日本放送協会 理事会議事録  (平成20年 2月12日開催分)
平成20年 2月29日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成20年 2月12日(火) 午前9時00分〜9時40分

<出   席   者>
 福地会長、今井副会長、原田専務理事、小林理事、金田理事、
 西山理事、日向理事、溝口理事、八幡理事


 古閑監事

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 福地会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項
1 審議事項
(1)第1062回経営委員会付議事項の追加について
(2)放送局一斉再免許関連の制度整備に関する意見募集への対応に
   ついて
(3)平成20年度放送番組補完インターネット利用計画について

2 報告事項
(1)「平成20年度収支予算、事業計画及び資金計画」に付する総務
   大臣の意見及び「平成18年度業務報告書」に付する総務大臣の
   意見について

議事経過
1 審議事項
(1)第1062回経営委員会付議事項の追加について
(秘書室)
 本日開催される第1062回経営委員会付議事項の追加について審議をお願いします。
 第1062回経営委員会付議事項については、先週の理事会で決定された付議事項のほか、報告事項として「『平成20年度収支予算、事業計画及び資金計画』に付する総務大臣の意見及び『平成18年度業務報告書』に付する総務大臣の意見について」を追加します。

(会 長)  原案どおり決定します。


(2)放送局一斉再免許関連の制度整備に関する意見募集への対応に
   ついて
(技術局)
 放送局一斉再免許関連の制度整備に関する意見募集への対応について審議をお願いします。
 現行の放送局等の免許は平成20年10月31日で有効期間が満了します。総務省は、平成20年の放送局一斉再免許等の申請を受け付けるにあたり、所要の制度整備を行うため、1月16日、「電波法施行規則の一部を改正する省令案並びに放送普及基本計画及び放送用周波数使用計画の各一部変更案」を電波監理審議会に諮問するとともに、諮問案を含む関係省令等の整備案8件について意見募集を開始しました。意見募集の締め切りは2月18日です。また、諮問案について電波監理審議会による関係者の「意見の聴取」が行われることになっています。
 NHKとしては、総務省に意見を提出するとともに、電波監理審議会の意見の聴取に出席して意見を述べることとしたいと思います。
 整備案8件の概要は次のとおりです。

(1)電波法施行規則の一部改正

1 通常5年の免許期間を平成23年7月24日までに短縮可能とする。

2 再免許に際して新規事業者の公募を行うこととする。

3 衛星系放送局の免許に関し、公示する期間内に申請することを要しない無線局の範囲を拡大する。

(2)放送普及基本計画の一部変更

1 地上放送について、地上アナログテレビの終了のための所要の措置を講ずる。

○ 地上デジタルテレビについて、平成22年12月までにアナログテレビと同等の地域においてその放送が受信できるようにする。

○ 全面移行を促すため、デジタル技術の特性を生かした放送をできる限り多く行う(高精細度テレビジョン放送を中心とすること、アナログテレビが終了するまで自ら行うアナログテレビの大部分の放送番組を含めて放送すること、の2項目を削除)。

○ 地上アナログテレビは、地上デジタルテレビを行う事業者が行う。

○ 地上アナログテレビは、平成23年7月24日までに終了する。

2 衛星放送について、BSアナログテレビの終了期日を地上アナログテレビと同日の平成23年7月24日までとする。

(3)放送用周波数使用計画の一部変更

 上記(2)の1の変更に伴う規定の整備等のための変更

(4)放送法施行規則の一部改正

 地上アナログテレビから地上デジタルテレビへの移行に伴う放送区分の改正等

(5)無線局免許手続規則の一部改正

 申請書の添付書類に関し、地上テレビを行う放送局の放送番組表及び供給を受ける放送番組の時間帯の記載についての改正

(6)電波法関係審査基準の一部改正

 地上系放送局の再免許に係る比較審査基準の追加のための改正(NHKは対象外)

(7)地上デジタルテレビジョン放送局の免許及び再免許方針の一部改正

 地上デジタルテレビの免許及び再免許を行うにあたり、比較審査基準の導入及び免許の条件・期限、要望等の方針を行政の指針として規定

○ 地上テレビは平成23年7月24日までにデジタル放送に全面移行する。

○ 免許主体は地上アナログテレビの免許人または平成20年10月31日に有効期限が切れる同一放送対象地域のアナログテレビの免許申請をしている者。

○ サイマル放送の比率、ハイビジョンの比率を削除。

○ デジタル技術の特性を生かした放送を実施すること。特にピュアハイビジョンまたはマルチ編成をできるだけ多く編成すること。

○ アナログテレビと同等の区域において、平成22年12月までにデジタルテレビの受信を可能とするための中継局等の整備計画(中継局ロードマップ記載のすべての中継局の整備計画。共聴施設、ケーブルテレビ等他の代替手段も活用する場合はその整備計画)を有していること。

