日韓首脳会談終えて 関係改善発展で一致「徴用」問題でも評価

岸田総理大臣は韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領との首脳会談で、日韓関係を改善しさらに発展させていくことで一致しました。政府は、5月のG7広島サミットに韓国を招待する方向で最終調整を進めるなど、関係改善の具体化を図っていきたい考えです。

岸田総理大臣と韓国のユン・ソンニョル大統領の首脳会談は、3月16日総理大臣官邸でおよそ1時間半にわたって行われました。

会談で、両首脳は、国交正常化以来の友好協力関係の基盤に基づいて日韓関係をさらに発展させていくことで一致し、10年以上途絶えている首脳間の相互訪問「シャトル外交」の再開を確認しました。

また外務・防衛当局による「日韓安全保障対話」をおよそ5年ぶりに再開させることや、半導体のサプライチェーンなどで協力を強化するため経済安全保障に関する対話の枠組みを新たに創設することで合意しました。

一方、会談後の共同記者会見で岸田総理大臣は太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で、韓国政府傘下の財団が日本企業に代わり支払いを行う解決策を改めて評価しました。

また、両首脳は、財団が原告への支払いを終えたあと日本企業に弁済を求めるいわゆる「求償権」の行使は想定していないという認識を示しました。

岸田総理大臣は「ユン大統領の訪日は日韓関係の正常化にとって大きな1歩となった」と述べていて、今後、年内のできるだけ早い時期の韓国訪問を検討することにしているほか、5月のG7広島サミットに韓国を招待する方向で最終調整を進める方針です。

そして、さまざまな分野で政府間の意思疎通を加速させ、人の往来も含めて経済協力や文化交流などを促進し、関係改善の具体化を図っていきたい考えです。

岸田首相「日韓関係をさらに発展させていくことで一致」

岸田総理大臣は、共同記者会見で「ユン大統領との首脳会談において、現下の戦略環境の中で、日韓関係の強化は急務であること、そして1965年の国交正常化以来の友好協力関係の基盤に基づき、日韓関係をさらに発展させていくことで一致した」と述べました。

そして「先般、韓国政府は、旧朝鮮半島出身労働者問題に関する措置を発表した。日本政府としては、この措置を、非常に厳しい状態にあった日韓関係を健全な関係に戻すためのものとして評価している」と述べました。

ユン大統領「韓国と日本は協力すべきパートナー」

ユン大統領は記者会見で「韓国と日本は、自由、人権、法治の普遍的価値を共有し、安全保障や経済、グローバルアジェンダで共同の利益を追求する最も近い隣国であり、協力すべきパートナーだ。これまで冷え込んできた両国関係によって、両国の国民が直接・間接的に被害を受けてきたことに共感し早期に回復、発展させていくことで一致した。両国の未来をともに進めるという国民のコンセンサスを受け、安全保障、経済、人的文化の交流など、多様な分野で協力を推進するための議論をさらに加速化することにした」と述べました。

東京 銀座の飲食店を2軒はしごし意見交換

岸田総理大臣とユン大統領の夕食会は東京・銀座の日本料理店「銀座 吉澤」で行われ、裕子夫人とキム・ゴニ(金建希)夫人も同席しました。

政府関係者によりますと、松阪牛のすき焼きや、岸田総理大臣の地元・広島の地酒などを楽しんだということです。

続いて両首脳は通訳だけを伴って2軒目の洋食店「煉瓦亭」に移り、ビールと焼酎を酌み交わしながらオムライスなどを食べました。

2人とも上着を脱ぎ、ネクタイも外して向き合い、くだけた雰囲気で意見交換を行ったということです。

すき焼きとオムライス、いずれもユン大統領の好物であることから、2つの店を用意したということで、岸田総理大臣としてはユン大統領を最大限のもてなしで迎えて本音ベースで語り合い、個人的な信頼関係を築くねらいがあったとみられます。