日本放送協会 理事会議事録  (平成20年 9月 2日開催分)
平成20年 9月19日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成20年 9月 2日(火) 午前9時00分〜10時20分

<出   席   者>
 福地会長、今井副会長、金田専務理事、溝口理事、八幡理事
 永井理事、後藤理事、大西理事、関根理事、今井理事

 多賀谷監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 福地会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)第1077回経営委員会付議事項について
(2)「放送法第9条第2項第2号の業務の基準」の変更案および同変更
   案に関する意見募集の実施について
(3)平成20年度後半期の国内放送番組の編成について
(4)平成20年度後半期の国際放送番組の編成について
(5)視聴者対応報告(平成20年7月)について

2 報告事項
(1)20年7月視聴者満足(CS)向上活動報告
(2)監査結果報告
(3)考査報告
(4)日本放送協会共済会の平成19年度決算について
(5)日本放送協会健康保険組合 平成19年度収入支出決算について

議事経過
1 審議事項
(1)第1077回経営委員会付議事項について
(総合企画室)
 9月9日(火)に開催される第1077回経営委員会付議事項について審議をお願いします。
 付議事項は、審議事項として「次期経営計画について」と「『放送法第9条第2項第2号の業務の基準』の変更案について」です。また、報告事項は、「平成20年度後半期の国内放送番組の編成について」、「平成20年度後半期の国際放送番組の編成について」、「視聴者対応報告(平成20年7月)について」、「契約・収納活動の状況(平成20年7月)」、そして「財政の現況(平成20年7月)」です。

(会 長) 原案どおり決定します。


(2)「放送法第9条第2項第2号の業務の基準」の変更案および同変
   更案に関する意見募集の実施について
(総合企画室)
 「既放送番組等を電気通信回線を通じて一般の利用に供する業務」の実施基準である「放送法第9条第2項第2号の業務の基準」(以下「実施基準」という。)については、「NHKオンデマンドサービス」の12月開始等に対応するため、今年3月に大臣認可を受けた現在の「実施基準」の内容の見直しを行うこととし、また、変更のための手続きの一環として視聴者からの意見募集を実施することとしたいので、審議をお願いします。
 「実施基準」の変更案としては、受信料を財源として行うものについて、現在の「実施基準」のうち業務の規模、既放送番組等の提供の態様等に関する内容を見直すとともに、新たに基本計画の作成・公表等についての定めを置く考えです。また、有料で行う「NHKオンデマンドサービス」の開始にあたって、有料サービスに関する部分を新たに設け、利用者保護や公正競争の確保の観点から、利用規約の作成、利用者の個人情報保護、利用料金についての考え方、区分経理等に関する定めを置く考えです。
 意見募集は、「実施基準」変更案とこれに関連する事項についてのNHKの考え方を公表して、9月中旬から10月上旬にかけて実施したいと考えています。
 なお、「実施基準」については、定款第13条第1項第1号スの規定により経営委員会議決事項とされていることから、この内容が了承されれば、変更案を9月9日開催の第1077回経営委員会に審議事項として諮るとともに、意見募集の実施について説明したいと思います。
 その後は、意見募集の結果を踏まえ、あらためて「実施基準」の変更案について経営委員会の議決を得たうえで、総務大臣に認可申請することにします。

