第16回「デジタル時代のNHK懇談会」議事録

■開催日時:平成18年6月19日(月)午後1時〜3時
■場所:NHK放送センター会議室
■出席者
懇談会委員(五十音順、敬称略)
家本賢太郎、伊東 晋、江川紹子、音 好宏、梶原 拓、笹森 清、新開玉子
辻井重男(座長)、長谷部恭男(座長代行)、藤井克徳、吉岡 忍
(11名)
NHK側
会長 橋本元一、副会長 永井多惠子
理事 原田豊彦、畠山博治、小林良介、中川潤一、小野直路、衣奈丈二、
石村英二郎、西山博一、
総合企画室〔経営計画〕局長 橋場洋一、統括担当部長 村上勝彦 
■議事次第
1.開会 
2.「最終報告」(案)について
  ・意見交換
3.閉会

■議事録のPDF版はこちら(144KB)


1.開 会

事務局  本日もお忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。委員の皆さんには一年間に渡ってご議論いただきました。本日が最後の会となりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日は小林委員、永井委員、山内(純)委員、山内(豊)委員、山野目委員、金沢委員がご欠席でございます。江川委員、音委員が若干遅れるということです。

辻井座長  それでは第16回の懇談会を始めたいと思います。本日は最終回です。これまでどうも大変ご苦労様でございました。今日はよろしくお願い致します。
 まず報告書について、委員の皆様に先週の木曜日に事務局から最終報告の案をお送りしまして、金曜日、土曜日で大変忙しかったのですが見ていただきました。起草委員の方々にがんばっていただきまして、わが家の庶民代表に読ませてみましたが大変魅力のある、説得力のある、分りやすくていい報告書ではないか、と言っていました。自画自賛になりますが、起草委員の方々は本当にご苦労様でした。
 この内容で委員の皆様にご承認いただければ、報告書を橋本会長に答申いたしまして、そのあと私と起草委員で記者会見に臨みたいと思います。
 出されました意見を元に、若干の修正も入るかと思いますので、この懇談会の議論は2時20分頃までを予定しています。報告書の内容につきまして、起草委員の皆さんからご説明をお願いしたいと思います。

2.「報告書」(案)について 

長谷部座長代行  最後の案をお送りするのに多少時間をとってしまいました。大変申し訳ないことでございましたが、にもかかわらず貴重な意見をたくさんいただいてどうもありがとうございました。
 私から全体の構造についてざっとお話をさせていただきます。二枚の概要がありますが、そちらのほうが分りやすいのではないかと思います。
 報告書全体の構造ですが、大きく分けますと、基本的な立場を示した部分、すぐに取り組むべき提言を行っている第二の部分、最後に、「放送の自主自律の枠組みの再検討」を提言している部分で、最後に、辻井座長の「結びに代えて」という文章で結ばれているという構造でございます。
 中間報告の段階から論旨において大きな変化があるわけでありません。ポイントとして構造上変化があるところは、中間報告では提言で収められていた「受信料のあり方」、「チャンネルの数」、それに関する考え方が、基本的な立場の部分に移っているということがあげられると思います。
 提言の部分は、前回の笹森委員からのご意見だったかと思うのですが、制作現場にかかわる問題と、それから組織統治、ガバナンスの明確化にかかわる部分は二つの問題だから分けたほうがよろしいのではないか。おっしゃるとおりですので、これは二つに分けまして、現場の問題に関しては、さらに「教育研修システムの充実」の問題を新たに付け加えているところです。
 その他の委員の方々からいただいたご意見には、大きく分けますと三つのポイントがございまして、受信料の位置付けについては、いくつかのご意見をいただいています。また終わりに、「放送法の根本的な再検討が必要ではないか」という部分についても、幾つかのご意見を頂戴していますが、吉岡会員に後ほどご説明いただければと思います。
 もう一点、「技術開発」「インターネットの活用」等、技術的な部分については伊東委員に、主に文案の検討をお願いした部分ですので、これも伊東委員からお願いできればと考えております。

