防衛費増額の財源 自民税調 3税組み合わせるたたき台を議論

防衛費増額の財源を賄うための増税策をめぐり、自民党の税制調査会は13日に続き会合を開き、幹部が法人税、たばこ税、「復興特別所得税」の3つの税目を組み合わせるとした増税案のたたき台を示しました。

防衛費増額のため、不足する1兆円余りの財源を賄うための増税策をめぐり、自民党税制調査会は、13日から党所属の国会議員が広く参加して議論を開始し、14日は午前中、調査会の役員およそ30人が出席する会合が開かれました。

この中で、調査会の幹部は、法人税、たばこ税、「復興特別所得税」の3つの税目を組み合わせるとした増税案のたたき台を示しました。

それによりますと、法人税については、納税額に一律に上乗せを行う付加税を課すとしています。

そのうえで、中小企業に配慮する観点から、法人の所得のうち、1000万円相当分は税額控除の対象にするとしています。

具体的には、納税額のうち170万円程度が上乗せの対象から外れる計算となります。

また、たばこ税は、国産葉たばこ農家への影響に十分配慮しつつ、予見可能性を確保したうえで、段階的に引き上げを実施するとしています。

そして、東日本大震災からの復興予算に充てる「復興特別所得税」については税率を引き下げたうえで、引き下げ分を新たな付加税として課すとしています。

「復興特別所得税」については、2037年までとなっている課税期間を延長することで、復興財源の総額を確実に確保するとしています。

それぞれ、税率や施行時期などの具体的な数字は示されていませんが、これらの措置によって、2027年度に1兆円強の財源を確保するとしています。

会合では、党内で反対する意見が強い「復興特別所得税」の活用について、幹部が復興予算には影響しないことなどを説明し、理解を求めるとともに、意見集約に向けて、丁寧に議論を進める考えを示しました。

宮沢税制調査会長 「最終的に役員から賛成得られた」

会合のあと、宮沢税制調査会長は記者団に対し、増税案のたたき台について「最終的には調査会の役員からは賛成が得られた」と述べました。

そのうえで、たたき台に盛り込まれなかった税率などの具体的な数字について、「あす以降、しっかり議論して固めていくことで、岸田総理大臣からの指示に答えを出していく」と述べました。

党所属の国会議員すべてが参加できる会合も

午後からは、党所属の国会議員すべてが参加できる会合が開かれ、およそ100人の議員が出席しました。

このなかで、調査会の幹部は、法人税、たばこ税、「復興特別所得税」の3つの税目を組み合わせるとした増税案のたたき台を示しました。

それによりますと、
▼法人税については、納税額に一律に上乗せを行う付加税を課すとしています。
ただ、中小企業に配慮する観点から、法人の所得のうち、1000万円相当分は税額控除の対象にするとしています。これにより、所得が1000万円を下回る中小企業は実質的に追加の税負担は生じないことになります。

▼たばこ税は、国産葉たばこ農家への影響に十分配慮しつつ、予見可能性を確保したうえで、段階的に引き上げを実施するとしています。

▼東日本大震災からの復興予算にあてる「復興特別所得税」については 税率を引き下げた上で、引き下げ分を新たな付加税として課すとしています。
「復興特別所得税」については 2037年までとなっている課税期間を延長することで、復興財源の総額を確実に確保するとしています。

それぞれ、税率や施行時期などの具体的な数字は示されていませんが、これらの措置によって、2027年度に1兆円強の財源を確保するとしています。

会合では、党内で反対する意見が強い「復興特別所得税」の活用について、幹部が復興予算には影響しないことなどを説明し、理解を求めたのに対し、出席者からは、「復興を妨げることになるのではないか」などと懸念を示す声が相次ぎました。

また、今後の議論の進め方については、「もっと時間をかけて熟議すべきだ」という指摘の一方、「防衛力強化の中身が固まった以上、財源も年内に決めるべきだ」といった意見も出されました。

税制調査会は、15日も同様の会合を開く予定で、週内に予定する与党の税制改正大綱の決定に向けてどこまで具体的な案をまとめられるかが焦点です。

自民 伊藤元金融相「法人税は中小企業に配慮を」

自民党茂木派の伊藤達也 元金融担当大臣は、NHKの取材に対し、「税目について基本的な方針が示された。増税を行う場合、特に法人税は中小企業がこれから賃上げをしていく土台を作ることにしているので、しっかりと配慮した形にしてもらいたいと伝えた」と述べました。

自民 山本元農相「復興特別所得税の活用 やや無理がある」

自民党無派閥の山本有二 元農林水産大臣は記者団に対し、「税目や税額、施行時期を含めて議論をしたが、幹部から具体的な数字の言及はなかった。復興特別所得税の活用について、特に被災地から選出された議員は全く納得しておらず、これを強引に推し進めることは、やや無理があるのではないか」と述べました。

自民 西田参院議員「法人税1本でやるべき」

自民党安倍派の西田昌司 参議院議員は、記者団に対し「復興特別所得税は、間違った印象を与えることになりかねず、そもそも企業の内部留保が積み上がっている現実も踏まえ、法人税1本でやるべきだ。中小企業は税負担が大きくなるから、影響が出ないような形で仕組みをつくればいい」と述べました。

自民 逢沢元国会対策委員長「誤解を受けないような整理を」

自民党谷垣グループの逢沢・元国会対策委員長は、記者団に対し「防衛のため、みんなで等しく負担し合う意味で法人税、所得税、たばこ税で財源を確保することは、枠組みとして悪くないが、復興のための財源が削られて防衛にまわるのではという誤解を受けないような整理をきちんとしなければならない。 岸田総理大臣から強い要請を受けたので、何とか努力して答えを出す責任感ある税制調査会でなければならない」と述べました。