(会 長)  原案を了承し、経営委員会に諮ることにします。


(3)平成20年度後半期の国内放送番組の編成について
(編成局)
 平成20年度後半期の国内放送番組の編成について審議をお願いします。
 メディア別の主なポイントは次のとおりです。
 総合テレビでは、日曜日夜11時台に「カンゴロンゴ」を放送します。これは、「サラリーマンNEO」の後続番組で、謎の人生相談おじさん「カンゴロンゴ」が、現代社会の諸問題に漢文で切り込むドラマ仕立ての新感覚バラエティーです。
 海外連続ドラマの新シリーズについては、「太王四神記」の後続番組として「ファン・ジニ」を土曜日午後11時10分から放送します。また、「デスパレートな妻たち2」の後続として「アグリー・ベティ」を日曜日午前1時20分から放送します。
 土曜日午後6時台には、番組広報から経営広報まで柔軟に取り上げる新たな広報番組として、「週末プレマップ」を新設します。
 ドラマの新シリーズとして、連続テレビ小説「だんだん」を「瞳」の後続番組として放送します。大阪局制作の番組で、生まれてすぐに離れ離れになってしまった双子の姉妹が、運命的な再会を果たし、姉妹の絆を深めながらデュエット歌手としてスター街道を駆け上がるというストーリーです。また、来年の1月から、大河ドラマ「天地人」を「篤姫」の後続として放送します。直江兼続を主人公に、日本人の義と愛を描き出していくドラマです。
 教育テレビでは、月曜日から金曜日までの午前5時台に「日めくり万葉集」を放送します。さまざまな分野で活躍する方々が選者となり、「わが心の万葉集一首」を選び、歌への熱い思いを語ります。アニメの新シリーズとしては「アリソンとリリア」、「獣の奏者エリン」を放送します。語学講座番組の新シリーズとしては、「ロシア語会話」の後続番組として、「テレビでアラビア語」を水曜日午前0時から放送します。これはカタールのテレビ局「アルジャジーラ・チルドレンズ・チャンネル」との共同制作です。 
 また、教育テレビでは、週末深夜帯の編成を見直し、放送終了時間を繰り上げます。放送時間を短縮するとともに、休止時間帯はアナログ波の送出を停波します。それに伴い、「ETVセレクション」と「学校デジタルライブラリー」を廃止し、「トップランナー」の再放送と「課外授業ようこそ先輩」の再放送をそれぞれ移設します。その結果、停波する時間は1日平均して2時間17分で、CO2削減に努めます。
 衛星ハイビジョンでは、月曜日から金曜日までの午前8時台に「私の1冊 日本の100冊」を放送します。100人の著名人が自分にとって愛着のある一冊を選び、その本への思いを語ります。午後5時台に「大河ドラマ 篤姫」集中アンコールを、また、1月からは午後8時台に「完全復刻 刑事コロンボ」をそれぞれ新設します。
 衛星第1テレビは野球のシーズンオフや欧米の冬時間に伴い、一部編成の見直しを行い、充実・強化を図ります。たとえば、月曜日から土曜日朝に編成している「おはよう世界」の時間を拡大し、海外情報の充実を図ります。また、「BS世界のドキュメンタリー」は、放送時間帯を午後9時台に移設するなど、衛星第1の柱の1つであるドキュメンタリーの枠を視聴しやすい時間帯へと移行します。
 衛星第2テレビについては、海外ドラマの新シリーズを始めます。日曜日夜9時から「太王四神記」、月曜日午後11時から「ER]V 緊急救命室」を放送します。また、水曜日午後11時の時間帯には「ステート・オブ・プレイ〜陰謀の構図〜」、「ホテル・バビロン」、「ステート・ウイズイン」を順次放送します。衛星アニメ劇場の新シリーズには「タイタニア」を放送します。銀河系を舞台に壮大なスケールで描くスペースオペラです。
 ラジオ第1放送では、プロ野球ナイトゲーム終了にともなう編成を行います。木曜日午後8時台から「わが人生に乾杯」を、金曜日午後8時台から「いとしのオールディーズ」を放送します。
 ラジオ第2放送は、水曜日と木曜日の深夜「NHK高校講座」の再放送枠をそれぞれ3講座から2講座に変更し、放送終了時間を繰り上げます。
 FM放送は大きな変更はありません。

(会 長) 原案どおり決定します。


(4)平成20年度後半期の国際放送番組の編成について
(国際放送局)
 平成20年度後半期の国際放送番組の編成について審議をお願いします。
 外国人向けテレビ国際放送(NHKワールドTV)では、週末および深夜・早朝の時間帯の英語ニュースを増設し、英語化率100%を達成します。具体的には、「NHK NEWSLINE」を拡充し、NHKワールドTVの基幹ニュースとして、日本、アジア、世界の動きを24時間海外発信します。また、アジア各国の識者やジャーナリストを結んで討論する番組「ASIAN VOICES」を新設し、アジアならではの声を世界に伝えます。
 邦人向けには、NHKワールド・プレミアムチャンネルを活用します。プレミアムチャンネルは、契約していただいた世帯のみ視聴できるようにスクランブルをかけていますが、毎日約5時間ノンスクランブルの時間帯を設け、国内放送のニュース・情報番組に加え、「NHKのど自慢」などの娯楽番組を放送し、多彩な番組編成を実現します。