辻井座長  では吉岡委員から。

吉岡委員  この懇談会は、放送法とか放送制度とか、NHKの仕組みという、これまであるものにこだわらないで、根本から議論をしようということで始まりまして、十数回を数えてきましたが、その討論を生かす報告書にしたいと思いました。
 とは言え、放送法の基礎を築き、ずっと維持されてきた先人の方々に対する敬意というものもきちんと表していくべきだろうということも忘れないようにしたいと思いました。
 もともとこの懇談会は不祥事がきっかけになったのですが、その原因はどこにあったのか。それが単に個人の自覚が足りなかった、不足していたということであるとすればこのような懇談会がされるわけもなかったわけでして、やはりどこかに、放送法、放送制度の問題にまで踏み込まざるを得ないような状態があったからこそ、長い一年間の議論をしてきたのだろうと思いました。その成果をできるだけ生かそうと思いました。
 基本にあるのは、この懇談会で繰り返し言われてきたことですが、視聴者に向き合う。あえて言えば「視聴者主権」というものを、どう位置付けるのか、どういう理屈に基づくのかという、NHKの理念というものを見据えておきたい。その中で視聴者から信頼される、あるいは視聴者が何かあったときにNHKを支えてくれるという関係を作り出すために、何をなすべきか。その仕組みを考えたいという展望をもちたいと思いました。
 十数回の議事録が公開されていますが、私は1週間部屋にこもりまして議事録を改めて最初から読みました。皆さんがどういうことをご発言になったかとか、NHKの皆さんからどういうご説明をいただいたかということを、最初から読み直してみて、もう一回、中間報告があったわけですが、その項目を一面の壁に貼り出しまして、一週間かけて基本となるものを書かせていただきました。
 概要については、長谷部さんからご説明をいただいたとおりですが、書きながら悩んだ、一番大きな問題は、放送法の問題、あるいは放送制度の問題、それから受信料をどう位置付けるかということでした。
 お読みいただければ分るように、受信料については、NHKを受信するという、コミュニティの会費であるという位置付けである。そういうことがこの懇談会でも盛んに言われていたわけです。契約義務ではなくて、支払義務化と罰則化についてどう考えようか。
 この懇談会では、罰則については、皆さんが同意をしないということは、明確におっしゃっていたと思います。では支払いの義務化と、契約の義務化の間のステップを、もう一歩越えるかどうかということで、議事録を読む限り、賛否は半々だったと思います。
 単に、皆さんがおっしゃったこと、私が考えたこともそうですが、それを法律の条項でちょっと変えるだけいいということではないわけで、公共放送はなぜあるのか。なぜ人はみんな公共という空間に参加するのか。その根拠をきちんと述べないと、どちらも意味がないことだろうと思うのです。
 私も、論理構造をしっかりしないといけないと思いまして、考えたことは、世の中に社会がある、社会イコール公共空間であると言えるのかどうか。社会というのは、この国(社会)に生まれれば、誰もが社会の一員ではありますが、公共性、公共空間は自主性とか自発性に基づいて、社会に形成されるもう一段上のことで、そこに支えられるものではないかというのがありまして、その理屈を考えながら書いたので、ここは1ページ書くだけで一日半かかりました。
 それからもう一つは放送法と放送制度で、放送法をどういうふうに変えるべきか、この懇談会の席上でもずいぶん悩んだことです。一連の不祥事とかさまざまな問題が単なる個人の自覚に待つということだけであるとすれば、ここまで踏み込む必要はないと思います。
 と言って、これは制度が悪いから起きたことだともなかなか言い切れない。こういう問題は、原因はなかなか特定できないのですが、少なくとも視聴者を軽視する、あるいは蔑ろにするその土壌というものは、何らかの制度上の問題が含まれていたのではないかというのが、この議論の流れだったのではないかと思います。私もそういうふうに考えて、放送制度あるいはそれを根拠付けている放送法をもっとNHKが直に視聴者と向き合えるような仕組みに変えていく。その必要性をこの中では訴えています。
 私も多少は配慮しますので、もって回った言い方をしているところもあるかと思いますが、その辺は酌み取っていただければと思います。

辻井座長  では伊東委員お願いします。

伊東委員  長谷部先生からご紹介がございましたが、これから重要になるものの一つは、インターネットの利用方法だと思います。NHKがインターネットを使って情報発信する場合、今のところその利用方法に細かな制約がかかっています。報告書では、これが付帯業務に位置付けられていることを明記して、世の中だいぶ変わってきているので、もう少しインターネットを自由に使えるように、これは結局、制度整備につながると思いますが、そのような方向性が必要なのではないかということをクリアに出しました。
 もう一つは、情報収集を目的としたもので、前々回からご議論が始まったと思いますが、ブログの利用についてです。情報発信だけではなく、情報収集の方でもインターネットをうまく使えないかということを述べています。
 また、技術の研究開発に関して、中間報告と比べて新たに書き添えたところは、研究組織の分離の問題が出てきましたので、それは好ましくなく、公共放送のあり方から考えると研究機関も一体的にあるべきだという主張を加えました。
 もう一つは、研究の中長期的な継続性が重要であるということで、いま研究を止めた場合、すぐには困らないかもしれないけれど、数年経つときっと困ったことが起こりますよという意味合いのことを付け加えさせていただきました。

