日本放送協会 理事会議事録  (平成22年 4月27日開催分)
平成22年 5月21日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成22年 4月27日(火) 午前9時00分〜10時15分

<出   席   者>
 福地会長、今井副会長、永井技師長、金田専務理事、日向専務理事、
 溝口理事、八幡理事、大西理事、今井理事、黒木理事、塚田理事、
 吉国理事

 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 福地会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)第1118回経営委員会付議事項について
(2)平成21年度第4四半期業務報告

2 報告事項
(1)平成21年度契約・収納活動結果
(2)平成21年度収支決算の速報
(3)考査報告
(4)「NHKワールドTV」の視聴実態調査の結果について
(5)平成21年度事業業務実施結果
(6)放送番組審議会議事録(資料)

議事経過

1 審議事項
(1)第1118回経営委員会付議事項について
(経営企画局)
 5月11日に開催される第1118回経営委員会に付議する事項について審議をお願いします。
 付議事項は、報告事項として「平成22年度組織改正について」と「2010FIFAワールドカップの放送計画について」です。また、その他の事項として「『NHK視聴者サービス報告書2010』の発行について」です。

(会 長)   原案どおり決定します。


(2)平成21年度第4四半期業務報告
(経営企画局)
 放送法第22条の2第3項に定める会長の職務の執行状況を「平成21(2009)年度第4四半期業務報告」のとおり取りまとめましたので、審議をお願いします。
 今回の報告は、第4四半期(1〜3月)の報告にとどまらず年度の総括を行い、22年度事業計画につなげていくためのものとしました。なお、財務諸表については、放送法に基づき6月に「平成21年度業務報告書」とともに総務大臣に提出することにしており、現在、取りまとめの作業中であることから、今回の報告では取り上げていません。
 それでは、報告内容について説明します。
 「平成21〜23年度 NHK経営計画」の初年度である21年度は、計画に掲げたNHKへの接触者率3年後80%と、受信料支払率3年後75%、5年後78%という経営2目標の達成に向けて、一貫した目標・方針管理を確立し、部局目標、その下での部・センター目標をそれぞれが設定して、各四半期の業務報告を軸に、自らPDCAサイクルを回すことで、計画を着実に実行してきました。
 まず、接触者率の向上の状況です。放送文化研究所では年2回、接触者率の調査をしていますが、21年度の結果は、放送だけでなくパソコンや携帯端末を通じたウェブサイトへのアクセス、DVD等の視聴も含めたNHKコンテンツ全体への接触を示す全体リーチが、6月は76.1%、11月は76.8%でした。放送外のリーチは、6月が18.1%、11月が18.2%でした。いずれも20年度と比較して、統計的な有意差はありませんが、数値が上がりました。
 おもな取り組みとして、21年度の番組改定では、報道の強化、日本と世界にインパクトを与えるパワーコンテンツの制作、幅広い視聴者層に向けたニュース・番組作りなどを基本方針としました。
 報道の強化では、報道ビッグプロジェクト「あすの日本」を設置し、雇用危機や、崩壊していく“絆(きずな)”の問題などを、ニュース企画や特集番組で集中的に取り上げました。また、報道局に生活情報部を新設し、政治・経済・社会などの枠にとらわれない、生活に密着したニュースや番組を積極的に発信しました。