○ これらの中継局等をすべて整備しても、なお、受信困難地域が残る場合は、引き続き、中継局の整備等によりデジタル放送を受信できるように努めること。

○ 地理的要因によるデジタル混信が発生した場合は、混信状況調査及び必要な対策を行うよう努めること。

○ 53から62チャンネルまでの周波数を使用する中継局については、平成24年1月24日までにチャンネル変更許可の手続きを完了すること。

(8)地上アナログテレビジョン放送局の免許及び再免許方針の制定

 地上アナログテレビの免許及び再免許を行うにあたり、その方針を行政の指針として規定

○ 免許主体は地上アナログテレビの免許人または平成20年10月31日に有効期限が切れる同一放送対象地域の地上デジタルテレビの免許申請をしている者。

○ マスメディア集中排除原則の適用除外とする。

○ アナログテレビへの終了スーパーの挿入等、アナログテレビ終了に向けた視聴者周知についての計画を免許期間中に策定する計画を有していること。

○ 有効期限は平成23年7月24日までとする。

 これらの整備案を検討した結果、今回の一斉再免許関連の制度整備は、平成23年の地上・BSテレビのデジタル放送への移行に関わる内容を多く含むものであることから、今後の移行計画に大きく影響する事項に関して、以下のとおり、意見を提出することとしたいと思います。

 今回の省令改正案等については、特に異議はありません。なお、人々の生活に最も身近なメディアとして定着しているテレビジョン放送のデジタル化は、一人一人の視聴者に無用の混乱をもたらすことのないよう円滑に進めることが何より重要であり、アナログ放送の終了期限が近づくにつれて、よりきめ細かい施策が必要になるとともに、国の果たす役割が引き続き重要であると考えます。こうした視点から、今回の省令改正案等の運用にあたっては、以下の点についての配慮を要望します。

1 地上アナログテレビジョン放送の終了期日の明記について

 アナログ放送の終了に際しては、視聴者に無用の混乱をもたらす ことのないよう、視聴実態調査や視聴者へのきめ細かい周知・指導等を通じて、デジタル放送への円滑な移行に配慮を要望します。

2 平成22年12月までに地上デジタルテレビジョン放送を地上アナログテレビジョン放送と同等地域で受信可能とする整備計画を有することとする変更について

 中継局等の整備計画のうち、中継局の設置については放送事業者が計画的に実施しますが、共聴施設・ケーブルテレビ等他の代替手段を活用する場合については、放送事業者以外の要因も大きいことから、円滑な移行を促進するためには国や自治体等の役割が重要であり、配慮を要望します。

3 地理的な要因などで、デジタル放送が良好に受信できない混信妨害が発生した場合、調査や必要な対策に努めることとする変更について

 デジタル混信は、周波数の逼迫等によりやむを得ず生じるものであり、社会的な混乱を避けるため、国の支援対象として、補完中継局等のインフラ整備に加え、個別受信等への対策にも取り組むことを要望します。また、デジタル移行により発生した混信については、従来のように後発局がすべて混信対策の責任を負うのではなく、当該混信の発生に関係する地域において、国及び放送事業者が共同で対策を行う形が望ましいと考えます。

4 53から62チャンネルまでの周波数を使用するデジタル中継局について、平成24年1月24日までにチャンネル変更許可の手続きを完了することについて

 いわゆる周波数のリパックについては、予期できない混信の発生によって急遽移行先のチャンネルの変更が必要となる場合が発生したり、審査期間が長くなる等の可能性も考えられるため、平成24年1月24日の手続き完了期限については「原則」とした上で柔軟な運用を要望します。
 また、周波数のリパックも国の施策であり、国の経費負担が前提になると考えておりますので、その具体化を要望します。

