放送制度等に関するNHK意見 NHK information
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高度情報通信社会推進本部 個人情報保護検討部会 ヒアリング資料
 
 平成11年10月6日
 
 
1.NHKの取組状況
 (1) 受信契約者に関する個人情報

○件数約5,000万件
○氏名、住所、電話番号、契約種別、受信機数、金融機関名・口座番号等
営業システムに対するアクセスは、専用端末に限定している。また、利用可能者は、受信契約・受信料収納業務従事者を主に、登録した者に限定している。

(2) 世論調査に関する個人情報
○調査対象者一覧(氏名、住所、性別、生年月日)
○調査票(回答記録)
○調査結果データ(電子データ化) 調査相手一覧表と調査票は1年後に廃棄処理している。

(3) 視聴者からの意見・要望で得た個人情報
○電話、FAX、投書による意見・要望 平成10年度は、約600万件。うち住所、氏名等があるものは約1万件)6か月後に廃棄処理。
○インターネットによる意見・要望・質問 年間約15万件。    
○公開番組への応募はがき 公開番組終了後1か月以内に廃棄処理。

(4)取材・制作過程に関わる個人情報
○著作権情報 約 29 万件
○出演料支払先情報 約 13万件
○人物データベース 約 2 万件いずれも専用端末でのアクセスに限定。利用可能者も限定している。
 
2.取組の効用と問題点
○受信契約者関係
情報の適正な収集、利用、管理、安全確保を主要なポイントとした自主的なガイドラインを昭和62年に策定。平成元年に施行された「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」の趣旨を踏まえて改定。電磁的記録媒体の普及やネットワーク化など、その後の情報化の進展に対応して、一層の個人情報保護強化を図る観点から、現在見直しを進めている。このガイドラインによって、公共放送としての責任と自覚を明確にするとともに、細心の注意を払い、視聴者・国民の信頼に応える活動を行っている。なお、個人情報の漏洩やプライバシーの侵害が問題となったことはない。  

○インターネットによる意見・要望
情報の外部流出防止を目的としたガイドラインを現在策定している。  

○ニュース・番組
ニュースや番組のあるべき姿の指針として、NHK「国内番組基準」がある。また、それにもとづく取材や制作の実践的な手引き「NHK放送ガイドライン」等も作成している。これらによって公正公平な立場の堅持、プライバシーへの配慮の徹底、品位の保持などを指導している。
 
3.法制化への意見
○報道の自由は、憲法第21条の表現の自由に由来し、取材の自由と一体不可分。報道機関は、この報道の自由、取材の自由を通して、国民の知る権利に応えることを最大の使命としている。

○報道の自由、取材の自由と、プライバシーの権利は、一方が他方に絶対的に優越する関係にはない。取材・制作現場では、知る権利に応える使命と人格権・プライバシーの保護という二つの価値の狭間で、事実の正確な把握と報道に努めている。  

○OECD8原則に則って考えた場合、取材や制作にさまざまな規制が加わってくる恐れが生じる。収集の制限の徹底は、周辺取材や裏付け取材などが困難となり、事実の正確な報道という基本的な要請に応えられなくなる懸念が生ずる。公開の原則と個人参加の原則は、情報提供者との信頼関係を損なう恐れや、取材源秘匿との問題、取材制作過程への不当な干渉・介入への懸念が生ずる。こうした原則を法制化してマスメディアに適用することは、マスメディアの表現の自由、しかも表現内容そのものへの法的規制を承認することにつながりかねない。マスメディアに対する個人情報保護の法的義務化は、慎重のうえにも慎重であるべきである。

○仮に個人情報の包括的保護法を制定し、ジャーナリズム目的を適用除外とする方法を取った場合でも、「ジャーナリズム目的」に該当するか否かの判断を誰が行うのかという大きな問題が残される。公権力による判断に委ねる事態は、表現の自由、そしてそのことからもたらされる多様な情報の自由な流通という公共の利益にとって致命的な影響が出かねない。

○報道の自由、取材の自由と個人情報保護との調和・均衡は、国民とマスメディア自身によって自律的に実現されることが望ましい。両者の価値が衝突した場合の比較衡量は、あくまで個々の事案に即して判断すべきである。

○NHKとしては、放送に対する視聴者・国民の信頼を得るため、何者にも侵されない自主的・自律的な姿勢を堅持して、取材・制作過程を適正に保つことに努めたい。
 
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