辻井座長  どうもありがとうございました。それではこの報告書について、ご意見、感想をお一人ずつおっしゃっていただきたいと思います。

家本委員  私の専門領域というのは、私自身がわかる領域は、インターネットの部分しかありませんでしたが、この懇談会の中で、私が何回か申し上げたのはタイトルに入れていただきました、「次の世代へNHKをどういうふうに引き継ぐか」というところがとても大切だという強い認識をもちました。
 インターネットというテクノロジーの技術の問題だけではないということを強く感じました。報告書の中で、「インターネットの技術に関してNHKはきちんと使う可能性を探るべきだ」ということに関しては落としていただいているので、これは私としても賛成で、こういうふうに書いていただいたことをとてもありがたいと思っています。
 いくつか、この会全体の最初の議論で、学生向けの料金体系をどうにかできないかとか、料金の支払方法をもっと柔軟にできないかという議論をさせていただいたと思いますが、同様に実際にサービスとして、料金体系として組み込まれることになったのは好ましいと思っております。
 いずれにしても、私はここに加わって申し上げたかったことと、これはこの懇談会のメンバーの方だけではなくて、議事録を読んでいただいたり、報道されて、NHKの今後の経営あるいは、NHKの方向の流れが、5年、10年という短期的なものの見方に終始するのではなくて、30年、50年、もっというと100年それぐらいの方向性を位置付けるぐらいに大切な転換点、時期なのだということがうまく伝わるといいなと期待しています。
 私個人も、NHKの周辺のことを改めて勉強させていただいて、もちろん知らないことばかりで、多くの新しい知識を得ることができましたが、インターネットのテクノロジーが万能でないことも知っていましたので、さらにテレビという既存のメディアと、新しいメディアが、どういうふうに関わっていくのか。私は事業の立場ですが、実践していきたいと思っています。

江川委員  本当に起草委員の方ご苦労様でした。自分の主張を書くのであれば、多分こんなにご苦労されなかったと思いますが、いろんな人たちの意見を全部組み入れることは大変だったと思います。
 この中で、細かいことでなくて、社会の変化の中で何を考えなきゃいけないのか、あるいはNHKの問題を通じて社会の問題が見えてくるということもきちんと盛り込まれているので、そういう意味で単にNHKをどうするかではなくて、いろんな人たちに読んでいただける内容になったと思います。
 問題は、これをどういうふうにして具体化していくかということになります。例えば放送法に関しても、再検討をしまして、このままではいけないだろうと、いろんなところで言っていますが、それをどういうふうに変えていくのか、誰が変えていくのかということです。
 ただ漫然と国会が動くのを待っていたのでは、根本的なことは永遠に変わらないと思います。提言、報告書で、この会の役割は終わるわけですが、それに続いて、これを生かすための、たとえば放送法に関する検討会とか、法律の専門家とか、そういう人たちを入れて作るとか。提言が出しっぱなしにならないよう、それに続くことをNHKとしてはやっていただきたいと思います。
 私自身も、今回のことで、こうすればいいと普段思っていたことが、実は法律で縛られてだめだったとか、いろんなことが分ってとても勉強になりました、どうもありがとうございました。