5 BSアナログテレビジョン放送の終了期日を地上アナログテレビジョン放送と同日の平成23年7月24日とすることについて

 NHKはこれまで、BSアナログテレビジョン放送の終了時期に関しては、1視聴者の理解が得られやすい、23波共用受信機の普及で、BSデジタルテレビジョン放送も各家庭に急速に普及している、3国、放送事業者、メーカー、関係団体等が一体となった周知・広報が可能となる、との理由から、地上アナログテレビジョン放送の終了と同時期が望ましいと主張してきており、その考え方は今も変わっていません。
 一方、アナログ放送の終了にあたっては、1免許期限に先立って番組を終了させる、2静止画による終了告知等により視聴者に丁寧な説明を行う、などきめ細かな対応が必要ですが、地上アナログテレビジョン放送の終了に関しては現時点でこうした具体的な手順が検討されていません。
 こうした状況を踏まえ、アナログ放送からデジタル放送への円滑な移行を図るため、以下の点について配慮を要望します。

1 BSアナログテレビジョン放送の視聴者のデジタル移行の徹底

 BSアナログテレビジョン放送の終了は、その時点でBSアナログテレビジョン放送の視聴者がBSデジタルテレビジョン放送も視聴可能な環境になっていることが必要不可欠な条件であると考えます。従って、BSアナログテレビジョン放送の終了に際して、アナログ放送のみを受信している視聴者が残ることのないよう、国においても十分な施策を講じるよう要望します。

2 アナログテレビジョン放送の総合的な終了措置

 難視聴解消の観点から、地上アナログテレビジョン放送を継続している間は、BSアナログテレビジョン放送を終了することは困難と考えています。また、視聴者の理解を得るためにも、地上アナログテレビジョン放送の終了に合わせてBSアナログ放送を終了することが適当です。今回の変更案も、こうした事情を踏まえた上でBSアナログテレビジョン放送の終了期限日が明文化されたものと理解しています。したがって、BSアナログテレビジョン放送の終了と地上アナログテレビジョン放送の終了が確実に同時になるよう、BSアナログテレビジョン放送終了後の空き周波数を利用する委託放送事業者の認定など、BSアナログテレビジョン放送の終了に関連する各種の手続き等に関しては、地上アナログ放送とBSアナログ放送の終了の総合的な日程を確立した上で進めるよう要望します。

3 BSアナログテレビジョン放送の終了に関する検討体制の構築

 BSアナログテレビジョン放送をあと3年あまりの間で終了することは、国をはじめ関係者が一体となって取り組む必要がある大事業です。このため、BSアナログテレビジョン放送の終了に関する検討体制を、国を中心に早急に構築するよう要望します。また、検討にあたっては、地上アナログテレビジョン放送の終了と一体となった検討を行うことが必要と考えます。

4 同時再送信メディアのデジタル化の徹底

 アナログ放送の終了のためには、家庭のテレビ受信機だけでなく、共聴施設、ケーブルテレビなどの施設が、アナログ受信からデジタル受信に変更されていることが必要となります。したがって、これらの施設のデジタル化が確実に行われるよう、国としてもきめ細かい施策を講じるよう要望します。

 なお、今後のスケジュールは、3月12日に電波監理審議会の答申、5月1日から7月31日にかけて免許申請の受け付け、10月下旬の再免許(または予備免許)交付の予定となっています。

(会 長)  原案どおり決定します。


(3)平成20年度放送番組補完インターネット利用計画について
 (編成局)
 平成20年度の放送番組補完インターネット利用計画について審議をお願いします。
 放送番組補完インターネット利用計画は、平成13年の「放送政策研究会第一次報告」と平成14年の「総務省のガイドライン」を踏まえて、NHKが行うインターネット利用について、平成14年からNHKが自主的に策定しているものです。平成20年度も放送番組を補完するため、放送番組の二次利用、放送番組の関連情報を提供します。
 放送番組の二次利用としては、ニュース・気象情報、スポーツ中継時の得点情報等、教育番組、福祉・医療番組、科学・教養・生活番組、地域情報番組、NHKのPR等のため番組を二次利用した動画・音声情報、ポータルサイトとして複数の番組を二次利用した動画・音声情報、データ放送番組の提供を行います。
 また、放送番組関連情報としては、教育、福祉、医療、科学・教養・生活、ニュース・気象、地域情報の6分野について提供し、これらの分野の放送番組をよりよく理解するのに役立てていくことにしています。
 20年度の提供数は245件で、19年度の108件に比べ大幅に多くなっています。20年度は、視聴者層拡大のための若者層に向けた情報や視聴者のみなさまとNHKを結ぶ新たな回路作りのための情報、地域放送局の情報などを充実させています。
 提供する情報は、NHKの各番組のホームページのほか、主な携帯電話会社のサービスメニューからもご覧になれます。提供期間については、放送番組(シリーズものの場合は、シリーズの最終放送番組)の終了から最長1週間程度とします。ニュース情報の提供期間は、掲載時から、最長48時間程度です。また、視覚障害者向けおよび携帯端末向けにも、読み上げ版としてニュース情報などを提供します。
 放送番組の二次利用、関連情報提供のために要する経費は「総務省のガイドライン」のなかで、総額10億円以内と定められていますが、平成20年度は8.8億円です。
 この利用計画とは別に、放送法の改正に伴い、NHKのコンテンツをブロードバンドでパソコンやテレビに有料で提供するアーカイブス・オンデマンドサービス(仮称)を今年の12月から開始する予定ですが、その時期に合わせて、アーカイブス・オンデマンドサービスとそれ以外のインターネットサービスについての包括的なルール作りを進めることにしています。
 なお、この内容が承認されれば、2月26日に開催される第1063回経営委員会に報告します。

