2020年12月18日

法務省保護局長 今福章二さん

“犯罪から立ち直って”願いを込めた応援カレー

2020年12月18日

平日の昼下がりに法務省の地下にある食堂を訪れたのは、保護局長の今福章二さん(60)です。

「ふだんは妻の弁当を食べているんだけど…」

しかしこの日はお目当てのカレーを食べに来ました。
あれ、もう売り切れてしまっていますよ。どうするんですか。

「売れ行き好調だね。でも、大丈夫。予約してあるから」

そう言ってカウンターで受け取ったのは、ほうれんそうがトッピングされたカレー。

小鉢とスープが付いて600円です。
感染対策で席の数を半分に減らして職員のみなさんと一緒にいただきます。

「コクのあるカレーと、味がしっかりしたほうれんそうがよく合うんですよ。
ほうれんそうのボリュームもたっぷりで、おいしい!」

確かにおいしそうですが、なぜ予約までして食べたかったのですか。

「これはね、保護局の職員が企画した特別メニューなんです」

えっ、保護局の職員がですか?
犯罪や非行をした人の立ち直りを支援するのが、本来のお仕事ですよね。

「カレーの上に乗っているほうれんそうがポイントなんです。実は、刑務所を出所した人たちが、茨城の専門の施設で育てたものなんです。自立や更生に向けた職業訓練で、野菜を作っていて、特別にメニューに取り入れてもらったんです。名前はずばり“立ち直り応援カレー”」

なるほど、犯罪から立ち直ろうとする人を応援するカレーなんですね。

さらに、隣にいた女性職員が、解説してくれました。

「応援と名付けた理由は、ほかにもあるんですよ。このカレーを食べると1食あたり50円が寄付される仕組みです」

寄付先となっているのが、ことし8月に始まった「立ち直り応援基金」です。
インターネットなどで集められた寄付金は、犯罪や非行をした人の社会復帰を支援する活動にあてられます。

よく見ると食堂のテーブルには基金のサイトにつながるQRコードが貼られています。


カレーの提供にあわせて電子モニターやチラシも用意し、取り組みをPRしています。

もともと、弁護士を志望していたという今福さん。
法務省に入るきっかけになったのが、学生のときに参加した児童養護施設でのボランティアでした。

「子どもたちと遊んでいると『親が刑務所に入ってる』という話を耳にするんです。その親が犯罪を繰り返したり、子ども自身が非行に走ってしまったりすることがあって、みんながもがき苦しんでいたんです」

子どもたちの役に立ちたいと法務省に入って、35年余り。
この間、犯罪や非行をした人を支える活動に長く携わってきました。

「『加害者をなぜ支援するんだ』という被害者の気持ちもよくわかります。それでも、新たな被害者を生まないためには、加害者が犯罪を繰り返さないことが大事なんです」

加害者が立ち直ることは、被害者を減らすことにもつながる。

カレーには、犯罪から立ち直ろうとする人を応援するだけでなく、新たな被害者を生まないでほしい、という願いも込められていました。

ごちそうさまでした!