日本放送協会 理事会議事録  (平成20年10月 6日開催分)
平成20年 10月24日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成20年10月 6日(月) 午後4時30分〜5時 5分

<出   席   者>
 福地会長、今井副会長、金田専務理事、日向理事、溝口理事、
 八幡理事、永井理事、大西理事、関根理事、今井理事

 多賀谷監査委員、井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 福地会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)第1079回経営委員会付議事項の追加について
(2)次期経営計画について
(3)「放送法第9条第2項第2号の業務の基準」の変更等について

2 報告事項
(1)考査報告
(2)NHK倫理・行動憲章、行動指針の改定について

議事経過

1 審議事項
(1)第1079回経営委員会付議事項の追加について
(総合企画室)
 10月7日に開催される第1079回経営委員会付議事項の追加について審議をお願いします。
 9月30日の理事会で審議、決定された事項のほかに、報告事項として「NHK倫理・行動憲章、行動指針の改定について」を追加したいと思います。

(会 長) 原案どおり決定します。


(2)次期経営計画について
(総合企画室)  
 「平成21年〜23年度 NHK経営計画」について審議をお願いします。
 平成21年度からの「3か年経営計画」は、完全デジタル化や放送と通信の融合といった「放送をめぐる環境」が大きく変わる中で、構造改革を進め、公共放送としての使命、役割を強化し、質の高い放送やサービスをお届けすることで、視聴者の皆さまにとって「いつでも、どこでも、もっと身近にNHK」を実現するという基本的な考え方で、3月以降、執行部、全国の職場、経営委員会での議論や視聴者の皆さまへの意見募集等を踏まえまとめてきました。
 本日、「いつでも、どこでも、もっと身近にNHK 平成21〜23年度 NHK経営計画」を理事会で承認いただき、明日の第1079回経営委員会に議決事項として提出したいと思います。

(会 長)  「平成21〜23年度 NHK経営計画」は、経営委員会が3月11日に執行部に提出した「中期経営計画策定に資する重要検討事項のまとめ」を踏まえて、具体的な策定作業を行ってきました。
 この経営委員会の「重要検討事項のまとめ」では、「収支計画上は、デジタル化に向けた3か年計画が適当と考える。ただ、基本的な構想については、デジタル化後をにらみ、5か年程度の中長期のレンジで考えていただきたい。」という指摘があり、これに基づき「収支計画は3年、基本構想は5年程度」として、この「平成21〜23年度の3か年経営計画」を策定してきたものです。
 以来、執行部の討議はもとより、全国それぞれの職場や、部局をこえた組織横断型の若手職員の緊急プロジェクト、局長会議等さまざまな場で、役職員総がかりで討議を重ねてきました。
 視聴者の皆さまには8月に、8月26日現在の「平成21〜23年度 NHK経営計画(案)の説明資料」をお示しし、ご意見を募集し、172件が寄せられました。
 経営委員会には、5月27日の委員会で「NHK次期経営計画の基本コンセプト」を示し、それ以降、毎回検討事項や検討内容について執行部から説明し、意見交換やしんしな議論を重ねてまいりました。
 以上の経緯を経て、役職員一丸となり、全員参加でこの「平成21〜23年度の3か年経営計画」をまとめてきました。
(副会長)

 この経営計画を策定するにあたり、100時間を超える役員討議を行ってまいりました。また、役員が手分けをして、地域放送局にも出向き、現場の意見を聞くなど、最善を尽くした誇りの持てる計画だと思います。私は、この計画に賛成いたします。

(会 長)  他に意見はありますか。
 原案を了承し、経営委員会に諮ることにします。


(3)「放送法第9条第2項第2号の業務の基準」の変更等について
(総合企画室) 
 「放送法第9条第2項第2号の業務の基準」(以下「実施基準」という。)については、本年12月に「NHKオンデマンドサービス」を開始することなどに対応するため変更することとし、9月9日の理事会、経営委員会で審議のうえ、実施基準の変更案を含む一連の文書を対象に、9月12日から30日まで視聴者の皆さまからの意見募集を行いました。
 その結果、合計37件のご意見が寄せられました。全体として、多様なご意見を頂きましたが、実施基準の変更案については、特に修正する必要はないものと判断しました。ただし、改めて内容を精査して、規定内容の明確化や言葉遣いの統一などのため字句修正を行いたいと考えます。
 本議案決定のうえは、この実施基準の変更案を定款第13条第1項第1号スに基づき第1079回経営委員会に議決事項として提出し、議決が得られれば、総務大臣に認可を申請します。また、それにあわせて協会のホームページで公表します。
 なお、総務大臣への認可申請後、11月12日の電波監理審議会で諮問・答申が行われる見込みです。総務大臣の認可を得たうえで、11月20日から新たな基準を施行したいと考えています。
 また、頂いたご意見は、これに対するNHKの考え方とともに公表したいと考えます。受信料を財源として行う業務の規模の上限を40億円程度とする根拠を具体的に示すべきだというご意見が複数ありましたが、この点については、実施基準の変更案に関連するNHKの考え方を示す文書に資料を追加し、経費の増加要素等についての具体的な考え方を公表する考えです。また、NHKオンデマンドサービスについて、有料ではなく受信料で実施すべきとするなどのご意見がありましたが、これらについては、このサービスの仕組み等に関する説明を加えたいと考えます。
 以上について、審議をお願いします。

