“増税検討” 鈴木財務相「国民の理解得られるよう説明必要」

防衛費の増額で不足する財源を賄うため、政府・与党が増税を検討していることについて、鈴木財務大臣は国民の理解が得られるよう、丁寧に説明する必要があるという認識を示しました。

政府・与党は防衛費の増額では、歳出改革や剰余金を活用しながらも、不足する1兆円余りの財源を賄うため、2027年度に向けて段階的な増税を検討することにしています。

これについて鈴木財務大臣は12月9日、閣議の後の記者会見で「財源確保に向けて工夫や努力を行い、それでも足りない部分を国民の皆様に税制でお願いしなければならない。国民の皆様にご理解をいただけるように今後の決定プロセスにおいても丁寧に説明をしていく必要がある」と述べました。

不足する財源を補うための増税は、法人税を軸に検討が進められるとみられていますが、鈴木大臣は、税目や歳出改革の具体的な中身について「歳出・歳入両面での財源確保の内容の具体的な検討を年末に向けて詰めていきたい。今の時点で『これだ』と申し上げられる段階ではない」と述べるにとどめました。

一方、与党内から財源を国債でまかなうべきだという意見があるのに対し、鈴木大臣は「一般論としてだが、国債を安定的な財源と位置づけるのは難しい」と述べ、国債は将来世代に負担を先送りすることだとして、防衛費の財源とすることには否定的な見方を改めて示しました。

官房長官 “防衛装備品調達コスト縮減などを着実に推進”

また松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で「国家安全保障戦略などの策定過程でも、新たな装備品の導入と、既存の装備品の延命や能力向上の適切な組み合わせなど、費用対効果の向上を図るべく検討を進めている」と述べました。

そのうえで「こうした取り組みを通じ、防衛装備品の調達の効率化や合理化など、コスト縮減のための取り組みを着実に推進していく」と述べ、政府の対応への理解を求めました。

立民 泉代表「安易な増税は許されず」

立憲民主党の泉代表は、記者会見で「必要な予算の積み上げと言いながら、内容は不明なままで5年間で43兆円を掲げた。日本の防衛を強化しなければならないと多くの国民も理解しているが、この機に火事場泥棒のように予算を大きく積み増すことは誤りで、節度を持って向き合うべきだ。安易な増税は許されず、まずは歳出改革で防衛費の中でもムダを省いていかなければならない」と述べました。

防衛費増額の財源 ”企業への増税は慎重に” 西村経産相

西村経済産業大臣は9日の閣議のあとの会見で「中長期的な財政健全化の重要性は十分理解をしているが、経済界が過去最高水準になるような投資への意欲を示し、賃上げについても多くの企業が意欲的な方向性を示している。この5年間が日本経済再生に向けたラストチャンスだ」と述べました。

そのうえで「まさに大胆な投資へのスイッチを押そうとするときに、水を差すようなことにならないよう、このタイミングでの増税については慎重にやるべきだと考えている」と述べ、企業への増税については慎重に対応すべきだという考えを示しました。

防衛費の増額 不足する財源は法人税を軸に検討の見通し

防衛費の増額をめぐり、岸田総理大臣は2027年度以降、毎年度不足する1兆円余りの財源を賄うため、与党に増税の検討を指示しました。法人税を軸に検討が進められる見通しですが、自民党内には慎重論もあり、年内に税目や引き上げ時期などを具体的に打ち出せるかが焦点です。

防衛費の増額をめぐり、岸田総理大臣は8日夜、5年後の2027年度にGDPの2%に達する予算措置を講じる方針を示したうえで、その後も防衛力を安定的に維持するには1兆円余りの財源が不足するとして、与党に増税を検討するよう指示しました。

政府は来年度は増税を行わないものの、2027年度に向けて歳出改革や「剰余金」も活用しながら段階的に増税を行いたい考えです。


岸田総理大臣の指示を受け、与党の税制調査会は年内の税制改正大綱の取りまとめに向け、増税する税目や税率、それに引き上げの時期の検討を行うことにしています。

具体的な税目については、岸田総理大臣が所得税の負担を増やさない考えを示すとともに、消費税は社会保障に目的が限定されていることなどから、法人税を軸に検討が進められる見通しです。

ただ自民党内には、「法人税の増税は企業の賃上げに影響する」といった慎重論のほか、増税そのものに反対する意見もあり、年内に税目や引き上げ時期などを具体的に打ち出せるかが焦点です。