梶原委員  まず辻井座長さん、委員の皆さん、本当に敬意を表したいと思います。このメンバーは種々雑多なメンバーで、多様性があるということは逆に視聴者代表として適当であったと思うのです。別途、一握りの学者だとか、特定の国会議員で論議されていますが、この懇談会こそが視聴者代表であったのではないかと思います。
 それだけに座長さんが仕切っていく上で大変だったと思います。だけどよくまとめていただいて、視聴者の方々が最大公約数として認めていただける結論になっていると私は思います。
 特に私はずっと一貫して申し上げていましたが、視聴者優先といっても、視聴者に対する責任体系が明確ではなかったのです。放送法の改正にも関連しますが、国会に説明していれば視聴者の納得を得たという、かつての国営放送の遺物が残っていたと思いますが、まずそれを何とかしないといかん。江川さんがおっしゃる通りですが、少なくともその考え方を、視聴者にNHKが直接責任を負うということを明確にしたということは、歴史的に見ても画期的だと思います。
 この点は、最終的にも、いろんなことを言う人があるかもしれませんが、ぜひ、太い柱として一貫させていただきたい。そこがはっきりすれば、受信料の問題もはっきりしてくると思うのです。
 いま、コミュニティとか社会とかおっしゃいましたが、人間の集団ではエゴを剥き出しにしていく側面と、お互い共存共栄していくという両面がありますが、私は共存共栄していくという側面がコミュニティだと思います。
 コミュニティを支える公共放送、会員料、会費だというのは納得しやすいと思います。かつての国営放送的な感覚で、やれ罰則だということは、今の国民の雰囲気は、それにマッチしないと思うので、コミュニティ会費だというのはいい結論ではないかと思います。
 チャンネル数も、どこかの大臣がチャンネル数を減らせという問題ではなくて、視聴者がどう考えるかということだと思います。そういうきちっとした体系的な結論が出たことは大変すばらしいと思います。ただNHKさんがしっかりやってもらえるかということもあります。NHKは、これまで以上に、覚悟を決めて視聴者本位の姿勢を貫いていただきたい。
 いかなる権威とも一線を画して視聴者を守っていくという精神で、ぜひお願いしたいと思います。江川さんがおっしゃったようにフォローアップです、紙に書いて印刷して終わりでは、他の審議会と何ら変わらないので、フォローアップする体制をぜひ作っていただきたい。辻井座長さんが、これも腐れ縁ですから、ずっと責任者でフォローアップ、あるいは監視の目を光らせていただく仕組みを、ぜひ作っていただきたい。これもどこかに書いてありますか。

吉岡委員  23ページに書いてあります。

梶原委員  ぜひそれを具体的な形として、どういう体制がいいかはわかりませんが、継続してフォローしていただくようにお願いしたい。そうしていただければ、我々も忙しい中をおつきあいしたことが報われるのではないかと思います。

笹森委員  皆さんおっしゃられるように、座長をはじめ、起草委員の方々にお骨折りをいただきました。感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 そのうえで、この論議、この委員会は大変おもしろかったと思うし、お骨を折っていただいた報告については、大変いいまとめになったという評価をしたいと思います。これが発表できて良かったなと率直に思います。
 その上で、申し上げたいのは、私は15回行われた懇談会の中では、精神的、情緒的、感情的な部分について、とくに発言をしたと思っています。その中身は、コンプライアンスとガバナンスの問題を中心に、技術的な、テクニカルな部分については、私は能力がないので、そういったものを重視してきたのですが。その中では、とくに会長以下NHKの執行部側の皆さんには、比較的きつい発言をしてきたのだろうと自分では思っています。
 それはどういうことかというと、ここでまとめられた部分がこれからどうなるか。梶原さんも触れていましたが、そこを重要視したいのです。この内容は見事だと思えるし、これを発表されたこの懇談会はいいけれども、これをNHKはどう受け止めるのか。それについてどう思うのか、今度どうするのか、この提言をどう生かすのか。
 これについて、私は何回も「覚悟」という言葉を使いましたが、そのことがはっきりわかるような、これから座長からお渡しされるでしょうから、受けたあとにNHKとして、世間に対して明確なメッセージを発信してもらいたい。
 その上で、フォローという言葉がありましたが、私どもの組織の例を取りますと、労働組合ナショナルセンターの連合もいろんな批判にあっていまして、特に私の時代には強かったのです。
 それに対して外部の人たちの意見を率直に聞こうということで、内部的にはめちゃめちゃ反対があったのを、かなり強面の先生方7人にお願いして、2年間論議をしてもらいました。そのうえで、今の日本の労働運動に対する提言をいただいた。最初はそんな提言なんか出すつもりもないぐらいきつく言われたのですが、現場にも入ってもらってまとめた提言は、ものすごく手厳しかったのです。ここまで言うかというぐらいぼろくそに言われました。その上で、お前らちゃんとした労働運動ができるという提言まで付いたのです。
 それをいただくときに、座長から、「これはぜひ神棚に上げないでくれ。毎朝お灯明を立てて柏手を打たれてもうれしくも何ともない。本気でやるんだったら、全部の組織、地域に対して、このことを浸透する努力をしてみろ」と。「その上で自分たちが集まってやることはなかなかできないけれども、1年に1回はこのメンバーにこういうふうに今やっています、このことについてこうなりましたぐらいの報告はしてくれ」と。集まって意見を聞きたいというなら、同窓会的に集まってもいいから、そういう招集も考えてくれないかということを言われました。ぜひそのことを展開していただきたい。
 これは中央だけの問題ではありません。いろんな意見交換でも出てきましたが、地方がどうなのかというのは重要です。地域ごとのシンポジウム的なものも、できれば辻井座長が行っていただくのが一番いいのですが、入っていただいて、NHKとして主催をするとか、地域の人を巻き込んでということが必要ではないかと思っています。こういう提言ができて良かったと思います。