(会 長)  原案どおり決定します。


(5)視聴者対応報告(平成20年7月)について
(視聴者サービス局)
 放送法第12条に定める視聴者対応の状況について、平成20年7月分をとりまとめました。ついては、放送法第22条の2第3項の規定に基づき、経営委員会に報告したいので、審議をお願いします。
 7月にいただいたご意見・お問い合わせは383,708件でした。その内訳は、これまでと大きくは変わっていません。苦情や要望を含めた意見の総数は76,814件で、うち91%は意見を受け付けた一次窓口で対応を完了し、残りの9%は該当部局へ転送・回付して業務実施現場で二次対応しました。
 放送番組に関して寄せられた意見・要望・問い合わせについては、「ためしてガッテン」が引き続き好評で、毎回多くの好評意見が寄せられました。また、ハイビジョン特集のターシャ・テューダー追悼番組(7月16日、17日放送)には「素晴らしい映像に感動した」など、690件の好評意見が寄せられました。
 一方、目立った不評意見として、ウィンブルドン2008「男子・シングルス・決勝」(7月6日、7日放送)について、7月6日の午後10時台から総合テレビで放送していましたが、雨による試合中断もあり、大幅に延伸したため、急きょ、午前4時半から教育テレビで試合終了まで放送したところ、「大事なところが録画できなかった」「ほとんどの視聴者が録画して見ることが明らかなのに、途中で放送メディアを変更するとは配慮が足りない」など、216件の厳しい意見がありました。また、ニュース7「洞爺湖サミット関連ニュース」(7月7日放送)では、サミット拡大会合の主要テーマとなったアフリカの食糧問題を伝えた後に夕食会のメニューを紹介したことについて、「アフリカの食糧危機のニュースの後に豪華な食事のニュースを流すとはセンスを疑う」など、112件の不評意見が寄せられました。
 7月に寄せられた再放送の要望は15,252件で、もっとも多かったのがウィンブルドンテニス2008「男子・シングルス・決勝」の676件でした。これについては、7月13日と17日に総合テレビでハイライト番組を放送しました。そのほか、再放送要望のあった番組は、適宜、再放送をしています。
 放送番組に関する意見や要望は、該当部局に転送し、改善などが必要な案件は速やかに対応しています。指摘を受けて改善した例として、教育テレビ「チャレンジ!お店をつくろう」(7月26日放送)の中で、「マッサージ師には資格が不要という内容があったが、マッサージ師には資格が必要だ。間違いを訂正してほしい」という苦情・要望が14件寄せられ、業界団体から抗議書が届けられました。これについては、教育テレビで「番組内容について訂正のお知らせ」を放送したほか、抗議書に対しては制作局と編成局の責任者が当該団体を訪問してお詫びし、誤りの経緯と再発防止策について説明させていただきました。
 受信料関係の意見や問い合わせは189,586件ありました。そのうち契約や収納を委託している地域スタッフの態度や説明の仕方に対する意見が1,500件以上ありました。
 経営全般に対する意見や要望は、600件ありました。そのうち145件は、地上波アナログの停波周知のためにアナログ総合とアナログ教育の画面に7月24日から常時 “アナログ”の半透明スーパーを開始したことに対するもので、「目障りだ。即刻消してほしい」「番組に集中できない。まるで嫌がらせだ」などの不評意見が105件でした。「アナログ放送は3年後の7月24日に終了することが国の法令等により決まっているため、注意喚起を行うとともに、デジタル受信機を所有しながらアナログ放送のみを視聴している視聴者もいることから、視聴している番組が“アナログ放送”か“デジタル放送”かを容易に識別できるよう画面への表示を開始した」と説明し、理解を求めました。
 以上の報告内容が決定されれば、9月9日(火)の第1077回経営委員会に報告事項として提出します。