(原田専務理事)

 放送法の改正で、NHKのコンテンツをインターネットで有料で提供するアーカイブス・オンデマンドサービスを今年の12月から開始する予定ですが、今後のメディア戦略をどうするのか、新しい戦略も必要になります。

(会 長)

 インターネットを戦略的に活用していくことはNHKの今後にとって大切な課題です。20年度当初計画分については、若者層にNHKに接触していただく機会を増やすこと、地域情報の発信、家庭における身近な環境問題への取り組みなど、双方向性も生かしつつ取り組んでください。この利用計画については、原案どおり決定します。


2 報告事項
(1)「平成20年度収支予算、事業計画及び資金計画」に付する総務大
   臣の意見及び「平成18年度業務報告書」に付する総務大臣の意見
   について
 (総合企画室)
 「平成20年度収支予算、事業計画及び資金計画」に付する総務大臣の意見及び「平成18年度業務報告書」に付する総務大臣の意見について報告します。
 NHKの「平成20年度収支予算、事業計画及び資金計画」に付する総務大臣の意見が、2月6日の電波監理審議会への諮問・答申を経て、取りまとめられました。「平成20年度収支予算、事業計画及び資金計画」は、この意見が付されたうえで、2月8日に内閣を経て、国会に提出されました。また、「平成18年度業務報告書」も、総務大臣の意見が付されたうえで、同日に内閣を経て、国会に報告されました。なお、「平成18年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書」についても、同日に内閣を経て、国会に提出されました。
 「平成20年度収支予算、事業計画及び資金計画」に付する総務大臣の意見は次のとおりです。

 「日本放送協会(以下「協会」という。)の受信料収入及び受信契約総数は共に回復傾向にあるものの、なお不祥事発覚前の水準を下回る状況にあり、また、受信料の不払又は未契約世帯等の割合も依然として全体の約3割近くに上る等、いまだ国民・視聴者からの信頼回復の途上にある中で、本年1月、新たに、職員による取材情報を悪用したインサイダー取引が発覚したことは、報道機関としての信頼性を揺るがす重大な問題であり、誠に遺憾である。
 協会の平成20年度の収支予算、事業計画及び資金計画(以下「収支予算等」という。)については、「平成18年度〜20年度 NHK経営計画」の最終年度として、内部統制機能の構築によるコンプライアンスの徹底を図るとともに、受信料の公平負担に向けて一層効率的な契約・収納活動を推進し、訪問集金の廃止や、より公平で合理的な受信料体系への改定等の新たな施策を実施することとしており、前年度収支予算を約200億円上回る受信料収入を確保し、公共放送として国民・視聴者の要望に的確に応えるべく放送サービスの充実に予算を重点配分しつつ、引き続き業務の見直しと経費削減を推進することとしていることから、収支予算等については、これを着実に遂行すべきものと認めるが.協会においては、新たな不祥事により再び損なわれた国民・視聴者からの信頼を早急に回復すべく、コンプライアンスの確立に向けた協会のこれまでの取組の実効性を十分検証した上で、抜本的な再発防止策の推進に全力で取り組むとともに.放送に携わる者としての職責を改めて認識し、職員の高い倫理意識の確立に努めることが必要である。あわせて、新たな不祥事が受信料収入に影響を及ぼす可能性も考慮し、一層の業務の効率化に努めることが必要である。
 さらに、これらの措置にとどまらず、国民・視聴者から信頼される公共放送を確立するため、将来に向けて一層改革を進めていくことが必要である。
 協会のガバナンスを強化するため、経営委員の監督権限の明確化や監査委員会の設置等の措置を講ずること等を目的とする「放送法等の一部を改正する法律」(以下「改正放送法」という。)が第168回国会(臨時会)において成立したところであり、協会においては、改正放送法の趣旨を踏まえ、協会の抜本的改革に組織を挙げて取り組み、国民・視聴者から信頼、支持される公共放送の確立に努めることを期待するものである。その際、経営委員会は協会の最高意思決定機関として、これまで以上に重い職責を担うものであることを十分自覚し、改革の推進に指導力を発揮するとともに、執行部と緊密に連携しつつ、それぞれの役割を全うすることにより、組織一体となって改革の実現に努めることが必要である。
 その上で、協会においては、我が国の放送の発展等に資するべく、平成23年のデジタル放送への全面移行に向けて先導的役割を積極的に果たす等、公共放送としての使命を確実に遂行し、国民・視聴者の負託に応えることが求められる。
 以上を踏まえ、協会は、収支予算等の実施に当たり、特に下記の点に配意すべきである。

