岸田首相「G7が結束して国際秩序を守り抜くべく連携を確認」

G7=主要7か国の議長国として欧米を歴訪した岸田総理大臣。アメリカ・ワシントンで行った記者会見では、G7が結束して法の支配に基づく国際秩序を守り抜くため連携していくことを確認できたと成果を強調しました。また日米首脳会談で日本の新たな安全保障戦略に支持を得たとして、今後、日米同盟を強化し、国民の安全と繁栄の確保に努力していく考えを示しました。

この中で岸田総理大臣は今回の欧米歴訪について「それぞれの首脳と、2国間の懸案や協力、それに緊迫している地域の情勢認識について率直な意見交換を行った」と述べました。

そのうえで「私から『G7広島サミット』に向けた議長国としての考え方を説明しことし1年を通じたG7=主要7か国の活動のあり方についてじっくり話し合うことができた。その結果、G7が結束して法の支配に基づく国際秩序を守り抜くべく、連携していくことを改めて確認できた」と述べ、成果を強調しました。

「バイデン大統領に反撃能力保有や防衛費増額を説明」

また、日米首脳会談について「バイデン大統領との会談では、反撃能力の保有や防衛費の増額などを含め、わが国の安全保障政策を大きく転換する決断を行ったことについて説明し、全面的な支持が表明された」と述べました。

また「バイデン大統領とは両国の国家安全保障戦路が軌を一にしていることを確認するとともに、日米同盟の抑止力・対処力を一層強化していくとの決意を新たにし、日米共同声明を発出した」と述べました。

そのうえで「日米同盟を強化し、経済・技術まですそ野が広がった日米間の安全保障協力の強化に取り組み、国民の安全と繁栄の確保・進展に一層努力していく」と述べました。

「核兵器が使用されていない歴史ないがしろは許されない」

そして、「G7広島サミットに向けての腹合わせを行う中で、最も大きな課題だったのは、ロシアによるウクライナ侵略だ。各国首脳との間で、G7広島サミットでは、法の支配に基づく国際秩序を堅持していくとの強い意志を示すべきだという認識で一致した」と述べました。

その上で「世界のリーダーが広島の地に集まることは、単なるG7サミットにとどまらない意味を持っている。原爆が投下されてから77年間、核兵器が使用されていない歴史をないがしろにすることは、人類の生存のために決して許されない。被爆地・広島から、こうしたメッセージを、力強く、歴史の重みをもって世界に発信したい」と述べました。

「独ショルツ首相と意見交換の機会を持つ」

今回の欧米歴訪に関連して「今後ともG7=主要7か国のパートナー国との安全保障協力を深化していく。今回、日程の関係で会えなかったドイツのショルツ首相とは、できるだけ早く意見交換の機会を持ちたい」と述べました。

「北朝鮮拉致問題への強い危機感を伝えた」

また、「各国首脳に対して、東アジアの安全保障環境や北朝鮮による拉致問題に対する私の強い危機感を改めて伝えた。アジアで唯一のG7メンバーである日本で開催されるサミットだからこそ、インド太平洋の地域情勢についてもしっかりと議論をする必要がある」と述べました。

そのうえで「各国首脳からも、インド太平洋についての高い関心が示された。G7広島サミットでは『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向けた一層の協力も確認したい」と述べました。

「日本が国際社会を1年間にわたって主導する」

さらに、「G7の結束と協調が従来以上に世界の動向を左右するものになっている。G7議長国である日本は、単に5月の広島サミットの開催にとどまらず、国際社会を1年間にわたって主導していく重責を負っている」と述べました。

そのうえで「重責を果たしていく上で、今回の歴訪で各国首脳との間でさまざまな分野の意見交換を行いトップ同士の信頼関係を深め、今後につながる結果を残すことができたことはなによりの成果だ」と述べました。

「中国に主張すべきは主張」

また、「日中関係は、さまざまな協力の可能性があるとともに、多くの課題や懸案にも直面しているが、同時に日中両国は地域と国際社会の平和と繁栄にとってともに重要な責任を有する大国だ」と述べました。

その上で「中国に対しては主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ、諸懸案も含め、対話をしっかり重ねていかなければならない。その上で、共通の課題については協力をする建設的かつ安定的な関係を構築していく。そのために双方の努力でこの関係を進めていくことが重要だ」と述べました。

一方、習近平国家主席との日中首脳会談については「現時点で具体的に決まっているものはない」と述べました。

「国会を通じ防衛力強化 国民へ説明」

防衛力の強化については「国民の生命、暮らし、事業を守るために防衛力を抜本的に強化する裏付けとなる安定財源は、将来の世代に先送りすることではなく、いまを生きるわれわれが将来世代への責任として対応すべきものだ」と強調しました。

そして「侃侃諤諤の議論を行った上で、1つの結論をしっかりまとめていくのが責任政党・自民党の伝統で、今回も伝統を背負った決定ができた。次は野党との活発な国会論戦を通じて、防衛力強化の内容や予算、財源について国民への説明を徹底していきたい」と述べました。

「中南米諸国は基本的価値を共有するパートナー」

また、「中南米諸国は、わが国と長い信頼と友好の歴史を有しており、民主主義や人権といった基本的価値を共有する大変重要なパートナーだ。ウクライナ情勢をめぐる国連関連決議においても、他地域に比べて多数の中南米諸国がロシアに対する批判の声を上げている」と指摘しました。

そして、「中南米諸国は食料、エネルギー、鉱物資源の重要な供給源でもある。ウクライナ情勢を契機としてサプライチェーンのもろさが露呈しており、世界からの注目が中南米諸国に集まっている。アメリカをはじめ、さまざまな国とともに、さまざまな国際課題について、中南米諸国と緊密に連携していきたい」と述べました。

「韓国政府と緊密に意思疎通を図る」

一方、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で韓国側が検討している、韓国政府の傘下にある財団が日本企業に代わり支払いを行う案について、「韓国国内の具体的な動きについて1つ1つコメントすることは控えるが、去年の日韓首脳会談に基づいて首脳間の合意があり、外交当局などが努力している」と述べました。

その上で「1965年の国交正常化以来築いてきた友好関係の基盤に基づき、日韓関係を健全な形に戻し、発展させていくため、韓国政府と引き続き緊密に意思疎通を図っていきたい」と述べました。

「半導体 責任持って取り扱いを考えたい」

アメリカが行っている半導体関連製品の中国向けの輸出規制に対する対応を問われたのに対し「具体的な対応について、いま確定的に申し上げることは控えるが、新しい国家安全保障戦略の中でも、経済安全保障という考え方を明記し、重視することを明らかにしている」と指摘しました。

そのうえで「半導体は言うまでもなく経済や安全保障にも関わる重要物資だ。経済安全保障の考え方に基づきアメリカをはじめとする同盟国や同志国と緊密に意思疎通を図りながら、責任を持って取り扱いを考えていきたい」と述べました。