 大型コンテンツとしては、3年間にわたる大型企画「プロジェクトJAPAN」がスタートし、スペシャルドラマ「坂の上の雲」の第1部が好評を博しました。また、NHKスペシャルの「MEGAQUAKE 巨大地震」は高い評価を得て、今後、世界各地で放送される予定です。
 さらに、語学番組のクロスメディア展開や、昨年7月の皆既日食、今年2月のバンクーバーオリンピックなどに際して、いつでもどこでもNHKに接してもらうための積極的な3-Screens展開も行いました。
 取り組みの評価については、放送文化研究所による放送評価調査の結果に、成果が現れています。放送番組の評価項目として、「信頼」は、19年度、20年度よりも数値が上昇しました。「満足」は20年度との有意差はありませんが、19年度から比べると確実に数値が上がっています。そして、目標を50%以上とした「親しみ」は、11月には51%、3月には50%となり、年度平均では49%でしたが、20年度より数値が上がりました。新番組の開発や、積極的な番組広報、戦略的な多角的展開とデータ分析などの取り組みが成果につながっていると思います。
 続いて、受信料支払率の向上の状況です。
 支払率については、21年度末の目標を72.2%に設定していましたが、組織をあげて契約・収納活動の強化などに取り組んだ結果、年度末の推計で72.2%となり、年度目標を達成することができました。
 おもな取り組みとして、21年度は、20年10月の訪問集金の廃止に伴い地域スタッフの業務を契約取次や未収対策にパワーシフトするなど、契約・収納活動を強化しました。また、景気低迷の影響で、受信料収入の確保が厳しい状況になったため、6月から、法人委託の拡大など10項目の追加施策や、事業所割引制度を活用した対策強化などを実施しました。
 こうした取り組みの結果、契約総数は、20年度に比べ23万件増加して、3,685万件となりました。しかし、全額免除の対象となる生活保護世帯や市町村民税非課税の障害者世帯が増加し、当初4万件と見込んでいた有料契約から全額免除への変更件数が18万件に拡大しました。このため、契約総数の増加は、年度目標としていた30万件にとどきませんでした。また、未収件数は、20年度に比べ12万件減少しましたが、景気低迷の影響で口座振替率などが低下して新たな未収が発生したこともあり、年間削減目標の25万件にとどきませんでした。こうしたことから、受信料の当年度収納額は6,384億円となり、受信料収入は、22年度に前年度受信料として回収予定の58億円を加えた6,442億円にとどまって、21年度予算を47億円下回る見込みになりました。
 今後の取り組みについて、22年度は、支払率の目標を年度末で73.4%に設定し、契約総数35万件増加、未収削減20万件を目標とします。目標達成に向けては、地域スタッフのパワーシフト、法人委託の拡大、受信確認メッセージの活用、民事手続の拡大などの施策に全力で取り組んでいきます。
 ほかに、テレビ放送の完全デジタル化に向けては、21年度末のデジタル中継放送局と共聴施設を合わせた世帯カバー率が98.6%となりました。今後も小規模なカバーエリアの中継放送局や共聴施設の整備をきめ細かく進め、22年度末には世帯カバー率を99.5%まで拡大します。残りの0.5%の世帯についても、衛星放送による地上デジタル難視聴解消施策である衛星セーフティネットを利用して、地上デジタル放送を全国あまねく視聴できるようにします。
 また、経営計画で経営9方針の第1に掲げた組織風土の改革については、経営目標の達成に向けて組織全体でPDCAサイクルを回し、職員全員で情報共有しながら経営課題に取り組んでいく土壌ができたと思います。
 以上の報告内容が決定されれば、本日の第1117回経営委員会に報告事項として提出します。

