被害者救済新法案 霊感で“寄付必要不可欠”と告知禁止 政府

旧統一教会の被害者救済に向けた政府の新たな法案の条文案がまとまりました。法人が寄付を勧誘する際に、霊感の知見を使って不安をあおり寄付が必要不可欠だと告げることを禁止するほか、野党側がマインドコントロールによる献金の禁止を求めていることも踏まえ、個人の自由な意思を抑圧し、適切な判断が困難にならないよう配慮義務を課すとしています。

旧統一教会の被害者救済を図る新たな法案は、現在の法律では十分に対応できていない悪質な献金を規制するもので、政府は11月28日午後、自民・公明両党のそれぞれの会合で、法案の条文案を示しました。

条文案では、法人が寄付を勧誘する際に、
▽霊感などの知見を使って、個人の不安をあおったり不安に乗じたりして、寄付が必要不可欠だなどと告げることなど、個人を困惑させる不当な行為を禁止しています。

このほか、
▽個人に借金させたり、自宅などを売らせたりしてまで、寄付の資金を調達するよう要求することも禁じています。

また、野党側がいわゆるマインドコントロールによる悪質な献金の禁止を求めてきたことも踏まえ、法人側に対し、
▽個人の自由な意思を抑圧し、適切な判断が困難な状況に陥ることがないようにし、
▽個人や家族の生活の維持を困難にすることがないようにするなど、配慮義務を課すとしています。

そして、禁止行為に違反し、その後の行政の勧告や命令にも従わなかった場合には、1年以下の懲役か、100万円以下の罰金の刑事罰が科されます。

一方、被害者の救済では、禁止する勧誘行為で行われた寄付に「取消権」を認め、被害を取り戻せるとしています。

また、寄付した本人が取り消しを求めない場合には、扶養されている子どもなどにも、本来受け取れるはずだった養育費など、一定の範囲内で「取消権」が認められ、特例として、養育費などの算定は未成年の子どもが18歳になるまでの期間など、将来分まで含めることができるとしています。

この条文案は、自民党の会合で了承、公明党の会合で大筋で了承されました。

政府は法案を今週中に閣議決定する方針で、12月10日が会期末の今の国会での成立を目指しています。

松野官房長官「十分に実効的な枠組みとなるよう検討」

松野官房長官は、午後の記者会見で「新たな法案では、配慮義務に反するような不当な寄付勧誘が行われた場合、民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求が容易となり、さらに実効性が高まると考えている」と述べました。

そのうえで「政府としてはさまざまな意見も参考としながら、十分に実効的な枠組みとなるように検討を進めており、法案化の作業を引き続き進め、今国会への提出など早期の成立に向けて努力していく」と述べました。

自民 茂木幹事長「最大限の規定を盛り込み実効性ある」

自民党の茂木幹事長は記者会見で「現行の法体系上、最大限の規定を盛り込み、実際に運用していくうえでも、実効性のある内容になっていると評価している。野党からのさまざまな意見も可能なかぎり反映した内容になっている。野党には国会質疑でさまざまな点について質問していただき、政府側は丁寧に答弁してもらいたい。早期成立に向けて各党にできるかぎり協力いただきたい」と述べました。

自民 宮崎法務部会長「配慮義務規定で大部分は救済できる」

自民党の宮崎政久法務部会長は新たな法案の了承後、記者団に対し「当初の政府案に新たに加えた配慮義務規定は、野党側の要求に応じて、いわゆるマインドコントロールの状態を明文化したもので、これで被害の大部分は救済できることになる」と述べました。

そのうえで「『マインドコントロール』を禁止行為に定義すると憲法違反となるおそれがあるため、『配慮義務』とした。違反した場合『不法行為』となり、法人側を相手取って裁判所に損害賠償請求ができるようになるので、被害防止につながる」と述べました。

立民 長妻政調会長「まだまだ修正が必要」

立憲民主党の長妻政務調査会長は記者団に対し「特別な行為を受けて困惑せずに進んで繰り返す寄付が、取り消しの対象外のままなので、含める努力をしてもらいたい。まだまだ使える法律になっておらず、修正が必要で、粘り強く働きかけていきたい」と述べました。

そのうえで、配慮義務の規定については「配慮義務に反した場合に、何も罰則や取り消しがない。『配慮義務』の行為が『禁止行為』になり、献金を取り消せるとなれば相当な前進だ。最後まであきらめずに使える法律を目指し、岸田総理大臣のリーダーシップに期待したい」と述べました。

維新 藤田幹事長「救済が限定的になるおそれ」

日本維新の会の藤田幹事長は記者団に対し「被害者の救済や今後の被害抑止が、限定的になるおそれがあるため、実効性が担保されるよう、国会での審議を通して、条文の修正や、解釈の見解を明らかにすることを粘り強く求めていきたい」と述べました。

公明 古屋副代表「野党の意見も最大限入れた形に」

公明党の消費者問題対策本部の本部長を務める古屋副代表は、記者団に対し「新たな法案は、一定の抑止力につながる配慮義務規定が盛り込まれるなど、修正され、野党の意見も最大限入れた形となったと受け止めている。早期に国会に提出してもらい、今国会での成立を目指していきたい」と述べました。

共産 小池書記局長「配慮義務ではなく禁止に」

共産党の小池書記局長は記者会見で「『自由な意思を抑圧し、適切な判断が困難な状況に陥ることがないようにする』ことなどは当たり前で、なぜ配慮義務にするのか。禁止だと明確にしなければ、せっかく新しい法律をつくっても、有効に働かないのではないか」と述べました。

自民 立民 維新の幹事長らが会談

旧統一教会の被害者救済に向けた政府の新たな法案をめぐり、自民党と立憲民主党、日本維新の会の3党の幹事長らが28日午後、東京都内で会談しました。

この中で、立憲民主党の岡田幹事長らは、いわゆるマインドコントロールによる悪質な献金の禁止を明確にするため、法案の条文案を修正し、法人が寄付を勧誘する際に、適切な判断が困難な状態を作り上げたり、その状態に乗じたりして寄付が必要だと告げることを、配慮義務ではなく、禁止行為として盛り込むことなどを求めました。

これに対し、自民党の茂木幹事長は、政府の法案の修正は難しく、別の形で対応できないか検討したいという考えを伝えました。