(会 長)  原案どおり決定します。


2 報告事項
(1)20年7月視聴者満足(CS)向上活動報告
(視聴者サービス局)
 20年7月の視聴者満足(CS)向上活動について報告します。今回は本部をはじめ全国的な取り組みを中心にとりまとめました。
 まず、制作局(文化・福祉番組)では、「福祉ネットワーク」などの番組と連動した福祉ポータルサイト「ハートネット」の場を通じて視聴者と双方向の関係を築いています。自殺や性同一性障害など誰にも相談できないような深刻な悩みについては慎重な対応が求められます。そうした悩みや相談がこのサイトに寄せられ、福祉番組の制作担当者が専門家と相談し細心の注意を払いながら対応しています。ポータルサイトの主なコンテンツは、福祉番組の放送予定などの番組情報や、認知症や介護などのテーマ別にQ&Aの形式で答える「お役立ち情報」、視聴者同士が意見や情報を交換する掲示板の「ハートネットボイス」、番組出演者のコメントやそれに対する視聴者のコメントを掲載するブログ「ハートネットピープル」などです。1日平均24,000ページビューの閲覧があり、1か月平均の番組宛メール件数は680件、同じく書き込み件数は421件となっています。このサイトを通じて視聴者同士が情報や体験談を共有し支えあう場を作り上げているとともに、反響が多く寄せられたテーマについて番組を企画し、あるいは視聴者からの書き込みをもとに取材して番組を制作するなどしています。
 広島放送局では、広島局開局80周年記念ドラマ「帽子」(8月2日)の放送にあたり、視聴者から募集した顔写真で番組広報用のポスターを制作しました。このポスターは、4,000枚の視聴者の顔写真がドット(画素)となって出演者の顔を描いています。モバイル広告を通じて募集した結果、5,138人から応募があり、そのうち30代以下が75%を占めました。ポスターを見た応募者からの反響もたいへん好評でした。
 全国各地の「NHKのど自慢」の予選会場で、デジタルカメラなどで出場者の写真を撮りプレゼントする活動が好評ですが、そうした中で名古屋放送局では、技術スタッフが独自に開発したシステムを使った「中継車映像を利用した出場記念写真撮影サービス」により、いっそうのお客様満足の向上を図っています。市販のカメラでは撮影が難しい出場者のアップを、中継用カメラで撮った映像からベストショットをパソコンで選択し簡単にプリントアウトするシステムで、プリントした写真には番組のロゴも入っています。「こんなにいい表情を撮ってもらい参加してよかった」「一生の思い出になる」などインパクトのあるサービスとなっています。
 受信料の契約・収納を委託している地域スタッフの訪問時の態度や説明の仕方に苦情が多いことから、山口放送局では、8つの項目でスタッフを客観評価し欠点を改善する取り組みを進めています。評価の項目は「第一印象」「要件を短くはっきり伝える」「よく話を聞く」などで、複数の職員により2か月間評価を行い、ロールプレイなどで改善に努めています。
 技術局および全国各放送局の技術担当者により、「親子ラジオ工作教室」を継続して開催してきました。これは、親子がハンダゴテを使いながらペットボトルなどを材料にしてラジオを作ることで、モノづくりへの興味を喚起するとともに、放送やNHKを身近に感じてもらう体験型イベントです。技術職員が個別に丁寧に指導するため一度に大勢の参加者を受け入れることはできませんが、平成17年から地道に活動を重ねてきた結果、まもなく参加者が延べ5,000人を超える見込みとなりました。
 視聴者サービス局では、「NHKイベントインフォメーション」のサイトをリニューアルしました。これまでNHKのイベント情報は実施する各放送局のホームページごとでしか閲覧できませんでしたが、全国のNHK各放送局の公開番組・イベント情報をひとつのホームページで検索したいというお客様の声に応えて、全国各放送局の情報を都道府県ごと、あるいはジャンルごとに閲覧できるようにし、あわせて携帯端末からもアクセス可能にしたものです。一部のイベントではWEB応募も試行しています。7月15日(火)から新サイトの運用を開始したところ、直前の6月からリニューアル前日までの1日平均アクセス件数が45,641件だったのに対し、リニューアル後は1日平均79,864件と75%増加しました。
 視聴者満足の向上をめざした改善の件数は、今年度7月末で363件となっており、前年同月より106件増えています。また、ふれあいミーティングの実施状況については、7月は全国で173回開催し、3,992人が参加しました。今年度累計では622回の開催、13,861人の参加となっています。
 その中で、室蘭放送局は、職員数が少なく局の会館も街の中心からはずれた場所にあって条件的に恵まれていないにもかかわらず、4か月間に42回のふれあいミーティングを開催しています。これは、地元の視聴者にNHK室蘭の存在感を高めたいという思いから、局を挙げて取り組んでいるもので、あらゆる機会をとらえてミーティングの相手を探し、人々が集まる場に出向いて実施、身近なNHKをアピールしています。