(会 長)   原案どおり決定し、本日の経営委員会に報告します。


2 報告事項
(1)平成21年度契約・収納活動結果
(営業局)
 平成21年度の契約・収納活動の結果について報告します。
 まず、放送受信契約総数の増加状況です。21年度は、「平成21〜23年度 NHK経営計画」の初年度として、経営計画に掲げた支払率の向上をめざし、契約・支払い再開活動へのパワーシフトの徹底を図りながら取り組みましたが、年度累計の契約総数増加は22.8万件にとどまり、年度目標の30万件、平成22年度予算の前提とした25万件にとどきませんでした。しかし、20年度を上回る実績は確保しています。なお、障害者免除や公的扶助受給世帯の増加による有料契約から全額免除への変更は、景気低迷の影響もあり、年度累計で18.1万件となりました。
 衛星契約取次数の増加については、委託契約収納員の契約取次活動へのパワーシフトの徹底、ケーブルテレビ事業者や電器店などとの連携強化、事業所契約の見直し等に年間を通じて取り組みました。それに加え、デジタル受信機の普及拡大による効果もあり、年度累計の増加数は69.3万件となり、当初計画の60万件を大きく上回ることができました。
 21年度末の当年度収納額は6,384億円で、20年度より50.2億円の増収となりましたが、21年度の受信料収入は、平成22年度予算の前提とした6,445億円に3億円とどかない見込みとなりました。また、前年度受信料の回収額実績は、年度累計で62.0億円となり、20年度より17.3億円増加して、当初回収予定額の52.6億円を大きく上回りました。前々年度以前受信料の回収額実績は同じく24.1億円となり、この数年で最も高くなっています。この結果、各年度分を合計した収納額は、20年度より72.2億円の増収となりました。
 21年度末の支払い拒否・保留数は、33.8万件で、最も多かった時期(17年度11月末)から94.2万件減少しています。また、未収数については、年度内に新たな発生が84万件あったのに対し、支払い再開などにより96万件減らした結果、当初の削減目標件数には及ばなかったものの、21年度当初より12万件減少して、現在数は231万件となりました。最も未収が多かった時期(17年度9月末)からは、167万件削減しています。
 最後に、口座・クレジットカード支払の増加については、85万件の計画でしたが、年度累計で55.2万件にとどまりました。現在数は3,111.4万件で、契約全体の84.4%を占めています。これは、他の公共料金と比べて高い水準と言えます。
 22年度は、21年度に目標を達成できなかった、契約総数増加、未収件数の削減、口座・クレジットカード支払増加に重点的に力を注いで取り組んでいきます。
 この内容は、本日の経営委員会にも報告します。

(黒木理事)  景気低迷による全額免除の増加など、経済状況の影響を受けて、およそどれくらいの減収が生じたと見ていますか。
(営業局)  細かい分析はこれからですが、全額免除の増加が予算段階での想定を大きく超えただけでなく、口座振替支払の振替率が想定外に低下したことなど、その他の影響も含めて、経済不況がなければあと30数億円は確保できたのではないかと考えています。
(黒木理事)  もう1点、前年度受信料、前々年度以前受信料の未収分の回収が予定以上に進んだのは、訪問集金廃止により未収対策にパワーシフトした効果もあるのではないかと思いますが、22年度の営業活動では、契約取次と未収分の回収の重点の置き方をどう考えていますか。
(営業局)  前年度受信料の回収については、20年度後半期から訪問集金を廃止して継続振込支払等に変更したことによる支払いの“期ずれ”で生じた未収が大半を占めており、その分はもともと21年度に確実に回収できると考えていたものでした。もちろん、活動のパワーシフトや目標達成に向けた追加施策による効果もあったと考えます。22年度の活動については、第1期(4月・5月)は、年度替わりの時期に移動した世帯に対する新住所での契約取次活動に重点を置きますが、6月以降は、収納活動に重点を置いていきたいと思います。限られたマンパワーを有効に活用するため、未収となっている契約者をセグメント化して対象を絞り込むとともに、対象ごとに集中的な対策期間を設定して、取り組んでいくことを考えています。
(吉国理事)  21年度の契約総数増加と未収削減が目標にとどかなかったことは、22年度の計画を下方修正することにつながりませんか。
(営業局)  それについてもさらに分析が必要ですが、契約総数増加と未収削減が目標より不足した一方で、衛星契約取次数は目標を大きく上回っており、その分を差し引きして考える必要があります。結果的に、22年度に若干の影響が出ると考えられますが、先ほど説明した収納活動施策を講じるなど取り組みを強化し、22年度の目標に21年度の不足分を上乗せした額をめざして、増収に努めていきます。

(2)平成21年度収支決算の速報
(経理局)
 平成21年度決算について、事業収支の速報を報告します。
 本件は、本日の経営委員会にも報告事項として提出するものです。
 なお、21年度決算の財務諸表は、6月に理事会の審議・決定、経営委員会の議決を経て、総務大臣に提出することにしていますので、本報告に関する議事内容は非公表とさせていただきます。