1 経営改革の推進

 公共放送としての役割や社会的使命を改めて認識し、国民・視聴者から信頼される体制を確立するため、収支予算等に盛り込んだ内部統制機能の整備やコンプライアンスの徹底、CS(お客様満足)向上活動の推進等の各種施策を確実に実施するとともに、改正放送法を踏まえ、実効性あるガバナンスの実現に組織一体となって全力で取り組むこと。
 特に、職員によるインサイダー取引が発覚したことを踏まえ、コンプライアンスの確立に向けた協会のこれまでの取組が十分でなかったことを重く受け止め.抜本的な再発防止策の策定及びその迅速かつ的確な実施に全力で取り組むとともに、放送に携わる者としての職責を改めて認識し、職員の高い倫理意識の確立に努めることが必要である。
 また、今後の経営改革の指針となる新たな中長期経営計画について、デジタル化や通信・放送融合の進展、少子高齢化等、協会を取り巻く環境の変化を見据えつつ、経営委員会と執行部が連携して検討を進め、国民・視聴者の納得が得られ、信頼回復につながるような抜本的な経営改革プランを可能な限り早期に策定、公表するよう努めること。あわせて、国民・視聴者からの信頼回復や経営改革の努力により見込まれる増収等について、真に必要な経費を見極めつつ、将来の受信料の減額を検討すること。

2 受信料の公平負担の徹底

 不祥事を理由とする受信料の支払拒否・保留件数や受信契約総数は回復傾向にあるものの、依然として受信料を支払うべき者の約3割近くが不払又は未契約となっている現状にかんがみ、受信料制度について国民・視聴者の理解が深まるよう、その意義や仕組み、改革に向けた協会の具体的取組について、保有するあらゆる媒体を通じた告知等を徹底すること。あわせて、未収対策業務の強化や民事手続きによる支払督促の活用等の各種施策を推進し、受信料の公平負担の徹底に向けて全力で取り組むこと。

3 受信料体系の見直し

 平成20年度から新たに実施ずる「事業所割引の導入」、「家族割引の拡大」、「訪問集金の廃止」、「障害者に対する受信料免除の適用範囲拡大」について、協会の財政に与える影響や受信料の公平負担の徹底に資する効果を定期的に検証し、その結果を公表すること。
 さらに、これらの施策にとどまらず、視聴環境の変化や技術革新の動向等を踏まえ、国民・視聴者の視点に立った公平・公正かつ透明性のある受信料体系の確立に向けて、引き続き不断の見直しを行うこと。
 なお、受信料体系の改定にあたっては、透明性確保の観点から、今後も国民・視聴者の意見を聴取する機会を設けること。
 また、契約率や支払率は、受信料の公平負担の現状を把握するための重要な指標であることを再認識し、世帯契約率や事業所契約率等の算定に利用している基礎的データについて適切な見直しを行う等、その信頼性・透明性の向上に努めること。

4 業務の合理化

 協会を取り巻く厳しい財政状況を踏まえ、契約収納活動の強化等、収支予算等に盛り込んだ各種施策を確実に実施するとともに、業務全般について抜本的な見直しを進め、効果が上がると見込まれるあらゆる措置を検討し、業務の合理化・効率化を徹底すること。
 特に、受信契約に係る契約収納関係経費については、営業経費率が11.9%と依然として高い水準にあることにかんがみ、訪問集金の廃止とそれによる効果的、効率的な契約収納体制の構築を着実に進めるとともに、政府の「市場化テスト」に準じた仕組みを活用して外部委託を拡充すること等により、契約収納業務の抜本的な効率化を進め、具体的な数値目標を設定して契約収納関係経費の削減に努めること。
 なお、訪問集金の廃止に当たっては、対象となる視聴者が新たな仕組みに円滑に移行できるよう、万全の対応をとること。