(2)監査結果報告
(内部監査室)
 東海・北陸地方各放送局の監査結果の概要について報告します。監査は7月上旬に実施しました。
 まず、名古屋放送局についてです。
 若い世代に向けて、教育テレビ全国放送の「めざせ!会社の星」や、東海3県向けの公開ライブ番組「サタ★テン」をスタート、多様な回路で視聴者層の拡大を進めています。また、土曜ドラマ「刑事の現場」や同「監査法人」を制作し、視聴者から大きな反響がありました。地域に多く居住しているブラジル人向けに、ホームページにポルトガル語のサイトを開設し、サービスを強化しています。
 次に、金沢放送局についてです。
 昨年3月の能登半島地震の後、節目ごとに被災地の課題を多角的に取材するとともに、「NHKのど自慢」をはじめ番組やイベントなどで積極的に復興支援の取り組みを継続しています。また、夕方6時台の地域番組「デジタル百万石」では、少子化や北陸新幹線整備など地域の課題をテーマにした年間企画のシリーズを放送しています。
 静岡放送局では、東海地震など緊急時の備えとして、防災の豆知識をコンパクトにまとめた「わが家の防災カード」を昨年度に2万部作成し視聴者に配布して、地域の防災・減災に取り組んでいます。また、昨年度は地上デジタル中継放送局を5局整備し、視聴可能世帯のカバー率は90.7%になりました。
 福井放送局では、初めて地元が舞台となった連続テレビ小説「ちりとてちん」に関連して出演者のトークショーや旅番組などを地域で放送。大きな反響があり全国放送にも展開しました。また、全国最多の15基の原子力発電所が集中しており、万一の事故に備えて簡易線量計を22台に増やし、取材の安全確保に取り組んでいます。
 富山放送局では、昨年度リニューアルした夕方6時台の地域番組「イブニングアクセス富山」の年間平均視聴率が14.4%を記録し、過去5年間で最高となりました。また、今年2月の富山湾沿岸の高波被害に際して、迅速な取材により、堤防を越えて襲ってくる高波の生々しい映像をいち早く伝えました。
 津放送局では、記憶障害の女性の子育てを記録し、名古屋放送局と共同制作した中部ブロック向け地域番組「ナビゲーション」を、昨年6月に放送しました。それをNHKスペシャル「あなたの笑顔を覚えていたい」に発展させて10月に全国放送し、放送文化基金賞テレビドキュメンタリー部門番組賞を受賞しました。また、会館ロボットカメラの映像を24時間収録するようにし、スキップバックレコーダーと併せて地震災害時の映像を確実に収録、放送できるようにしています。
 岐阜放送局では、所属していた職員が株のインサイダー取引を行っていた問題を受けて、局長が各職場に出向いて職員と話し合う「局長出前ミーティング」により風通しの良い職場作りに努めるなど、倫理の徹底に局を挙げて取り組んでいます。放送については、北アルプスの雪崩遭難ではいち早く中継映像を伝え、飛騨牛をめぐる牛肉偽装事件では若手の記者が特ダネをつかみ全国に放送するなど、迅速・的確に報道しています。
 コンプライアンス活動については、岐阜放送局以外の各局でも、研修会や関連の講演会を開催したほか、公金の適正使用の徹底に向けた独自施策を推進するなど、積極的に取り組んでいます。
 適正経理の取り組みでは、昨年度に指摘した処理手続きの不備について、概ね改善が進んでいました。まだ不十分な事項については、さらに改善を指示しています。


