会長のあいさつに続いて、総務大臣をはじめ来賓の方々からごあいさつをいただき、その後、第62回日本放送協会放送文化賞贈呈式などを行う予定です。


(4)「第62回日本放送協会放送文化賞」の贈呈
(総務局)
 「第62回(平成22年度)日本放送協会放送文化賞」の贈呈について、報告します。
 この賞は、昭和24年度に放送開始25周年事業として創設したもので、放送事業の発展、放送文化の向上に功績のあった方々に贈呈しており、今回は7人の方にお贈りします。これまでの受賞者は、今回の7人を合わせて400人となります。
 受賞者の選考は、1月19日、当時の今井副会長を委員長とし、市川森一(作家・脚本家)、海老澤敏(尚美学園大学大学院特任教授)、大石芳野(フォトジャーナリスト)、末松安晴(国立情報学研究所顧問)、高階秀爾(大原美術館館長)、宮尾登美子(作家)、山折哲雄(宗教学者)の各氏と、副会長のほか6人の役員の計14人を委員とする日本放送協会放送文化賞受賞者選考委員会で行い、これを受けて同日に、当時の福地会長が受賞者を決定しました。受賞される方々は、3月3日に発表します。
 贈呈式は、3月22日の「第86回放送記念日記念式典」の中で執り行い、受賞者には、佐藤忠良氏製作のブロンズ像「ふたば」と副賞50万円を贈呈します。


(5)放送番組審議会議事録(資料)
 編成局および国際放送局から、中央放送番組審議会、国際放送番組審議会、全国の地方放送番組審議会(関東甲信越、近畿、中部、中国、九州、東北、北海道、四国)の平成22年12月開催分の議事録についての報告(注)。

 注:放送番組審議会の内容は、NHKホームページの「NHK経営情報」
   のなかに掲載しています。

以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成23年 2月15日
                     会 長  松 本 正 之

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