2019年5月13日

在エチオピア日本大使館 公邸料理人・渡辺武弘シェフと河野外相一行

日本外交を支える大使館メシ

2019年5月13日

和食器に盛り付けられた天ぷらを河野外務大臣がパクリ。
ここは東京都内の有名日本料理店?

…ではなくて、実はアフリカのエチオピアなんです。

日の丸をはためかせ、首都アディスアベバを疾走する車の列。
10連休の後半、3日で3か国という強行日程でアフリカを訪問した、河野外務大臣と外務省職員の一行です。

地元の警察が警護するなか、車列は猛スピードで移動します。
車の後ろで光っているのはブレーキランプではなくて、ハザードランプ。車列全体で点滅させて、周囲の車に注意を促します。

あまりのスピードに車に乗っているだけで疲れるという、体力的にもハードな日程を影で支えるのが、そう、メシの力。

冒頭で紹介したのは一連の日程を終えたあとの“内輪メシ”。

初めて入るエチオピアの日本大使館公邸。早速、河野大臣から取材にあたっての注意が。
「警備の観点上、外観は撮影禁止。部屋の中も、扉と窓は映しちゃダメ」

さすがに徹底していますね!

まず運ばれてきた前菜は、アボカドとマグロ、あぶりサーモンの「てまり寿司」に、「しゃぶしゃぶ豚ロース巻き」、「真鯛のグリル」、「冷ややっこのポン酢ジュレ」がワンプレートに盛りつけられています。

日本の高級料理店のようですね。
料理を手がけたのは渡辺武弘シェフ(44)です。

日本でフランス料理を修行したあと、海外生活に憧れ、20代で在エジプト日本大使館の「公邸料理人」に。
その後、日本に戻ってレストランで働いていましたが、再び公邸料理人に応募。
半年前にエチオピアの日本大使館に着任しました。

「20代で1000人のレセプションの料理を担当し、度胸がつきました。失敗談は数え切れませんが、通常のレストランでは出来ない貴重な経験をさせてもらえるのが、公邸料理人の魅力です。舌の肥えた要人に自分が作った料理をふるまい、褒めてもらえたときには、やりがいも感じました」

治安は決してよくはありませんが、食材選びのため、みずから市場に足を運ぶそうです。
手に入らない野菜は、自分で栽培しているのだとか。
その自家栽培で育てたごぼうや、エビやキスの天ぷらが、冒頭に紹介した一皿。2品目に供されました。

料理人として経験豊富な渡辺さん、それでも現地ならではの苦労も。
「エチオピアは標高が高く、沸点が90度ほどで、調理方法もそれにあわせなければなりません。停電も頻繁に起きるため、食材の管理にも気を遣います」

そんな苦労の末に提供されたサクサクの天ぷらに舌鼓をうちながら、会話は弾んでいきます。

エチオピアの政治の変遷や文化、日本企業が展開するプロジェクトや多額の融資で影響力を増す中国の現状など、貴重な時間を1秒も無駄にしまいと、議論が展開。

そして3品目に運ばれてきたのは…牛ヒレ肉のグリル。

やがて話題は、公邸料理人について。
紛争地や途上国では、日本人の公邸料理人の担い手不足が課題となっているのだとか。
世界的な日本食ブームで腕のいい公邸料理人が民間のレストランに引き抜かれてしまうことも。

外務省は予算を上積みして、待遇改善に乗り出していますが、なかなか解決は難しいようです。

「公邸料理人になることで得られる経験は大きいですが、とにかく知名度が低いんです。さらに私自身、単身赴任ですが、妻や子どもを連れて来ようにも補助が無いので、二の足を踏んでしまいます。そのあたりの待遇改善をさらに進めてもらえたら、少しずつなり手も増えるのではないでしょうか」と、渡辺シェフ。

なるほど。課題も多いようですね。

最後にデザートの抹茶パフェとフルーツを食べて、みんなで記念撮影。

日本外交を支える「味の外交官」

ごちそうさまでした!