5 子会社等の合理化等

 協会が任意に保有する子会社等について、更なる整理・統合計画について速やかに検討を進め、協会と一体となった人員削減や統廃合等の経営改革を行うことにより、その合理化・効率化を推進すること。
 また、平成19年9月に国会報告された会計検査院の「日本放送協会における不祥事に関する会計検査の結果について」において、関連団体の余剰金について、直接出資子会社の資産状況等を勘案して特例配当を要請する等、協会の財政に寄与させることが望まれる旨指摘されたことを踏まえ、今後とも子会社に対して積極的な配当の実施を求めること。
 さらに、同報告において、関連団体との取引について、随意契約による業務委託の在り方を検討するとともに、業務委託額の妥当性の検証に努める必要がある等指摘されたことも踏まえ、契約・経理処理手続の適正化及び競争契約比率の向上に取り組む等、子会社等の事業運営の一層の透明性、健全性の確保に努めること。

6 情報公開の推進

 受信料を主な財源とする公共放送として、国民・視聴者に対する説明責任を全うする観点から、協会にあっては、独立行政法人に準じて役職員の給与等の支給状況の公表に努める等、協会の経営・業務等に関する情報公開を一層積極的に進めること。
 また、協会自身はもとより、子会社等の事業運営の透明性を確保する観点から、子会社等との取引や子会社の経営情報についても、一層の情報公開を進めること。

7 地上デジタルテレビジョン放送の普及促進

 地上デジタルテレビジョン放送については、平成23年のデジタル放送への全面移行のために欠くことのできない中継局の整備や共同受信施設のデジタル放送対応等にできる限り前倒しをして取り組むとともに、デジタル放送の特長を活かした放送サービスの充実を図り、放送番組やスポット等様々な手段による国民・視聴者に対するきめ細かな周知・広報や受信者からの相談等に積極的に取り組む等、地上デジタルテレビジョン放送のあまねく普及促進に努めること。また、携帯端末向けサービス(ワンセグ)の独立利用の実施やデジタルラジオの実用化試験放送を通じ、放送のデジタル化を先導すること。

8 放送番組の充実

 放送番組の編集に当たっては、国民・視聴者の視点に立ち、その期待に応え、公共放送に対する多様な要望を満たすとともに、我が国の文化の向上に寄与するよう最大の努力を払うこと。
 特に報道番組については、日本及び世界の情報を迅速かつ的確に伝える等、その充実を図り、放送法の趣旨を十分踏まえ、正確かつ公平な報道に対する国民・視聴者の負託に的確に応えるとともに、災害その他の緊急事態における報道体制を充実・強化し、被災者等に役立つ正確かつよりきめ細やかな情報の迅速な提供に努めること。また、地域放送については、地域の抱える様々な課題に積極的に取り組むとともに、地域からの情報発信の強化に一層努めること。
 さらに、放送された番組に寄せられた国民・視聴者からの意見や要望に真しに耳を傾け、それらの意向を適切に反映するよう努めるとともに新たに策定された視聴覚障害者向け放送普及行政の指針に則り、字幕放送や解説放送の計画的な継続・拡充に努めること。

9 国際放送の充実

 我が国の対外情報発信力を強化するため、所要の制度改正を行ったところであり、協会においては、当該制度改正の趣旨を踏まえ、必要な体制を整備し、我が国の文化・産業等の発信を通じて我が国の対外イメージの向上等に資する外国人向けテレビ国際放送を実施すること。その際、民間企業と十分に連携しながら、その活力やノウハウを導入するとともに、多様な収入源が確保できるよう検討すること。また、より多くの視聴者を確保するため、国、地域の実情に応じた配信体制を整備するとともに、インターネット等も活用すること。
 ラジオ国際放送については、海外における聴取実態等を踏まえつつ、より一層効果的かつ効率的な実施に努めること。

10 番組アーカイブの活用

 協会の保有する放送番組等については、受信料を負担する国民・視聴者にとっての貴重な資産であることにかんがみ.その積極的な利活用を図ること。特に、改正放送法により協会の新たな業務として追加された番組アーカイブのブロードバンドによる提供について、実施に向けた取組を着実に進めるとともに、当該業務が民間事業者との公正な競争の下で行われるよう、適切な環境整備に努めること。」

