日本放送協会 理事会議事録  (平成22年 3月 9日開催分)
平成22年 3月26日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成22年 3月 9日(火) 午前9時00分〜9時20分

<出   席   者>
 福地会長、今井副会長、永井技師長、金田専務理事、日向専務理事、
 溝口理事、八幡理事、大西理事、今井理事、黒木理事、塚田理事、
 吉国理事

 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 福地会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)第1114回経営委員会付議事項の追加について
(2)日本放送協会放送受信規約の一部変更について

2 報告事項
(1)衛星デジタル放送におけるメッセージ運用方法の変更に関する意見
   募集の結果について
(2)放送法等の一部を改正する法律案の概要について

議事経過

1 審議事項
(1)第1114回経営委員会付議事項の追加について
(経営企画局)
 本日開催される第1114回経営委員会付議事項の追加について審議をお願いします。
 3月2日の理事会で審議、決定された事項のほかに、報告事項として「衛星デジタル放送におけるメッセージ運用方法の変更に関する意見募集の結果について」を追加したいと思います。

(会 長)   原案どおり決定します。


(2)日本放送協会放送受信規約の一部変更について
(営業局)
 地上デジタル放送の難視聴解消のため、暫定的難視聴対策事業にかかる放送として社団法人デジタル放送推進協会が行う「地デジ難視対策衛星放送」(いわゆる「衛星セーフティネット」)受信者の放送受信契約の種別に関して、日本放送協会放送受信規約(以下、「受信規約」)の一部を変更したいので、審議をお願いします。
 衛星放送による地デジ難視聴解消事業は、本年3月から5年間の暫定措置であり、対象者が限定されることから、これに関する規定は、受信規約の付則で定めます。一部、本則の関連個所の字句も修正します。付則で規定する内容は次のとおりです。
 国が定める地デジ難視対策衛星放送対象リスト(ホワイトリスト)に、デジタル放送難視聴地区、改修困難共聴もしくはデジタル放送混信地区として掲載された地域を基準とし別に定める要件を備えた地域等において、地デジ難視対策衛星放送を受信する場合は、契約種別を地上契約とします。
 地デジ難視対策衛星放送の受信者が、同放送の対応受信機と未対応受信機など、2種類以上の受信機を設置している場合や、地上契約から衛星契約に変更し再び地上契約に戻すなど、月に2回以上の契約種別の変更が生じた場合であっても、契約種別は地上契約とします。また、対象者が衛星契約を締結している場合は、すでにホワイトリストによって対象であることが特定されているので、地上契約に変更する際には、放送受信契約書の提出を省略できることとします。
 新しい受信規約の施行前、平成22年3月に地デジ難視対策衛星放送を受信した場合は、受信料額が、さかのぼって地上契約を適用した場合と同額になるように、平成22年度第1期の支払額(4月・5月分)を減額します。
 受信機を設置した場所が地デジ難視対策衛星放送の対象地域でなくなった場合は、所定の放送受信契約を締結するものとします。
 なお、自然の地形による難視聴地域において特別契約を締結している受信者が、地デジ難視対策衛星放送を受信できるにもかかわらず、それを受信しない場合は、衛星契約となる不利益変更を回避するため、契約種別は引き続き特別契約とします。
 本件が了承されれば、本日の第1114回経営委員会に議決事項として提出し、経営委員会の議決を得た後に、総務大臣に認可申請します。NHKの平成22年度収支予算、事業計画及び資金計画が国会に承認されることを前提に大臣認可が得られれば、新しい受信規約を4月1日から施行したいと考えます。