(3)考査報告
(考査室)
 平成22年3月から4月下旬にかけてのニュースと番組について考査した内容を報告します。この期間に、ニュースは24項目、番組は事前考査として31本、放送考査として24本を考査しました。その結果、これらの一連の報道や番組は、放送法や国内番組基準などにのっとって「妥当」でした。
 最初に、この期間の概況を報告します。
 ニュースについては、核軍縮や核不拡散をめぐる動き、米軍普天間基地の移設問題、「足利事件」再審で無罪確定の、3つの大きな動きがありました。
 核軍縮・核不拡散をめぐる動きでは、アメリカとロシアが新たな核軍縮条約に調印したことについて、その意義をきちんと伝えるとともに、両国の思惑の一致点と相違点や今後の課題についても説明していました。また、アメリカのオバマ政権による核戦略指針の発表や核セキュリティーサミットの開催については、国際的な核管理体制の確立をめざすオバマ大統領の強い姿勢を紹介していました。一連の動きの中で、それぞれの事柄の意義や課題について、日本国内の反応も含め、中継やリポートでわかりやすく伝えていたと思います。
 米軍普天間基地の移設問題では、動きが継続している中で、一定の期間でせきとめて考査を行っています。今回の対象期間では、鳩山首相がめざす5月末までの決着が厳しさを増しているとされる中で、3月31日(水)の国会での党首討論で、首相が移設先について「腹案がある」と述べるとともに、移設にあたっては受け入れ先となる地元の了解が不可欠であるとの認識を示したことなど、首相や関係閣僚、与野党幹部の発言や、移設先の案のひとつと報じられた鹿児島県徳之島の地元住民の反発などを、詳しく伝えていました。
 3月26日(金)、平成2年に栃木県足利市で女児が殺害された、足利事件の再審で、菅家利和さんの無罪が確定したニュースでは、裁判長が菅家さんに異例の謝罪を行ったことや判決のポイント、今回の司法制度の限界についても記者報告で指摘していました。また、警察庁と検察庁が、有罪の決め手としたDNA鑑定の精度が低かったことや、誤った先入観による捜査があったことなど、えん罪となった捜査の検証結果を公表したことを受けた報道でも、捜査の問題点や再発防止策について整理して伝えていました。
 番組では、平成22年度の新番組を中心に考査しました。考査にあたっては、以前、放送の定時化をめざす開発番組やパイロット版の考査の際に指摘した内容がどう反映されているかも確認しました。
 木曜日夜8時の「新感覚ゲーム クエスタ」については、開発時には番組内にゲームの種類が5つありましたが、新年度は3つのゲームに絞り、内容も整理されて見やすくなりました。木曜日夜10時の「みんなでニホンGO!」については、開発時には、番組で取り上げた言葉について“国民的日本語”に認定するかどうかを多数決で決めるという演出に疑問を呈しましたが、新年度は、“今の時代の言葉”として「GOか、NOか」と問う形に改善されました。日本語への知的好奇心をかきたてる番組になっていると思います。月〜金曜日の朝8時15分からの情報番組「あさイチ」は、幅広い情報を親しみやすく伝えていると思います。パイロット版の放送の際に、中継での特産品の紹介について、宣伝にならないように配慮してほしいと指摘しましたが、新番組では情報提供が適切な形でなされています。
