育勅語「現代風に」
文科相発言に批判相次ぐ

柴山文部科学大臣は、2日の記者会見で、教育勅語についての見解を聞かれ、「アレンジしたりした形で使える分野は十分ある」などと述べました。これに対し、野党からは批判の声があがっています。

柴山文部科学大臣は、2日の初閣議後の記者会見で、教育勅語についての見解を聞かれたのに対し、「現代風に解釈されたり、アレンジしたりした形で使える分野は十分あり、普遍性を持っている部分が見て取れるのではないか。同胞を大切にするとか、国際的な協調を重んじるとかいった基本的な内容を現代的にアレンジして教えていこうという動きもあると聞くが、検討に値するのかなと考えている」と述べました。

官房長官「コメント控えたい」

菅官房長官は午後の記者会見で、「柴山文部科学大臣の発言の真意や意図まで承知しておらず、コメントは控えたい」と述べました。

また記者団が、本人に真意や意図を確認する考えがあるか質問したのに対し、菅官房長官は「全くその必要はなかったと考えている」と述べました。

そのうえで、「教育勅語については、日本国憲法、教育基本法の制定などをもって、法制上の効力は喪失していると考えている。政府としては、積極的に教育勅語を教育現場に活用しようという考えはないし、一般論として、教育については教育基本法の趣旨を踏まえながら、学習指導要領に従って学校現場の判断で行うべきだし、柴山大臣は、そういう発言をしたのではないか」と述べました。

立民 辻元国会対策委員長

「認識違いが甚だしい。そのひと言で、昔だったらすぐクビで、言語道断だ。安倍総理大臣は同じ考えなのだろうか」

国民 玉木代表

「全体としての教育勅語は、さまざまな歴史的な負の遺産として認識されているのも事実だ。文部科学大臣の就任時の発言としては、少し軽率なところがあったと思う」

共産 志位委員長

「非常に重大な発言だ。『教育勅語の中にも使える部分がある』というのは、政府によっても公式に否定された問題で、臨時国会での追及点の1つになる」

教育勅語は

「教育勅語」は、明治23年に発布され、国民が守るべき道徳として戦前、戦中の学校で朗読されていました。天皇が国民に語りかけるという形式で、家族を大切にすることなどを説き、そのうえで、「危急の大事が起こったならば、大儀に基づいて勇気をふるい一身をささげて皇室国家のために尽くすよう」求めていました。戦後はこうした教えが「国家主義や軍国主義に拍車をかけた」と指摘され、昭和23年に衆参両院がそれぞれ教育勅語の排除や失効を確認する決議を行いました。

教育勅語をめぐっては、去年3月、政府が「憲法や教育基本法などに反しないような形で教材として用いることまでは否定されない」と閣議決定したことに対して、野党や専門家などから「戦前回帰だ」などと批判が出ていました。

ネット上でもさまざまな意見

SNS上では、批判するツイートが投稿されています。

「教育をつかさどる閣僚の発言としては、軽率ではないか。教育がゆがめられていく怖さを感じる」

「戦前、戦中、教育勅語がどういうふうに使われていたのか理解しているのだろうか。その歴史を踏まえたうえで政治家は見解を示す必要があるのではないか」

一方で、「教育勅語に普遍性を持つ部分があるのも否定はできない」と大臣の発言に理解を示す声もあります。