自民 根本元厚生労働大臣「復興財源をしっかり確保するのは当然」

福島県選出で、自民党岸田派の根本元厚生労働大臣は、記者団に対し「復興財源をしっかり確保するのは当然で、これから福島はさらなる復興があり、新たな財政需要が出てくるのでそれも国が責任を持って担保するよう強く主張した。将来の世代にわれわれの世代が責任を持つ必要があるので、防衛費の43兆円のうち足らざる部分は税でという方針を私は了としている」と述べました。

自民 石破 元幹事長「復興に影響ないと明確に」

自民党の石破元幹事長は、記者団に対し「きょうの会合で『復興特別所得税を使うことで被災地の復興に全く遅れを生じさせないと断言できるのか』と聞いたら『全く影響はない』という話だった。それなら被災地にきちんと説明し『話が違う』ということにならないよう明確にしておく必要がある」と指摘しました。

その上で「法人税の活用は賃上げや設備投資に水をさすと言われているが、大企業は史上空前の利益を上げている。中小零細企業の負担に配慮することがどれだけできるかが大事だ」と述べました。

自民 猪口邦子 参院議員「自衛隊 税金で支えるべき」

自民党麻生派の猪口邦子 参議院議員は、記者団に対し「3つの税目を組み合わせた提案には賛成だ。自衛隊に対し『税金で支えることはできないので国債で』と言うのは失礼といえる。命をかけてこの国と国民を守る人たちを税金で支えるメッセージを出すべきだ」と述べました。

その上で、税制調査会の会合での議論について「きのうは増税に慎重な議員が37人、賛成する議員が12人と賛同する人が少なかった。ただ、きょうはだいぶバランスが変わってきて税金できちんと賄うべきだという議員が増えてきている」と述べました。

自民 三原じゅん子 参議院議員 「増税ありきで懸念」

自民党無派閥の三原じゅん子参議院議員は、記者団の取材に対し「増税ありきで話が進み、私たちの意見も響いているとは感じられず、非常に懸念を持っている。税だけでなく、いろいろな案を出し合い、全体像を見ながら時間をかけて話し合い、国民に理解してもらえるようにすべきだ」と述べました。その上で、記者団が「岸田総理大臣の説明が足りないということか」と質問したのに対し、三原氏は「唐突だ。私たちがこのような思いでいるのに、国民が納得するのか心配している」と述べました。

反対議員「幹部が対応の一任を求めてきた場合は反対」

午後1時からの自民党の税制調査会の会合を前に、拙速な増税の議論に反対している
◇高鳥修一衆議院議員、◇赤池誠章参議院議員、◇今枝宗一郎衆議院議員、◇中村裕之衆議院議員、◇高木啓外務政務官の5人が党本部で会合を開きました。このなかでは、税制調査会の幹部が、週内の意見集約を目指していることについて、議論する時間があまりにも少ないとして、今の状況のまま、幹部が対応の一任を求めてきた場合はそろって反対する方針を確認しました。

自民 高鳥修一 衆院議員「一任になれば今後の政権運営に禍根」

自民党安倍派の高鳥修一 衆議院議員は記者団に対し「とても理解を得られたという状況ではなく『拙速に結論を出し、聞かない力を発揮してきょう一任になれば、今後の政権運営に禍根を残す』と申し上げた。国防は国家の存亡に関わることだから財源を1週間で決めるのは無理ではないか。岸田総理大臣が『聞く力』をしっかりと持っているのであれば、党内や国民の声を聞いてもっと丁寧に議論してもらいたい」と述べました。

立民 泉代表「唐突な増税 大きな混乱を招いている」

立憲民主党の泉代表はNHKの取材に対し「5年間で43兆円は膨大な額で 急激に予算を増やすことに国民の合意はとれていないし、復興のための税目を防衛費に使うのはありえない話で、被災地の皆さんは本当に怒っている。自民党が本気で止めることが問われている」と指摘しました。

その上で「岸田政権は大きな間違いを起こしている。旧統一教会の問題で支持率が下がり、党内基盤が弱くなった中で、起死回生を狙って防衛費を積み増そうとしており 政局の手段に使わないでもらいたい。唐突な増税の打ち出しは大きな混乱を招いているし、誰のためにもならない今回の決断で、国民はだまされてはいけない」と述べました。

また「中身が明らかにならないままで 大きな請求書を国民に突きつけるのはありえず来年の通常国会では、必要なものは必要だが、多額で行き過ぎなものはいけないという姿勢を明確にして論戦していく」と述べました。

共産 穀田国会対策委員長 「大軍拡のための増税は言語道断」

共産党の穀田国会対策委員長は、記者会見で「大軍拡のための増税は言語道断で、軍事国家体制づくりにつながっていく。たばこ税や『復興特別所得税』にまで手を出すと大きな矛盾が次々と出てきて、大軍拡が大増税につながり、暮らしと平和と憲法を破壊するので、やめさせるために力を注ぐ決意だ」と述べました。

自民税調幹部 税率など数値入れた案提示へ

防衛費増額の財源を賄うための増税策をめぐり、自民党の税制調査会の幹部は15日の調査会の会合で税率などの数値を入れた案を示す方針です。議論が拙速だなどとして反発が続く中、16日に決定したいとしている税制改正大綱にどこまで具体的に盛り込めるかが焦点です。

15日の会合では、法人税額に課す付加税の税率や、「復興特別所得税」の課税期間の延長年数など、具体的な数値を入れた案を示す方針です。

調査会の幹部は15日に意見集約を図った上で、16日に与党の税制改正大綱を決定したいとしています。

党内から議論が拙速だなどとして反発が続く中、岸田総理大臣の指示も踏まえて税率や実施時期など、どこまで具体的に大綱に盛り込めるかが焦点です。