 また、新番組として連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」の考査を行いました。総合テレビの放送時間を朝8時からに変更しましたが、モニターからは「放送時間が15分早まったことで朝の時間帯が有効に使えそうだ」という声が寄せられています。内容についても、第1週のモニター評価による満足度は88%で、21年度後期の「ウェルかめ」から27ポイント向上しました。評価項目では、「くつろぎ・安らぎ・楽しさ」や「出演者の人選」が継続して高い評価を得ているのに加え、「共感・見応え・感動」や「構成・演出」でも評価が上がっています。考査室では、“夫婦のきずな”や“家族愛”という大切なテーマを引き続き視聴者に届けていってほしいと考えます。
 次に、その他の個別のニュースについて報告します。
 4月14日(水)、中国内陸部の青海省玉樹チベット族自治州で発生したマグニチュード7.1の大地震のニュースについては、現地被災住民の不満を抑えようとする中国政府のねらいや、中国のメディアが救援活動を詳報していることを、わかりやすく伝えていました。
 4月10日(土)、タイ・バンコクで、元首相を支持し現政権の退陣を求める民衆のデモ隊と治安部隊とが衝突する中、日本人ジャーナリストが銃弾を受けて死亡した事件では、その男性が亡くなる直前に撮影した映像や目撃者の証言などにより当時の状況を明らかにするとともに、一連のニュースで、混乱が深まっているタイの情勢を逐一伝えていました。
 4月8日(木)から10日(土)にかけて、平沼赳夫元経済産業相と自民党を離党した与謝野馨元財務・金融担当相らによる新党「たちあがれ日本」の結成と、山田宏東京都杉並区長と中田宏前横浜市長らによる新党結成に向けた動きがありました。この一連のニュースでは、2つの新党結成の動きやその背景について、与野党の反応も含めて詳しく伝えるとともに、今年夏に予定される参議院選挙に向けた課題も指摘していました。
 ほかに、この期間のニュースでは、ウナギの完全養殖成功についてNHKの独自映像により伝えていました。
 続いて、個別番組について報告します。
 NHKスペシャル シリーズ「アフリカンドリーム」の第1回「“悲劇の国”が奇跡を起こす」(4月4日(日)放送)では、16年前に民族間の対立による大虐殺が起きたルワンダで、“ディアスポラ(離散者)”と呼ばれる国外脱出者が帰国し、投資や人脈によって飛躍的な経済成長を支えている状況がよくわかりました。人々が民族対立を乗り越え、国づくりにかけている強い思いも伝わりました。ただ、世界の投資マネーがルワンダに集まっている背景について、もう少し知らせてほしかったと思いました。
 今年、韓国併合から100年にあたり日本と朝鮮半島の近現代史を見つめなおす、NHKスペシャル プロジェクトJAPAN シリーズ「日本と朝鮮半島」の第1回「韓国併合への道〜伊藤博文とアン・ジュングン〜」(4月18日(日)放送)では、膨大な資料の検証により、初代韓国統監を務めた伊藤博文とその暗殺者アン・ジュングンの実像に迫っていました。ともに東洋の平和を願いながら、歩む道が大きく分かれた2人の軌跡を詳細に描くことで、日韓の歴史認識の溝がなぜ生まれ深まったのかがよくわかりました。
 衛星ハイビジョンの新番組として4月7日(水)に放送した、いのちドラマチック「ブルドッグ 帝王切開で生まれるイヌ」では、人間がブルドッグを闘犬から愛玩犬へと作り変えてきた歴史や、それゆえの特徴が興味深く描かれていました。番組のコメンテーターを務める分子生物学者の福岡伸一さんが語った、「人の手なしでは出産できない犬に変えた責任がある」という言葉には説得力があり、考えさせられました。この番組については、開発番組の考査で指摘しましたが、遺伝子研究に関して取り上げる際には、引き続き取り扱いに十分配慮してほしいと思います。