(会 長)   原案どおり了承し、本日の経営委員会に諮ります。


2 報告事項
(1)衛星デジタル放送におけるメッセージ運用方法の変更に関する意見
   募集の結果について
(営業局)
 衛星デジタル放送において、受信機設置の連絡をお願いするためにテレビ画面に表示しているメッセージについて、連絡を受けてメッセージを消去した後も放送受信契約を締結していただけない受信者に対し、あらためて契約のお届けをお願いするメッセージを画面に表示するよう、運用方法を変更することを検討しています。検討にあたって、本年1月19日の理事会決定に基づき、視聴者の皆さまからの意見を募集しました。行政手続法では、行政機関が命令等を定めようとするときは、広く一般の意見を求めなければならないと定めており、NHKは行政機関ではありませんが、同法の規定に準じて意見募集を行ったものです。その趣旨は、視聴者の皆さまから有益なご意見をいただき、検討の参考にしようとするもので、個々の論点について賛否を問い、意見が多数の側に決定するものではありません。
 この意見募集の結果について報告します。
 意見募集は、平成22年1月26日から2月8日までの2週間実施しました。期間中、NHKの公開ホームページに募集のサイトを常時掲載したほか、放送や報道各社への発表を通じて周知した結果、95件の意見が電子メール(92件)や郵送(3件)で寄せられました。
 おもな意見は、大きく5つに分類できます。それぞれに対してのNHKの考え方とあわせて紹介します。
 1つ目は「NHKの案に賛成。公平負担のために実施すべきである」という意見です。これについては、NHKの考え方を支持するものとして承ります。2つ目は「常時表示するなど、表示面積や位置・時間を工夫すべきである」という意見です。表示面積等の運用方法については、今後の契約届出状況等を踏まえ、必要に応じて適宜見直していくことにしています。3つ目は「スクランブル化すべきである」という意見です。これに対しNHKは、「公共放送の財源は受信料がふさわしく、スクランブル化は公共放送の理念と矛盾する」と考えます。4つ目は「メッセージについての周知を徹底すべき」、あるいは、「すでに契約している視聴者にメッセージを表示することがないようにすべき」など、「現行の設置確認メッセージの運用方法を改善すべきである」という意見です。NHKでは、メッセージの仕組みについて、視聴者の皆さまに十分に理解していただくよう引き続き努力するとともに、契約していただいたお客様に負担がかからないよう、引き続き事前消去の徹底や消去体制の整備に努めていきます。最後は、「メッセージシステムは廃止すべきである」という意見です。これに対しては、NHKは、「メッセージシステムは、衛星デジタル放送における受信機の設置把握と契約を、効率的かつ効果的に実施するために有効なシステムであり、公平負担の徹底のために、運用方法の改善等を図りながら、引き続き運用する」ことにしたいと考えています。
 以上のように、意見募集の結果としては、NHKの考え方を支持する意見がある一方で、現行の設置確認メッセージの運用改善やスクランブル化を望む声も寄せられていますが、NHKの考え方を十分に説明できるものと考えます。こうした理由などから、実施内容の骨格を変更する必要はないと判断します。個別の指摘については、今後の運用の中で、その趣旨を踏まえながら反映に努めていきます。
 この結果は、本日の第1114回経営委員会に報告します。その後すみやかに、NHKのホームページに掲載して公表します。公表にあたっては、募集の趣旨に沿って寄せられた意見は、要約したうえですべて掲載します。また、分類が共通する意見に対し一括して、NHKの考え方を公表します。さらに、個人情報は抹消したうえで、すべての意見をお客様窓口の「NHKハートプラザ」に備え置いて、閲覧できるようにします。


