2019年3月25日
外務省 鷹尾伏恵さん、白石英之さん、中野明彦さん/ベトナム語教師 グエン・ミン・トゥアンさん
「ベトナム語使い」たちの本場メシ
2019年3月25日
今や英語を話せる日本人は珍しくありませんが、話せる人が少ない外国語もあります。
集まったのは外務省きっての「ベトナム語使い」の皆さん。
定期的にベトナム語教師のグエン・ミン・トゥアンさん(59)を招いて、ことばに磨きをかけています。
この日集まったのは、東京・銀座のベトナム料理店。
おすすめのベトナムの料理は?
「ベトナムといえば、米粉を使った麺です。同じ米粉の麺でも、『フォー』や『ブンチャー』など種類も豊富なんです」とは、ふだんはODAの仕事に携わる、鷹尾伏(たかおぶし)恵さん(35)。
注文したのは、レモングラス風味の辛口麺、980円。定番の生春巻きも付けました。
テーブルにそれぞれの料理が運ばれてくるやいなや、早速、トゥアンさんが香草を追加で注文し、投入!
香草やレモンをテーブルに並べ、自分好みの味にアレンジするのがベトナム流なんだそうで。
鷹尾伏さんは、学生時代や入省後の駐在をあわせると9年間、ベトナムで過ごしました。選ばれし者のみが就ける「通訳担当官」として、皇后さまや総理大臣の通訳も経験したプロフェッショナル。通訳の難しさは?
「いちばん困るのはお酒の席での『おやじギャグ』です(笑)。ベトナムの要人は冗談が好きな人が多いみたいで、どうしてもしっくりくる日本語が出てこず、『ギャグを言っているのでとりあえず笑ってください』と“訳した”ことも…」と苦~い思い出を教えてくれました。
外務省の職員は、入省時に専門とする言語が決められ、中国語の職員は「チャイナ・スクール」、ロシア語の職員は「ロシアン・スクール」なんて呼ばれることも。
「ベトナム・スクール」とはあまり呼ばないようですが、“ベトナム語使い”は、およそ6000人の外務省職員のうち、わずか20人足らずとのこと。
語学ごとに、職員のカラーの違いもあるのだとか。
「うちはなんと言っても『自由』です。他のスクールでは、留学先の大学からホームステイ先まできっちり決められているところもあると聞きますが、ここではどこの大学に通うか、どこに住むか、全部自分で決められます」と、白石英之さん(37・写真左)。
「実際にベトナムに住んでみて、町並みが発展していく様を目の当たりにしました。2、3年であっという間に景色が変わっていく。働いていておもしろいし、情に厚い人が多かったですね」と、中野明彦さん(37・写真右)。
そうベトナムの魅力を教えてくれた中野さんは、野菜たっぷり、ベトナム風の“つけ麺”を注文していました。
駐在時代は、屋台で食べるソイと呼ばれる、おこわのような料理が楽しみだったということです。
“ベトナム語使い”といっても、ふだんはそれぞれ別の課で、ベトナムとは無縁の仕事をしている人も多いとのこと。
外務省では入省後、2年間の海外研修で「語学漬け」の日々を送ったあと、大使館などで働き、語学に磨きをかけていきます。とはいえ、語学は使わないと忘れてしまうもの。日本に帰国後も、定期的にレッスンを受けているのだそうです。
「ベトナム語の難しさは、北部、中部、南部と地域によって使う単語が異なる上に、同じつづりでも、発音によって全く意味が変わってしまうところです。
たとえば、『チャオ』と下げ気味に言えば『こんにちは』ですが、上げ気味に言うと『おかゆ』になってしまうんです」(鷹尾伏さん)
いやぁ、ベトナム語って奥が深い。
食事を終えて、最後にトゥアンさんがひと言。
「ベトナムは、日本のODAで発展してきたこともあって、日本を好きな人がたくさんいます。僕のクラスの人たちには、日本とベトナムの架け橋になってほしい」
ベトナムとの関係を影で支える“ベトナム語使い”の皆さんの本場メシ。
ごちそうさまでした!