(4)「NHKワールドTV」の視聴実態調査の結果について
(国際放送局)
 外国人向けテレビ国際放送の「NHKワールドTV」の視聴実態調査の結果について報告します。NHKワールドTVの視聴実態については、これまで、英語圏のアメリカ・ワシントンDC、香港、イギリスの3か所で、チャンネルの認知度や視聴頻度を定点観測する調査を行ってきましたが、今回は、非英語圏の国々でNHKが実施した調査と、外部の調査機関がアジア地域で実施した調査の2つの結果を報告するものです。
 まず、非英語圏のフランス、イスラエル、およびタイ・バンコクで、NHKが実施した基礎調査の結果です。フランス、イスラエル、バンコクでは、平成21年度後期に、NHKワールドTVの受信環境が整備されました。そこで、放送開始初期段階での認知度・視聴状況を把握しておくため、今年2月に調査を実施しました。
 その結果、フランスでNHKワールドTVという名称を認知している視聴者の割合は、4.3%でした。これは、イギリスで受信環境を整備してから11か月後に実施した調査のデータと近い数値です。また、NHKワールドTVの画像を認知している割合は7.8%で、2つの認知の割合を合計すると、12.2%でした。イスラエルでは、名称と画像の認知の合計が7.0%と1けたにとどまり、認知はいまだ進んでいない状況です。NHKワールドTVの放送が始まってまだ間もないので、フランス、イスラエルとも現状で認知が低いのはやむをえないと考えます。
 一方、バンコクでは、名称認知、画像認知とも20.9%、合計41.8%と高くなっています。ただし、バンコクでは地元の放送局が「篤姫」や「東京カワイイ☆TV」などのNHK番組を放送しており、これらの番組とNHKワールドTVを混同している可能性が高いと考えられますが、それでも健闘しているといえます。香港も含めアジアでは、NHKワールドTVの視聴頻度が高い状況です。
 次に、バンコク、香港、インドネシア・ジャカルタで行われたPAX調査の結果について報告します。PAX調査とは、世界62か国にネットワークを持つ市場調査会社が、アジア太平洋地域の主要都市で、高所得者や企業の幹部、上級公務員などの層を対象に実施しているメディア調査です。その結果のデータは、イギリスのBBCやアメリカのCNNも利用しています。NHKは、平成21年6月〜9月期調査から、バンコク等での調査結果データを購入しています。
 PAX調査の結果、過去30日間の視聴経験をみると、バンコク、香港、ジャカルタいずれの都市でもCNN、BBCの視聴経験者は20〜50%である一方、NHKワールドTVは6〜7%にとどまっています。これは、この調査の対象に、NHKワールドTVが視聴できない人も含まれていることも要因となっています。NHKワールドTVは完全英語放送を開始してまだ1年で、20年近くの放送実績があるBBCやCNNとの普及実態の差は大きいものがあります。
 最後に、2つの調査結果をまとめると、NHKワールドTVは、完全英語放送を始めたのが昨年の2月であり、チャンネルの認知度や視聴頻度は、BBCやCNNとはまだまだ大きな差があります。一方で、アジアでは非英語圏も含めて、NHKワールドTVが健闘しています。
 今後も、定点観測による経年変化や、欧州・アメリカ・アジアの地域比較を続け、NHKワールドTVの視聴者を増やすための施策や番組の向上に生かしていきたいと考えます。視聴者増に向けた施策としては、現在、EPG(電子番組ガイド)により番組をお知らせしているのに加え、現地の番組ガイド誌への広告掲載や、地元の衛星放送・CATVのプロモーションチャンネルに現地語のスポット広告を放送するなど、PRを工夫していきます。また、番組内容が大事ですので、新たな開発番組のトライアル枠を設けるなどして魅力ある番組の制作に努めます。さらに、国際番組見本市にも積極的に参加し、NHKワールドTVの魅力を伝えていきたいと考えています。
 この内容は、本日の経営委員会にも報告します。