(2)放送法等の一部を改正する法律案の概要について
(経営企画局)
 総務省では、通信と放送の融合・連携に対応した総合的な法制度に向けて、放送法等の改正を検討してきましたが、その法律案が3月5日の閣議を経て国会に提出されました。その概要について、NHKに関係のある部分を中心に、いくつかのポイントに整理して報告します。
 1点目は、通信と放送の法体系の見直しです。現行は、放送の分野において、対象とする事業者別に「放送法」、「有線ラジオ放送法」、「有線テレビジョン放送法」、「電気通信役務利用放送法」が制定されていますが、これら4法が「放送法」にまとめられ、他の3法は廃止されます。通信の分野では、「電気通信事業法」と「有線放送電話法」の2法が「電気通信事業法」にまとめられ、「有線放送電話法」は廃止されます。これにより、新たな通信・放送の法体系は、「放送法」、「電気通信事業法」、「電波法」、「有線電気通信法」の4法に整理され、通信と放送の間の壁をなくした総合的なものとなります。
 2点目は、「放送」の定義の変更です。現行放送法では、「放送」を「公衆によって直接受信されることを目的とする無線通信の送信」と定義していますが、新放送法では、「無線通信の送信」を「電気通信の送信」としています。つまり、従来は無線で送信されるものだけを「放送」としていましたが、新放送法では、有線により送信されるものも「放送」となります。さらに、新しい定義による「放送」は、現在の無線による地上放送や衛星放送、東経110度CS放送などの「基幹放送」と、それ以外の、東経124度・128度CS放送等の無線放送や、CATV、IPTV等の有線放送などの「一般放送」に区分されることになります。
 3点目は、放送の主体概念の変更です。現行は、放送を行っている主体は、物理的に電波を発射する設備を設置・運用する側(ハード)であり、その事業者が、放送番組を受信者に送ろうと意図する側(ソフト)の事業者と異なる場合には、ソフトがハードに放送を委託し、ハードはそれを受託して放送を行うなどの制度があります。それが新放送法では、放送を行う主体はソフトの側となり、従来の受委託放送制度は廃止されます。
 4点目は、ハードとソフトの関係です。新放送法では、基幹放送について、無線局の設置・運用(ハード)と放送の業務(ソフト)を分離することを希望する者のために、ハードの「免許」とソフトの「認定」に手続きを分離する制度を定めています。一方で、放送の業務を行う者が自ら送信設備を設置・運用する、ハードとソフトの一致を希望する地上基幹放送事業者のために、「免許」のみで足りる現行制度も併存させ、ハード・ソフトの分離と一致を選択可能にしています。ただし、NHKについては、地上基幹放送はハード・ソフトの一致により行うこと、衛星基幹放送は、ハードはNHK以外の者としNHKはソフトのみを行うことが規定されています。
 5点目は、NHKの「設置目的」における放送業務のあり方です。新放送法のNHKの設置目的を新しい放送の定義に照らしてみると、その条文では、国内放送は「基幹放送」を行うこと、つまり従来と同じく無線のみで放送を行うこととされています。一方、国際放送については、現行の無線のみではなく、無線、有線を問わずに放送できることとなります。また、「放送及びその受信の進歩発達に必要な業務」についても、無線、有線を問わずに実施できることとなります。
 6点目は、NHKの統治機構の見直しです。経営委員会は、委員12人と会長によって組織されることとなります。これに伴い、関連規定も整備されます。会長は、原則として経営委員会の議決権を有することになりますが、会長の任免、委員長やその職務代行者の互選・選任等の人事に関する案件や、役員の報酬・退職金支給基準、服務準則等に関する案件など、委員会の決定に参加できないケースが放送法で個別に定められます。また、役員の欠格事由が見直されています。具体的には、現行は、「放送機器の製造業者、販売業者、その役員、その議決権の10分の1以上を有する者」に1年以内に該当した者は、経営委員、および会長、副会長、理事に就任できませんが、新放送法では、1年以内に退任した者でも、就任可能となります。同様に、「新聞社・通信社等、その役員、その議決権の10分の1を有する者」に1年以内に該当した者、およびこれらの事業者の団体の役員に1年以内に該当した者は、これまで会長、副会長、理事に就任できませんでしたが、1年以内に退任した者でも就任可能になります。
 7点目は、放送受信契約の義務の対象を明確化したことです。ケーブルテレビ事業者等がNHKの放送を受信してその内容に変更を加えず同時に有線で送信することを、これまで「再送信」と呼んできましたが、新放送法では、有線によるものも「放送」となるため、これを「再放送」と呼ぶことになります。現行法でも、「再送信」を受信する場合は、受信契約の義務があるものと解されてきましたが、新放送法では準用規定を置くことで、「再放送」の受信者の受信契約義務が明確に規定されます。
 8点目は、放送における安全・信頼性の確保です。放送中止事故の再発防止等のため、設備の維持に関する規定や、重大な放送事故が発生した場合の総務大臣への報告義務を定めた規定が整備されます。
 9点目は、放送番組の種別の公表です。教養番組、教育番組、報道番組、娯楽番組の調和を保たなければならないとする番組調和原則の適用を受ける基幹放送事業者は、放送番組の種別の基準を定めるときは放送番組審議機関に諮問するほか、放送番組の種別、および種別ごとの放送時間を審議機関に報告し、公表することが義務づけられます。
 これらの改正の施行日は、項目により異なっています。役員の欠格事由の見直しは、法律の「公布の日」、経営委員会の構成員の見直しとその関連規定は、「公布の日から3か月を超えない範囲内において政令で定める日」、放送番組の種別の公表関係等は、「公布の日から6か月を超えない範囲内において政令で定める日」、それ以外は、「公布の日から1年を超えない範囲内において政令で定める日」が、それぞれの施行日となります。
 なお、いわゆる「マスメディア集中排除原則」については法律の施行後3年以内に、それ以外については同じく5年以内に、実施状況について検討を行い、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずることとされています。
 以上の内容を、本日の経営委員会にも報告します。



以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成22年 3月23日
                     会 長  福 地 茂 雄

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