“LGBT”議員立法「差別は許されない」文言扱い議論続く 自民

LGBTの人たちへの理解を増進するための議員立法をめぐって、自民党の会議が開かれ、焦点となっている「差別は許されない」という文言を「不当な差別はあってはならない」と変更する案が示されましたが意見はまとまらず、引き続き議論することになりました。

自民党は8日午後、LGBTの人たちへの理解を増進するための議員立法をめぐって合同会議を開き、おととし、自民党内で意見がまとまらず、国会への提出が見送られた超党派の議員連盟の法案への対応を議論しました。

この中では、焦点となっている「性自認を理由とする差別は許されない」という文言について、「性同一性を理由とする不当な差別はあってはならない」と変更する案が提示されたということです。

これに対し、出席者からは「変更しないほうが望ましいが、変更する場合も、他党の賛成が得られるよう努力が必要だ」という意見の一方、「そもそも超党派の議員連盟の法案をベースに議論するべきではない」といった意見が出されてまとまらず、引き続き議論することになりました。

議員立法をめぐっては、与野党内から来週のG7広島サミットまでの成立を求める声が出ていて、自民党は10日も合同会議を開くことにしています。

議連会長 岩屋元防衛相 “G7までの成立 厳しくなってきている”

超党派の議員連盟の会長を務める自民党の岩屋元防衛大臣は、合同会議のあと記者団に対し「議員連盟としては、G7広島サミットまでに成立することを目標にしてきたが、なかなか日程的に厳しくなってきている。そうではあっても、今国会の会期中にしっかり結論を得るべきだ」と述べました。

自民 茂木幹事長 “なるべく早い法案提出が望ましい”

自民党の茂木幹事長は、記者会見で「党内議論が精力的に進められている。法案提出などのスケジュールについては、国会日程や与野党での調整状況などを見極めて適切に判断していきたいが、なるべく早く法案を提出することが望ましい」と述べました。

“G7広島サミット前の成立望ましい” 公明 山口代表

LGBTの人たちへの理解を増進するための議員立法をめぐり自民党内で示された修正案について、公明党の山口代表は、法的な意味が変わらない範囲で変更は否定しないとした上で、来週のG7広島サミットまでに法案を成立させることが望ましいという考えを重ねて強調しました。

LGBTの人たちへの理解を増進するための議員立法をめぐり、8日、自民党の会議で焦点となっている「差別は許されない」という文言を「不当な差別はあってはならない」に変更する案が提示されましたが、意見はまとまりませんでした。

これについて、公明党の山口代表は、9日の記者会見で「法制的な意味が変わらない範ちゅうで、文言をいろいろと検討することは否定すべきものではない」と述べました。

そのうえで「与野党で幅広い合意を作るべきだ。G7の首脳会議の前に、議長国である日本として、多様性を認め合い、包摂性に富んだ社会を作るという合意を示すことが望ましい」と述べ、来週のG7広島サミットまでに、与野党が賛成して、法案を成立させることが望ましいという考えを重ねて強調しました。

性的マイノリティーの人権「守られている」が9% NHK世論調査

NHKの憲法に関する世論調査でLGBTQなど性的マイノリティーの人たちの人権が守られていると思うかどうか聞いたところ、「守られていると思う」が9%、「守られていないと思う」が42%でした。

NHKは先月7日から3日間、全国の18歳以上を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかけるRDDという方法で世論調査を行いました。調査の対象になったのは3275人で、47.1%にあたる1544人から回答を得ました。

性的マイノリティーの人権は守られていると思うか

LGBTQなど性的マイノリティーの人たちの人権は守られていると思うかどうか聞いたところ、「守られていると思う」が9%、「守られていないと思う」が42%、「どちらともいえない」が41%でした。

同性どうしの結婚についてどう思うか

日本では現在、同性どうしの結婚が法的に認められていませんが、同性どうしの結婚についてどう思うか聞いたところ、「法的に認められるべきだと思う」が44%、「法的に認められるべきではないと思う」が15%、「どちらともいえない」が37%でした。
年代別にみると、「認められるべきだと思う」は、18歳から29歳が68%、30代が58%、40代が62%で全体よりも高くなりました。

“法的に認められるべき”と思う理由

同性どうしの結婚について「法的に認められるべきだと思う」と答えた人に理由を聞いたところ「家族に認められた行政サービスが受けられないなどの不利益が生じるから」が33%で最も多く、「海外でも認められている国はあるから」が26%、「法の下の平等などを保障した憲法に違反していると思うから」が25%、「憲法で同性婚は否定されていないと考えているから」が10%でした。

“法的に認められるべきではない”と思う理由

一方、「法的に認められるべきではないと思う」と答えた人に理由を聞いたところ、「結婚は男女間でするものだから」が53%で最も多く、「日本の伝統的な価値観があるから」が23%、「憲法で同性婚は否定されていると考えているから」が8%、「自治体が独自に設けた制度で行政サービスなどが受けられるから」が6%でした。

専門家「社会の寛容度が高まった状況が反映か」

性的マイノリティーの人権問題に詳しい青山学院大学法学部の谷口洋幸教授は、今回の世論調査の結果について、「企業や自治体がいろいろな施策を進める中で性的マイノリティーの人たちの現状や困難を人権問題として捉えることが広がってきたと感じる。同性どうしの結婚についても自治体の『パートナーシップ制度』などが広がり、社会の寛容度が高まった状況が反映されているのではないか」と分析します。

また、若い世代で同性どうしの結婚を「法的に認めるべきだと思う」という回答が全体より高かったことについては「2001年にオランダで同性婚が初めて可能になり、若い世代はそうした国が普通に存在する社会で暮らしてきた。同性婚を当たり前のように選択肢の1つとして捉え、関心が『認めるべきか』ではなく『認めなくていいのか』というフェーズに移っていると感じる」と話しています。