 また、「日本放送協会平成18年度業務報告書」に付する総務大臣の意見は、次のとおりです。

 「日本放送協会(以下「協会」という。)の平成18年度の業務報告書によれば、協会が同年度の事業計画等に基づき実施した業務については、コンプライアンスの徹底、受信料の公平負担の確保、子会社を含めた経営の合理化など、所期の成果を十分に収めたとは言えない点があり、将来に向けて改善されるべきである。一方、豊かで質の高い放送番組の充実、災害・緊急報道体制の強化、地上デジタル放送の推進等に関する取組については、おおむね所期の成果を収めたものと認める。
 協会においては、一連の不祥事の反省に立ち、その再発防止に取り組んできたところであるが、平成18年4月に新たな不正出張事案が発覚したことは、それまでの取組が十分でなかったことを示しており、協会は公共放送としての社会的責任を一層強く再認識し、国民視聴者からの信頼回復に向けた取組を引き続き全力で行う必要がある。
 また、協会においては、一連の不祥事を契機とした国民・視聴者からの信頼低下による受信料収入の大幅な減少を受け、国民・視聴者の信頼回復に向けた取組を進めるとともに、受信料収入の回復に取り組んでいるところであるが、依然として協会の財政基盤である受信料収入は不祥事発覚前の水準まで回復しておらず、また、受信料未契約世帯等の割合はなお全体の約3割に達する状況を踏まえ、受信料の公平負担の徹底に向けて引き続き全力で取り組む必要がある。
 なお、平成19年9月に国会に報告された会計検査院の「日本放送協会における不祥事に関する会計検査の結果について」(以下「会計検査院報告」という。)において、関連団体の余剰金の状況等に関し指摘を受けたところであり、協会においては、当該指摘を踏まえ、子会社等を含めた事業運営の適正確保に一層取り組む必要がある。
 おって、平成18年度に協会が実施した業務及び今後の協会の業務について特記すべき事項は、下記のとおりであり、これらについて今後の成果を見ていく必要がある。

1 コンプライアンスの徹底

 一連の不祥事を踏まえ、協会においては、再発防止に取り組んできたところであるが、平成18年4月に新たな不正出張事案が発覚したことを受け、緊急業務調査や全部局業務調査を実施し、その結果を踏まえ、出張経費の事務処理の見直しや抜き打ち監査等、再発防止のための改善策を実施した。
 また、経営委員会の諮問機関として設置した外部の有識者からなるコンプライアンス委員会の第一次答申を踏まえ、経営委員会は、執行部に対し、役職員の意識改革に向けた取組や真に実効性のあるコンプライアンス態勢の構築等をあらためて要請した。
 平成18年度においても新たな不正事案が発覚したことは、これまでの取組が十分であったとは言えないことを示しており、協会は、国民・視聴者からの信頼回復に向けて、実効性ある内部統制機能の整備や職員のコンプライアンス意識改革の徹底等をより強力かつ継続的に推進する必要がある。

2 受信料の公平負担の確保

 一連の不祥事により受信料収入が大幅に減少したことを受け、受信料収入の回復と公平負担の徹底を図るため、全部門の職員による支払い再開を求める活動や民事手続による支払督促の申立を行うとともに、視聴者の利便性向上やより公平で合理的な受信料体系の実現を図る観点から、クレジットカード継続払や家族割引の導入を行った。
 この結果、受信料収入は予算を上回る前年度比114億円の増収となったが、一連の不祥事発覚前の水準には至っておらず、また、不祥事を理由とする支払拒否・保留件数はピーク時の128万件から減少しているものの86.7万件と依然高い水準にあり、契約総数についても予算における目標数を大幅に下回る0.3万件の増加にとどまった。
 協会においては、引き続き未契約世帯等の解消に向け、受信料制度の意義や仕組み、改革に向けた協会の具体的取組について国民・視聴者の理解を得る努力を行うとともに、より公平・公正で透明性のある受信料体系に向けて見直しを行う等、受信料の公平負担の確保に向けた取組を一層徹底する必要がある。

3 業務の合理化等

 「平成18年度〜20年度 NHK経営計画」の初年度として、組織の統廃合に伴う業務の見直しや管理部門の見直し等業務の集約・再編成を実施するとともに、人件費の削減に努めた。
 協会においては、事業収入は一連の不祥事発覚前の水準には回復しておらず、依然として厳しい経営環境にあることをかんがみ、更に業務全般の一層の見直しを行い、その合理化及び効率化を進める必要がある。特に、受信契約に係る契約収納関係経費については、依然として高い水準にあり、可能な限りの外部業務委託を行う等、その一層の効率化に向け抜本的な見直しを行う必要がある。