新開委員  私は専門分野ではなかったので、何ができるか責任を感じて参加しました。特に「はじめに」の下に、幅広い分野で経験を持ち寄り、という文言がありますが、私は、何の意見も持ち寄れなかったので、非常に皆さんにご迷惑をかけたと反省しています。
 でも提出されたものを一つ一つ、視聴者の一人として真剣に読み返して考え、自分に何ができるか問いかけながら真剣に参加してきたつもりです。
 私に最も関心のある部分といえば、受信料で、その受信料について書かれた部分は、すばらしく表現されていると思います。視聴者としては、受信料は番組のサービスの対価と思っている人が多い中で、こういうふうに書いていただいたら、すごく納得だと、理解されると思います。
 NHKも民放もよく見ますが、テレビは社会を変えるぐらい大きな影響があります。たとえば、私は農業関係ですが、テレビで、これが美味しいと言ったら、それがばっと売れる。これが駄目だと言ったら、風評被害でつぶれるところもでてくる。今の時代は、いたるところに歪みが出ています。教育、環境、私たちにとっては食もですが、そういう歪みを、放送の力で世直しする時期にきているのではないかと思います。
 多くの主婦と接して、テレビ番組について話します。そのことだけが私にできたことかと思いますが、「不祥事や小さな事件に右往左往することなく、NHKのことは信頼しているからしっかりがんばって、と言ってきてね」という人が多いのです。受信料の不払いが増えたといっても、まだまだこれだけ払って、信じている人がいるので、NHKにはしっかりがんばっていただきたいと思います。本当にお世話になりました。

藤井委員  私もまったく素人でありまして、門外漢でアマチュアとして発言させていただいて、トンチンカンもあったかと思います。通常こういう審議会は、事務局が原案を作っておしまいというのが普通ですが、見事に起草委員の方々が直に筆を取り、まとめられたというのは、これ自体、価値が高いと思います。
 したがって、そういう点からいっても、内容もさることながら手続きも含めて大変意味がある。私たちはこの報告書で視聴者に向けて大きなメッセージを出しているのですが、同時にNHKの職員さんに対して、かなりの激励とメッセージを発していると思うので、ぜひ職員の方々にも読んでいただき、深めていただくようにしてほしい。
 ざっと見て、私の記憶に残るキーワードは、「公共放送」、「民主主義」、「受信料のあり方」が正三角形のように感じるのです。この辺が大事なポイントではないでしょうか。
 私にとっての関心事の一つは伊東先生等の専門の「情報バリアフリー」ですが、今回はそれを超えての話だったと思いますので、それにはこだわりませんでした。障害者の側からすると、この「情報バリアフリー」は技術面を中心に非常に期待が高いものがあり、大変コストのかかる、分が悪いのかもわかりませんが、これこそが民主主義あるいは基本的人権に関係するもので、ぜひ引き続き探求してほしいと思います。
 最後に、おっしゃるとおり、これがどのように具現化されるかということで、多くの報告書は出して終わっていく場合が多いのですが、文字通り羅針盤として、一種の行動プランとなってほしいと思うのです。
 そこで大変労作であったこの報告書をどうフォローアップしていくかが問われるように思います。行政府、立法府、また知事会などの自治体関係者、マスメディア関係者、この分野の研究者、また、私ども障害者分野にも普及していただければと思います。特に障害分野に関しては録音テープ版などがあればなお有効かと思います。折しもこの問題は一種の社会問題化しつつありますので、早い時期に広く流布することが肝要かと思います。出し方については、もちろんホームページでの掲載は有効ですが、紙媒体でも必要かと思います。どうもありがとうございました。

