2019年11月8日

外務省 報道課上席専門官 奥正史さん

バラ色の人生!? 青森・十和田メシ

2019年11月8日

鉄板に敷き詰められたタマネギ、そびえ立つタワー盛りの牛バラ肉。

通称“バラタワー”は青森県十和田市のソウルフード「十和田バラ焼き」です。
ご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」で、2014年に日本一に輝きました。

「どローカルなグルメなので地元以外ではなかなか味わえない」
そう語るのは青森県出身で、中国駐在通算20年のベテラン外交官、奥正史さん(54)。

都内でバラ焼きを味わえるお店にお邪魔しました。

多いときは週1で通うという奥さんが、自ら焼きます。

「ポイントはまず弱火に。タマネギをじっくり焼いて甘味を引き出すんです。目指すは『あめ色』ですね」

得意げに話す奥さん。よっぽど好きなんですね。

タマネギがあめ色になったところで、牛バラ肉のタワーを崩します。
「牛バラの脂をタマネギに吸わせていくんです、じっくりと」

“焼き”に没頭する奥さん、バラ焼きの歴史は?

戦後、間もない頃、青森・三沢飛行場のアメリカ軍が払い下げた安い牛肉で、朝鮮半島から移り住んだ人たちがプルコギの味付けを参考に作ったのが始まりなんだとか。
その後、バラ焼きは十和田市に定着。今では市内に80店舗もあるそうです。

「でもね、わたし、最近まで知らなかったんです…」

「え!?」

青森市育ちの奥さん。
バラ焼きを出すお店は十和田市以外にはほとんどなかったそうです。

そんな話をしているうちに、牛バラとしょうゆ、ニンニクのこうばしい香りがしてきました。

「ここからは強火でタレを一気に『焼き締める』のがバラ焼きなんです」

さあ、焼きあがり!

青森県産「まっしぐら」の新米に生卵を落として…

熱々のバラ焼きをどっかりと!

最後に一味をかけるのが奥さん流。

「キマった」

箸をぐるぐる回して、一気にかき込む奥さん。
うまそうー。

気になる奥さんとバラ焼きの出会い。
それは3年前の2016年、中国東北部の瀋陽の日本総領事館時代。

翌2017年の日中国交正常化45周年の記念イベントを検討していたところ、B-1グランプリで優勝した地元・青森の十和田バラ焼きを見つけ、初めてとなる、B-1グランプリ公認の海外イベントを実現しました。

参加した十和田バラ焼きなど11料理の団体が、2日間、無料でふるまう計画でした。

「市内の広場を使う許可が下りず、町外れで公共交通機関のない施設だったので、誰も来ないんじゃないかと不安でした」

それでも来てくれた中国の人たちがSNSで「日本のグルメだって~」などと写真付きでつぶやいた結果・・・。

「びっくりしました。2日目にどっとお客さんが押し寄せ、3000人以上が来場したんです。瀋陽で日本のイベントをやって3000人も集まることってないので手応えを強く感じました」

中国人ボランティアも300人近く集まり、調理ブースなどに入って懸命に働いてくれたそうで、「キズナが生まれた」と振り返る日本人スタッフもいたそうです。

「日本の人たちも中国人と直接触れ合って、中国に対する理解が深まったんです。自分の地元の魅力をツールに、国際交流を深めることができて、うれしかったです」

外交官人生で記憶に残る仕事ができたと話す奥さん。
十和田バラ焼きで町おこしに取り組む市民団体の合い言葉を教えてくれました。

バラ焼きのバラに引っかけて「La vie en rose(ラビアンローズ))」
フランス語で「バラ色の人生を」という意味だそうです。

いただきますの代わりに「ラビアンローズ!」

牛バラのうまみと、脂がたっぷりしみ込んだタマネギの甘さを、生卵のコクが包み込む。

箸が止まらない…。

ごちそうさまでした!