(会 長) 原案を了承し、経営委員会に諮ることにします。


2 報告事項
(1)考査報告
(考査室)  

 8月下旬から9月にかけて放送したニュースと番組について報告します。
 まず、ニュースについて、9月24日(水)の麻生政権スタートの報道では、特設ニュースで組閣情報を交えながら、首相指名選挙を中継しました。また、午後6時から8時までニュース枠を拡大し、麻生新首相が自ら閣僚名簿を読み上げる様子を伝えました。29日には、初の所信表明演説を放送し、民主党の補正予算案への賛否を問いただすなど対決姿勢を打ち出すもようを伝えました。考査室としては、“麻生流”が強く出た組閣や所信表明演説だったことをわかりやすく伝えていた点を評価します。
 次に、史上最大の経営破たんに関する一連のニュースについてです。9月15日(月)、アメリカ証券会社第4位のリーマン・ブラザーズがアメリカ史上最大の64兆円余りの負債額を出して破たんし、3位のメリルリンチが銀行に買収されました。16日には日経平均株価1万1,609円と3年2か月ぶりの低水準となり、17日の「おはよう日本」で、記者は「円高による輸出企業の収益悪化や、株安による設備投資・個人消費の落ち込み、金融機関の経営悪化で、日本経済の先行きも一気に不透明になった」と解説していました。考査室の評価としては、経営破たんの経緯や日本への影響を専門家の話や記者リポートで幅広く伝えていたと思います。
 9月5日(金)からの食品偽装の一連のニュースについて、考査室では16日(火)までの動きを2回に分けて考査しました。大阪の加工米販売会社「三笠フーズ」が輸入米のうち、カビやメタミドホスなどの残留農薬が見つかった米を食用として転売していたことを報じました。一部は製品化されており、6日(土)から焼酎メーカーなどが自主回収を始めたことや、農林水産省が96回の立ち入り調査でも不正を見抜けなかったことなどを伝え、さらに16日(火)には三笠フーズが転売した米の流通先は375社にのぼることや、三笠フーズ以外に愛知、新潟の3業者も不正転売していた事実を明らかにしました。考査室としては、次々に明らかになる不正転売を逐次伝え、広がる影響も詳しく紹介していたと思います。
 大相撲界の大麻問題に関するニュースでは、6日(土)午前11時すぎ、「大相撲の露鵬と白露山 専門機関の分析でも大麻陽性反応」とスーパーで速報し、8日(月)、日本相撲協会理事会で北の湖理事長が責任をとって辞任し、両関取を解雇処分にしたことを報じました。記者は、「北の湖理事長は不祥事の度に“師匠の責任”を強調してきたが、自らの部屋の不祥事に責任をとらざるを得なかった」と解説しました。考査室の評価として、専門機関の分析結果を他社に先駆けて伝え、相撲協会の責任を厳しく指摘したと思います。
 続いて、いくつかの番組について、リスクマネジメントのため放送前にVTRを試写して、事前考査したものを含めて報告します。
 9月5日(金)に放送したNHKスペシャル「“活断層大地震”の脅威〜情報公開をどう進めるか」について事前考査を実施しました。指摘事項は特にありませんでした。番組では、岩手・宮城内陸地震の被災者たちが活断層の存在をまったく知らなかったという事実や、大阪上町断層帯の活断層の“ずれ”が引き起こす被害の大きさをCG映像で伝えました。一方、情報公開を進めるニュージーランドでの土地利用を監視する取り組みも紹介しました。考査室では、約2,000の活断層の危険性や情報公開の重要性をわかりやすく伝えていたと評価しています。モニターからは、「国を挙げて取り組むニュージーランドと日本の差がよく見えた」という声が寄せられました。
 2夜連続で放送したNHKスペシャル「戦場 心の傷」の第2夜、9月15日(月)「ママはイラクへ行った」では、イラク戦争に参加した1万人以上の女性兵士の3人に1人が母親であるという事実を背景に、戦場で12歳の男の子を射殺し、わが子を愛せないという心の傷を負ってしまった母親兵士の姿を伝えました。そして帰還後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩む母親を気遣う家族の戸惑いと不安を描いていました。考査室としては、“母親兵士”までが銃を取って戦うイラク戦争の実態がよく描かれており、今後も幅広い視点から指摘し、伝えてほしいと思いました。「子どもを撃ったためにわが子を愛せない女性の苦しみが伝わりつらかった」というモニターの声がありました。
 9月22日(月)放送のクローズアップ現代「アメリカ発 金融危機は食い止められるか」では、リーマンブラザーズの経営破たんに始まった金融機関の混乱とアメリカ政府の対応を伝えました。そしてCDS(Credit default swap)が62兆ドルにのぼり、CDS焦げ付きが実体経済に及ぼす影響が懸念されることを明らかにしました。考査室の評価として、今回の金融機関の混乱とアメリカ政府の揺れ動く対応を整理して紹介していたと思います。また、ゲストの解説でCDSの仕組みや今に至る経緯もよくわかりました。モニターからは、「アメリカ保険会社の破たんや金融市場の動向、公的資金投入の問題点やCDSという新たな課題についてよく整理されていて勉強になった」という声が寄せられました。
 教育テレビで9月22日(月)から2夜連続で放送した福祉ネットワーク「なるほど!なっとく介護」では言語障害を取り上げ、第1夜は「マヒ性構音障害」を、第2夜は「失語症」について紹介しました。脳内出血などが原因で起こる言語障害は、2つに区分され、「マヒ性構音障害」では、正しく話せるが発音が不明瞭だという特徴があります。一方「失語症」は絵を描いたり歌を歌うなどはできるが、字や文章を書くのは苦手という特徴があり、両者の違いを明確に伝え、詳しく紹介しました。考査室としては、「マヒ性構音障害」と「失語症」、それぞれにできることと苦手なことがあるのがよくわかり、会話のコツや話し方の違いをわかりやすく伝えていたと思います。モニターからは、「絵本や音声ツールの紹介は介護の初心者に役立つ情報だった」という声が寄せられました。
 衛星ハイビジョンで9月3日(水)に放送した「わたしが子どもだったころ『張本勲〜熱い手』」については台本で事前考査を実施しました。指摘事項は特にありませんでした。この番組は、3,085本の最多安打記録を持つ張本勲さんの知られざる少年時代を描いたドキュメンタリーで、原爆による姉の死、右手の大やけど、差別に苦しんだ広島時代の回想を交え、母を貧乏から救いたい一心で、プロ野球選手を目指す強い思いを描いています。考査室では、いつも豪快な張本さんが涙を浮かべて思い出を語る姿が心を打ち、少年時代のつらい体験が大記録の原動力だったことがよく描かれていたと評価しています。「人知れず努力を重ねた張本さんの半生を通し、苦労は報われることを実感した」とのモニター報告がありました。
 仙台放送局が制作し、9月11日(木)に放送した、ハイビジョンふるさと発「キミだって愛されてる〜宮城・DJ保護司と少年たち」について、プライバシーへの配慮がなされているかという視点でも事前考査を実施しましたが、指摘事項はありませんでした。この番組は、少年たちの更生を手助けする保護司で、仙台の少年院で月に一度、音楽番組のDJをボランティアで担当している女性の8か月を追ったドキュメンタリーです。この音楽番組に寄せられる更生中のさまざまな少年の悩みに答えるボランティアの女性DJ保護司と、家族の愛情が少年を変え、保護観察が解け独り立ちしていく少年の姿を描いています。考査室としては、家族関係が希薄化する中、難しい少年たちの更生への道筋が、保護司を通して具体的に描かれていたと評価します。モニターからは、「ボランティアとは思えない熱い思いと少年たちへの優しいまなざしに感動した」「プライバシーへの配慮がきちんとなされていた取材だった」などの声が寄せられています。


