2019年7月26日

出入国在留管理庁長官 佐々木聖子さん

アジア放浪の時代を振り返るインドランチ

2019年7月26日

参議院選挙を数日後に控えた雨の日。東京・虎ノ門のインド料理店で同僚とランチを楽しんでいたのは、4月にできたばかりの出入国在留管理庁の初代長官、佐々木聖子さん。一番手前のかたです。

「聖子(しょうこ)」には「聖徳太子」のように立派な人物になってほしいという、ご両親の願いが込められているそうです。

佐々木さん、大学での専攻は美術史。学士論文のテーマは、名前とは関係ないようですが、「聖徳太子像」でした。文化財を扱いたいと、文化庁を志望したものの、かなわなかったのだとか。

では、なぜ法務省に入ったんですか。
「外国の暮らしや文化にも関心があったので、外国人との接点がある仕事がしたかったんです」

入ってからは、外国人の入国管理業務に長く携わってきました。4月には、日本で働く外国人の受け入れを拡大する制度が始まりましたが、制度設計の中心的な役割を担ったのが佐々木さんです。

新たな制度のスタートまで苦労も多かったんじゃないですか。
「去年の臨時国会では、法案審議の対応がなかなか大変でした。担当職員はみんな体重が落ちたんですよ。私は大丈夫でしたけど。ハハハ。仕事の合間に仮眠をとって、移動中に軽食をとるという生活でしたから」

インド料理のこの店には定期的に訪れているそうです。
お気に入りのビュッフェランチには、豆、野菜、ココナッツといったカレーはもちろん、ナン、サラダなどがずらり。10種類以上のメニューが食べ放題で、お値段1200円。

久しぶりの同僚とのランチとあって、雨にも負けず笑顔です。

外国人観光客は年々増えていますし、長官として、各国の味を知っておこうということなんでしょうか。
「いえいえ。シンガポールのインド人街で下宿していたころ、よくインド料理を食べたんです。『多民族国家』がどう成り立っているのか、知りたかったんですよね。食事は出店でとることが多かったんですが、当時の経験が今に役立っています」

シンガポールのインド人街で下宿?

実は佐々木さん、法務省に入って4年目に、2年間休職してアジア各国を回った、強者なんです。研究機関に籍を置きながら、シンガポールのインド人の家に下宿していたそうです。しかも、この下宿先、現地の新聞にみずから広告を出して探したんだとか。

「この揚げたドーナツも、よく食べてたんですよね~」

なるほど。「共生社会」を肌で感じた初心を忘れないようにということなんですね。
「外国人を受け入れる制度はオーダーメードです。海外の制度をそのまま日本でまねしてもうまくいかないと思うんです。国の文化や価値観はそれぞれ違いますから」

とはいえ、4月に始まった新制度。
外国人の相談窓口の設置をはじめ、受け入れ体制はまだまだ十分とは言えませんよね。

日本は、外国人が住んでみたいと思える国になりますか。
「そういう国になるかではなくて、外国人にとっても、日本人にとっても暮らしやすい国にしていかないといけません」

聖徳太子のように、1度に10人の意見を聞き分けることはできなくても、地道にいろんな立場の声に耳を傾けることがなによりも大切だという佐々木さん。
「日本人、外国人、それに国内外の意見を聞いて、みんなが生活しやすい環境を作っていきたいんです。体力つけて頑張ります」

そう言いながら、佐々木さんたち、おかわりに向かっていきました。

『外国人との共生社会』…ことばでは簡単ですが、地道な取り組みが不可欠ですね。

ごちそうさまでした!