(3)考査報告
(考査室)
 7月から8月にかけて放送したニュースと番組について報告します。
 まず、ニュースについて、8月8日(金)〜24日(日)の期間に開催された北京オリンピックの報道では、厳戒の中で壮大に演出された開会式の模様や、中国が51個の金メダルを獲得してアメリカを抜き1位となったことなどを伝えていました。一方で、国際オリンピック委員会のロゲ会長が閉会日の会見で大会運営を評価しつつも、許可するとしていたデモなどが認められなかったことに疑問を呈したことを伝えるとともに、NHK中国総局長が「中国の思惑どおりの大会となったが、国際社会が期待した政治の民主化や報道の自由が進展したとは必ずしも言えない」と総括していました。考査室としては、開会式や熱戦の模様を余すところなく伝えた点と合わせ、中国の民主化や報道への規制の緩和が進まない状況も指摘していた点を評価します。
 また、北京オリンピックでは、日本選手が当初のメダル獲得目標には届かなかったものの、競泳平泳ぎで2種目連覇した北島康介選手の偉業やソフトボールでの悲願の金メダル獲得など、活躍と感動のシーンを伝えていました。外国選手では、競泳で前人未到の8冠を達成したマイケル・フェルプス選手(アメリカ)や、陸上100mで9秒69の世界新記録を出したウサイン・ボルト選手(ジャマイカ)、「日本で我慢を学んだ」という男子マラソン金メダルのサムエル・ワンジル選手(ケニア)なども大きな話題を呼んでいました。
 次に、8月1日(金)の福田内閣改造についてです。当日の朝から「自由民主党幹事長に麻生太郎氏浮上」などの情報を伝え、昼前には麻生氏の幹事長就任の受諾を報道、午後4時50分から組閣情報をスーパーで速報するとともにニュースを特設・枠広げしながら、中継を交えて詳しく報道していました。記者は、「自民党内のバランスに配慮しながらの大幅改造で、衆院選を意識した布陣である」と解説していました。考査室の評価として、内閣改造の動きを分厚く伝え、新体制のポイントや課題をよく整理して解説していたと思います。なお、9月1日(月)の福田首相の退陣表明については、当日夜9時台の「ニュースウオッチ9」の中で一報を伝え、9時30分からの緊急記者会見を中継し、そのまま11時までニュースを枠広げして報道していました。
 7月28日(月)、大雨により神戸市内の都賀川が急激に増水、学童保育で川に来ていた小学生2人を含む5人が流されて死亡しました。午後4時36分に増水事故を速報スーパーし、5時30分以降のニュースで、水位が急上昇し激流となった川の様子をとらえた神戸市の河川カメラの映像を何度も放送していました。「川が直線的に海に流れ込む地形のうえ、川岸を護岸で固めているため急激に増水した」という専門家の指摘も紹介していました。川が短時間に一気に増水する映像を効果的に使い、都市災害の恐ろしさを伝えていたと評価します。
 続いて、いくつかの番組について、リスクマネジメントの観点から放送前にVTRを試写して事前考査したものを中心に報告します。
 福岡放送局が制作し、8月7日(木)に放送したNHKスペシャル「解かれた封印〜米軍カメラマンが見たNAGASAKI」について事前考査を実施しました。指摘事項は特にありませんでした。番組では、原爆投下後の長崎の惨状を個人のカメラでひそかに撮影していた米軍のカメラマンが、43年間封印してきた写真を公開して亡くなるまで原爆を告発し続け、さらにその息子も父の遺志を受け継いで原爆の悲惨さを訴える姿を描いていました。考査室の評価として、原爆の悲劇を残された肉声と丹念な取材で描き出しており、息子の姿を通して、継承することの大切さが伝わってきた優れた番組だったと思います。モニターからは、「『繰り返してはいけない歴史もある』という真実の言葉に考えさせられた」という声が寄せられました。
 8月17日(日)放送のNHKスペシャル「調査報告 日本軍と阿片」も事前考査の結果、特に指摘事項はありませんでした。番組では、アヘンの生産・売買で得た巨利を日中戦争の工作資金に充てていた関東軍の暗部を、新資料と関係者の証言で明らかにしていました。歴史の裏側を、新資料と証言で丁寧に検証し、戦争の知られざる実態を明らかにした力作だったと思います。モニターの声として、「『われわれの戦争はアヘン無しにはできなかった』という東京裁判での証言は、教科書に出てこない歴史の事実だ」という意見がありました。
 7月30日(水)放送の「たったひとりの反乱〜食品偽装告発、『さきがけ』となった男」は、雪印食品の牛肉偽装を告発したものの、その結果、会社が廃業に追い込まれた冷蔵倉庫会社社長の姿を、ドラマと本人へのインタビューを合わせた構成で描いていました。考査室として、食品偽装の告発に至るまでのいきさつや、告発後思わぬ苦境に追い込まれていく様子をドラマ仕立てで描いた意欲的な番組だったと評価します。「もっと早く放送されていたらその後の食品偽装が少なくなったのでは」というモニターの声もありました。
 総合テレビとラジオ第1で8月30日(土)に放送した「第40回 思い出のメロディー」も事前考査しましたが、指摘事項は特にありませんでした。「歌こそ永遠の愛」をテーマにして、視聴者からのお便りを軸に、33組の歌手が熱唱を繰り広げていました。また、3組の夫婦の愛の物語を、歌を通して紹介していました。考査室の番組評価として、3組の夫婦のエピソードとそれにちなんだ歌が巧みに披露されていたと思います。また、故・村田英雄さんと氷川きよしさんが“共演”した「無法松の一生」はたいへん聞き応えがありました。ただ、オープニング等でテーマをもう少し際立たせてほしかったと思いました。モニターからは、「紹介されたお便りを聞き、人生と歌が結びついていることをしみじみと感じた」という声が寄せられました。
 教育テレビで7月28日(月)から3夜連続で放送した「ハートネットTV」は、第1夜は、番組に寄せられたメールを基にしたスタジオトーク、第2夜は、「福祉調査団」と称するバスツアーという設定でのバラエティー、第3夜は、環境にやさしい商品の開発に取り組む研究者と福祉作業所の人々との交流を描くドキュメンタリーという、福祉番組の新しい形に挑んでいました。考査室の評価として、福祉番組の新しいスタイルを築こうとする意欲作で、第1夜は、体験者の説得力ある言葉が印象的でしたが、第2夜では、ゲストの役割や調査方法をもう少し工夫すればさらによかったのではないかと思います。今後もメッセージ性を重視しながら、視聴者層を開拓していくことを期待します。モニターからは、「障害のある女性が『働くことは生きること』と語る姿に感動した」という声が寄せられました。
 衛星ハイビジョンで8月13日(水)に放送したハイビジョン特集「BC級戦犯 獄窓からの声」では、東京裁判において捕虜の虐待や住民の殺害の罪で裁かれたBC級戦犯の中で、元情報要員と朝鮮半島出身の捕虜監視員の2人が裁きをどう受けとめたのか、戦後の軌跡をたどりながらその思いを描いていました。重いテーマに正面から取り組んだ力作で、戦場体験が緊迫感を持って描かれ、朝鮮人戦犯の苦悩も浮き彫りにされていたと評価します。「戦争の異常で悲惨な姿が裁判記録と証言から伝わってきた」とのモニター報告もありました。