辻井座長  私もつたない司会でしたが、これまでのいろいろな委員会でも、一番面白かったと言えば不謹慎ですが、これだけいろんな人が集まって、しかも、今までは専門家や利益関係者である場合が多かったのですが、これだけ公共放送のためにいろいろなご発言をいただいて、堪能したという言い方でいいのかどうか分りませんが、そんな感じがしております。
 日本人というのは、神棚が好きな民族でして、セキュリティではISMSを取るというのが企業で流行になっているのです。インフォメーション・セキュリティー・マネジメントシステムですが、お墨付きをもらって、あとは神棚に上げておく。世界の企業の半分ぐらいを日本がとっているのです。本当にやっているかというと、なかなかそうはいかない。我々の分野、あるいは広く、内部統制の分野とか、システム監査の部分でもPDCAというのが流行り言葉になっています。Plan,Do,Check,Act 、計画し実行し検証し改善するという、このサイクルはしょっちゅう回してないと止まってしまうとだめだということですが、NHKの場合には、神棚に上げないで十分検討していただくと伺っておりますので、その点は安心しております。言い足りないことがあればもう少し時間がありますので。

藤井委員 これを世の中に出していく方法について事務局としてどのようにお考えですか。

辻井座長 計画がありましたら、当然、ホームページには載せられるし、何千部ぐらいはお刷りになると思いますが、どのぐらい普及される予定ですか。

橋本会長  神棚論がありましたが、そのようにはいたしません。他にも大臣の懇談会や、政党の取りまとめ、その他、いろんな意見が出ている中で、視聴者の視点からまとめた報告書として大切に扱いたいと思っています。
 これからの時代に向けての公共放送の存在意義を、視聴者の視点でどう見るかということが書かれており、報告書の内容を多くの視聴者の方々にも見ていただくことが必要だと思います。
 まずは、今回のまとめをNHKの放送でしっかり報告したいと思います。議事録も、これほど情報公開したことがないくらい詳細な内容をインターネットに掲載してまいりました。いろんな機会を見て、報告書にこめられたエッセンスとともに、NHKとしては、こういうふうに考えていますということを、いろんな場でご報告をしてまいりたいと思っております。
 実際に、この報告書については、当然ながら、全国の放送局、海外のブランチまで含めて配ることになっています。また、これまでの議事録についても職員が興味をもって見ていまして、それに対する意見も私のところに来ています。報告書の内容を、内外共に、できるだけ広める措置をとってまいりたいと思います。具体的にどういう場がありうるかは、これから検討したいと思います。
 6月25日日曜日の、NHKの経営広報番組では、この報告書を扱っていきたいと思っております。

梶原委員  何時からですか。

永井副会長  総合テレビの11時からの予定です。いつも経営情報のようなものを視聴者向けにやっておりまして、通常15分ぐらいですが、放送時間を広げるかどうか検討しております。

橋本会長  30分枠でわかりやすく説明してまいりたいと思います。今日のニュースでも出したいと思います。

辻井座長  よろしければ副会長、理事の方々に一言ずつお願いしたいと思います。

永井副会長  本当に長期間ありがとうございます。公共空間を維持する社会的コストとして受信料をとらえてくださったことを大変ありがたいと考えております。それと同時に支払い義務化というのもあるわけですが、今後、視聴者からご批判を受けた場合に、それをどう受け止めるかという仕組みを、改めて真摯な態度で考えなければいけないと思いました。

原田理事  本当にありがとうございました。私はこの会に参加させていただいて、議論の端々で、「視聴者第一主義」、あるいは「NHKだからできる放送」という皆さんのお言葉を聞きながら、私ども現場で、この1年、そういう考え方に沿って、さまざまな改革を進めてまいりましたが、そこの原点を改めて教えられたという思いがしておりまして、しっかりと現場に反映させてやってまいりたいと思います。