4 子会社等

 子会社における役員の退任慰労金制度を廃止し、業績評価による報酬制度を導入するとともに、一部子会社による特例配当を実施した。
 協会においては、厳しい経営環境を踏まえ、子会社等の経営・事業運営の適切な管理に引き続き努めるとともに、子会社等の整理・統合について検討を進め、その合理化・効率化を一層推進する必要がある。
 また、会計検査院報告における指摘を踏まえ、子会社の資産状況等を勘案して特例配当を要請する等、引き続き協会の財政に寄与させるよう努めるとともに、関連団体との取引について、随意契約による業務委託の在り方の検討や業務委託額の妥当性の検証を進める等、契約の妥当性、透明性の一層の確保に努める必要がある。

5 情報公開

 新たに理事会議事録、役員の報酬支給基準、職員給与支給基準を公開した他、番組制作費に関し、主な番組の1本あたりの制作費予算の最低額と最高額や、代表的な番組の1本あたりの制作費の予算を新たに公開した。また、子会社等との取引について、1件三千万円を超える取引の評価等をホームページで公表した。
 協会においては、受信料を主な財源とする公共放送として、国民・視聴者に対する説明責任を全うする観点から、業務・運営に関する透明性の向上に不断に努めるとともに、子会社等の事業運営の透明性の確保の観点から、子会社等との取引や子会社の経営情報についても一層の情報公開を進める必要がある。

6 デジタル放送の実施とその普及に向けた取組

 平成18年12月に全国の都道府県庁所在地において、地上デジタルテレビジョン放送の受信が可能となったほか、平成19年3月をもってアナログ周波数変更対策の一環である放送局側の送信周波数の変更対策を終了した。また、平成18年4月、携帯端末向けサービス「ワンセグ」を開始した。
 協会は、平成23年のデジタル放送への全面移行に向け、引き続き放送のデジタル化を先導し、地上デジタルテレビジョン放送の視聴可能地域の拡大を推進するとともに、国民・視聴者に対する周知・広報等に積極的に取り組む必要がある。

7 放送番組の充実

 大型企画番組の編成や福祉・教育番組の充実など、視聴者の要望に応える番組の充実に取り組むとともに、地域放送について、全国への発信を推進する等、その充実・強化に努めた。協会においては、公共放送として今後とも国民・視聴者の期待に応え、その信頼を高めるため、国民・視聴者の意見・要望の適切な反映に努めるとともに、放送法の趣旨を十分踏まえ、国民・視聴者の視点に立って放送番組の充実に取り組む必要がある。

8 国際放送の充実

 テレビジョン国際放送については、外国人に対する放送サービスを強化するため、英語による情報発信の充実を図った。また、ラジオ国際放送については、報道番組及びインフォメーション番組の充実を図った。
 協会は、外国人にとって魅力ある情報発信の強化という観点から、テレビジョン国際放送について、更に積極的な取組を進めることが期待される。

9 災害対策

 地震及び台風等の発生に際し、随時地域向けのニュースを放送したほか、常時文字情報を挿入することにより、きめ細かな情報提供を実施した。
 また、災害対策基本法等による指定公共機関として、災害に際し放送の送出及び受信を確保するための体制確立を図り、災害を想定した訓練や研修等を実施した。
 協会は、今後とも、災害時における放送体制の整備に努力するとともに、被災者に役立つ正確かつきめ細やかな情報を迅速に提供することが期待される。

10 字幕放送等

 総合放送において字幕付与可能な放送時間に占める字幕放送時間の割合が100%を達成し、「字幕放送普及行政の指針」で定められた目標を前倒しで実現する等、字幕放送の計画的な拡充に努めており、協会は今後とも字幕放送等の充実に取り組むことが期待される。

11 番組アーカイブの活用

 NHKアーカイブスに保存している番組について、全国の放送局等に設置した番組公開ライブラリー等により公開するとともに、保存番組リストをホームページで公開した。
 協会の保有する放送番組等は、受信料を負担する国民・視聴者にとっての貴重な資産であることにかんがみ、その積極的な利活用を図るため、一層の視聴環境の整備や視聴可能な番組の充実に取り組む必要がある。」

 

 以上です。

 

以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成20年 2月26日
                     会 長  福 地 茂 雄

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