(2) NHK倫理・行動憲章、行動指針の改定について
(八幡 理事)  

 9月30日に開催された第6回リスクマネジメント委員会においてNHK倫理・行動憲章、行動指針の改定について審議を行い、10月1日に会長の決定を得ましたので報告します。
 改定の理由は、1インサイダー取引事件の反省に立ち、全役職員が公共放送人として高い倫理観を持つよう周知・徹底する。2ガバナンス強化などを主旨とする放送法の改正を受けて実施する。3新しい経営計画の策定にあわせて実施する。以上の3点です。
 改定のコンセプトは、主語を「私たち」にすることで、簡潔でわかりやすい表現にしました。また、第1次案を作成後に役職員から広く意見を求め、それを踏まえて2次案を作成し、自分たちの憲章・指針という意識を高めることを目指しました。内容については、「公共放送の使命」、「単に法令を順守するだけでなくさまざまな規範に照らして自分の行動や判断を自問することが必要であること」、「創造性」を強調するなど、自らの行動を促す内容を心がけました。
 改定のポイントは、倫理・行動憲章では、行動の基本を改定前の7項目から5項目に整理しました。「環境への配慮」、「職場の人権」、「安全管理」の3項目を「活力あるより良い職場環境」の1項目にまとめ、全部で5項目にしています。行動指針では、改定前の38指針から一部を統合し、重複している指針を整理するなどして30指針にしました。新設した項目は「大災害時の対応」、「創造性を重んじる職場」、「現場での課題改善努力」です。また、インサイダー取引禁止を明記しました。
 携行できるように名刺サイズの大きさにして全職員に配付します。またコンプライアンス推進月間の取り組みや、eラーニングなどにより周知徹底、理解促進を図ります。
 この件は、この後10月7日の経営委員会に報告します。



以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成20年 10月 21日
                     会 長  福 地 茂 雄

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