(4)日本放送協会共済会の平成19年度決算について
(関根 理事)
 日本放送協会共済会の平成19年度事業報告ならびに決算書について、5月23日(金)の評議員会において可決されましたので報告します。
 共済会の会計は、一般会計と特別会計に分かれています。食堂業務、販売業務等の一般会計の収入は43億200万円で、予算に対して9,100万円下回りましたが、各業務において経費削減を図り、支出を抑制する対応を行った結果、収支差金は9,900万円となり、20年度に繰り越しました。
 次に、NHKからの受託業務である転勤者用住宅の管理等の特別会計については、転勤者用住宅の効率的な運用に引き続き取り組み、収支差金1億5,400万円を、NHKに精算戻入しました。


(5)日本放送協会健康保険組合 平成19年度収入支出決算について
(関根 理事)
 日本放送協会健康保険組合の平成19年度の収入支出決算について、7月24日の組合会において、提案どおりに議決されましたので報告します。
 一般勘定では、19年度の収入合計は95億7,500万円と、予算に対して2億7,700万円の減収でした。支出総額は95億7,200万円で、予算に対して2億8千万円の増加となりました。増加の主な原因は、国に納付する拠出金が過去2番目に大きい負担額となり、支出総額の4割近くを占めたことです。決算残金は300万円で、積立金に繰り入れます。一方介護勘定の決算残金は、2,600万円でした。



以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成20年 9月17日
                     会 長  福 地 茂 雄

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