(金田専務理事)  今後、調査の対象地域を広げる計画はありますか。
(国際放送局)  今後は、定点観測として、香港、ワシントンDC、イギリスでの調査を継続するとともに、韓国やベトナムなどアジアを中心に、受信環境の整備にあわせて、調査の対象地域を広げていきます。

(5)平成21年度事業業務実施結果
(視聴者サービス局)
 平成21年度の事業業務実施結果について報告します。
 公開番組やイベントを全国で実施する際、その成果・効果を数量的にとらえる取り組みを、平成18年度から行っています。イベントを通じて公共放送への理解がどれだけ進んだかについて、「NHKへの接触機会(イベント実施件数・参加者数)」、「視聴者との結びつき強化(アンケートによる視聴者意向)」、「営業業績への貢献」の3つの視点から把握しようとするものです。
 まず、「NHKへの接触機会」について報告します。平成21年度にNHKが全国で実施したイベントとしては、教育・教養・こどもイベント(「NHK全国学校音楽コンクール」、「NHK放送体験クラブ」ほか)、公開番組等(「NHKのど自慢」、「BS日本のうた」ほか)、福祉イベント(「NHK歳末・海外たすけあい」ほか)、スポーツイベント(「NHK杯国際フィギュアスケート競技大会」ほか)、美術展・展覧会(「ゴーギャン展」、「皇室の名宝展」ほか)、会館公開・展示(「渋谷DEどーも」ほか)、福祉・食料・環境キャンペーン等(「ふるさとの食にっぽんの食」、「SAVE THE FUTURE」ほか)があります。その総実施件数は2,609件、総参加者数は約1,674万人で、それぞれ20年度より微減していますが、ほとんど変化はありませんでした。このうち本部以外の地域で実施した件数は2,189件、その参加者数は約1,240万人となっており、地域では、イベントが視聴者とのふれあいの場として大きな役割を果たしています。
 次に、「視聴者との結びつき」については、イベント来場者・参加者の意向や意識の変化、参加傾向等を測るため、平成21年度は、全国の301件のイベントでアンケート調査を実施し、11万2,940人の参加者から回答を得ました。アンケートの項目としては、これまでの「イベントの満足度」、「NHKの事業活動への理解度」、「受信料に対する考え方」に加え、NHKへの接触の度合いを測るため「NHKのイベントへの参加回数」を新設しました。
 アンケートの結果について説明します。イベント参加者の満足度は83.0%で、20年度の80.8%からさらに向上しています。特に、クラシック系の音楽イベントでは86.7%、子ども向けの公開番組では86.2%、若者・子ども向けの参加型イベントでは85.7%と、質の高い音楽イベントや、未来を担う若い世代を対象とした公開番組・イベントで、高い満足度が得られています。「NHKに対する理解度」では、「理解が深まった」とする回答が68.3%で、20年度の64.0%を上回り、年々向上しています。番組に関する講演会系のイベントや、クラシック系の音楽番組イベント、音楽芸能系の公開番組では「理解が深まった」という回答が7割を超えており、NHKの番組作りに接することができる公開番組や、番組の出演者・制作担当者が参加者に直接語りかける講演会系イベントが、NHKに対する理解促進に大きな効果を発揮しています。「受信料に対する考え方」については、「受信料を支払う意義がある」という回答が64.1%となりました。これも20年度の61.5%を上回り、年々向上しています。音楽芸能系の公開番組では67.6%と3分の2を超えており、豪華なステージイベントや公開番組は、受信料をお支払いいただく意識を高めるのに有効と言えます。一方で、若者を対象とするイベントでは、「支払う意義がある」という回答が44.8%にとどまりました。これらのイベントでも、満足度は非常に高い結果が得られており、若者向けイベントの満足度と受信料支払いへの意識にかい離が見られます。
 新設した「NHKのイベントへの参加回数」については、NHKのイベントに初めて参加したという方の割合が60.6%に上りました。およそ1千万人を超える方々が、21年度に初めてNHKのイベントに参加したことになります。特に地域では、初めて参加した方が64.1%となっており、地域においては、イベントがNHKと視聴者との接触の手段として大きく機能しています。なお、若い世代に向けたイベントについて見ると、若い世代を対象として新規に開発したイベントでは、参加者の75.6%が初めての参加者でした。また、若い世代向けイベントの参加者のうち、40代以下の方は81.4%でした。こうした点から、これらのイベントについては、若い世代のNHKへの接触を拡大するという当初の目的を達成していると考えます。
 第3点の「営業業績への貢献」については、受信料をお支払いいただいているお客様への優待施策を展開するなど、営業部門と連携しながら、イベントをきっかけとした受信料支払率の向上に取り組みました。21年度は、受信料をお支払いいただいている方に限定したイベント観覧募集に加え、口座振替でお支払いいただいている方に送付する「番組・イベントガイド」に、美術展等の有料イベント30件の割引券を添付する試みも行いました。こうした受信料をお支払いいただいている方への優待サービスは、お客様の間でもしだいに浸透してきており、今後も効果的に展開していきたいと思います。
 最後に、平成22年度事業業務については、「地域貢献」、「支持層拡大」、「文化振興・社会貢献」、「地上・BSデジタル普及」、「営業貢献」の5つを重点事項として取り組んでいきます。中でも「デジタル普及」については、高齢者向けやファミリー層向けなど対象を絞って、効果的な普及・周知イベントを全国で展開していきます。


(6)放送番組審議会議事録(資料)
 編成局および国際放送局から、中央放送番組審議会、国際放送番組審議会、全国の地方放送番組審議会(関東甲信越、近畿、中部、中国、九州、東北、北海道、四国)の平成22年3月開催分の議事録についての報告(注)。

 注: 放送番組審議会の内容は、NHKホームページの「NHK経営情報」のなかに掲載しています。

以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成22年 5月18日
                     会 長  福 地 茂 雄

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