小林理事  どうもありがとうございました。私は営業担当ですが、実は、こういう機会で毎回聞かせていただいて、大変私にとって参考になりました。経営の中の議論も会長以下全員がしょっちゅう集まって役員で議論している場があるのですが、これまで全くなかったことだと思うのです。そのことを一般の職員から、やたらしょっちゅう集まってやっているが何も決まらない、という、むしろ批判をもらうのですが、実は我々が変わったことはすごくいいことじゃないかと。確かに決まらないことが多いのですが、80年間のNHKと、これからのNHKは変わらなければいけないということですから、そういう意味で時間がかかっても大いに議論しなくてはいけない。こういう場面で、毎回この懇談会の議論を聞かせていただいたことは大変参考になりました。
 私は営業担当で、今回の内容も40年近くNHKにおりますが、個人的にも長年思っていることとほとんど変わりないといっては叱られますが、同じ思いでありますので、意を強くさせていただいて、がんばっていこうと思います。ありがとうございました。

小野理事  この会では、あまり発言する機会がなかったのですが、我々の間では議論をしていても、表に向かってはなかなか慮って思ったことも言えないことが多いのですが、議論を拝聴していて、正直言ってテーブルの下で拍手をするような局面がも多かったと思います。
 職員の中でも、この議事録が公開されていることに対して評価が高くて、職員が広範に読んでいます。今後は視聴者に向けてどう広げていくのか、我々の責任だと思っています。ありがとうございました。

石村理事  報道担当の石村です。私が感じましたのは、よくこれだけ大勢の方がいらしてNHKの応援団になってもらっているというのをつくづく感じました。
 一つだけご報告しますが、意外と現場は、報道の現場にしろ番組の現場にしろ、我々ほどめげたり、いろんな形で苦労というか、悩んでいる部分は置いておいて、しっかり仕事を充実してやっているのは確かなので、現場の働きとか、理想の志というのは、いろんなことが起きまして多少の動揺があっても、根本の部分はみんなしっかり動いている。このことだけは皆さんにご報告したいと思います。したがってNHKのニュースや番組がきちんと、今でも、この一年間、揺れ動きましたけれども、いい形で動いているということをぜひ皆さんに知っておいていただきたいということを一言ご報告します。

西山理事  技術を担当している西山です。この懇談会はタイトルにありますように、「デジタル時代のNHK懇談会」ということで、デジタル技術について一度ご説明させていただきました。デジタルというのは人にやさしく、そして、デジタルはさまざまな可能性があります。この報告書に、「技術開発の基盤整備」にも書いてありますように、確かな技術でNHKならではの技術開発を始めとして、無限の可能性があるデジタルを使った未来社会の夢の実現をはからなければなりません。しっかりその役割を果たし、皆様の報告書の要望にお応えしていきたいと思います。本当にありがとうございました。

衣奈理事  経理を担当しています衣奈です。ありがとうございました。
 この報告書の冒頭に近い部分で、自主自律を強調される中で、私がNHK職員であった時代も、変わりなく自主自律は極めて大事なものとしてやってきたのですが、今回お書きいただいたように、政治的中立性だけではなくて、金銭上の不明朗さを疑われないということも、自主自律の条件であることが明記されています。きわめて重要なことだと思います。この意味でも、確実に時代が一回りしたという総括も感じながら、緊張感を持って当たりたいと思います。ありがとうございました。

中川理事  昨年の6月に第1回をやりまして、その際に趣旨等をご説明申し上げて、いろいろご質問があったことを記憶しております。私自身も説明しながら、今ひとつ、そのあたりのことを腹に落としていたかと言うと、決してそうではありません。私ども執行部も昨年の4月下旬に新しくなりまして、これから改革をやろうということで、何をどうやればいいのかということを考えつつ走っている状態でした。
 その間、「新生プラン」を9月にやりまして、また1月には「経営計画」を発表しましたけれども、そういうことも含めて、もう少しこういう場で皆様方に的確に、外の情報、あるいはNHKが課題に思っている情報をより的確にお出しすれば、もっと議論が深まったのかなと思っていますが、ともかく私としては、しばしば途中で口を挟ませていただきましたが、NHKが、これまで以上に制度改正も含めまして、世の中と切り結んでいくという場面に立ち至っていくと思います。その際にぜひ今回の議論を、材料あるいは武器とさせていただいて、がんばっていきたいと思います。本当にありがとうございました。

畠山理事  広報とコンプライアンスを担当している畠山です。どうもありがとうございます。私は前に視聴者サービス局の担当でしたが、6月から広報・コンプライアンスということになっています。最初は、お聞きしていて、かなりきつい意見もあるなと思いつつ、今この報告書を、まだ全部読んでいませんが、概要等を読ませていただきました。我々からすれば外からとんでもない意見も出てきたりする中で、NHK全体のことを本当にご理解いただいて、ある意味、我々にはきつい部分もありますが、そういう中で報告書をまとめていただいて、ありがとうございます。
 ただ、これからある部分ではさらっと書いてあっても、実際に我々自身がどう実行に移していくかということが問われると思いますし、さりげなく書いてあるようでも実際にそれをやっていくのはなかなか大変な部分もあると思います。それはそれで覚悟を決めてやってまいりたいと思います。本当にありがとうございました。

橋本会長  改めて御礼を申し上げます。懇談会をこれまで16回開いていただき、大変長いと言えば長い、短いと言えば短い時間の中で、ここまでご議論いただきました。またNHK自身では、なかなかまとめきれないようなことも、大変わかりやすくまとめていただきましてありがとうございます。特に起草委員の皆さまのご苦労には、これだけ多様な主張をこうしてまとめられたご苦労に対して御礼申し上げたいと思います。
 中川も申し上げましたが、これから「NHK改革」というテーマの中で、いろんな関係部門と切り結ぶような場面があろうかと思います。私自身、この報告書を神棚に上げることなく、しっかりと対応してまいりたいと思います。実際に直ぐできることは取りかかろうと思います。
 この3か年経営計画の中でも、これまで出たご意見のうち、やれることは既に盛り込んだつもりですし、これからもやれることはすぐ取り組んでまいります。また、じっくりと腰をすえて対応しなければいけないものもあろうかと思います。視聴者第一ということで、視聴者に対して責任を果たすNHKという姿勢をしっかり持って、事業にあたってまいりたいと思います。ありがとうございました。

辻井座長  音委員に、皆さんにはご挨拶いただきましたのでお願いします。

音委員  すみません遅くなりまして、前の会議がありまして遅刻しました。私もこの報告書作成の途中で、メール等で意見を述べさせていただきました。起草委員の先生方ご苦労様でした。今回の会議というのは外にオープンにしたことで、ぜんぜん知らない方からメールをいただいたり、NHKはどうなっているんだというご質問をいただいたりしました。私個人にもずいぶんとご意見をいただきました。この報告書の最後のところにもありましたが、それらの反応は、一方では、NHKに対するさまざまな問題に対して不信感の表れでもありますが、もう片方では、NHKへの信頼感があるがゆえの反応でもあったと私は思っています。
 その意味でも、今回の報告書を、一つの足がかりにしてぜひとも改革を推進していただければと思います。報告書は、本棚に並べると、そのままになってしまいがちなところがありますが、ぜひそうはせずに改革にお使いいただければと思います。

梶原委員  一言だけ。私はこれからの対応で非常に大事なところだと思うのであえて申し上げますが、先程もNHKの応援団という言葉がありましたが、心情的にはともかく我々はNHKの応援の前に、公共放送をいかに支えるかという使命感でみんな集まってきたと思うのです。
 そのところをはっきり分けて考えてもらわないと。そういう立場で、私も非常に失礼にはあたったけれども、厳しいことを申し上げたということは、橋本会長の顔を頭に浮かべてやっているというのでは駄目なので、公共放送を何とかみんなで支えようという使命感でやってきたのです。そうだと思うのです。そこのところをはっきりしておかないと、この我々の提言の扱いが変わってくると思います。大事なところなので申し上げました。

辻井座長  それはまったくおっしゃるとおりだと思います。最初に吉岡委員が言われた社会と公共空間の違い。これは日本社会というと日本人全部が入るのでしょうが、それのサブセットではないと思うのです。
 梶原委員が言われたように、人間には、欲と二人連れの面と、公共心がある。全ての人が両面を持っている質的なもの。集合論でサブセットというのですが、そういうのではない。もっと定性的な意味の空間があるということでしょうね。それを支えるのがNHKであるということで、我々は公共空間の応援団であるということだと思います。最後、余計なことを申し上げましたが、このあとのスケジュールはどうなるのですか。

事務局  このあと、2時15分にこちらのほうで、委員の皆様方全員とNHK側は会長に出席していただいて、報告書の手交式というものを行いたいと思います。それが終わりましたら、3時半から別の会議室で、起草委員の方々を中心にして記者会見を予定しています。

辻井座長  懇談会はこれでおしまいということで私の役割は終わります。

事務局  どうもありがとうございました。

「報告書」を会長に答申

−閉会−

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